イスラーム映画祭5 『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』 アジアフォーカス2016年Q&A とインタビュー

『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』
Halal Love (and Sex)
2015年、ドイツ・レバノン、95分
監督:アサド・フラッドカー

イスラーム映画祭5 東京での上映日程
①3/15(日)13:45
★上映後トーク《ムスリムたちの愛と性 ~イスラーム法の結婚と離婚~》
【ゲスト】 小野仁美さん(東京大学大学院人文社会系研究科研究員)の予定でしたが、ご家族の都合により、登壇できなくなりました。ピンチヒッターで佐野光子さん(アラブ映画研究者/写真作家)が登壇します。
② 3/17(火)11:00
③ 3/19(木)16:30


レバノンのイスラーム教徒のコミュニティを舞台に、イスラームの教えに則した(ハラール)結婚を追及する物語。
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2016年のアジアフォーカス福岡国際映画祭で、『ハラル・ラブ』のタイトルで上映され福岡観客賞を受賞しました。『ハラール・ラブ』と、タイトルに長母音を入れてほしかったと思っていたのですが、イスラーム映画祭5では、ちゃんと長母音が入っています。

イスラーム映画祭5での上映を機会に、アジアフォーカスでのQ&Aと、来日した女優のダリン・ハムゼさんのインタビューをお届けします。

*物語*
毎夜求めてくる夫に応じきれず、二人目の妻を夫にあてがう妻。喧嘩が絶えず三度離婚してしまい、同じ相手と再婚するには、一度、他の相手と結婚しなくてはならない夫婦。親の決めた相手と意に沿わぬ結婚をし、離婚し晴れて再婚しようとするが、好きだった彼には既に家庭があり、一時婚しか手がない女性ルブナ。3組のカップルの結婚を巡る。

冒頭の小学生の女子生徒相手の性教育の場面から、思わぬ顛末まで、会場からは何度も笑いが起こりました。福岡観客賞を受賞したのも納得の楽しい作品。

2016年09月18日 アジアフォーカス福岡国際映画祭

◆上映前のダリン・ハムゼさん舞台挨拶
レバノンの一部、イスラーム教徒のコミュニティでの物語です。ベイルートは多様性に満ちた町ですが、監督はイスラーム地区の出身で、普段見られない一部の地域を見て貰いたいという思いで本作を作りました。
映画は他の世界をみる窓と、ディレクターの梁木さんがおっしゃっていました。レバノンの窓を開いてみていただければと思います。

◆上映後のQ&A  
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登壇:一時婚を選ぶことで迷うルブナ役のダリン・ハムゼさん

― どこの国でも子どもの作り方を説明するのはタブー。お父さんから虫が出てくるというのは、レバノンでは一般的な説明ですか?

ダリン:クルアーンには、Alakaが夫から出てくると書いてあります。監督も、質問があった時にそう答えるのは、小さい頃にそのような説明を受けたからと言っていました。

司会:性教育はオープンですか?

ダリン:ベイルートでも様々です。イスラームの宗教的な学校ならクルアーンに沿って教えます。レバノンには、オープンなムスリムやクリスチャンと、そうでないムスリムとクリスチャンの両方がいます。多様性のある国です。一つの決まったルールがあるわけではありません。今回は、子どもにとって楽しい設定にしています。

― 我が儘な奥さんが第二夫人を連れてくるけど、結局しりぞけてしまう。お金持ちでなく、普通の庶民でも第二夫人を娶るのですか? 

ダリン:レバノンは多様な背景を持った国です。ですが、夫が二人目の妻を迎えるのは珍しいです。湾岸諸国ではよくあるようですが。今回の映画は面白いケース。監督は映画を通じてイスラームにおいて色々な考えがあることを描きたかったのです。シャリーアは厳しいルール。息子を持つために二人目の妻を求めることもOKにしています。レバノンでは現代において、二人目の妻を迎えるのは難しいです。

― 最初に出てきた小学校の先生は、ルブナの恋人である八百屋さんの妻ですね。オーストラリアにいるお兄さんがゲイであることまで描いています。ベイルートで上映されて問題はなかったのでしょうか?

ダリン:冒頭の先生はまさにルブナの恋人の奥さんです。お料理も上手。ゲイは法律上では禁止されています。でも、たくさんいます。オープンにはしないけれど。
3回離婚したら、シャリーアの規則で、一度別の夫と結婚しないと同じ男性とは再婚できません。レバノンでは賛否両方の反応がありました。オープンに語りたくないことが語られていましたので。でも、概ねいい反応でした。

― 短期的結婚は不倫とどう違うのですか?

ダリン:
一時的結婚については、イスラームの中でも色々な考えがあります。監督に説明を求めたら、戦争で夫が亡くなった場合、男性が足りなくなるので、一時的に結婚して、別の人が見つかるのを待つこともあると。私自身、組織された社会の中で、ちゃんとした結婚が出来ない時に、こういうケースもいいのではと思います。子どもが生まれれば、もちろん認知します。役を演じる前に、背景を勉強しました。イスラームの中で女性の権利が考えられていると思いました。


◎ダリン・ハムゼさんインタビュー

2016年09月19日
福岡の町も散歩して、日本文化を楽しまれているというダリンさん。着物を着た時の写真を見せてくださいました。

*キリスト教徒も一緒に作ったイスラーム映画
― 昨年(2015年)、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映されたレバノン映画『ガーディ』は、マロン派キリスト教徒の多い町の話でした。

ダリン: レバノンではイスラームのコミュニティを描いた映画は少なくて、恐らくこれが初めてだと思います。

― ダリンさんご自身は、ムスリマ(イスラーム教徒の女性)ですか?

ダリン;
はい、ムスリマですが、オープンな家族で育ちました。レバノンのイスラーム教徒は、宗教的な学校に行ってない人も、宗教的な学校に行っている人も、ファナティックではありません。

― ナディーン・ラバキー監督の『キャラメル』では、キリスト教徒とイスラーム教徒が共に暮らしている光景が描かれていて、それが一般的なレバノンの姿かなと思いました。

ダリン: キリスト教徒とイスラーム教徒が人口の半々。共存しているのがレバノンの姿だと思います。20年位にわたって内戦があって、その時代に生まれた私たちの世代の特に芸術に携わっている人たちは違う宗教の人も受け入れています。神の名において殺しあうのは嫌なことです。だからこそ、映画をいろんな宗教の人が関わって作っています。監督と私はイスラーム教徒ですが、この映画には多くのキリスト教徒も関わっています。多くのクリスチャンの俳優がムスリムを演じていました。夫の為に2番目の妻を探していた女性を演じたのはクリスチャンです。私自身、映画や舞台でキリスト教徒の役を演じることもあります。
★「イスラーム映画祭1」で上映されたイラン映画『法の書』 (2009年、マズィヤール・ミーリー監督)では、レバノン在住のキリスト教徒のフランス女性を演じています。)

― 前述の『ガーディ』にイスラーム教徒の女性との結婚を反対されて独身でいる男性が登場しました。来日したプロデューサーのガブリエル・シャームン氏にお伺いしたのですが、レバノンでは18の宗派があって、以前は違う宗派どうしの結婚は認められなくて、国外に行って結婚するしかなかったけれど、法律が変わって認められるようになると聞きました。

ダリン:国として法律を変えようと努力はしているのですが、今もまだ宗派が違うと国外に出ないと結婚できません。

*夜の話も女どうしで大胆に

― 『キャラメル』でも、今回の映画でも、夜の秘め事について大胆に話していましたが、普段からレバノンではそうなのですか? 日本人はお互いにすごく親しくても話しませんので、ちょっとびっくりしました。

ダリン: はい、そうですね。レバノンの人はアラブと地中海世界の両方の文化の影響を受けていて、ギリシャ、イタリア、スペイン、オリエント世界の女性たちも、表に出して話すのが好きです。自分の感情を表現します。女性どうしでも、よく話します。日本の皆さんも、そうしてみたらいかがでしょう。(笑)

― 本作のオファーを受けて、いかがでしたか?

ダリン:母親との絡みのシーンで、社会のせいで母親が娘に強制的にやらせようとすることに苦しんでいることが多いと思います。脚本を読んだときに、そんなシーンがあったから出演を決めました。同世代の女性たちとよく話すのですが、普段話せないようなことを映画で描けるので映画が好きと。

― 好きなシーンは?

ダリン:
自分の役では、最後の方で別れを告げるシーンで、実際のあなたより夢をくれたというところ。脚本も監督も男性なのですが、女性が男性を愛するのに、実際どうするのかに入り込んでいるところが面白いと思いました。

― 映画の中の男性では、どのタイプが好きですか?


ダリン:妻に2番目の妻をあてがわれようとした男性。一人の妻を毎夜でも愛そうという、本物の愛妻家です。

― 妻を愛しすぎる男性ですね。それにしても2番目の妻をあてがおうなんて面白いですよね。

ダリン: 通常じゃ起こらないことが起こっているのが面白いですよね。

― レバノンの人たちは、コメディタッチで考えさせてくれるような映画が好き?

ダリン:そうですね。女性が二番目の奥さんを連れてくるといった面白い発想。スマートで謙虚さがあって、正直なのが好きですね。

― 映画館は結構あるのでしょうか?


ダリン:
あります。色々なタイプの映画が上映されています。商業的な映画であまりよくないものも上映されたりしますが。
今回の映画はドイツのプロダクションも資金を出してくれていますし、フランスもよくレバノンの映画に投資しています。結構自由なトピックを取り上げることができます。


*避難先のロンドンで演劇に出会う

― 女優になろうと思ったきっかけは?

ダリン: 内戦があって、ロンドンに両親と一緒に移住していました。ロンドンの学校で舞台に立ったことから、演劇に愛着を持ち続けたいと思うようになりました。大学で4年間、演劇を学び、ワシントンでマスターを取りました。ニューヨークで映画の為のワークショップにも参加しました。最初は演劇やテレビのドラマに出演していました。今は映画にも出演しています。

― どんな映画が好きですか?

ダリン:ドラマが好き。人の魂に入り込むようなジャンルだと思います。本を読んだり、映画を観たりして、新しいことを感じて成長していけるものだと思います。日本映画では、黒沢明監督の『夢』が好きですね。

― 今はご両親もレバノンに?

ダリン:
父は亡くなりました。エンジニアでした。母は画家です。母はレバノンにいますが、別に住んでいます。

― 次の出演作は?

ダリン:2017年に『Nuts』という映画が公開されます。ポーカーで勝って、チップが集まったのをNutsといいます。結婚している女性が人生にフラストレーションを感じている時にポーカーの面白さに目覚めて、地下のポーカーの世界に入り込んでいく姿を追っていく映画です。フランスの監督がレバノンで撮った映画です。

― 次の作品もぜひ日本で観たいです。本日はありがとうございました。


取材:景山咲子




第15回大阪アジアン映画祭(OAFF2020)1(暁)

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第15回大阪アジアン映画祭(OAFF2020)が3月6日(金曜日)に始まりました。シネ・リーブル梅田、梅田ブルク7、ABCホール等の会場で15日(日曜日)まで開催予定。
大阪アジアン映画祭は「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに、アジア映画最新作のコンペティション部門をはじめ、インディ・フォーラム部門、特集企画など、多彩なプログラムでアジア映画の魅力を発信してきました。
今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、全ての舞台挨拶やサイン会の中止という過去にない状況の中、上映は予定通り開催されています。
シネマジャーナルからいつも参加するメンバーSさんは参加を断念。私も5日まで迷ったけど、ここで観ないと観ることができない作品の多さを考え行くことを決めました。

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オープニングでビデオ出演のトム・リン監督

オープニング作品は、林書宇(トム・リン)監督作、李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)主演、阿部寛出演のマレーシア映画『夕霧花園(原題)』。クロージング作品は、中川龍太郎監督、穐山茉由監督、安川有果監督、渡辺紘文監督作、松林うらら出演・企画の日本映画『蒲田前奏曲』。

最初に観たののは韓国映画の『君の誕生日』。金曜日の16時からということで、やはり観客はいつもよりだいぶ少なくて、新型コロナウイルスのは影響大きいと思いました。でもオープニングの『夕霧花園(原題)』は開始時間が18:45ということもあり、満席に近かったのでホッとしました。


●特集企画《祝・韓国映画101周年:社会史の光と陰を記憶する》
『君の誕生日』 Birthday 
3/6金 16:00 シネ・リーブル梅田
監督:イ・ジョンオン 出演:ソル・ギョング、チョン・ドヨン
2019年/韓国
2020年6月5日 ロードショー
公式HP

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2014年4月16日に起こったセウォル号の沈没事故。修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲となった。この沈没事故で犠牲になった遺族の思いを描いた作品。
この事故で息子スホを亡くし、息子への思いを胸に収め、日々の暮らしに追われる母スンナム(チョン・ドヨン)。謎の男のように登場する父親のジョンイル(ソル・ギョング)。長く家を留守にしていて、どこからか帰ってくるが居留守を使われ、家に入れてもらえない。娘のイェソルは父の姿を見ても始めは誰だかわからない。しかたなく妹の家に滞在し、そこから自分の家に通う。少しづつ娘のイェソルに寄りそいながら、妻の心を癒してゆく。長らく家に帰っていなかったらしい。どうも刑務所にいたよう。そして海外にもいて、息子が死んだ時に不在だったらしい。「必要な時にいなかった」と、いきなり離婚届けを突きつけられてしまう。息子が亡くなった日に父親としての役目を果たせなかったジョンイルは、家族に対して罪悪感を抱えている。
最初は拒絶していた妻も、父親の不在で家の電球の取替えやドアの不具合などがそのままになっていたところを直したりしてゆくうちに、妻も夫を受け入れてゆく。
被害者の会の人たちの誘いがあっても、息子の死を受け入れられなくて、そこに出向いていなかったスンナム。遺族の会が主催する息子の誕生会の開催にOKするジョンイル。しかたなく一緒に出かけるスンナム。息子の子供の頃しか知らないジョンイルにとって、成長した息子の姿が想像できず、すべてが見慣れない現実の中、家族と一緒にスホの誕生日を迎える。誕生会の話の中から息子の思い出が浮かび上がってきた。スンナムも受け入れられなかった息子の死と向き合う。家族だけでなく、故人を知る人々が共に記憶し、悲しみを分かち合うことが、それぞれの遺族にとってどれだけ生きていく上での励みになるかが描かれる。

『私にも妻がいたらいいのに』以来、18年ぶりに共演したソル・ギョングとチョン・ドヨン。息子を亡くした遺族の喪失感を満身の演技で熱演。イ・チャンドン監督のもとで経験を積んだイ・ジョンオン監督の長編デビュー作。監督自身がボランティア活動を通じて長い期間、遺族と接する中で生まれたそう。

あらためて、あの信じられないような事故のことが思いだされ、若い犠牲者たちに思いを馳せ、遺族の方たちは、その後いろいろな活動をしているのだと知った。誕生会をすることで、1年、また1年と、自分たちの子供は今も人々の心に生きていると確認し、それによって残った家族も少し救われた思いになるということが描かれていたけど、そこに至るまでのスンナムの苦悩ははかなり深いものがあった。

●オープニング作品 
夕霧花園(原題)
The Garden of Evening Mists
3/6金 18:45 梅田ブルク7
監督:林書宇(トム・リン)
出演:李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)、阿部寛、張艾嘉
2019年/マレーシア
提供:マクザム、太秦  配給:太秦

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マレーシア出身の作家、陳團英(TAN Twan Eng)の英文小説で、英ブッカー賞最終候補作にもなった「The Garden of Evening Mists」が原作で、旧日本軍に捕えられた経験のある女性と戦後出会った日本人庭師男性との恋物語でもある。
第二次世界大戦後、再びイギリスの植民地になったマラヤ(現マレーシア)では独立をめぐり動きが続いていた。ユンリン(李心潔)は、今は亡き妹の夢だった日本庭園を造るため、日本人庭師の中村有朋(阿部寛)を訪れ庭作りを依頼するが、有朋に断られてしまう。しかし現在造っている庭園“夕霧花園”で自分の見習いをしながら庭造りを学ぶのならと提案する。仕方なく見習いをすることにしたユンリンだったが、深い信念を持って庭造りに打ち込む有朋に惹かれてゆく。それから約30年たち、ユンリン(張艾嘉)は、必要にかられ、有朋の真実を知るために再び「夕霧花園」を訪れる。
監督は台湾人の林書宇。ユンリンの若い頃を演じるのはマレーシア出身で
香港・台湾映画界をメインに活動する李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)。30年後を演じるのは台湾出身で香港映画界で活躍してきて、最近は監督でも活躍している張艾嘉(シルヴィア・チャン)。ミステリアスで孤独な中村有朋を演じるのは阿部寛。
2019年11月に開催された台湾の第56回金馬奨では、作品賞、監督賞、主演女優賞をはじめとする9部門にノミネートされ、最佳造型設計賞を受賞した。

監督は台湾人だし、飛び交うのは広東語、英語、日本語とかなりグローバル。太平洋戦争中の日本軍の蛮行も描かれ、海外、特にアジアの当事国の視点から旧日本軍についての思いも描かれ、日本人としてはやはり直視しなくてはという場面もある。しかし、繊細で質素な日本の芸術や文化についても描かれている。

初日のオープニング、ゲストはビデオ挨拶だけで終り。やっぱりゲストなしというのはとても寂しい。東京からの映画仲間たちもこの日は誰も来ていなかったので帰ろうと思ったら、関西在住の友人がいたので、映画が終わってから梅田の地下街に。まだ21時前なのに、シャッターが閉まっているところが多く、開いているところを探す。やっと焼き鳥屋をみつけ、さっそく乾杯。再会を喜ぶ。今度の映画祭のこと。これからの作品への期待など話しながら焼き鳥を楽しむ。でも1時間もしないうちに閉店といわれ、そそくさと店を出た。それにしても金曜日の夜というのに、人もまばら。彼女と別れ、十三(じゅうそう)のホテルへ。

第15回大阪アジアン映画祭 OAFF2020 

2020年3月6日~15日
第15回大阪アジアン映画祭 OAFF2020 
公式HP 上映作品確認は こちらへ

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今年の大阪アジアン映画祭は「大阪発、日本全国、そしてアジアへ。」をテーマに、優れたアジア映画と多数のゲストを迎えます。
・会場:梅田ブルク7、ABCホール、シネ・リーブル梅田、他

オープニング作品は、リー・シンジエ主演、阿部寛出演でおくるトム・リン監督によるマレーシア映画『夕霧花園(原題)』に決定しました。マレーシアを舞台に現地華人女性の日本人庭師への秘めた思いを描いた本作を、3/6(金)、梅田ブルク7にて日本初上映
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/op.html

クロージング作品は、松林うらら出演・プロデュース、中川龍太郎監督、穐山茉由監督、安川有果監督、渡辺紘文監督による連作スタイルの長編映画『蒲田前奏曲』に決定しました。今秋からの全国公開に先がけ、3/15(日)、ABCホールにて世界初上映
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/cl.html

上映部門
・コンペティション部門
・インディ・フォーラム部門
・その他特集企画・部門

●上映本数は58作(うち、世界初上映12作、アジア初上映3作、海外初上映12作、日本初上映24作)。

<世界初上映>
クロージング作品『蒲田前奏曲』(日本)をはじめ、レオン・ダイ出演『君の心に刻んだ名前』(台湾)、ベテランの城定秀夫監督が名作演劇を映画化した『アルプススタンドのはしの方』(日本)など14作。

<海外初上映>
メトロマニラ映画祭審査員特別賞『愛について書く』など今年も勢いが衰えないフィリピンから4作のほか、永瀬正敏主演の台湾映画短編『RPG』など12作。

<アジア初上映>
『東京不穏詩』(OAFF2018)のアンシュル・チョウハン監督最新作『コントラ』(日本)、ポーランドに生きるベトナム人を描いたボブリックまりこ監督作『フォーの味』(ドイツ・ポーランド)、撮影監督・俳優としても活躍する岸建太朗監督作『ハンモック』(日本)の3作。

<日本初上映>
オープニング作品『夕霧花園(原題)』(マレーシア)をはじめ、現地で大ヒットの『少年の君』(中国・香港)、『花椒の味』(中国・香港)、ロイ・チウ主演『ギャングとオスカー、そして生ける屍』(台湾)、『新聞記者』などで撮影監督を務める今村圭佑監督の長編デビュー作『燕 Yan』(日本)、『大和(カルフォルニア)』(OAFF2017)の宮崎大祐監督最新作『VIDEOPHOBIA』(日本)など24作。

●製作国は過去最多の23の国と地域。

●常設のコンペティション部門、インディ・フォーラム部門に加え、今年新たに「特別注視部門」を設置。まだポピュラーにはなっていなくても、今年、特に注視しておきたい潮流、才能を厳選してピックアップ。(暉峻創三プログラミング・ディレクターの肝煎り。)

●特別招待部門のうち1作は、神戸女学院大学文学部英文学科の協賛により、バングラデシュの若い女性たちが労働組合を作るべく奔走する姿を描いた『メイド・イン・バングラデシュ』を上映。(本作に関するシンポジウムも開催)

●特集企画は、恒例の台湾映画、香港映画、東南アジア映画の“今”をお届けするほか、韓国(朝鮮)映画が誕生101周年を迎えたのを記念し、今日に至る重要な社会史に根差した作品を特集。『君の誕生日』『ポーランドへ行った子どもたち』『はちどり』『マルモイ ことばあつめ』の4作を上映。

●その他、4年目となる協賛企画<芳泉文化財団の映像研究助成>の作品を上映。

“お帰りなさい監督”
15回記念の特別イベントはありませんが、『夕霧花園(原題)』のトム・リン監督をはじめ、過去にOAFFで作品を上映した13人の監督たちが、新作を携え続々と大阪に帰ってきます。
(トム・リン、安川有果、デレク・ツァン、ナワポン・タムロンラタナリット、アンシュル・チョウハン、ヤン・リーナー、キム・テシク、藤元明緒、三澤拓哉、いまおかしんじ、宮崎大祐、リー・チョクバン、アモス・ウィー)

●チケット発売:2月23日(日)から発売開始
ABCホール、シネ・リーブル梅田上映分:全国のぴあ店舗、セブン‐イレブン

梅田ブルク7上映分:KINEZO及び劇場窓口にて販売
前売券:1,300円、当日券:1,500円、青春22切符:22歳までの方、当日券500円
問合せ先 大阪アジアン映画祭運営事務局
〒540-0037 大阪府大阪市中央区内平野町2-1-2-6C
TEL 06-4301-3092 FAX 06-4301-3093

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開催 2020年3月6日〜2020年3月15日

第12回 恵比寿映像祭 アナ・ヴァス特集──未来の祖先へ  【アイリー・ナッシュ(ニューヨーク映画祭)・セレクション①】

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Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2020:
The Imagination of Time 
会場:東京都写真美術館


東京都写真美術館にて、2月7日〜2月23日まで開催された第12回恵比寿映像祭。ゲスト・プログラマーのアイリー・ナッシュがチョイスしたドキュメンタリー作家アナ・ヴァスの短編集「アナ・ヴァス特集──未来の祖先へ、アイリー・ナッシュ(ニューヨーク映画祭)・セレクション」が上映された。ブラジル生まれのアナ・ヴァス作品が上映されるのは日本初である。
この日、上映されたのは、《陸が見えた!》2016、《アトミック・ガーデン》2018、《石器時代》2013の3作品だった。

福島の民家を題材にしたり、ドミニカ共和国や故郷ブラジルの採掘現場まで、透明感溢れる詩情豊かな映像が続く。時間と場所が持つ”意味”、人間と歴史との関わり合いについて思考させ、感じさせる作品群だった。
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上映後、アイリー・ナッシュとアナ・ヴァス監督が登壇し、質疑応答が行われた。

⚫アイリー・ナッシュ(以下アイリー):アナ・ヴァス作品はこれが日本初。時間がテーマだが、国境のない描写の映像、歴史を超えた原風景や、日本での撮影もある。場所へのアプローチはどのように?、体験として映画化してますか?
⚫アナ・ヴァス(以下アナ):場所、風景は国境がなく、国境は近代の発想。故郷ブラジルは分断の歴史で、見えない分断の前の場所がテーマ。カメラは感覚の拡張である。受動的に傍観ではなく、行動且つ能動的。米国の植民地支配により、身体と心を分断されるなら、それを一緒にする行為と考える。3作ともカメラの動きが不安や歴史性を体現する役割を果たす。フランスのジャック・デリダの言葉を引用した。アニミズム、全てが生きている、カメラが沈黙者を生き返らせる。そこでは石も同等で言語を使わない。全ての音は言葉として存在する。半植民地的な全ての事象を取り戻す。

⚫アナ:年代順でいえば、《オクシデント(西洋)》は民俗学的アプローチ。南から北へ行って撮影した。リスボンは観光都市へ変容する時で、観光熱が盛ん。500年の植民地支配が賞賛と感じた。発見は南米での植民地支配が遺した物 で、陶器、孔雀など見出した。人の移動は物や形も移動するアイコンと考える。昼食時にメイドが出すシーンは現在も続く植民地支配を象徴した。興味深いのは遺された身振りなどがなぜあるのか?それはギフトと捉えた。人物がカメラを見るのは、メイドが自分を装置として見るような気がする。映画史の逆で、撮っている者が逆に観る側。
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《アテハ》は、少女に以前の映画の時から撮ろうと提案していた。一緒に映画を作るため少女にマイクを渡したのでノイズが多い。数多くある開発によって移動させられた人達。土地を耕したのに移動させられたため貧困層に陥った。少女は「しない」と言う。まとまって場所を占拠する活動に参加した。カメラは被写体に向かい、動く。シュートと同じなので暴力性、体現する行為を狩りで見失ってしまった。

《サプリ》は、探すようなカメラ。幽霊のように立ち上がる。ドミニカ共和国に呼ばれ、湖に滞在し破壊される場に立ち会った。未知の場所で当初は当惑し躊躇した。コロンブスが大陸を発見時、無数の矢で打たれるイメージ。”場のゴースト”を撮った。

⚫アイリー:最後に上映した《石器時代》は最初の作品。時間性の曖昧さ、建築的要素にも繋がる。
⚫アナ:空間の理解が重要なテーマ。ウェスタン映画は植民地支配の映画。ウェスタンジャンルは想像であり 、ユートピアが造られ、未来の遺跡を体現。ウェスタンという背景を逆にした。様々な動植物も同等。人間はエイリアンではなく先住民が主役。敢えて先住民の衣装ではなく、主人公の衣装で出てもらった。彫刻建築物が現実か?という疑問が残る。交差する時間制。人工的だが素材は地元であり、境界曖昧さ。自然人かもしれない。
⚫アイリー:《アトミックガーデン》は、福島で撮っている。福島の他、小笠原や東京も撮影した。
⚫アナ:プロジェクトは4年という長い月日。福島では自然災害と共に人災もあり、2016年に撮った作品。メディアを通し、どう表象するか考えた。友人は2011年から福島に住んでいる。是非にと連れられたが、カメラの残量が3分しか残っていなかった。1日かけ蝉の声など聞き、除染場所や畑を見つけた、青木さんは毎週、植物のお世話をなさってる。複雑な土地に抗い身振りが力強いと思った。青木さんの物語は先住民と重なった。花を撮るのが重要で人間以外を自然と映すのでなく、花火 がピッタリと思った。あれから4年続いている映画と考える。
小笠原の新しい島でも撮った。
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この日はQ&Aの時間がなくなり、高齢と思われる男性から
「イメージがマテリアル。曖昧さ、カメラが揺れたり歪む。世界を見直す力を与えてくれる作品だ。アラン・レネを想起する美しい映画」
との感想に、アナ監督は嬉しそうに「有難う」と答えていた。
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若く美しく見るからに聡明なアナ監督。撮影話法と同じく、瑞々しい印象を放つ魅力的な人物像が感じ取れた。
写真・文:大瀧幸恵



公式サイト: https://www.yebizo.com/jp/

テヘランの大気汚染を描いた『スモーク』 ★グリーンイメージ国際環境映像祭

第7回グリーンイメージ国際環境映像祭で上映されるイランの短編『スモーク』を試写で拝見させていただきました。

◆『スモーク(仮題)』Smoke
イラン/ 2017年 / 26分 / ペルシャ語
プロデューサー・監督:Mohammad EHSANI
(第3回グリーンイメージ賞を受賞した『ロンリーレイク』の監督です)
作品情報:https://green-image.jp/films/smoke/

映像祭での上映日程:2月22日(土)11:05~

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テヘランでは大気汚染が原因で毎年、5000人もの人々が命を失っている。
テヘランを象徴するミラード・タワーにアーザディー・タワー。そして、建設中のビル群。
大気汚染は、もう30年以上続いている。
今日は特に大気汚染がひどいとニュースが注意を促す。
大渋滞の道路で、ノウルーズ(新年)前の名物、顔を黒く塗ったノウルーズおじさん(ハージー・フィルーズ、アムー・ノウルーズ)が太鼓を敲く。

環境保護庁で働く男性。
80万もの観測地点を一人で担当する。
重い機材を持って観測地点に非常階段を上がっていく。

ガソリンスタンドで働く青年。
汚染と発がん性がつきまとう仕事。

テヘランを拠点に活動する写真家。
最近、汚染のひどい日の人々の表情を撮り始めた。

医師の女性。
肺が専門。大気汚染のひどい日には、患者が増えると語る。

小学校の美術教師の女性。
雲を黒く塗る少女たちを見守る。

スキー場にゴンドラの影が映る中、詩が詠まれ映画は終わりました。
(大気汚染を扱う映画でも、締めは詩なのがイランらしい!)

****

初めてイランを訪れた1978年5月にもテヘランの町は渋滞がひどくて、ほかのイランの町に比べて、すかっとしたペルシャンブルーの空は見えなかった記憶があります。
2度目に訪れた1989年、テヘランで会ったイラン人ご夫妻から、喘息がひどくて郊外のキャラジに引っ越したと聞かされました。通勤に時間がかかるのは覚悟の上での引越し。
その後、何度か訪れた時には、それほどテヘランの大気汚染がひどいと感じなかったのですが、もう10年以上訪れてないので、現状はわかりません。

そんな折、古代オリエント博物館のクローズアップ展「日本・イラン60年の歩み―考古学調査と文化遺産保護での協力-」で、驚く文言を目にしました。

「東京文化財研究所では、テヘランの大気汚染で博物館の金属製品の腐食が進んでいるとして、2016年10月の調査の折りに相談され、2017年から3年にわたり展示収蔵環境の改善をめざす研修事業を行った」

外気にさらされているわけでない博物館の館内に保管されている金属製品が腐食しているというのです。
毎日、空気にさらされている人たちは、どれほど健康を害していることでしょう・・・
これは、テヘランだけでなく、大都市に住む人たちに共有する問題です。
大気汚染にどのように取り組んでいるかは、国や都市によって様々。
新型コロナウィルスへの対応と共に、きっちり対処してもらいたいものですね。(咲)