「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」 全部門上映作品ラインナップ

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「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」の新設部門を含む全ラインナップが発表されました。

「Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」は、「Cinema at Sea」をコンセプトに、優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深めること、地元ビジネスを支援すること、そして地元の才能あるアーティストの作品を広く発信し、沖縄が環太平洋地域における新たな国際文化交流の拠点となることを目指しています。
「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」では、プログラムの拡大と開催期間を延長し、環太平洋地域における映画芸術を称えるだけでなく、異文化間のつながりを促進していきます。
本年度から「コンペティション環太平洋短編部門」「Islands in Focus」部門「オキナワパノラマ」の3部門を新設し、全部門で計49作品が上映されます。
また、コンペティション部門の審査委員長は、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督に。

【正式名称】 第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭
(2nd Cinema at Sea - Okinawa Pan-Pacific International Film Festival)
【主  催】 特定非営利活動法人Cinema at Sea
【開催期間】 2025年2月22日(土)〜3月2日(日)
【開催会場】 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場、沖縄県立博物館・美術館
【実施内容】 コンペティション作品上映、特集上映、トークイベント、沖縄環太平洋映画インダストリー他
【公式サイト】https://www.cinema-at-sea.com/

【オープニング上映】
『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』(台湾)★ワールドプレミア

【クロージング上映】
『ティナー 私たちの歌声』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア

【コンペティション長編部門】
『光る川』(日本)※アジアプレミア
『ボーイ・イン・ザ・プール』(韓国)※ジャパンプレミア
『島から島へ』(台湾)※ジャパンプレミア
『湖に浮かぶ家』(インドネシア、フィリピン、台湾、カタール)※ジャパンプレミア
『異郷に迷う鳥たち』(マレーシア、台湾)※ジャパンプレミア
『年下の男』(アメリカ)※アジアプレミア
『モロカイ・バウンド』(アメリカ)※アジアプレミア
『私たちはデンジャラス』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『呼吸の合間』(カナダ)※ジャパンプレミア
『ルーツ 岩と雲の先へ』(ペルー、チリ)※ジャパンプレミア

【コンペティション短編部門】※本年度からの新設部門
『1878年』(フランス)※ジャパンプレミア
『追放者のささやき』(インドネシア)※ジャパンプレミア
『女王に花を』(アメリカ)※ジャパンプレミア
『新しく生まれ変わるために』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『隧道』(日本)〇アジアプレミア
『サマー・ウエディング』(アメリカ)〇アジアプレミア
『MAMU』(イギリス、台湾、アイスランド)〇アジアプレミア
『コーン』(韓国)※ジャパンプレミア
『デイリー・シティ』(アメリカ)※ジャパンプレミア

【Director in Focus部門】
『マオリの魂:戦いの呼び声』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『舞台と部族:マオリのシェイクスピアの旅』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『マオリ式英雄教育』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア

【Islands in Focus部門】※本年度からの新設部門
『宇宙ライブ放送中』(ニューカレドニア)※ジャパンプレミア
『エデンの部族 独立の夢』(フランス)〇アジアプレミア
『探偵ピエロ』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア
『2020年の独立国民投票、その後は?』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア
『小島ビンゴ熱狂』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア

【Pacific Film Showcase】
『楽園島に囚われて』(クック諸島、ニュージーランド)〇アジアプレミア
『銀河のせせらぎ』(タイ)※ジャパンプレミア
『パシフィック・マザー』(ニュージーランド、日本)※ジャパンプレミア
『21日目』(シンガポール)※ジャパンプレミア

【特別上映】
『遊歩:ノーボーダー』(日本)★ワールドプレミア
『ルール・オブ・リビング』(日本)
『花束』(日本)
『孤独な楽園』(日本)
『義足のボクサー』(日本、フィリピン)

【オキナワパノラマ】※本年度からの新設部門
『マリの物語』(アメリカ)◎インターナショナルプレミア
『四世』(ペルー)
『オバアの縫い針 時がつなぐ記憶』(ブラジル)◎インターナショナルプレミア
『ENLIGHTENMENT』(日本)※ジャパンプレミア
『誰かが夜と決めたのさ』(日本)★ワールドプレミア
『琉球の恋』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『夕陽西下(せきようせいか)』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(日本)★ワールドプレミア
『Okinawa Blue Note』(韓国)★ワールドプレミア

【VR体験上映】
『星砂』(フランス、台湾)

【マブイ特別賞】
『アジアはひとつ』(日本)※受賞対象はNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)

登壇ゲスト情報はこちら

審査委員長 ブリランテ・メンドーサ監督紹介
現在最も注目され、重要視されているフィリピンの映画監督の一人です。彼の作品は、「ネオリアリズム」のスタイルで知られ、社会の現実や、非凡な状況における普通の人々の生活を描写することで高く評価されています。
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2005年に『マニラ・デイドリーム』を製作し、映画監督としてデビュー。ロカルノ国際映画祭でビデオ部門金豹賞を受賞。2008年の『サービス』によってフィリピン映画としては24年ぶりとなるカンヌ国際映画祭コンペティション部門への出品を達成。2009年の第62回カンヌ国際映画祭では、2年連続でコンペティション部門出品となった『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』により監督賞を受賞した。また同年、『グランドマザー』が第6回ドバイ国際映画祭で作品賞を受賞した。2012年の第62回ベルリン国際映画祭では『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』がコンペティション部門で上映された。フランス政府から芸術文化勲章(シュヴァリエ)を授与されました。2021年沖縄ロケ映画『義足のボクサー』監督を務めました。

<ブリランテ・メンドーサ氏 コメント>
「2020年に『義足のボクサー』を撮影した沖縄にまた行けることをとても楽しみにしています。今年の「Cinema at Sea -沖縄環太平洋国際映画祭」の審査委員長にご招待いただき大変光栄です。沖縄という場所で映画を体験できることに感謝しています。」

ラインナップ発表記者会見の様子
2025年1月21日(火)に沖縄県那覇市第一牧志公設市場にてラインナップ発表記者会見が行われました。会見にはCinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭エグゼクティブディレクターの黄インイクさん、映画祭アンバサダーの尚玄さん、特定非営利活動法人Cinema at Sea 理事の東盛あいかさんが登壇しました。

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左から 黄インイクさん、尚玄さん、東盛あいかさん

映画祭のコンセプトについて黄さんは「海を通じて島々を繋げていくことで、広い環太平洋の方々が沖縄に集まり、最終的には文化交流の拠点になることを目指しています」と強調。前回の39本よりも10本増え、計49本となった上映作品をオープニング・クロージングをはじめとする各部門ごとに次々と紹介しました。
また、映画祭が1人の監督にフォーカスする「Director in Focus」部門のマイク・ジョナサン監督や、コンペティション部門の審査委員長を務めるブリランテ・メンドーサ監督からのコメントも読み上げられました。

アンバサダーの尚玄さんは「この映画祭は本当にすごく思い入れが強くて、今回も開催できたこと本当に嬉しく思います」とあいさつ。前回開催後の反響について「正直僕が想像してた以上に大きな反響があって、色んな映画祭で声をかけられて、Cinema at Seaの認知度が少しずつ増えてるのを実感しました」と語ります。ただ、その一方で「まだ特に沖縄地元の人たちには認知されていないことが否めない」と、県内での周知の必要性についても言及しました。
さらに「僕自身、昔国際通りにいっぱいあった映画館に足繁く通って映画を見て育った少年だったので、映画で世界中の歴史や文化を学んだこともありますし、映画を通して多様性を知ったことで救われたことがいっぱいあったんです」と振り返りながら、本映画祭については「敷居が高い映画祭にしたくないんです。色んな人が映画を観て、来場されたゲストの方と気軽に対話ができるものにしたい」と話し、「たくさんの方々に気軽にふらっと観に来ていただきたいです」と呼びかけました。

理事を務める東盛さんは、監督でもある自身の実感も込めながら「本映画祭には自分にも通じるような、大切な故郷やアイデンティティを込めた作品が集まっていると思います」とアピール。「そもそも私たち若い世代は(沖縄や世界のことについて)何も知らないなって思うんですよ。今回の上映作品たちが描くことについても、知らないことの方がきっと多くて。映画を通して私たちはきっとたくさんのことを知ることになるし、そして映画と海を通して自分たちが繋がっている、他人事ではないんだなっていうことを、きっと感じることができると思います」と、若い世代の実感を交えて述べます。
その上で、沖縄県内での受容については尚玄さんと意識を共有していることを示しながら「沖縄に根ざした、地元の人たちがちょっとお出かけするぐらいの感じで足を運べるような映画祭にしていけたらなと。映画祭という機会で、自分たちが沖縄から世界を見ること、知ることができる、こんな楽しい機会があるということをもっともっと知ってもらうために、頑張っていきたいと思います」と意欲を見せました。

各作品概要
【オープニング上映】
『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』
(Ocean Elergy :The Tragedies of Mudan and Ryukyu)
監督:ション・フー/2025/102分/台湾
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© Pingtung County Government films

1871年に起こった「牡丹社事件」を台湾の映画監督ション・フー(胡皓翔)が7年の月日をかけて制作したドキュメンタリー。宮古島から首里に年貢を納めた船が帰路で嵐に遭遇し、船に乗っていた69人の琉球人は、あえなく台湾南部へ漂流。そこは原住民であるパイワン族が住む地域で、たどり着いた琉球人の一部が殺害されるという悲劇が起こる。後に牡丹社事件として知られるこの出来事は、日本による台湾侵攻(1874年の台湾出兵)の口実となる。その後の琉球併合にも影響を与え、ひいては東アジアの地政学的状況を大きく変えるきっかけとなった事件をアーカイブ資料、インタビュー、再現映像で紐解いていく。

【クロージング上映】
『ティナー 私たちの歌声』(Tinā)
監督:ミキ・マガシヴァ/2024/124分/ニュージーランド
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©Tu Fa'atasi Films
クライストチャーチ地震で娘を失い、深い悲しみに暮れる母親のマレタ。非常勤の音楽教師として働くことになった彼女は、当初は気が進まなかったものの、生徒たちとの信頼関係を徐々に深めながら、音楽の持つ力や豊かで伝統的なサモア文化を通じて彼らを勇気づけていく。共通の課題を乗り越えていく中で互いに刺激を与え合い、マレタ自身も希望やモチベーション、そしてアイデンティティを取り戻していく。困難に立ち向かい、癒しと変容を描いた感動的で心を揺さぶるストーリー。脚本家兼監督のミキ・マガシヴァの長編劇映画監督デビュー作。

【コンペティション長編部門】
『光る川』(River Returns)
監督:金子雅和/2024/108分/日本
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© 長良川スタンドバイミーの会
1958年、夏の終わり。常に台風被害に脅かされている川沿いの集落で暮らす少年・ユウチャは、集落にやってきた紙芝居屋から、この土地で古くより伝わってきた洪水伝説を教えられる。かつて激しい悲恋の末に山奥の淵へ入水した女の哀しみが、数十年に一度、大洪水を起こすのだと。大型台風が接近する中、ユウチャは少年ならではの好奇心で、女の哀しみを鎮めて洪水を止めるため、大人も恐れる山奥の淵へ向かう…。

『ボーイ・イン・ザ・プール』(Boy in the Pool)
監督:リュ・ヨンス/2024/88分/韓国
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© 2024 KAFA All rights reserved.

静かな海辺の町で溺れかけたソギョンは、ウジュという謎めいた少年に助けられる。それをきっかけに、ウジュが秘めた驚くべき水泳の才能を知ることになる。負けず嫌いで競争心の強いソギョンは、ウジュへの憧れ、嫉妬、そしてほのかな恋心といった様々な感情の間で揺れ動く。秘密を分かち合い強い感情で結ばれた2人は「泳ぐこと」で、複雑な絆を築いていく。

『島から島へ』(From Island to Island)
監督:ラウ・ケクフアット/2024/290分/台湾
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© hummingbird production

第二次世界大戦中、日本の植民地支配下にあった台湾。その日常生活に、当時の日本帝国主義がどれだけ深い影響を与えたのか。マレーシア出身の監督が東南アジア各国の“島から島へ”と撮影を重ね、世代を超えて紡がれていく記憶とアーカイブ資料(口述歴史、家族の手紙、日記、映像)によって浮き彫りにするドキュメンタリー。台湾のアイデンティティや、現在のアジアにおける台湾の役割・位置づけを理解する上で必見の1本。2024年台北金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞、さらに2024年台北映画賞で年間最優秀映画賞と最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。

『湖に浮かぶ家』(Tale of the Land)
監督:ロロ・ヘンドラ/2024/98分/インドネシア、フィリピン、台湾、カタール
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(C) KawanKawan Media

インドネシア・ボルネオで繰り広げられる、祖先の土地を巡る争いで両親を失ったダヤク族の少女メイの物語。祖父トゥハに救われた彼女は現在、岸から遠く離れた仮設の浮家で暮らしている。過去の出来事で心の傷を抱えるメイは、陸地に足を踏み入れるたびに失神してしまうという不思議な症状に悩まされ、村人たちから「呪われた子」と呼ばれるようになる。土地紛争の余波と、それによってもたらされた深い感情的影響に迫る一作。2024年プサン国際映画祭FIPRESCI賞受賞。 

『異郷に迷う鳥たち』(NEXT STOP, SOMEWHERE)
監督:ジェームズ・リー/2024/87分/マレーシア、台湾
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@2024 EMUSE PICTURES (MALAYSIA) SDN BHD

異なる場所にある2つの魂が、異郷の地へと赴くことで自身の自由を手にすることを求めている。雨傘運動後の香港から台北に行き着いた俳優のコウは、パンデミック中の隔離措置によりホテルの部屋に閉じ込められてしまう。一方、経済的な安定を求めて結婚したキムは、本当の愛を知らないままに禁じられた恋に身を投じ、自らの選択と向き合うことを余儀なくされる。疑念に苛まれ困難にさらされる中、2人に問いが突きつけられる。―自由を追い求めるために、どこまで進む覚悟があるのか、と。主演は香港の名優アンソニー・ウォン。

『年下の男』(CHAPERONE)
監督:ゾーイ・アイゼンバーグ/2024/105分/アメリカ
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©TBD, USA Copyright Office, Library of Congress

29歳のミーシャは、ストレスや責任から解放された人生を夢見る自由奔放な女性。周囲が期待する「大人らしさ」に馴染むことを拒み、次第に友人や家族から距離を置くようになる。ある日、彼女を学生と勘違いした18歳のアスリートと出会う。2人のつながりは瞬く間に深まる一方で、その背後には〝危険〟が潜んでおり…。2024年スラムダンス映画祭で「ブレイクアウト部門」のグランプリを受賞したアイゼンバーグ監督のデビュー作は、彼女自身の経験に基づく物語。全編がハワイで地元俳優たちを起用して撮影されている。

『モロカイ・バウンド』(Moloka’i Bound)
監督:アリカ・テンガン/2023/111分/アメリカ
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©Molokai Bound LLC

仮釈放中のカイノアには1つの目的があった。それは、息子と妻との関係を修復して自身の不在によって失われた年月を取り戻すこと。しかし、父親になる準備ができていないほどに若い彼は、重くのしかかってくる過去を抱えながら、容易だが破滅的な選択へと誘われていく。ホールデン・マンドリアル=サントスの鮮烈な演技が光り、エンドロール後も深い余韻を残す。沖縄にルーツを持つハワイ出身のアリカ・テンガン監督は、同名の短編映画の成功を土台に、個人的な物語をセルフアイデンティティ、家族の絆、そして資本主義の影響を鋭く掘り下げた長編映画に仕立て上げた。カイノアの贖罪の旅路を見つめる中で、人と人とのつながりや困難に立ち向かう強さが心に響く。

『私たちはデンジャラス』(We Were Dangerous)
監督:ジョセフィン・スチュワート・テ・フィウ/2024/83分/ニュージーランド
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© 2024 Piki Island Limited

舞台は1950年代のニュージーランド。厳しい環境の非行少女更生施設からの脱走を試みたマオリの少女ネルリー(エラナ・ジェームズ)とデイジー(マナイア・ホール)は、捕らえられて遠隔地の施設に送られてしまう。敬虔な看守長(リマ・テ・ウィアタ)の厳格な支配下で、彼女たちは自由意志を巡る戦いを繰り広げる。抑圧的な環境に抵抗し、改革の名のもとに行われる「慈悲」の意味を問いかけながら、少女たちは互いの友情に救いを見出していく。困難に立ち向かう強さ、友情、そしてニュージーランドの優生学の負の歴史をテーマに、スチュワート=テ・ウィウ監督の卓越したストーリーテリングと若きキャストの繊細な演技が光る一作。2024年SXSW映画祭で長編ナラティブ部門の特別審査員賞、2024年ハワイ国際映画祭でパシフィカ賞(最優秀長編映画)を受賞。

『呼吸の合間』(7 Beats Per Minute)
監督:ユーチー・カン/2024/100分/カナダ
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バハマから南極まで、海の深淵に挑んで人間の限界を押し広げてきた記録破りのフリーダイバー、ジェシア・ルー。水面下300フィートに潜るために必要な精神力と内なる強さに迫るため、監督のユーチー・カンは並外れたルーの物語を映像に収める旅に出ることに。そしてその過程で芽生えた被写体との予期せぬ絆に、監督は自身の制作活動における倫理的な境界線と直面せざるを得ない状況に陥るのだった。2024年のSXSW映画祭とHot Docs カナディアン国際ドキュメンタリー映画祭に選出されたドキュメンタリー。

『ルーツ 岩と雲の先へ』(Through rocks and clouds)
監督:フランコ・ガルシア・ビセラ /2024/83分/ペルー、チリ
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© luxbox

8歳のフェリシアーノは、アンデス山脈の遠く離れた村で仲間たちと共にアルパカの群れを追って暮らしている。フェリシアーノのそばにいるのは人懐っこいアルパカのロナルドと、老いてはいるけれど忠犬のランボー。ペルーのワールドカップ出場への期待に溢れていた平穏な日々に、迫り来る脅威が影を落とす。強引な手法で事業を進める鉱山会社が、村の生態系を危険にさらしていた。その影響で、フェリシアーノの家族や村人たちは窮地に追い込まれることになる。2024年ベルリン国際映画祭のジェネレーションKPlus部門で特別賞を受賞作品。

【コンペティション短編部門】

『1878年』(1878)
監督:オーレリア・ラウル/2024/19分/フランス
物語の舞台は1878年のニューカレドニア。植民者と先住民であるカナック族の間で激しい戦いが繰り広げられる中、1人の宣教師が森の中に隠れている若いカナック族の少女を発見する。

『追放者のささやき』(Whispers of Exiles)
監督:デヴィナ・ソフィヤンティ/2024/16分/インドネシア
癒しの力を持つ神秘的な女性・ダラは、地元の劇場でナレーターとして働いている。ある日、彼女はその力をうっかり明かしてしまい、同僚たちを怖がらせてしまう。さらに事態は悪化してしまい、とうとう職場を去ることになってしまう。 

『女王に花を』(The Queenʻs Flowers)
監督:キアラ・レイナアラ・レイシー/2023/12分/アメリカ
時は1915年、舞台はホノルル。ハワイ先住民の少女エマが、最後の君主リリウオカラニ女王のために特別な贈り物を作ろうとする物語。

『新しく生まれ変わるために』(Reconstruction of New Life)
監督:ファン・シェンジュン/2024/15分/台湾
アニメーション、再現映像、インタビューを独自に組み合わせ、1950年代に緑島に設置されていた収容所「新生訓導処」で暮らした政治犯たちの人生を描き出すハイブリッド形式の短編映画。 

『隧道』(The Tunnel)
監督:本田広大/2023/16分/日本
ある日本人の男がやりたいことができずにブルックリンで葛藤している頃、彼の遠距離関係にあるガールフレンドが、彼のドッペルゲンガーを東京で見つける。彼はそれを信じることができない。だが、それはほんの始まりに過ぎなかった。

『サマー・ウエディング』(Summer Wedding)
監督:ツァイ・ティンリー/2024/11分/アメリカ
妊娠検査を試みるステファニアは、次々と妨害に遭う。そんな中、婚約者との予期せぬ対峙で隠されていた秘密が明かされ、最終的に母親との決戦へと行き着くことになる。

『MAMU』(MAMU)
監督:エフィー・チェン/2024/15分/イギリス、台湾、アイスランド
ロンドンに住む台湾の先住民マヤウは、男手ひとつで2つの人種的ルーツを持つ娘リナを育ててきた。しかし、年齢とともに記憶が薄れていくことで、彼女とのコミュニケーションが次第に難しくなっていく。マヤウはテムズ川の流れの中から太平洋の記憶に思いを馳せ、故郷の台湾とその神話的な守護者の呼び声を聞く。

『コーン』(Cone)
監督:ユ・ジイン/2024/15分/韓国
大好きな子ども向けテレビ番組の「ゴミを減らそう」チャレンジに熱心な7歳のミヌ。その唯一無二の報酬を手に入れる決意をしたミヌは、意欲に燃える。

『デイリー・シティ』(Daly City)
監督:ニック・ハルタント/2024/16分/アメリカ
アメリカに暮らすインドネシア系の少年が、居場所を見つけようと奮闘する両親の振る舞いを見つめる中で、自身のアイデンティティに向き合いつつ、次第に疑問を抱いていく。

【Director in Focus部門】

『マオリの魂:戦いの呼び声』(Struggle without End)
監督:マイク・ジョナサン/2024/114分/アオテアロア(ニュージーランド)
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©Locomotive Entertainment

ニュージーランド戦争中の1864年。ワイカト地方の戦いの中で生まれた、混血の少年兵とマオリの預言者の少女との予期せぬ絆を描く。混乱の中に放り込まれた2人は、信頼関係を築きながら互いを守り、タマリキ(子どもたち)の一団を安全な場所へ導くために奮闘する。絶望的な状況の中で彼らが見せる困難に耐える力、友情、そして生き抜くための闘いが「アオテアロア」(=マオリの言葉でのニュージーランド)の歴史を形作ることになる。

『舞台と部族:マオリのシェイクスピアの旅』(The Road to the Globe)
監督:マイク・ジョナサン/2012/60分/ニュージーランド
テ・レオ・マオリ語で美しく翻案したウィリアム・シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』を、ロンドンの伝説的な劇場グローブ座で上演したラウィリ・パラティネ率いる劇団「ンガーカウ・トア」。12週間にも渡る準備期間を経て、作品をするまでの旅路を追ったドキュメンタリー。「グローブ・トゥ・グローブ」フェスティバルで36か国の36の演劇が36の言語で上演され、2012年にはFIFO映画祭の特別審査員賞を受賞した。

『マオリ式英雄教育』(Heroes for Education)
監督:マイク・ジョナサン/2013/24分/アオテアロア(ニュージーランド)
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©Haka Boy Films Ltd

トゥプナ(祖先)から受け継がれた価値観や伝統に従って生活し、地域社会の模範となっているウェブスター家。すべての人々に知識と愛を分かち合う彼らの姿を通して、感動的で心温まる人生の一端を垣間見ることができる短編ドキュメンタリー。 

【Islands in Focus部門】

『宇宙ライブ放送中』(REFERENDUMBS)
監督:テレンス・シェブリン/2021/29分/ニューカレドニア 
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© Niaouliwood / La Perruque / Canal+ Calédonie

独立の是非を問う住民投票が否決に終わった後、ニューカレドニアは共生の象徴として、2人のカレドニア人を国際宇宙ステーションに派遣することを決めた。計画は綿密に準備され、式典は順調だったにもかかわらず、挑戦へのプレッシャーで過去のわだかまりが最悪のタイミングで再燃してしまう…。

『エデンの部族 独立の夢』(EDEN TRIBAL)
監督:マルタン・ジェイエ
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©BOXFISHPRODUCTIONS/2019

マチルド・ルフォール/2019/52分/フランス
2018年に行われたニューカレドニア住民投票を捉えたドキュメンタリー。ヴィユ・トゥオの部族が対峙する日々の闘いや、カナックの女性が部族の未来を掴み取るため、自らの文化を守る姿が描かれる。伝統的な習わしの刷新に挑む中で、彼女は「共同体が女性を部族のリーダーとして受け入れる準備ができているのか?」という問いに直面する。 

『探偵ピエロ』(Detective Pierrot)
監督:マイ・ル・フロクモエン/2023/16分/ニューカレドニア
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@AMBORELLA PRODUCTIONS @CANAL+

私立探偵のピエロ・レンケットは報道のニュース記事を基に調査をしている。

『2020年の独立国民投票、その後は?』(REFERENDUM 2020… and after?)
監督:フローレンス・ダルトゥイ/2022/52分/ニューカレドニア
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(c)aaaproduction

「ニューカレドニアが完全な主権を達成し、独立を果たすことを望みますか?」2020年10月4日、この問いを掲げた住民投票が行われました。それはマティニョン合意から32年という歴史的な節目を迎える瞬間であり、主要人物たちの視点を通して再訪される出来事でもありました。この映画は、ニューカレドニアの制度的歴史における重要な章を力強い映像で描いています。忠誠派のソニア・バケスとフィリップ・ゴメス、独立派のロック・ワミタンとチャールズ・ワシティンという4人の日常に密着し、投票の前後と投票日当日の彼らの体験を捉えています。投票結果は僅差で「反対派」が勝利するものでした。 

『小島ビンゴ熱狂』(Bingo)
監督:ファビアン・ローブリー/2019/54分/ニューカレドニア

島や本土のビンゴからカジノビンゴまで、ニューカレドニア全土で愛されるゲーム「ビンゴ」の魅力的な旅へと観る者を誘うドキュメンタリー。1970年代に初めて遊ばれてから、ビンゴはニューカレドニアの文化的風景の中核を成す存在にまで成長した。さまざまな人物の個人的な証言や観察眼を通して、ビンゴの多面的な魅力を徹底的に探求し、その文化的意義や社会的影響、そして地域社会のダイナミクスを形成するまでに至った役割に光を当てる。

【Pacific Film Showcase】

『楽園島に囚われて』(Stranded Pearl)
監督:ケン・カーン & プラシャンス・グナセカラン/2017-2024/91分/クック諸島、ニュージーランド
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©Mahayana Films

裕福な起業家のジュリアは新婚の夫とともに出張中に嵐に巻き込まれ、未踏の孤島に取り残されてしまう。唯一の仲間は、逃亡中の犯罪者かもしれない過去を隠した謎めいた男シド。2人が生き延びようと奮闘する中で、少しずつ秘密が明らかになっていく。窮地に陥るだけでなく、避けてきた自らの過去や真実にも向き合わざるを得なくなる彼女たちの運命は…。クック諸島の息をのむような自然の中で描かれる、ロマンティックでアクション満載のストーリー。

『銀河のせせらぎ』(Rivulet of Universe)
監督:ポッサトーン・ワッチャラパニット/2023/89分/タイ
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©Punmore film

カンボジア出身の移民労働者ジットは、過去、現在、未来が交錯する時空の“層”を感知する自身の特別な能力を見出す。この能力を深めるため、ジットは伝説と歴史的な意義に満ちたタイのピマーイへと旅立つ。そこで彼は古代神話の愛の三角関係を奇妙に反映したような、不安定な関係性に悩む若いカップルに出会う。彼らの人生が絡み合いながら、神話と現実の境界線は曖昧になり、歴史と運命が入り混じる旅へと引き込まれていく…。

『パシフィック・マザー』(Pacific Mother)
監督:キャサリン・マクレイ/2023/89分/ニュージーランド、日本
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© 2023 Umi Films

女優でフリーダイバーの福本幸子と、世界チャンピオンのフリーダイバーである彼女のパートナー、ウィリアム・トラブリッジは、伝統的な出産の習慣、地域社会の支援、そして環境保護の深い繋がりを探るため、沖縄からハワイ、タヒチ、クック諸島、アオテアロア(ニュージーランド)と、太平洋を横断する変革の旅に出る。親子関係、レジリエンス(困難を乗り越えて回復する力)、そして人間と自然の相互関係を深く探る作品。2023年Doc Edgeフェスティバルで、最優秀ニュージーランド映画賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞、最優秀撮影賞など複数の賞を受賞。"

『21日目』(21 Days)
監督:ヨン・ムンチー/2021/17分/シンガポール

母親の死から21日後。ジンと父親は彼女を失った悲しみと喪失感、そして彼女のいない新しい生活を歩む。

【特別上映】

『遊歩:ノーボーダー』(YUUHO: No Border)
監督:淺野由美子/2024/104分/日本
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©2024動画工房ぞうしま

ある集会で安積遊歩さんを知った。彼女は車椅子で現れ、愛と性について語った。「私は好きな男性ができたらすぐ告白する。『愛しければ奪ってでも』という言葉も好き」どうしたらこんな生き方ができるのだろう?1956年福島県で生まれの安積遊歩さんは生後間もなく骨形成不全症と診断された。障がい者としての未来に絶望し、自殺未遂をするまで追い詰められた。しかし19歳で障がい者運動を展開した「青い芝の会」と出会い、27歳でアメリカに留学しフェミニズムに触れる。遊歩さんは「私の身体は美しい」という。障がい者運動も社会の不正義もジェンダーの問題も、ばっさばっさと切り開いてきたパンクな女性のシスターフッド・ドキュメンタリー。

『ルール・オブ・リビング』(Rules of living)
監督:グレッグ・デール/2023/113分/日本
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© Mirus Pictures

阿部美久子(49)はバツイチのキャリアウーマン。介護中の母や海外を旅する娘、自分勝手な同僚たちに振り回され、心の余裕を失っている。再婚を勧められる幼馴染・光一との関係にも迷いがある中、突然娘の紹介でアメリカ人観光客ヴィンセントが同居を申し出る。最初は拒絶するも、雨の日の彼の姿に心を動かされ、厳しいルールの下で3か月間の滞在を許可。少しずつ心を通わせる二人だったが、美久子は自分の人生を振り返り、「誰のための人生なのか」と自問する。周囲の期待を超え、自らの望む新しい生き方を模索する美久子は、ヴィンセントに英語を教えてほしいと頼み、自分自身を解放し始める。

『花束』(BOuQuET)
監督:サヘル・ローズ/2024/94分/日本
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© hanataba project

映画であって、映画ではない。物語というものは存在しない。ドキュメンタリーと、ノンフィクションと、ドラマ—これらを融合させた実験映画と云うべきなのか?それとも言葉とお芝居による記億映画とでも云うべきか?8人の少年少女が主人公。誰ひとり役者ではない。一見、どこにでもいる普通の少年少女たち…だが、彼らは幼少期、思春期に普通とは言い難い体験をしている。彼等が児童養護施設で過ごした記憶を辿ると、忘れ難い瞬間(ひととき)があった。奪われた時間、怯え続けた日々の中で、彼等が望んだもの。その忘れ難い瞬間をカメラの前で彼等自身が演じていく。

『孤独な楽園』(Paradise of Solitude)
監督:片嶋一貴/2023/100分/日本
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©2023 nobu pictures

新連載のスタートが控えている人気小説家・津島耀は、スランプに陥り、原稿用紙は白紙のまま時間だけが過ぎてゆく。母に棄てられ、厳格なクリスチャンの父を自死で亡くして心に傷を負っている少女・あやめは、過干渉の叔母に育てられ、島の工場で働きながら変化のない日々を送っていた。ある日、外国人の同僚から依頼され、あやめが代筆した1通のラブレター。「私の愛を見つけてください」たまたま手紙を目にしたのは、津島だった。出会うはずのない2つの人生が交錯したその先に、楽園は見つかるのだろうか?

『義足のボクサー』(GENSAN PUNCH)
監督:ブリランテ・メンドーサ/2021/110分/日本、フィリピン
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© 2022「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会

沖縄で暮らす津山尚生は、プロボクサーを目指し日々邁進している。ひとつだけ人と違うのは、幼少期に右膝下を失った義足のボクサーであること。日本ボクシング委員会にプロライセンスを申請するが身体条件の規定に沿わないとして却下されてしまう。夢をあきらめきれない尚生はプロになるべくフィリピンへ渡って挑戦を続ける。そこではプロを目指すボクサーたちの大会で3戦全勝すればプロライセンスを取得でき、さらに義足の尚生も毎試合前にメディカルチェックを受ければ同条件で挑戦できるというのだ。トレーナーのルディとともに、異なる価値観と習慣の中で、日本では道を閉ざされた義足のボクサーが、フィリピンで夢への第一歩を踏み出す。 

【オキナワパノラマ】

『マリの物語』(The Tale of Mari)
監督:アーニャ・ヴォーン/2024/6分/アメリカ
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© Anya Vaughn 2024

沖縄で幼少期を過ごし、アメリカへと移住したマリ。年老いた彼女が、新聞漫画家になる夢を追いかけたかつての日々を語り出す。

『四世』(Yonsei)
監督:ロペス比嘉 春海/2021/10分/ペルー
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© Harumi López Higa

監督のハルミ・ヒガ・ロペスは、沖縄系移民“四世”。ペルーへと渡った日本人と沖縄人の移民の歴史の中で紡がれてきた曾祖母、祖母、母の個人的な経験を振り返る。それぞれの世代・時代に表出する社会的な難題に立ち向かい、家族のために新たな機会を切り開いてきた彼女たちの奮闘の物語。 

『オバアの縫い針 時がつなぐ記憶』(IN OBA’S SEWING NEEDLES: fragments and the work of time)
監督:安里直美/2021/13分/ブラジル
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ナオミ・アサト監督がおばあ(祖母)の記憶を通して描く、沖縄の女性たちとブラジルのディアスポラ(移民)の物語。大切に残されてきた写真や物品には、日本とアメリカの帝国主義によって引き起こされた暴力の痕跡が静かに雄弁に宿る。移民家族の世代を超え、今なお響き渡る沈黙を捉える。

『ENLIGHTENMENT』(ENLIGHTENMENT)
監督:石川竜一/2025/72分/日本

離婚と離職をして、妻とひとり息子と別れた悟志がコザの実家に戻る。かつてイラストレーターを目指した悟志の部屋は青春時代にため込んだ流行りのサブカルチャーに溢れている。失われた青春の時を埋めるように、再びトレンドのサブカルチャーに没頭し、母親に身を寄せながらその日暮らしの日々にただただ戯れた。バブル期からコロナ禍へと至る30年間で、メディア形態の変遷やインターネットの普及が急激に進み、息子は成長し母親は年老いる。失うものはなくとも、得られることもない時間が積み重ねられた。そんな中、母親が倒れる。ひとり家に取り残された悟志は、社会との接点を求めるかのように部屋の重い扉を開けるのだが…。 

『誰かが夜と決めたのさ』(Who knows The night)
監督:仲村颯悟/2024/22分/日本
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©︎RYU-GOATS

小学4年生のユカは母と2人暮らし。いつも気にかけてくれる母に迷惑をかけないようにと、自分の気持ちを隠しながら生活していた。ある日、いつものように近所の公園で踊っているとキジムナー(妖怪)に出会う。「俺よ、もうすぐ死ぬぜ」と唐突に告げるキジムナーに、ユカの気持ちが揺れ動く。

『琉球の恋』(The Love in Okinawa)
監督:リン・フーディ/1968/90分/台湾
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© 國家電影及視聽文化中心 Taiwan Film and Audiovisual Institute

沖縄で海運業を営む台湾人のリン一家は、次男のホンハイが父親の意向を無視してお見合いを拒否した挙句、ライバル会社の娘シウリンと恋に落ちたことで混乱に陥る。世代間の対立と運命の歪が次々と明らかになる中、苦悩に苛まれたホンハイはアルコール依存になってしまう。“定め”に抗う恋人たちは、家族の対立から解放され、運命を書き換えることができるのか? 

『夕陽西下(せきようせいか)』(Sunset Over the Horizon)
監督:リン・フーディ/1968/108分/台湾
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© 國家電影及視聽文化中心 Taiwan Film and Audiovisual Institute

沖縄の海辺での夕暮れ。無一文で中年の台湾人僧侶チンウェンは、海を見つめる若い日本人女性シズコと出会う。両親の望みで富を得るために結婚することを拒否し、ロマンチックな愛を求めている彼女とチンウェンは惹かれ合う。だが、2人の“年の差恋愛”は、年齢、アイデンティティ、社会的な風潮などの困難に直面する。そしてチンウェンの過去に紐づく根深い「障害」の存在も明らかになってゆく…。愛が始まり、そして終わる海辺で、時間の流れとトラウマの重さに向き合わなければならない2人の愛は、年齢、文化、そして辛い過去の障壁を超えていくことができるのか?

『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(STEP OUT Nii Nii's Nirai Kanai)
監督:堤幸彦、共同監督:平一紘/2023/96分/日本
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©「STEP OUT」製作委員会

舞台は独自の環境とカルチャーによって、暮らしの中に音楽やダンスが溶け込む沖縄。母親の朱音(あかね)、妹の舞(まい)と3人暮らしの照屋踊(てるやよう)はダンススクールのリサに憧れ、ダンスをはじめる。朱音は家計を支えるためにスナックで働き、人とのかかわりが苦手な舞はスクールの前でいつも兄の姿を一心に見つめていた。やがて踊はリサとペアを組むようになり、だんだんとその才能を開花させていく。そんな中、朱音のもとに一本の電話があり、ある男が訪ねて来る。偶然、家の前で男を目撃する踊。後日、テレビでダンスオーディションを開催すると発表した音楽プロデューサーのHIROKIが、その人だった―。 

『Okinawa Blue Note』(Okinawa bluenote)
監督:チョ・ソンギュ/2025/111分/韓国
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@waw

ベストセラー作家のキム・ジョンミンは、新たなインスピレーションを求め、バカンスも兼ねて沖縄を訪れる。しかし、到着初日から次々と予期せぬトラブルに遭遇。その中でも最も驚くべき偶然が、同姓同名の旅行者との出会いだった。彼女はウェブトゥーンアーティストのキム・ジョンミン。特別だと感じた誰かに自分の気持ちを告白するという目的を持って沖縄にやって来ていたのだった。彼は几帳面で控えめ、彼女は楽観的で活気に満ちていて、正反対な性格にもかかわらず、2人は思いがけず旅を共にすることに。その珍道中の道のりで、夢や恐れ、そしてこれまでに想像もできなかったラブストーリーの筋書きに直面することになる。

【VR体験上映】

『星砂』(The Starry Sand Beach)
監督:ニナ・バルビエ、シン・チェンホアン/2021/15分/フランス
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© Lucid Realities - Museum national d’Histoire naturelle

東シナ海のビーチに生息する有孔虫のバクルギプシナ・スファエルラータ(Baculogypsina sphaerulata、和名:ホシスナ)。その星のような砂粒に焦点を当て、北極星、南十字星、そして神話の海蛇にまつわる伝説を掘り下げていく。伝説の再話、水中の森への降下、そして地球の古代の地質記憶への探求を経て、4億年前の有孔虫の起源へ遡る。その中では、海洋酸性化を象徴する海蛇によってもたらされる、海洋微生物への脅威の増大も目の当たりにすることになる。自然、神話、探査が交錯する科学的なファンタジー。

【マブイ特別賞】

『アジアはひとつ』(Asia is One)
監督:日本ドキュメンタリストユニオン/1972/96分/日本
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©神戸映画資料館

「復帰」に伴い集団就職や観光事業が進む沖縄。現代的な風景の一方で、近代日本資本主義の発展過程で犠牲になった西表炭坑夫の歴史、日本の植民地時代を生きた朝鮮人や、戦後帰国できずに放置された台湾人の姿の記録が映し出される。撮影当時、日中国交回復の裏で台湾と断交になったため、寄港を許されない「密航」の台湾漁船に遭遇し、船員らを追ってNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)は台湾へと渡る。奥深い山地に入り、そこで日本兵として戦ったタイヤル民族との予期せぬ出会いのなかで、日本の植民地支配の痕跡を目の当たりにする。東アジアの近現代の民衆史を圧倒的なスケールで描いたNDUの集大成となる作品。

Cinema at Sea プレイベント開催

本映画祭の開催を記念し、映画祭プログラマーとゲストを招いたプレイベントを開催いたします。本年度から新設された「コンペティション環太平洋短編部門」「Islands in Focus」部門「オキナワパノラマ」をはじめ、全49作品の見どころをたっぷり語ります。

①2025年2月8日(土)14:00~
「Cinema at Sea 直前!映画祭の航海術」映画祭見どころ雑談会@那覇
場所:てんぶす那覇テンブスホール(沖縄県那覇市牧志3丁目2番10号)
※参加無料

②2025年2月9日(日)18:00~
「去年の映画、今なら語れる!」『オキナワ・フィラデルフィア』特別上映会+映画祭見どころ雑談会@沖縄市
場所:シアタードーナツ・オキナワ(沖縄市中央1-3-17 胡屋バス停まえ)
上映作品:『オキナワ・フィラデルフィア』

【電話予約】070-5401-1072(シアター直通)10:30~17:00
【料金】一般:1,320円/中高専大生:1,100円/小学生:700円
 1ドリンクオーダー制

その他の上映情報は劇場HPをご確認ください
https://theater-donut.com

「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」公式HP
https://www.cinema-at-sea.com/

登壇ゲスト情報
https://www.cinema-at-sea.com/news/oQIaIEpl

問い合わせ
Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭事務局 PR担当
【Mail】release@cinema-at-sea.com

2025年イスラーム映画祭10 ★開催概要★

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2015年12月にスタートしたイスラーム映画祭。主宰の藤本高之さんの完全自己負担で開催されている映画祭も、早いもので今回で10回目を迎えます。私が一番楽しみにしている映画祭です。ぜひご注目ください。(景山咲子)

イスラーム映画祭10
渋谷ユーロライブ  2024年2月20日(木)~24日(月)( http://www.eurospace.co.jp/
ナゴヤキネマ・ノイ 3.29(土)- 4.4(金)※4/1(火)休館/6日間12回上映 ( https://nk-neu.com/
神戸・元町映画館  2024年5月3日(土)~9日(金)( http://www.motoei.com/

2018年から毎年上映しているパレスチナ映画に加え、日本ではなかなか観る機会がなく、また政情不安や内戦が続きながらも滅多に報道されることがない、サブサハラアフリカ・サヘル地域の映画を小特集。スーダン映画『さよなら、ジュリア』とブルキナファソ映画『怒れるシーラ』を日本初公開いたします。
イスラーム映画祭は中東ではなく、実は西アフリカからスタートしました。原点に戻ってのサブサハラアフリカ、サヘル地域の映画小特集です。
また2025年は90年代のボスニア紛争中に起きた欧州戦後最悪の虐殺、“スレブレニツァ事件”から30年にあたるため、日本未公開のボスニア映画も取り上げます。

日本初公開7、
劇場初公開1、
日本語字幕付き初公開1、
リバイバル2、
アンコール1の計12作品

公式サイト:http://islamicff.com/index.html

★渋谷ユーロスペースのチケット発売(オンライン)
 上映日の3日前の深夜0時から
 例:2/20上映分、2/17(月)の午前0時
 オンラインチケット購入サイト: http://www.euro-ticket.jp/eurospace/schedule/

 ☆リーフレット ダウンロードサイト:http://islamicff.com/pdf/iff10_tokyo.pdf

上映作品①
『モーグル・モーグリ』 原題:Mogul Mowgli
監督:バッサーム・ターリク / Bassam Tariq
2020年/イギリス=アメリカ/89分/英語、ウルドゥー語
字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/s-hFOqYUgcE
日本初公開
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パキスタンルーツの英国人俳優にしてラッパー、リズ・アーメッド主演、
パキスタン出身の米国人バッサーム・ターリク監督作
NYを拠点とするラッパーのゼッドは、ルーツを歌いながら家族を避けている
自らの矛盾を恋人に突かれ、ツアー前に英国の親許へ帰ります。
ところが…。
「自分たちのために作った」と語るアーメッドが、移民第ニ世代、ムスリム、印パ分離の記憶など、ルーツをめぐる主人公の混沌とした内面を見事に演じる作品です。

☪渋谷 2/22土10:00、2/24月15:55

★トーク情報
2/24(月・祝)15:55上映後
【テーマ】《“トーバー・テーク・シン”はどこか ―リズ・アーメッドが描くアイデンティティの姿》
【ゲスト】 栗田知宏さん 東京外国語大学南アジア研究センター特定研究員

上映作品②
サブサハラアフリカ・サヘル地域特集-(1)
『さよなら、ジュリア』 原題:Wadaean Julia 英題:Goodbye Julia
監督:ムハンマド・コルドファーニー / Mohamed Kordofani
2023年/スーダン=エジプト=ドイツ=フランス=サウジアラビア=スウェーデン/120分/アラビア語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/Xh8sauNG4AE?si=CUhQWq2yHc1mdRHO
日本初公開
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4年ぶりのスーダン映画。
現在の内戦が始まる前に製作されました。
夫の命令で歌手をやめたモナはある日、自分の過失から取り返しのつかない悲劇を招きます。
罪悪感に苛まれる彼女は、被害者の妻ジュリアと息子の面倒を見ることに…。
南スーダン独立前を背景に、北部のムスリム女性と南部のキリスト教徒女性の日々を描き、混迷のスーダン史を重ねた観応え満点のドラマです。

☪渋谷 2/20木16:30、2/22土11:50

★トーク情報
2/22(土)11:50上映後
【テーマ】 《なぜ「さよなら、南スーダン」になったのか? ―歴史に翻弄されたスーダン人の今と未来》
【ゲスト】 丸山大介さん 防衛大学校 准教授


上映作品③
サブサハラアフリカ・サヘル地域特集-(2)

『怒れるシーラ』 原題:Sira
監督:アポリーヌ・トラオレ / Apolline Traoré
2023年/ブルキナファソ=セネガル=フランス=ドイツ/122分/フラニ語、モシ語、フランス語、英語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/ZrxWYOaZQOw?si=mBQUFQM1nGQn_Hme
日本初公開
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首都ワガドゥグでアフリカ最大の映画祭フェスパコが開かれている、日本ではなかなか観る機会のないブルキナファソの映画。 
砂漠を渡り、キリスト教徒の婚約者家族のもとへ向かう途中イスラム過激派に襲撃され、家族と尊厳を奪われたフラニ人女性の生きるための闘いと復讐の物語。
不安定な情勢が続く、日本ではまったく報道されない“サヘル危機”の実情を織り込みながら、無力な犠牲者としか見なされない現地の女性たちをエンパワメントしています。

☪渋谷 2/20木14:00、2/22土17:30

★トーク情報
⑤2/22(土)17:30上映後

【テーマ】 《ブルキナファソの女性監督が世界に訴える、“サヘル危機”とは?》
【ゲスト】 岩崎有一さん ジャーナリスト

上映作品④
サブサハラアフリカ・サヘル地域特集-(3)

『母たちの村』 原題:Moolaade
監督:ウスマン・センベーヌ / Ousmane Sembene
2003年/セネガル=ブルキナファソ=モロッコ=チュニジア=カメルーン=フランス/125分/バンバラ語、フランス語  字幕:日本語
予告編: https://youtu.be/aXjE0nIJsbQ?si=mkc_1oM0WOnKlqYe
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2006年に今はなき岩波ホールで公開された、「アフリカ映画の父」と呼ばれるセネガルの名匠ウスマン・センベーヌ監督の遺作。19年ぶりにリバイバル上映。
ある日シレ家の第二夫人コレのもとに、4人の少女が割礼から逃げてきます。
割礼が原因で二度も死産し、ようやく生まれた娘には割礼させなかったコレは、少女たちを“モーラーデ(保護)”しますが…。
今もアフリカを中心に世界各地に残る”女性性器切除(FGM/C)”廃絶を願いつつ、二つの伝統的慣習を対比させた見事な作品です。

☪渋谷 2/20木18:55、2/22土15:05

★トーク情報
2/20(木)18:55上映後

【テーマ】 《女性性器切除(FGM / C)は誰のため? ― 「宗教」と「開発」二つのナラティブをめぐって》
【ゲスト】 嶺崎寛子さん 成蹊大学文学部 教授

上映作品⑤
『チュニスの切り裂き男(シャッラート)』 原題:Le Challat de Tunis 英題:The Challat of Tunis
監督:カウサル・ビン・ハニーヤ / Kaouther Ben Hania
2014年/チュニジア=フランス=UAE=カナダ/90分/アラビア語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/fW0jm0h-zLc
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最新作『Four Daughters』がカンヌ国際映画祭でドキュメンタリー賞を受賞した、カウサル・ビン・ハニーヤ監督10年前の作品。
複数の女性がバイクに乗った男に切りつけられるという、ベン・アリー独裁政権時代に起き、真相が不明のままになっている暴行事件がテーマ。
“疑似”ドキュメンタリーの手法を混ぜながら、アラブ社会のミソジニーを諷刺しています。
邦題は、日本で時折り問題になる“ぶつかり男”とかけました。

☪渋谷 2/21金10:30、2/23日15:25

★トーク情報
2/23(日)15:25上映後

【テーマ】 《シャッラート、お前は誰だ?! ―映画(フェイク)で皮肉るアラブの男性社会》
【ゲスト】 佐野光子さん アラブ映画研究者


上映作品⑥
『イチジクの樹の下で』 原題:Taht alshajra 英題:Under the Fig Trees
監督:エリーゲ・セヒリー / Erige Sehiri
2022年/チュニジア=フランス=スイス=ドイツ=カタール/93分/アラビア語  字幕:日本語、英語
日本初公開
予告編: https://youtu.be/vf7uIDYwMK8
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近年さらに女性監督の躍進が際立つチュニジア映画から。フランス系チュニジア人エリーゲ・セヒリー監督作。“チュニジアのZ世代”が分かる作品です。
映画は、若男女の労働者たちがピックアップトラックに乗りイチジク摘みに出かける、夜明けの場面から始まります。チュニジア北西部の果樹園を舞台に、時間を1日に限定。演技未経験の、とくに若い俳優たちによるアンサンブルが魅力で、恋愛、人生、労働、性差別、信仰をめぐる様々な価値観を見せてくれます。

☪渋谷 2/21金12:25、2/23日18:15



上映作品⑦
『シリンの結婚』 原題:Shirins Hochzeit 英題:Shirin’s Wedding
監督:ヘルマ・ザンダース=ブラームス / Helma Sanders-Brahms
1976年/西ドイツ/121分/ドイツ語、トルコ語  字幕:日本語、英語
日本初公開
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今までに上映してきたドイツ移民映画の極めつきとして、西ドイツ時代につくられ物議を醸した問題作をご紹介します。
トルコの村に住むシリンは政略結婚から逃れようと、幼い頃に結婚の約束がなされたマフムードを追いドイツのケルンへと渡ります…。
生涯にわたり女性の問題を撮り続けた監督が、ドイツで初めてトルコ移民をテーマに製作。最初にTV放送された本作はドイツとトルコ双方の民族主義者を怒らせ、主演の俳優は脅迫さえ受けました。

☪渋谷 2/21金19:00、2/23日10:00

★トーク情報
③2/21(金)19:00上映後

【テーマ】 《トルコ系移民とドイツ社会 ―映画がもたらしたスキャンダル》
【ゲスト】 渋谷哲也さん ドイツ映画研究者/日本大学文理学部 教授


上映作品⑧
『ハリーマの道』 原題:Halimin put 英題:Halima's Path
監督:アルセン・アントン・オストイッチ / Arsen Anton Ostojić
2012年/ボスニア・ヘルツェゴビナ=クロアチア=スロベニア=ドイツ=セルビア/97分/ボスニア語、クロアチア語
予告編: https://youtu.be/VxhxteoJnC4?si=O_1csv1ks436gJQ1
日本初公開
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2025年は90年代のボスニア紛争終結、そしてその末期に起きた欧州戦後最悪の虐殺
“スレブレニツァ事件”から30年です。
ボスニア紛争は、国内に住むセルビア人、クロアチア人、ボシュニャク人(ボスニア・ムスリム)の間で3年半にわたり交わされました。
本作は紛争中、セルビア組織に処刑された夫と息子の遺体を捜すムスリム女性の物語です。
理不尽に愛する者を奪われ、傷ついた人々の癒えない悲しみに胸を塞がれます。

☪渋谷 2/20木12:00、2/23日12:25

★トーク情報
⑥2/23(日)12:25上映後

【テーマ】 《ボスニア紛争終結から30年 ―今なお模索が続く民族融和への道》
【ゲスト】 鈴木健太さん 神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部 准教授


上映作品⑨
『ラナー、占領下の花嫁』 原題:Al-qods fee yom akhar 英題:Rana's Wedding
監督:ハーニー・アブー=アスアド / Hany Abu-Assad
2002年/パレスチナ=オランダ=UAE/86分/アラビア語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/Kjb6lIwDMDk?si=yVEfXUgQYK-Tbza0
劇場初公開
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『パラダイス・ナウ』『オマールの壁』で知られるハーニー・アブー=アスアド監督が、映画を学んだオランダとの協力で初めて撮ったパレスチナ映画。
第ニ次インティファーダ最中の東エルサレムで撮影された、父親に自分と一緒にエジプトへ行くか、4人の候補から夫を選び結婚するかの二択を迫られ、父親が出発するまでの10時間のうちに恋人と結婚しようとするパレスチナ女性の物語です。
トランプが再び大統領となった今、“エルサレムをムスリム側から描いた”大変貴重な作品と言えます。

☪渋谷 2/22土20:45、2/24月10:00

★トーク情報
⑧2/24(月・祝)10:00上映後

【テーマ】 《ある日のエルサレム 《占領》という日常》
【ゲスト】 岡真理さん 早稲田大学文学学術院 教授/アラブ文学者


上映作品⑩
『ギャベ』 原題:Gabbeh
監督:モフセン・マフマルバフ / Mohsen Makhmalbaf
1996年/イラン=フランス/74分/ペルシャ語 字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/M9krvTAySJU?si=Q_36oeaLGa21n3dJ
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10本目はイラン映画。ハナ監督の『子供の情景』、サミラ監督の『午後の五時』、そしてマルズィエ・メシュキニ監督の『私が女になった日』と、2022年より毎年上映してきたマフマルバフ一家シリーズ。最後はもちろんモフセン・マフマルバフ監督。
1996年製作の『ギャベ』を25年ぶりにリバイバルします。
主にザーグロス山脈の麓に暮らす遊牧民が織る絨毯(ギャベ)の美しさに、寓話的な恋物語を託したファンタジーです。絨毯を洗う老夫婦の前に現れた、ギャベと名乗る娘が自分の身の上を語り始めます。赤青黄を基調とする鮮やかな映像が、イラン社会は色彩を失っているとする、モフセン監督の批判精神を表した作品です。

☪渋谷 2/21金14:20、2/23日20:10

★トーク情報
②2/21(金)14:20上映後

【テーマ】 《「検閲」を「芸術」で華麗に乗り切る イラン映画の十八番》
【ゲスト】 村山木乃実さん 日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)


上映作品⑪
『カシミール 冬の裏側』 原題:Maagh 英題:The Winter Within
監督:アーミル・バシール / Aamir Bashir
2022年/インド=フランス=カタール/99分/ウルドゥー語、カシミール語
予告編: https://youtu.be/jgJlus8ip74?feature=shared
日本初公開
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1947年の分離独立以来、インドとパキスタンの対立の要因となっているカシミールの苛酷な現実を、カシミール人の目で描いた貴重な作品。
消息不明の夫を捜すため、スリナガルで住み込みの家政婦やショール織りをして金を稼いでいるナルギス。しかし夫が抵抗運動に参加していた事実が雇い主に知れ解雇されてしまいます…。
あまりに惨いカシミールの現実に息を飲み、主人公が織るショールの美しさが、その悲しみを一層際立たせる秀作です。

☪渋谷 2/21金16:55、2/24月12:55

★トーク情報
⑨2/24(月・祝)12:55上映後

【テーマ】 《ようやく可視化されつつある紛争 ―カシミールと映画の長い道のり》
【ゲスト】 拓徹さん 中央大学・政策文化総合研究所 客員研究員


上映作品⑫
★3館共通のクロージング作品。
『神に誓って』  原題:Khuda Kay Liye 英題:In the Name of God
監督:ショエーブ・マンスール / Shoaib Mansoor
2007年/パキスタン/168分/ウルドゥー語、英語  字幕:日本語、英語
予告編: https://youtu.be/EX65wpFll9o?si=KEJR-27tZ7M1moa-
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映画祭が注目を浴びるきっかけともなったこの傑作を、最後にもう一度上映します。
隣国インドも巻き込み大ヒットした、もはや伝説級のパキスタン映画。

☪渋谷 2/24月18:45

★トーク情報
⑪2/24(月・祝)18:45上映後

【テーマ】 《「神の名をもてあそぶな」 ―ショエーブ監督の焦燥と9.11後のパキスタン》
【ゲスト】 故・麻田豊さん ウルドゥー語文学/インド・イスラーム文化研究者
※本作の日本公開にご尽力され、2022年に逝去されたウルドゥー語文学者の麻田豊先生による2015年本作上映時の解説を、ご遺族の許諾のもと動画にてお送りします。

第37回東京国際映画祭 ウィメンズ・エンパワーメント部門シンポジウム 『映画をつくる女性たち』の上映とシンポジウム「女性監督は歩き続ける」

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シンポジウム「女性監督は歩き続ける」参加者の皆さん
 
今年、第37回東京国際映画祭(2024)に「ウィメンズ・エンパワーメント」部門が新設され、女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてた部門として、東京都と連携し開催されました。この部門のシニア・プログラマーに、初代駐日マケドニア大使で自身も映画監督としての顔を持つアンドリヤナ・ツヴェトコビッチ氏が就任。海外と日本の新作8本が上映され(ゲストトーク付き上映も)、『映画をつくる女性たち』(熊谷博子監督)の上映とシンポジウム「女性監督は歩き続ける」が開催された。
この部門での女性監督の作品は7作品だが、映画祭全体では、男女共同監督を含めた女性監督作品は43本(女性のみ37本、男女共同6本)で全体の中での比率は21.9%(昨年は22.4%、同じ監督による作品は作品数に関わらず1人としてカウント)だそう。

日本の女性監督第1号といわれる坂根田鶴子さんが1936年に監督デビューしてから約90年。女性監督や女性映画人は増え、男性と互して活躍している女性も出てきたが、日本の映画界では依然としてジェンダー格差は大きい。この90年、どんな変化があり、変わっていないことは何なのか、未来に向かってどういうことが必要なのか。このシンポジウム「女性監督は歩き続ける」に、ベテランから若手まで、幅広い世代の女性監督が登場し、男性中心の映画界での女性たちの苦戦苦闘、奮闘を振り返り、格差をなくし、労働環境を改善するために何ができるか語りあった。この日のイベントは無料で申し込み制だったが、200人余りの席はすぐに満席になった。そして参加してみると、知った顔がたくさん。「お久しぶり、元気だった」と、まるで同窓会のようだった。1978年の女たちの映画祭で『女ならやってみな』(デンマーク/1975年)上映などの活動をしていた人もいた。

*シネマジャーナル関連記事
・第37回東京国際映画祭 「ウィメンズ・エンパワーメント」部門新設
・新設「ウィメンズ・エンパワーメント部門」 シニア・プログラマー アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさんに聞く

★37回東京国際映画祭 ウィメンズ・エンパワーメント部門シンポジウム
『映画をつくる女性たち』の上映とシンポジウム「女性監督は歩き続ける 」

11月4日(月・祝 )10:00-17:00
10時から オープニングトーク【東京国際女性映画祭の思い出】
挨 拶: 安藤裕康(第37回東京国際映画祭)
ゲスト:クリスティン・ハキム(インドネシア 俳優・プロデューサー)
聞き手:近藤香南子
『映画をつくる女性たち』監督:熊谷博子 (2004,103min)の上映

13時からシンポジウム「女性監督は歩き続ける」
女性監督クロストーク(4部構成)
[第1部] 道を拓いた監督たち
登壇者:熊谷博子、浜野佐知、松井久子、山﨑博子
聞き手:森宗厚子(フィルム・アーキビスト、広島市映像文化ライブラリー)
[第2部] 道を歩む監督たち
登壇者:佐藤嗣麻子、西川美和、岨手由貴子、ふくだももこ、金子由里奈
聞き手:近藤香南子
[第3部] ウィメンズ・エンパワメント上映作品の監督たち 
登壇者:ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ(トルコ)、オリヴァー・チャン(香港)、甲斐さやか
聞き手:アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ(当部門シニア・プログラマー)
[第4部] 女性映画監督の未来+Q&A
登壇者 : 1、2 、3 部の監督たち
聞き手 :児玉美月氏(映画文筆家)
会場:東京ミッドタウン日比谷 BASE Q
入場無 料(事前申込制)※場内お子様連れ可、託児・見守りサービス・キッズスペースあり
スタッフ
シンポジウム企画・プロデュース:近藤香南子
公式ブックレット編集:月永理絵
公式ブックレットデザイン:中野香
制作協力:田澤真理子
当日制作協力:坂野かおり、角田沙也香、中根若恵
当日託児:in-Cty 合同会社
当日記録:木下雄介、木下笑子、矢川健吾

●今回の第37回東京国際映画祭「ウィメンズ・エンパワーメント部門」での上映作品
1、『徒花-ADABANA-』(日本/フランス、甲斐さやか監督)
2、『10セカンズ』(トルコ、ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ監督)
3、『イヴォ』(ドイツ、エヴァ・トロビッシュ監督)
4、『マイデゴル』(イラン/ドイツ/フランス、サルヴェナズ・アラムベイギ監督)
5、『灼熱の体の記憶』(コスタリカ/スペイン、アントネラ・スダサッシ・フルニス監督)
6、『母性のモンタージュ』(香港、オリヴァー・チャン監督)
7、『私の好きなケーキ』(イラン/フランス/スウェーデン/ドイツ、マリヤム・モガッダム&ベタシュ・サナイハ監督)
8、『劇場版ドクターX』(日本/田村直己監督)

●オープニングトーク【東京国際女性映画祭の思い出】

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中央クリスティン・ハキムさん 右端が近藤香南子さん

最初に、企画者の近藤香南子さんが、このシンポジウムをやろうと思ったきっかけや、どういう流れでこのイベントを作ってきたかを語った。国立映画アーカイブで企画された「日本の女性映画人」の中で、『映画をつくる女性たち』を観て、この中で羽田澄子監督の「感じた人は行動する責任がある」の言葉に触発され、本シンポジウムを企画したという。また、かつて開催されていた東京国際女性映画祭を設立した故・高野悦子さんへの賛辞や、これまで先輩監督たちとの交流がなかったことが語られ、こういう企画を立ち上げた経緯が語られた。会場には女性が参加しやすいように託児スペースも設けられた。また、来場者に配られたブックレットの制作にもふれた。日本の女性監督の作品一覧をまとめ、アーカイブ資料やインタビューも掲載された充実した内容に仕上がっている。

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安藤裕康チェアマンが登場し、東京国際女性映画祭が始まったいきさつと高野悦子さんとの思い出などが語られた。1985年の第1回東京国際映画祭から、岩波ホール総支配人だった高野悦子さん、大竹洋子さん(岩波ホール)、小藤田千栄子さん(映画評論家)などが中心になり、女性監督作品を上映する東京国際女性映画祭(当初は隔年でカネボウ女性映画週間と言っていた)が併設されていました。2012年まで25回にわたって開催。その頃と比べれば映画界での女性の数は増えてはいるが、男性と対等とは言いがたい状況は変わらずということで、女性監督を応援していこうと、今回、ウイメンズエンパワメントを新設したことも語った。
高野悦子さんは、1985年頃は岩波ホールの総支配人として、その頃、あちこちに出現してきたミニシアターの牽引者的存在でした。でも本当は映画監督になりたいと、勤めていた映画会社を辞め、フランスに渡り、高等映画学院(IDHEC)の監督科で学び、日本に戻って監督の道をと思ったのですが、その道は叶わず、40歳を前に岩波ホールの支配人になり、それ以降はたくさんの国内外の監督作品を紹介していました。そんな中で始まった東京国際女性映画祭ですが、「世界の女性監督の紹介」と「日本の女性監督の輩出」を目標に続けていました。
シネマジャーナルでは、第2回(1987)の東京国際映画祭から取材し、「女性映画週間」も取材してきましたが、主に本誌で紹介してきました。一番最初の紹介はシネマジャーナル2号で紹介しています。2007年の第20回東京国際女性映画祭では、シネマジャーナル事務局の泉悦子監督の作品『心理学者 原口鶴子の青春 100年前のコロンビア大留学生が伝えたかったこと』(ドキュメンタリー91分)も上映されました。

*シネマジャーナル関連記事(ネット記事のみ)
・『心理学者 原口鶴子の青春 100年前のコロンビア大留学生が伝えたかったこと』HP
・2009  第22回東京国際女性映画祭 映像が女性で輝くとき
・追悼 高野悦子さん 2013年
『ベアテの贈りもの』2004年東京国際女性映画祭で上映
 1. ベアテ・シロタ・ゴードンさんインタビュー
 2. 藤原智子監督インタビュー 
 3. 憲法24条の解説

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そして、東京国際女性映画祭にゲストとして何回もいらしていたインドネシアの国民的大スターであり、プロデューサーなども勤め、『枕の上の葉』『チュッ・ニャ・ディン』『囁く砂』などの作品が日本でも公開されているクリスティン・ハキムさん(1956年生まれ)が登場し、高野悦子さんとの長い交流の話をしました。高野さんを「お母さん」と慕い、女優だけでなく映画製作の道へも導いてくれたと語っていた。高野さんは、日本やヨーロッパの映画人だけでなく、アジアの女性映画人も支え続けた。あまりにも高野さんとの思い出が多く、かなり時間が超過し30分くらい話していたと思うけど、この会場に来ていたこれまで東京国際女性映画祭に参加してなかった人には貴重な話だったと思います。

●『映画をつくる女性たち』監督:熊谷博子(2004,103min)上映

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2004年となっていますが、「東京国際女性映画祭」が15回目を迎えるに当たり、記念作品として製作されたドキュメンタリー映画で2002年に上映されています。私はこの時に観て、シネマジャーナル57号(2002年12月発行)で紹介していますので、こちらは完成版ということなのでしょう。
登場するのは羽田澄子、渋谷昶子、宮城まり子、栗崎碧、関口典子、山崎博子、槙坪夛鶴子、村上康子、藤原智子、栗原奈名子、奈良橋陽子、高山由紀子、松浦雅子、松井久子、浜野左知、田中千世子、高野悦子、岡本みね子、飯野久など、この女性映画祭に参加した監督やプロデューサーの方々。そして坂根田鶴子、田中絹代ら日本の女性映画監督の草分けとも言える人たちも登場。彼女たちがどのような道を歩んできたのか、男性社会である映画界で女性が映画を撮るということにどんな意味があるのか、映画を撮り続けることの難しさや意義についてなどを語っていて、今や日本の女性映画監督黎明期を記録したものとして、貴重な記録となっている。

このイベントの企画者は近藤香南子さん。子育て中の元助監督で、今は映像系のクリエイターマネジメントをしているそうです。今年(2024)2月20日、国立映画アーカイブで『映画をつくる女性たち』を観て、スクリーンで語る女性映画人に「かっけ〜!」と思ったけど、今まで私はどうしてここで話している女性たちに出会っていなかったのだろうと思ったのがきっかけのようです。 
詳細はこちら シンポジウム「女性監督は歩き続ける」をしますよ。

近藤さんはこのように言っていますが、逆に私は、この映画に出てきた人たちの作品を観てきて、取材した方もいるのに、シンポジウムに出てきた若い世代の監督は名前を知らない方もいました。この映画を22年ぶりに観て、改めて映画に取り組んだ女性たちの心意気や状況と、その後の変化について考えました。確かに当時と比べれば女性監督や映画の仕事に関わる女性も増えたと思うし、あの頃あった「女性が映画監督として指示を出しても無視されたり、仕事を進められなかった」という状況から比べれば、確かに進歩はあったと思うけど、商業的な映画作品には、まだまだ女性監督は多くない。もっとも商業的な映画をあまり観ない私としては、その分野に女性が増えればいいというものではないとは思っている。女性が映画界の中で働きやすく、また、活躍できる場が増えていければと思ってきた。
撮影現場で女性監督が「スタート」と声をかけると、「女の監督の言うことなんか聞けるか」と、照明を消されてしまったと語っていたシーンはよく覚えていたけど、これを語っていたのは渋谷昶子(あきこ)監督だったんだと思い出しました。渋谷監督には、映画に関わってきた自分史を書いてもらおうと、最晩年、入院している病院に何度も通い、やっと1話目を書いてもらったのですが、突然亡くなってしまい4話でまとめる予定が、1回目で終わってしまいました。とても残念でした。そんなことを思い出しながら観ました。
シネマジャーナル96号(2016年)
渋谷昶子監督 自身を語る 第1回「大連は私の原点」

●シンポジウム「女性監督は歩き続ける」
女性監督クロストーク(4部構成)
☆[第1部] 道を拓いた監督たち
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左から熊谷博子監督、浜野佐知監督、松井久子監督、山﨑博子監督

『映画をつくる女性たち』を作った熊谷博子さん、この映画に出演した監督の中から、浜野佐知さん、松井久子さん、山﨑博子さんが登壇。聞き手は森宗厚子さん。ここに参加された監督たちは、シネマジャーナルではお馴染みの監督さん。また、森宗厚子さんも配給会社にいた時からの知り合いです。森宗厚子さんは「フィルム・アーキビスト」と紹介されていて、それはどういう意味?と思って調べてみました。森宗厚子さんは国立映画アーカイブ特定研究員で、国立映画アーカイブで2023年2月7日(火)-3月26日(日)に上映された「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」や、2024年2月6日(火)-3月24日(日)に上映された「日本の女性映画人(2)1970-1980年代」の企画者です。森宗さん自らXで「フィルムアーキビストとは、文化資源の観点から映画等フィルム及び関連資料の収集・保存・上映・公開や研究等に携わる専門家を指す」と語っています。この上映会をするために収集した資料は相当な量だったでしょう。

この『映画をつくる女性たち』を作った熊谷博子監督は、『よみがえれ カレーズ』(1989)、『三池 終わらない炭鉱(やま)の物語』(2005)、『作兵衛さんと日本を掘る』(2018)、最新公開作は『かづゑ的』(2023年)など、ドキュメンタリー映画を撮り続けてきました。「右手にカメラ、左手に子供」というキャッチフレーズが印象に残っています。
この映画が20年たって上映されるとは思っていなかったので、バトンがリレーされ受け継がれ上映されたことが嬉しいと語り、東京国際女性映画祭の場に羽田澄子監督や渋谷昶子監督などの先輩がいて、それぞれの方の姿に元気づけられたこと、髙野さんの「低きに流れてはいけない」という言葉を紹介してくれました。そして女性映画祭は、「女性監督の居場所作り、繋がりをつくる場でもある。女性監督には率直に話せる場が必要」。そういう役割も担っていると語った。
『作兵衛さんと日本を掘る』 熊谷博子監督インタビュー

浜野監督は、女性が監督になる道がなかったから、ピンク映画に飛び込んだと回想。「女の性を女の手に取り戻す」をテーマに撮り続けている。当時200本あまりのピンク映画を作っていたけど、女性監督の最多監督作は田中絹代の6本だといわれて、ピンク映画は数に入らないのかと奮起し、非ピンクの長編映画制作に乗り出した。高野さんたち女性映画祭関係者にピンク映画を観せたエピソードを語り、男の監督が作るのとは違い「女性の視点がある」と評価してくれて、資金を集めるなど応援してくれたという。そして、『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』(1998)ができ、その後『百合祭』(2001)、『百合子、ダスヴィダーニヤ』(2011)、『雪子さんの足音』(2019)など6本の一般映画を製作。最新作は、大正時代に大逆罪で死刑判決を受けた無政府主義者金子文子の最後の闘いを映画化した『金子文子ー何が私をこうさせたか』。アジアやヨーロッパの女性映画祭で認められ、自信や力になったという。浜野監督といえば、サングラスがトレードマーク。「サングラスが戦闘服のつもり」と男社会での戦いを振り返った。

松井久子監督は、テレビドラマのプロデューサーを経て、50歳を過ぎてから映画監督になった。長編デビュー作『ユキエ』は、プロデューサーとして監督を探していたら、新藤兼人監督から自分で監督すれば監督になったという。アメリカで撮影したこの映画、監督とスタッフ
は同等な仲間だったけど、その後、日本で撮るようになったら、監督は1段上の扱いで居心地が悪かったという。『折り梅』(2001) 、『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』(2014)など5本の映画を製作。男性の描く女性像と女性の描く女性像には明確に違いがあり、観客が女性監督の作品を観たいと支えてくれるようになるといいと語った。
日米で映画製作をしてきた松井監督。お金を集めるところから、製作、公開と一人で奮闘してきたが、女性映画祭の場で女性監督たちと顔を合わせるのは貴重な場だったと語った。
『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』松井久子監督インタビュー

山崎監督は、東京国際女性映画祭には、高野氏から声をかけられて参加することになったという。角川春樹監督『天と地と』、蔵原惟繕監督『ストロベリーロード』の北米ロケのスタッフとして働き、91年、日本に帰国後、角川映画『ぼくらの七日間戦争2』で長編映画監督デビュー。その後、ドキュメンタリー映画『タラウマラの村々にて』、『女性監督にカンパイ!』(2007)などを撮る。
アメリカで映画を学んだが、日本のシステムの中では助監督になれず、通訳をなどをする中で大型商業作品に携わったが、日本独自の映画システムに苦労した。商業作品を手掛けたことを非難され、落ち込んでいた時に女性映画祭から声がかかり、毎年の参加がとても嬉しかったという。日本はジェンダーギャップ指数が後ろから数えたほうが早い。そういう国に暮らしていることを認識してやっていくしかない
という。

皆さん、年に一度の東京国際女性映画祭で海外の女性監督はじめさまざまな映画人と出会い、それぞれの苦労や喜びを語り会え、分かち合えたことがとてもよい経験になったと語っていました。「道を拓いた監督たち」というタイトルになっていますが、その前の世代の、ほんとうの意味での「道を拓いた監督たち」は、すでにほとんどの方が亡くなり、今では羽田澄子監督ぐらいしか残っていないのかもしれません。

☆[第2部] 道を歩む監督たち

登壇者:佐藤嗣麻(しま)子、西川美和、岨手(そで)由貴子、ふくだももこ、金子由里奈
聞き手:近藤香南子

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左から 近藤香南子さん、佐藤嗣麻子監督、西川美和監督、岨手由貴子監督、ふくだももこ監督、金子由里奈監督

第1部の監督たちより若い世代の監督たちが登場。1部のトークを受けて、『映画をつくる女性たち』を観ての感想から、これまでの現場での経験、子育て世代の事情、映画業界の問題解決方法への意見など、若い世代ならではの話で盛り上がりました。
2002年『蛇イチゴ』で監督デビューした西川美和監督は、これまで女性の監督と知り合う機会が少なかった。直接会って話せていたら、自分の意識や歩み方も変わったかもしれない、これを機に横の繋がりが生まれればいいと語り、斜陽産業と言われた映画界に90年代に入り、「この仕事をやってると、家庭を持ったり、子供を産んだり、家を買ったりという普通の幸せはもう手に入らない」と思っていました。映画と心中するくらいの気持ちで、「それでも映画が作れるんだからいいという感覚で映画作りをしてきました。新人当時、なめられまいと、自分で脚本を書いて作品世界を掌握し、武装せざるを得なかったことが自分の作風になった。東京国際女性映画祭のような繋がれる場所があり、上の世代とパイプがあれば、映画と心中というような頑なさとは違う視野を持てたのかもしれない。
でも私の世代が「どうして子供を持てないのだろう」とか、「子供を持ったらどうなるんだろう」と思ってこなかったので、次の世代も変わってない状況になってしまったかもしれない」と語った。
西川監督は、今、映画界の労働環境を改善する運動に参加していますが、子育て中の映画スタッフを集めて声を聞く取り組みもしているそうです。西川監督は「映画業界に限らず、どの業界でも女性が働きやすい環境は、男性も働きやすいはず。みんなで横の繋がりを取りながら進めていきたい」とアピール。

金子由里奈監督(1995年生まれ)は、「映画を観て、今も地続きでうねりが続いている中に私はいるという実感が沸き上がってきて、すごく勇気づけられました。一方で20年前の映画だけど現状がそんなに変わってないと感じるところも多々ありますね。女性だけではなく、障害のある人や性的マイノリティが映画作りに参画できる環境を整える必要性」を訴えた。

2人の子供がいて子育て真っ最中の岨手由貴子監督(1983年生まれ)は「個人の努力だけでなく、もう少し映画業界からの支援や公的支援が必要。外圧がないとなかなか変わらない。またこの業界では指揮系統が男性的な発想でできていて、トラブルの解決方法が、サウナに行くだったりするけど私は行けない。サウナで何が解決するのか全然分からない(笑)」と言うと、他の監督も「ある、ある」と声をそろえた。

2016年にデビューしたふくだももこ監督(1991年生まれ)は、妊娠中にドラマの監督をした時の現場の協力態勢をふりかえり、「先輩たちが作った流れを享受している。妊娠中でも撮影に臨んで、なんとかなるもんだと思った。この経験が大きな学びになっただけでなく、次の世代にとってもいい前例になった。そのうえで、各家庭の状況に合ったきめ細かい支援も必要」と語ったが、一方で「撮影で長期間子どもと会えず、成長への影響が心配」と新たな悩みも。
そのうえで、「各家庭の状況に合ったきめ細かい支援が必要」とも。さらに、「すごい作品を撮っているのに、ある一定期間、急に作品が途切れる監督が女性監督にはたくさんいる。それは子育てが関係していると、出産後に気づいた」と、ふくだ監督。

イギリスで映画を学んだ佐藤嗣麻子監督(1964年生まれ)は「年代や、フィールドが少しずつ違う皆さんのお話はとても興味深かった」と語り、「イギリスでの、トップが話を詰めていくスマートな監督スタイルと日本のスタッフの機嫌を取る必要がある現場監督仕事とのギャップや、仕事をする上では契約書を作って、条件や内容について細かく詰めていく必要がある」と海外で学んだ人らしい意見も。さらに、日本政府による文化芸術支援にかける金額が低いことをあげ、「ムーブメントをおこさないといけない。まずは選挙に行かなきゃいけない。あんな投票率じゃいけない」と提案。

「女ならでは」を求められた経験についての質問には、ふくだ監督と金子監督はそういった経験がほぼなかったと話したが、佐藤監督や西川監督の世代ではそうした注文をよく出されていたと語っていた。岨手監督は「リアルな女性」を求められて脚本に反映させると、それは「男性にとって鼻持ちならない女」になると言われ、結果的に「もっといい女」にしてほしいと言われる、という話もでた。

「こういう集まりを定期的にしたい」「ずっとひとりで戦ってきたと思っていたけど、先をいく世代も後の世代も、同じように悩んだり苦しんだりしながら歩み続けてきた」。登壇した女性監督たちはそう語っていましたが、第1部の監督たちのあと、河瀨直美監督や荻上直子監督、西川美和監督、タナダユキ監督、大九 明子監督などの活躍もあり、前の世代の経験があって、今の女性監督の活躍があると思っていた私は、間に断絶があったとは思ってもいなかった。

最後に今ある問題について。やはりこの世代では仕事と子育ての両立の問題があげられ、長時間労働や、不規則な時間の撮影などのため、出産や子育てなど、ライフステージの変化に応じた選択肢がないことが大きな壁であることが出てきた。その解決のために活発に議論していく場が必要というのが大きな課題。これは、今も昔も変わらない。それでも少しは進歩があるのだろうか。

佐藤監督からは、映画を劇場で観ること自体が減り、その危機があげられました。今、映画文化をどのように守っていくか、継承していくかが問われている。

[第3部] ウィメンズ・エンパワメント上映作品の監督たち 
登壇者:ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ(トルコ)、オリヴァー・チャン(香港)、甲斐さやか
聞き手:アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ(当部門シニア・プログラマー)

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左から アンドリヤナさん、甲斐さやか監督、通訳さん、ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ監督、オリヴァー・チャン監督

女性の悩みは万国共通
ウィメンズ・エンパワーエンパーメント部門部門で上映をした『徒花‐ADABANA‐』の甲斐さやか監督、トルコから『10セカンズ』のジェイラン・オズギュン・オズチェリキ監督、香港から『母性のモンタージュ』のオリヴァー・チャン監督
が登壇。

甲斐監督が女性であることでキャリアの積み上げに困難が続いたこと、ジェイラン監督は常に家族から自分のやりたい映画の仕事とは違う理想(妻となり、母となること)を押しつけられてきたこと。そして母になったオリヴァー監督は自身の実感を題材に映画を企画すると、最終決定する人たちがほとんど男性であるがゆえに、「それにお金を出す価値があるのか、育児が忙しいお母さんたちは映画を観る時間がないのでは」、などと言われて資金集めに苦労したことなどが出て、国を超えて、女性が負わされる役割や、社会の構造による不利益は変わらないことが語られました。
そして、ジェイラン監督が「女性が何かをしたり、自分を表現しようとすると魔女だと言われ、子どもを持っても魔女だと言われ、子どもを持たなくても魔女と言われる。何をしようと、しまいが魔女だと言われるんです。女性の自由というのは男性の権利を奪うと思われ、魔女と言われるんだと思います。トルコは家父長制が残る社会。親から反対され、監督になっても大会社からのサポートが得られない」と、トルコでの苦境を語った。

最後にアンドリヤナさんが「今回は東京都からのサポートがあり、この部門が実現しました。行政がサポートをするのは大きな意味がある。そして観客の皆さん、メディアの皆さん、女性監督の映画をどんどん観てください、どんどんサポートしてください。そうすることによって、この動きが前進していきます」と締めくくった。

[第4部] 女性映画監督の未来+Q&A
登壇者 : 1、2 、3 部登壇の日本の監督たち
聞き手 :児玉美月氏(映画文筆家)

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最終パートは、映画文筆家の児玉美月さんが進行を担当。女性監督の繋がりやキャリアを中心に話し合いました。こちらは公式の動画もあります。

〇横のつながり

浜野監督は「私と山﨑さんは日本映画監督協会に在籍していますが、女性監督がやっと7人になった時、せっかく7人になったのだから、点でいるよりも線になろうということで、女性会員が集う【七夕会】を作りました。何度か開催しているうちに、日本映画界のさまざまな分野に女性が増えてきたので、もっと大きな面にしようと、【女正月の会】を開催することになりました。これらを通じて「日本の女性映画人たちは繋がれる」と実感しました。
25年続いた「女正月の会」でしたが、コロナ禍で中断中。
「私たちはフィルム世代ですが、フィルムを知らないデジタル世代の若い女性監督たちも増えている。フィルムとデジタルでは、現場の作り方も製作手法も異なっているから、もう一度女性監督たちが繋がっていけるような形を、こういう映画祭を機会に持てたらいいなと思います」と語る。

「西川さん、【女正月の会】を、もう一度お願いします!」と、ふくだ監督からとふられた西川監督は、「本当に考えたいです。まずはお花見とかやれたらいいかも。監督だけでなく、これまで女性スタッフと悩みを共有して助けてもらったこともあるので、垣根無く映画人が集まれる機会が生まれればいいのではと思います」と提案。

岨手監督があげた横の繋がりは、全国のミニシアターの興行主、宣伝、配給の方々が集うコミュニティシネマ会議。「監督だけをやっていて現場のことだけしか知らなかった。映画は循環しています。観客がいて、そこに向けた企画が立ち上がり、製作、仕上げ、宣伝、配給を経て、劇場があり、そこにお客さんが来る。その間にあるアーカイブも含めて、色々な部署によって映画は支えられている。若い監督たちも、そういう知る機会をもってほしい」と思っています。

〇それぞれのロールモデルや後進育成に関する縦のつながりについて

浜野監督は「映画監督は特殊な仕事だと思います。ひとりで立つべき孤独な職業だから、私にはロールモデルはいません。後進の育成については、私たちの世代に若い監督を育てる力はないので、てめぇで頑張ってついてこいとしか。それに若い監督たちも誰かに育ててもらおうなんて思っていないはず。自分を育てられるのは自分だけ」と語る。

金子監督は、【監督は孤独】に紐づけて「日本では、監督は映画の前面に出てきてしまう側面があると思うんです。メディアでの取り上げられ方も、監督だけが前面に出てくる感じも減っていけばいいのかなと感じています。たとえばプロデューサーや撮影監督のインタビューも増えていけばいいなと思っています」と発言。

〇映画製作と子育て
ふくだ監督「私は子育てだけをし続けることはできない人間だと自己分析しています。子育てはしんどくて、映画を作っている時間がないと自分を保てなくなる瞬間があります。映画製作は私が私として生きていくためでもあり、子どもが良く生きていくためのものでもあります。それらをなんとかつなげたい。それができなかった時代があることはわかっているので、だからこそ女性監督はこんなにも少ないんだと思います。でも、ここで私が子育てに専念してしまうと、また道が絶えていく。やり続けることでしかなせないものあと思います」と、強い思いで仕事続けていると語りました。

『映画をつくる女性たち』を手掛けた熊谷監督は、「自分が作った作品を観て改めて思ったことは、作り続けることがどれほど大変なことなのかをしみじみ感じています。一度映画を作ることを目指した人間には、色々な苦境が訪れます。お金のことも家庭のこともある。でも、皆それぞれに才能もあり、意志もある。そういう人たちが作り続けられる環境をどうやって作っていくのか。それは私たちだけではだめなんです。ここにいる皆さんの協力が必要です」と語ったが、彼女の「右手にカメラ、左手に子供」というキャッチフレーズは今の時代でも通じる状態。このジレンマ、あるいは壁を乗り越えていくための施策をどのように構築していったら女性映画人が仕事を続けられるのか。

〇好きな映画は?
熊谷監督『風と共に去りぬ』(1952)、山﨑監督『道』(1954)、西川監督『小さな私』(2024東京国際)、甲斐監督『春が来るまで』(2024東京国際)、ふくだ監督『踊る大捜査線』(1998)、岨手監督『稲妻』(1952)、金子監督『ペペ(2024東京国際)という、旧作から今東京国際映画祭上映作品まで多彩。そして浜野監督と佐藤監督は「自分の最新作が一番好き」だそうです。

〇action4cinema 日本版CNC設立を求める会の活動紹介
イベントの最後に、「action4cinema 日本版CNC設立を求める会」で活動している西川監督、岨手監督から、来場者に配布された「制作現場のハラスメント防止ハンドブック」「育児サポート勉強会」の説明が行われた。

西川監督:映画界のハラスメントが問題になっています。現場でも準備中に講習を受けるということになっているのですが、実際に講習を受けようとすると、数十万円の費用がかかります。小規模作品では、製作費からその費用を捻出するのが難しい。「制作現場のハラスメント防止ハンドブック」は、どんな人にもわかりやすい文章を心掛け、数ページ台本に刷り込めば、身近に、恒常的にスタッフに行きわたるものを目指しています。製作現場を健全化し、働きやすいものにしていくために作ったものなので、是非皆さんも目にしていただき、製作関係者がいれば勧めていただきたいと思っています

岨手監督:育児サポート勉強会は誰が中心というわけではなく、さまざまな部門のスタッフが集まって、定期的に行っています。俳優部、制作部、プロデューサーなど色々な人が参加しています。情報共有で解決することもあったり、悩みを語ることで楽になることもあります。女性だけでなく、男性の参加者もいますので、興味のある方は是非ご参加いただきたいと思います。

「制作現場のハラスメント防止ハンドブック」は、「action4cinema 日本版CNC設立を求める会」の公式HPから閲覧可能。こちらへ

*東京国際女性映画祭が2012年に終わってから12年。高野悦子さんは「女性映画祭が必要なくなることが理想」と常々おっしゃっていたので、最終回の時には、完全とは言えないけど女性監督も増え、ある程度、この映画祭の役目は果たしたのではと思った。そしてその後は、女性監督の作品が、商業分野でも増えて行ったし、スタッフにも女性が増えたので、20年前に比べれば、少しは女性も活躍しやすくなっていると思っていたけど、仕事と子育てや家庭との両立の厳しさは、さほど変わっていなかった。でも、映画界のハラスメントも含め、労働環境を改善していこうという活動が行われていることを知った。その流れのなかで、この「ウィメンズ・エンパワメント部門」が新たに出てきて、これはこれで意味があると思う。
 しかし、現況の映画祭の中だけでも、映画を観ることや取材が手一杯で、身体が2つ、1日48時間くらいはほしい状況があり(笑)、観たい映画を観ることができなかったり、取材にいけないでいるのに、さらにこの部門が増えたことで、身体が3つくらいないとこなせないようになってしまっている(笑)。
 また、上映される作品も、他の部門でウイメンズ・エンパワメント部門で上映されるのにふさわしい作品も上映されているので、作品としてこの部門が独立してあるのはどうなんだろうとも思う。このシンポジウムのようなものがあればいいような気もする。来年以降、この部門に作品ごとにゲストが増えると、東京国際映画祭本体だけで手いっぱいで、参加できそうもない。来年以降、作品ゲストが増えるのなら、せめて、日程を後半以降にずらすとかしてくれるとありがたいです。前半は中国映画週間があって、そちらに通っているので、東京国際映画祭の後半につなげてくれると参加できるのですが…。このままでは参加しにくいです。

写真・まとめ 宮崎 暁美

映画祭カレンダー2025

2025年度の主な映画祭の予定です。
順次、情報を増やしていきます。
行動予定のご参考に!

2025年4月17日更新


昭和100年映画祭 あの感動をもう一度
2025年3月28日(金)~5月8日(木)
銀座・丸の内TOEI
https://toeitheaters.com/theaters/marunouchi/news/79/


憲法映画祭2025
2025年4月29日(休・火)
会場:武蔵野公会堂ホール
http://kenpou-eiga.com/?p=3129


イタリア映画祭2025
東京2025年5月1日(木)~6日(火・祝) 有楽町朝日ホール 
大阪2025年5月10日(土)・11(日) ABCホール
https://www.asahi.com/italia/2025/


イスラーム映画祭10
渋谷ユーロライブ2025年2月20日(木)~24日(月) 
ナゴヤキネマ・ノイ 2025年3月29日(土)~ 4月4日(金)※4/1(火)休館
神戸・元町映画館 2025年5月3日(土)~9日(金)
http://islamicff.com/index.html


EUフィルムデーズ2025
大阪(テアトル梅田):5/9(金)~5/29(木)
東京(シアター・イメージフォーラム)6/28(土)~7/11(金)
名古屋(キネマノイ):7月下旬
福岡(福岡市総合図書館映像ホール・シネラ):8/20(水)~8/24(日)、8/27(水)~8/30(土)(9日間・予定)
京都(京都文化博物館):9月(予定)
https://www.eufilmdays.jp 


第2回どまんなかアニメ映画祭
(1980年代に公開されたアニメ映画を中心に構成し、アニメ文化を楽しむ映画祭)
2024年5月17日~5月19日
会場:名古屋駅前 ミッドランドスクエア シネマ
https://domannakaanime.com/


新・しんとく空想の森映画祭
2025年5月30日(金)~6月1日(日)
北海道上川郡新得町新内 新内ホール
https://shin-kuusounomori.com/


第11回わっかない白夜映画祭
2025年6月21日(土)・22日(日)
会場 T-ジョイ稚内 (JR稚内駅複合商業施設「キタカラ」2階)


第32回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜
2025年6月21日(土)〜6月22日(日)  渋谷・ユーロライブ
7月12日(土)〜7月13日(日) 東京ウィメンズプラザホール
https://rainbowreeltokyo.com/


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025(第22回)
2025年7月18日(金)~7月26日(土)
会場:SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール(埼玉県川口市)ほか
https://www.skipcity-dcf.jp/


第21回大阪アジアン映画祭
(大阪・関西万博イヤーにあたり)
2025年8月29日(金)〜9月7日(日)(予定)
https://oaff.jp/oaff2025/
★来年2026年3月の開催は、ありません。


第11回立川名画座通り映画祭
2025年9月1日(月)~7日(日)
会場:立川市柴崎学習館、シネマシティ、kino cinéma立川高島屋S.C.館
https://tachikawaeiga.com/index.html


第30回あいち国際女性映画祭2025
2025年9月11日(木)~15日(月・祝)
会場:ウィルあいち他
https://www.aiwff.com/


国際平和映像祭(UFPFF)2025
2025年9月20日(土)
会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
https://www.ufpff.com/


第19回 山形国際ドキュメンタリー映画祭2025
2025年10月9日(木)〜16日(木)
http://www.yidff.jp/


ゆうばり国際ファンタスティック思い出映画祭2025
2025年10月17日(金)~20日(日)
メイン会場:あ・りーさだ中学校
サブ会場:あ・りーさだ小学校
アニメ上映・イベント会場:ホテルパラダイスヒルズ
https://www.yubari-fanta.com/


第38回東京国際映画祭 
2025年10月27日(月)~11月5日(水)
http://www.tiff-jp.net/


TIFFCOM2025 
2025年10月29日(水)~ 10月31日(金
http://tiffcom.jp/



★★★★★終了した映画祭★★★★★


第10回宇野港芸術映画座
2025年1月10日~13日 
岡山市奉還町4丁目ラウンジカド
https://online-upaf.org/


第4回MBTみんなで守るいのちの映画祭
(MBT映画祭より改名)
2025年1月18日(土)
日経ホール
https://mbt-filmfes.com/2024%EF%BD%99/


未体験ゾーンの映画たち2025
2025年1月3日(金)~2月13日(木)
ヒューマントラストシネマ渋谷
https://ttcg.jp/human_shibuya/movie/1170400.html


インディアンムービーウィーク2025
2025年1月17日(金)〜 2月13日(木)
キネカ大森
https://imwjapan.com/


第14回死刑映画週間 生きてこそ、生きていればこそ
2025年2月8日(土)~2月14日(金)
会場:渋谷ユーロスペース
http://forum90.jp/event/archives/64#post-detail


コアチョコ映画祭 HARDCORE CHOCOLATE GRINDHOUSE'25
2024年2月15日(土)開場22:15/開演22:30(~5:43 終了予定
会場:テアトル新宿
https://core-choco.com/grindhouse/


第16回よこはま若葉町多文化映画祭
2025年2月15日(土)~2月21日(金)
シネマジャック&ベティ、横浜パラダイス会館
https://www.facebook.com/ParadiseFes


恵比寿映像祭2025「Docs ―これはイメージです―」
2025年1月31日(金)~2月16日(日)[15日間] 月曜休館 
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
※コミッション・プロジェクト(3F展示室)のみ3月23日(日)まで
https://www.yebizo.com/#top


第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭
2025年2月22日(土)~3月2日(日)
沖縄にて
https://www.cinema-at-sea.com/


東京アニメアワードフェスティバル2025(TAAF2025)
2025年3月7日(金)~3月10日(月)
東京・池袋にて
https://animefestival.jp/ja/


ブリティッシュ・ノワール映画祭
2025年2月22日(土)~3月14日(金)
会場:新宿K’s cinema
https://www.ks-cinema.com/movie/britishnoir/


東京ドキュメンタリー映画祭 in OSAKA
2025年3月8日(土)~14日(金)
大阪・十三シアターセブン
https://tdff-neoneo.com/osaka/news/news-4530/


第15回大倉山ドキュメンタリー映画祭
2025年3月15日(土)~3月16日(日)
会場:横浜市大倉山記念館
https://o-kurayama.jugem.jp/


第3回新潟国際アニメーション映画祭
2025年3月15日(土)〜20日(木・祝)
場所:新潟市民プラザ、日報ホール、シネウインド、T・ジョイ新潟万代(上映)
開志専門職大学、新潟大駅南キャンパスときめいと(シンポジウム、展示)
https://niigata-iaff.net/


第20回大阪アジアン映画祭
2025年3月14日(金)~23日(日)
会場:ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館 1Fホール
https://oaff.jp/oaff2025/


横浜フランス映画祭2025
2025年3月20日(木・祝)~23日(日)
会場:みなとみらい21地区を中心に開催
https://www.unifrance.jp/festival/2025/


高崎映画祭
2025年3月20日(木・祝)〜3月30日(日)
https://takasakifilmfes.jp/


第1回日本モンゴル映画祭
2025年3月22日(土)〜28日(金)  新宿K's cinema
2025年3月29日(土)〜4月11日(金) 横浜シネマリン
https://mongolianfilmfest.com/


TBSドキュメンタリー映画祭2025
2025年3月14日(金)より6都市にて順次開催
東京 ヒューマントラストシネマ渋谷 3月14日(金) 〜 4月3日(木)
大阪 テアトル梅田3月28日(金) 〜4月10日(木)
名古屋 センチュリーシネマ 3月28日(金) 〜 4月10日(木)
京都 アップリンク京都 3月28日(金) 〜 4月10日(木)
福岡 キノシネマ天神 3月28日(金) 〜 4月10日(木)
札幌 シアターキノ 4月05日(土) 〜 4月11日(金)
https://tbs-docs.com



第37回東京国際映画祭 『シマの唄』 ロヤ・サダト監督インタビュー (咲)

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アジアの未来部門でプレミア上映された『シマの唄』は、激動の1978年アフガニスタンを描いた物語。 
ロヤ・サダト監督と、脚本を共に書き、本作に将軍役で出演している公私共にパートナーであるアジズ・ディルダールさんにお話を伺う機会をいただきました。
景山咲子



『シマの唄』 Sima's Song
監督/脚本:ロヤ・サダト
脚本:アジズ・ディルダール
脚本:ルロフ・ジャン・ミンボー
出演:モジュデー・ジャマルザダー、ニルファル・クーカニ、アジズ・ディルダール、リーナ・アーラム
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1978年のアフガニスタン。共和制から社会主義に移行する時期を舞台に、親友でありながら裕福な共産主義者と貧しいムスリムという対照的なふたりの女子大学生が、その後のソ連による侵攻と反ソ武装勢力の決起による紛争の時代に移行するなかで翻弄されていく・・・ 
(さらに詳しい内容は、インタビューのあとに掲載しています。)
2024年/スペイン・オランダ・フランス・台湾・ギリシャ・アフガニスタン/97分/カラー/ペルシャ語


◆インタビュー
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ロヤ・サダト(監督/脚本)、アジズ・ディルダール(脚本/俳優)
11月2日(土)


― 1970年代、勤めていた商社にカーブル事務所があって、駐在していた方たちから、アフガニスタンがとてもいいところと聞いて、ぜひ訪れたいと憧れていました。1978年5月にイランを旅して、マシュハドの空港でアフガニスタンのダウド大統領が暗殺されたニュースを新聞でみました。翌年、今度はアフガニスタン経由でイランを訪れたいと思っていましたが、イランは革命、アフガニスタンにはソ連が侵攻して、どちらもしばらくいけなくなりました。イランには、革命から10年後に行き、180度変わった社会をみました。
アフガニスタンでは、何度も政権が変わりました。ご自身やご両親はじめ、政変を経験された思いが、この映画に反映されていると思いました。

監督: いい時代のアフガニスタンを知っている方にご覧いただけて、とても嬉しいです。タリバン後の酷いイメージしかお持ちでない方とは認識が違うと思います。

ー 女性たちが「パン、仕事、自由」を掲げて抗議している中に、1978年.2021年など節目の年代が書かれていて、翻弄された歴史を感じました。あのデモの場面は、実際にアフガニスタンで撮られたものですか?

監督: あの場面はギリシャで再現して撮ったものです。

― カーブルで準備していた撮影がだめになって、主にギリシャで撮影されたとのことですが、どのような経緯だったのでしょうか? 

監督:カーブルで撮影準備をしていたのですが、2021年にシアトルでオペラの演出の為に滞在していた時に政変があって、亡命の手続きをせざるをえませんでした。準備していた映画をどこで撮るか・・・ この映画は、資金も付いていて、ヨーロッパのプロデューサーもいて、2022年中に撮らなければいけませんでした。俳優をどうするかの問題もありました。あちこちに離散していましたから、どうやってどこで集まるかが課題でした。タジキスタンが候補にあがりましたが、ロシアとウクライナの戦争のことがあって無理だと諦めました。プロデューサーの一人から、ギリシャなら1970年代後半のアフガニスタンと似た風景が撮れるところがあるし、亡命アフガニスタン人も多いと聞いて、ギリシャに決めました。
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― 今年完成した『The Shape of Peace』は、アフガニスタンで撮られたそうですが、危険はありませんでしたか?

監督:『The Shape of Peace』は、タリバン復権の前、2020年にカーブルで撮りました。夫が撮影監督も務めました。ドーハでの和平交渉の場にも、4人の女性たちを追って行って撮ったのですが、タリバンが復権したあと、4人とも亡命しました。
やっとプロダクションが終わって、オランダのドキュメンタリー映画祭でプレミア上映をしました。
『シマの唄』は、脚本を夫と書いていたのですが、タリバンが復権したことで、最初に書いていたものから変えることになりました。どうタリバンの影響があるかを加えました。

― 監督は、ヘラート国際女性映画祭も立ち上げていらっしゃいましたが、タリバン復権以前、アフガニスタンの女性監督や、映画界における女性の活躍状況はどうだったのでしょうか?

アジズ:カーブル大学で映画を教えていました。前のタリバン政権が終わったあと、20年間、戦争もあったけれど、より文化的で、女性の活躍の機会もありました。平和が実現するという希望もありました。女性は学校に行けましたし、仕事もしていました。2021年以降、状況が混とんとしてその機会が奪われてしまいました。
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― 映画監督になりたいと思われたのはいつ頃だったのでしょうか? 

監督:2002年、学生の時に初めて脚本を書きました。その後、韓国のフィルムアカデミーのトレーニングコースに参加しました。アフガニスタンでは、映画を見る機会は、あまりありませんでした。大学では演劇を学びました。演劇は若い女性が参加できる少ない機会でした。社会に対して何ができるかを考えて、アートを通じて、女性のおかれた境遇を伝える手段として映画を選びました。

アジズ:人生の中で、3回、難民となりました。内戦で母を失い、カーブルから北部に逃れ、そのあとイランへ行きましたが、3年間、学校に通えませんでした。タリバンの10年は映画を見る機会がありませんでしたが、イランでは映画をたくさん見ることができました。タリバンが去って、2001年にアフガニスタンに戻った時、映画を学べる場所はなかったので大学の美術関係の学部に入りました。2年生の時に、映画の学部を自分たちで作りました。国際ジャーナリズムも学んでいたので、中国に行く機会もありました。
2009年にロヤと出会いました。初めて映画で役を与えてくれて、その後、15年一緒に映画作りをしています。カーブル大学で教鞭もとっていました。

― 残念ながら時間が来てしまいました。
こちらは、旅行者のために作られた「旅の指さし会話帳 アフガニスタン ダリー語」(嶋岡尚子著 情報センター出版局 トップの写真に写っています)です。かつては、この本を持ってアフガニスタンを訪れた日本人も多いのです。私もいつか行きたいと憧れています。近い将来、皆さんが故国に戻れる日が来ることを願っています。



ロヤ・サダト
1981年、アフガニスタンのヘラートに生まれる。Roya Film Houseの設立者であり、代表的監督である。女性や子どもの権利を描く作品を専門とし、“A Letter to the President”(17)でアフガニスタンの女性監督として初めて米国アカデミー賞の候補に選出された。これまで数々の映画賞を受賞。RFHアカデミーとヘラート国際女性映画祭を創設したほか、TOLO TVのドラマを手掛けた。(TIFF公式サイトより)


★上映後Q&A 
私は残念ながら参加できなかったのですが、公式サイトに詳細が掲載されていますので、ぜひお読みください。

「この映画は、皆様の心も重くしたかもしれませんが、私たちにとっても同じです」10/31(木)Q&A『シマの唄』
https://2024.tiff-jp.net/news/ja/?p=65990

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©2024 TIFF
ロヤ・サダト監督(右・監督/脚本)、モジュデー・ジャマルザダーさん(右から2番目・俳優)、ニルファル・クーカニさん(左から2番目・俳優)、アジズ・ディルダールさん(左・脚本/俳優)


『シマの唄』 あらすじ
2021年9月、タリバンが復権。女性の権利を奪う。
女性たちが、「パン、仕事、自由」を掲げて抗議デモ。
祖母スラヤが、孫娘に親友と二人で映る写真を見せながら、親友シマがラバーブの弾き語りが上手だったと語り始める・・・
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1978 年、冷戦の中、アフガニスタンの政治は揺れていた。ソ連が侵攻しようとしていた。
カーブルの邸宅で、革命で殉教した亡き父ハリールの回顧録が出来て偲ぶ会が開かれる。
「お父さまは皆から尊敬されていた」と、流ちょうなペルシア語でソ連の文化担当官。
それにロシア語でお礼を述べる女性。
パルチャム派の男性が、「ハリールがいなかったら、ハリールのハルク派とパルチャム派は団結できなかった」と語る。
父の回顧録は、タラキ大統領が両派の分裂をなくしたいと発案したものだ。
娘のソラヤは、女性教育の重要性を大統領に進言。それは父ハリールの遺志でもある。
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大学生シマが歌を披露する。ルバーブの弾き語り。
ロシアのアンナ・マフトーヴァの詩をペルシア語に訳したものを朗唱する。モスクワをカーブルに変えて。

シマは父から、「あんな風に人前に出ちゃいけない。男の中にはいやらしい目でみる者もいた。歌は続けていい。亡き母親も歌が好きだった」と言われる。
さらに、結婚する年ごろと言われる。
母と父は、会って1週間で結婚。幸せに暮らした。
「ワハブと結婚するわ」とつぶやくシマ。

大学。国際法の授業を男女一緒に受けている。スラヤ、シマ、ワハブは同級生らしい。

ワハブ、シマに結婚する前に家族に相談するという。
ガズニ州の故郷の村が政府軍に襲われ、村長の父が殺されたらしい。家族の消息もわからない。

婚約式。シマが皆に紅茶を出す。
決める前にワハブと二人で話したい。音楽を続けていいと言われたから結婚を承諾。でもワハブは厳格な派閥。周りから反対されるかもと。

初キス。初めてルバーブを弾いた時のようにドキドキする。
音楽に合わせて男女手を繋いで踊っていると、教義に反すると止められる。

さらに、識字プログラムが、タラキ大統領も公認なのに反対される。

ハルク派はパルチャム派を追い出すつもりらしい。
タラキ大統領とハルク派の後ろ盾は、ソ連では?

ロシアの赤色テロと同じで、民間人も殺されている。
パルチャム派狩りがもうすぐ始まると言われる。

結婚式。緑の布の下で契りを結ぶ。鏡に二人の顔を映す。
スラヤが家に帰るとアミールが殺されている。母の姿もない・・・
国民の血を流すような政権は、いずれつぶれるとスラヤ。
峠までシマとワハブを見送る。シマからルバーブを預かる。
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シマは解放軍に加わる。
1878年に英軍が残した銃を手に。「1834年にもイギリスがロシアの排除を目的に来た」と語る兵士。その兵士は大学で歴史を教えていたという。

拘束されたシマがカーブルの仲間の名を明かせば釈放されるのに、なかなか口を割らないからと、将軍がスラヤをシマのもとに行かせる。
いためつけられているシマ。(詩の朗読) 気を失ったままシマは連れ去られる。
カルマルが共和国の代表と宣言。アミンはアメリカのスパイで売国奴と。

スラヤが家に帰るとソ連兵がいる。将軍の住まいになったと言われる。
無害そうだと、スラヤは家の中に入れて貰える。写真を眺め、ルバーブを手にする・・・・

*******

2021年.米軍がアフガニスタンから撤退。タリバン復権。
1970年代のミニスカートの女性たち。そして、ブルカの女性たち。
抗議デモをする女性たち・・・.