映画祭カレンダー2026

2026年度の主な映画祭の予定です。
順次、情報を増やしていきます。
行動予定のご参考に!


2026年2月15日更新


中央アジア今昔映画祭 vol.3
ウズベキスタン特集
2025年12月20日(土)~2026年1月9日(金) 渋谷・ユーロスペース
2026年1月31日(土)~2月13日(金) 第七藝術劇場
2026年2月7日(土)~2月20日(金) 横浜シネマリン
2026年2月14日(土)~2月27日(金) ナゴヤキネマ・ノイ
ほか全国順次開催
https://trenova.jp/centralasia3/


第28回京都国際学生映画祭
2026年2月20日(金)~2月23日(月・祝)
会場:京都文化博物館フィルムシアター
https://www.kisfvf.com/


新潟国際アニメーション映画祭2026
2026年2月20日(金)~25日(水)
会場:新潟市民プラザ、日報ホール、シネウインド、開志専門職大学アニメ・マンガ学部、ゆいぽーと
https://niigata-iaff.net/


Cinema at Sea 2026- 沖縄環太平洋国際映画祭
2026年2月20日(金)〜2月28日(土)
会場:沖縄県那覇市
https://www.cinema-at-sea.com/


なごや国際オーガニック映画祭
2026年2月21日(土曜日)
愛知県女性総合センター ウィルあいち3階
https://nicfoa.com/


第15回 江古田映画祭
2026年2月28日(土)~3月11日(水)
会場:武蔵大学、ギャラリー古藤
https://www.facebook.com/ekodaeigasai


第19回国際有機農業映画祭2026
日時:2026年3月8日(日)10:30~17:00
会場:日比谷コンベンションホール
http://www.yuki-eiga.com/about


東京アニメアワードフェスティバル2026
2026年3月13日(金)~16日(月)
会長:東京・池袋
https://animefestival.jp/ja/


おおぶ映画祭
2026年3月14日(土)・15日(日)
会場:愛知県大府市 愛三文化会館



第33回フランス映画祭2026
2026年3月19日(木)~3月22日(日)
会場;Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ユーロライブ


島んちゅぬ映画祭
2026年3月20日(金)~22日(日)
会場:石垣島
https://www.instagram.com/siff.ishigaki/


第39回高崎映画祭 
2026年3月20日(金・祝)~29日(日)
https://takasakifilmfes.jp/


ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
2026年6月4日(木)~6月7日(日)
https://www.yubari-fanta.com/




*******終了した映画祭********


第5回MBTみんなで守るいのちの映画祭
2026年1月17日(土)
会場:日経ホール
https://mbt-filmfes.com/2025y/


書籍『イスラーム映画祭エンサイクロペディア』先行販売上映会
2026年2月1日(日)11時
http://islamicff.com/index.html

第17回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル
2026年2月7日(土)~11日(水)
会場:座・高円寺2(杉並区立杉並芸術会館)
https://zkdf.net


第15回死刑映画週間
2026年2月7日(土)~13日(金)
会場:渋谷・ユーロスペース
http://forum90.jp/event/archives/71


岩槻映画祭
2026年2月14日・15日
会場:市民会館いわつき
https://www.iwatsuki-film.com

第14回シニア女性映画祭・大阪2025 レポート 

ウーマン・リブ55周年 この力を未来に!
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2025年11月8日(土)9日(日)
とよなか男女共同参画推進センターすてっぷホール
主催:「波をつくる女たち」シスターウェイブス

11月8日(土)
10:30~12:10『ノブコ・ミヤモト:ソング・イン・ムーブメント」
14:30~16:30『30年のシスターフッド~70年代のウーマンリブの女たち』

11月9日(日)
10:30~12:40『この星は、私の星じゃない』
14:00~15:40 イギリス「50歳以上の女性映画祭」より短編6作品上映

 初めてシネマジャーナルに投稿します。東京渋谷で年数回の女性監督作品上映会をしている「映像女性学の会」です。映画祭上映作品の監督・山上千恵子さんに誘われ、シニア女性映画祭にスタッフ3人で行ってきましたので、ご報告いたします。
 今回は「ウーマン・リブ55周年」ということで、当時のリブ運動にかかわった方も会場にいらして、上映後のトークでも当時の様子を知ることができました。イギリスの楽しい短編もあり、映像の力を改めて感じた映画祭でした。
   
『ノブコ・ミヤモト:ソング・イン・ムーブメント』
アメリカ/2024
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監督:タダシ・ナカムラ&クエン・グエン‐レ
日系3世アメリカ人で、「ウェストサイド物語」にも出演しアーティストで活動家のノブコ・ミヤモトのドキュメンタリー。日系人であることで、戦争中の強制収容も経験し、戦後もアメリカ社会での違和感を抱えながら、ショービジネスでの成功をおさめます。しかし、アジア人の役柄の固定や偏見に目をつむることができず、自らショービジネスの世界を捨てて、アジア系アメリカ人として、アーティストとして差別と闘い、周囲を巻き込みながら表現活動を続けます。高齢になっても、日本の盆踊りをアレンジしたダンスで会場を埋め尽くす参加者の一体感を作り出すエネルギーは、圧巻でした。
上映後に、この映画の主人公ノブコ・ミヤモトが書いた『ノブコ・ミヤモト自伝』の訳者、和泉真澄さんのトークがあり、ノブコ・ミヤモトの素顔や、現在のトランプ政権下での活動などを興味深く聞くことができました。
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『30年のシスターフッド~70年代ウーマンリブの女たち』日本/2004
『アメリカ上映ツアー』日本/2006
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監督:山上千恵子/瀬山紀子
『30年のシスターフッド』は、今回のテーマであるウーマン・リブ55周年に当たっての上映作品です。1970年代のウーマンリブ運動に関わっていた女性たちが、30年を経て集まり、当時の様子を思い出しながら語ります。このドキュメンタリー作品をアメリカ国内の大学で上映した様子を記録したのが、『アメリカ上映ツアー』です。二つの映像を見ることで、ウーマンリブやフェミニズムの捉え方などを、多面的な視点で見ることができました。上映後に監督2人によるトークがあり、山上監督が「昨年ぐらいから、若い世代から、この映画上映をしたいという声がある」と話されたことに、希望を感じました。
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『この星は、私の星じゃない』日本/2019 監督:吉峯美和
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「追悼 田中美津」として、昨年8月に亡くなった、ウーマンリブの象徴的存在・田中美津のドキュメンタリーを上映。ウーマンリブの活動家としての姿だけでなく、現在の沖縄基地問題にもかかわる姿勢に、継続する志を見ることができました。監督トークでは、まったくウーマンリブを知らない世代の監督自身が、田中美津を発見する過程を通して、次の世代に伝える大切さを思いました。
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イギリス「50歳以上の女性映画祭」より6編の短編上映
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2015年にイギリスで創設された「50歳以上の女性映画祭(WOFFF)」から、6作品を上映。この映画祭は、高齢者が過小評価されている映画界を変えたいという思いから出発していることから、すべて高齢者が主人公。その中で興味深かったのは、「認知症にやさしい映画」名付けられた『ハニーズ&ベアーズ』と『だるまさんがころんだ』。最初の作品は、高齢者がシンクロナイズドスイミングをする姿を優雅に撮影したもので、体形がどうあれ、この私が好きという気持ちがあふれている。映像を見るだけで伝わるものがあるのは次の作品も同じ。日本と同じ「だるまさんがころんだ」をしながら、思い出が走馬灯のように現れては消える幻想的な映像の作品です。ストーリーが単純で分かりやすく、映像だけで伝わること、上映時間が短いことが認知症の方も鑑賞しやすいのではないかということで、イギリスの地域で巡回上映などしているとのことでした。
そのほか、『ありのままの私たち』では、年齢を重ねて体形が変わったりするけれど、私はこれでいいと肯定していく姿をオシャレに描いています。『ママ、男になる』は、60歳になった女性が「一日男になる」ことに挑戦。いままで封印してきた思いを子どもたちにも理解してもらいながらかなえていく姿はほほえましく、楽しい。『リンダの話』は、この6編の中で唯一のドラマ。8分の中で、高齢女性リンダの正体はいったい何?という疑問を驚くような展開の中で見せていく、大爆笑のコメディ作品。そして『金曜日のサーファーたち』は、オーストラリアの海岸でボディボードを楽しむおばあちゃんたちの姿を撮影したドキュメンタリー。ゆっくりと波乗りを楽しむ姿は、年輪の重なりが生む人生謳歌のようでした。
年齢を重ねることは、新たなパワーを獲得することと確信できる作品群に脱帽するとともに、ぜひ日本の高齢者パワーも見せてほしいと思いました。                       (小野由理)

 今回見た4本の映画の中では、差別や偏見と闘いながら、様々な分野で自らの能力やキャリアを生かして活躍するパワーあふれる女性たちの姿がありました。
 また年齢を重ねても出来ることはたくさんあると教えてくれるエネルギッシュなシニア女性たちの姿も印象的でした。それぞれの作品を観ながらシニア女性のエネルギーと底力に元気を貰い、女性監督の作品とシニア女性の出演する作品を上映する「シニア女性映画祭」の意義を改めて感じた2日間でした。 (長田千代子)
       
「歳をとって良いことは、悩んでいたことが分かること」。映像の中のシニア女性から発せられたこの言葉。思わず「そうなんだよね。」と、頷いた私がいました。映画祭は、一貫して女性たちが差別や偏見と向かい合いながら、自身の人生を自分らしく生きている姿を映し出していました。これらの作品を、これからを生きる世代の女性たちが観たら、頼りになる羅針盤になるのではと思った映画祭でした。     (向山千代)

第26回東京フィルメックス 授賞式報告

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11月21日(金)に開幕した第26回東京フィルメックス。11月29日(土)に授賞式が開催され、各賞が発表されました。

【日時】2025年11月29日(土)17:20~18:05
【場所】有楽町朝日ホール


第26回東京フィルメックス 授賞結果


最優秀作品賞『サボテンの実』(インド、イギリス、カナダ)
監督:ローハン・パラシュラム・カナワデ

審査員特別賞 『しびれ』(日本)
監督:内山拓也

スペシャル・メンション『枯れ葉』(ドイツ、ジョージア)
監督:アレクサンドレ・コベリゼ

観客賞 『左利きの少女(原題)』(アメリカ、イギリス、フランス、台湾)
監督:ツォウ・シーチン

学生審査員賞『枯れ葉』(ドイツ、ジョージア)
監督:アレクサンドレ・コベリゼ




授賞式の模様を発表順にお届けします。

関連企画<Talents Tokyo 2025>から
「タレンツ・トーキョー・アワード」受賞者報告


スペシャル・メンション
『Square Horizons - A House Across Borders』チェン・ジェンハン (中国・監督)
『The Void is Immense in Idle Hours』サム・マナクサ (フィリピン・監督)
『Home-work』くわやま あつし (日本・監督)


タレンツ・トーキョー・アワード2025
ルゾネンシス・アンド・フロレシエンシス(『Luzonensis and Floresiensis.』)
グレン・バリット(Glenn BARIT/フィリピン・監督)
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【授賞理由】独創的な発想や多面的な視点が光る企画です。大胆かつ幻想的な設定でありながら、移民やアイデンティティ、ポストコロニアルの歴史といったテーマと丁寧に向き合っています。
監督の視点には温かさとユーモアがあり、観客を自然に引き込む力を感じました。
また、登場人物たちはただの被害者としてではなく、それぞれが複雑で尊厳ある人として描かれています。大きな社会の中で、自分らしさを大切にしながら生きていく姿は、物語に深みを与えています。新しい表現に挑む意欲、温かい視点、自由な創造力がそろった本企画に、今年のタレンツ・トーキョー・アワードを送ります。


観客賞 『左利きの少女(原題)』

ツォウ・シーチン監督ビデオメッセージ「まずは東京フィルメックスに感謝します。そして、『左利きの少女』を受け入れてくださった観客の皆様にも感謝いたします。この物語は台北での思い出から生まれました。東京でも共感していただけたことに、心から感謝しています。どうもありがとうございます。」

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Q&Aに登壇した折のツォウ・シーチン監督


続いて、コンペティション10作品から、<最優秀作品賞><審査員特別賞><学生審査員賞>が選出されました。

★学生審査員賞『枯れ葉』アレクサンドレ・コベリゼ監督

■選考理由:Lo-Fiな映像によって絵画のように形や色が立ち上がる美しさ。その中に存在する人、動物、車が奥行きを感じさせる。何かが映っている、動いている、それを見ることが映画なんだと思わされました。
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学生審査員(Paula GEORGIEVNA、永山凛太郎、熊谷萌花)

コベリゼ監督ビデオメッセージ
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「学生審査員のみなさん、ありがとうございます。私自身少し前まで学生だったので大変光栄です。卒業したのは2020年前ですから5年前です。今も学生時代とは何も変わっていません。映画について何か知っているという気がしています。ある意味学生のように映画について学び続けています。ですからよいつながりだと思います。そして若い人たちが私の作品を気に入ってくれたのはよかったです。ありがとうございます!」


★スペシャル・メンション『枯れ葉』(ドイツ、ジョージア)
監督:アレクサンドレ・コベリゼ

■選考理由:この作品の独創性と探究精神に深く感銘を受けました。独自の創造的視点、詩的な映像言語、そして瞑想的ともいえる物語の語り口によって、本作は映画がもつ純粋な魅力を提示してくれています。

学生審査員賞に続いての受賞。再び、コベリゼ監督からビデオメッセージ。
「まず、私の映画をこの映画祭で上映していただきありがとうございます。これは嬉しい恒例になってきました。もし次回作がフィルメックスで上映されることになれば、今度は私もその場に行けるように願っています。もちろん、審査員のみなさん、スペシャルメンションありがとうございます。光栄です。みなさん良い夕べを!」

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Q&Aに登壇した音楽と音響を担当したギオルギ・コベリゼさん(監督の兄弟)

★審査員特別賞 『しびれ』(日本)
監督:内山拓也
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■選考理由:審査員特別賞は、バランス感覚を体現する作品に贈られます。沈黙と家庭内暴力に満ちた人生を凍える空気の中で呼吸しながらも、撮影される身体の動きから独特の温もりを引き出す映画です。荒削りでありながら感動的な本作の感情は、不確実性を受け入れる過激な映像的視点から生みだされています。それは呼吸を、遠くにそして近くに、静寂と変化の中で、柔らかくそして硬く、わたしたちに生き延びる姿を共有させてくれます。

内山監督登壇
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「まずは撮影の光岡さん、照明の阿部さん、録音の白取さん、美術の福島さん。全員の名前をあげる時間をいただけないので、それが大変悔しいというか心苦しいのですが、全てのスタッフ、キャストの美しい仕事を誇りに思っています。また、これまで私の人生に携わってくれた全ての方々に感謝申し上げます。この映画は私の個人的な経験に根差している映画で、田舎の貧困層に生きる1人の少年の姿を映し出しながら、経済的なことのみならず、社会のあらゆる階級に生きる心の貧困の存在、その存在に光をあて、祝福することを目指しました。国内外問わず、様々な状況下の中であらゆる方々が生きていると思うけれども、そういった方々が心穏やかに映画を楽しめる世の中に少しでもなることを心から願っています」


★最優秀作品賞『サボテンの実』(インド、イギリス、カナダ)
監督:ローハン・パラシュラム・カナワデ

■選考理由:私たちの心を強く揺さぶった1作品がありました。抑圧と宗教的厳格さに特徴づけられる社会のなかで、二人の青年が繊細な距離を縮めていく姿を描いた作品です。この旅路は、繊細な脚本と緻密な映像言語によって導かれ、この作品の静かなささやきは、誰もが自由に呼吸できる世界への力強い叫びへと昇華しています。

カナワデ監督ビデオメッセージ
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「たった今「サボテンの実」が最優秀賞を受賞したと、すばらしい知らせを聞きました。私はちょうど明日から映画の公開のためロサンジェルスにいるのですが、受賞の知らせにとても喜んでいます。審査員のみなさん、「サボテンの実」を最優秀賞に選んでいただきありがとうございます。この栄誉を謹んでお受けします。映画祭にもこの作品を上映くださりありがとうございます。観客のみなさんが、この映画で私たちの作品の体験を楽しんでいただけたらと願います。映画祭、審査員、観客のみなさん、ありがとうございます!」

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Q&Aに登壇した主演俳優ブーシャン・マノージさん


最後に、会場にいた受賞者と審査員の記念写真
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神谷直希(プログラムディレクター)国際審査員ラモン・チュルヒャー Glenn BARIT(タレンツ・トーキョー)、内山拓也監督(『しびれ』)、国際審査員マティアス・ピニェイロ、ソン・ファン


授賞式が終了し、クロージング作品『大地に生きる』(監督:フオ・モン、中国)が上映されました。

報告・写真:景山咲子




東京フィルメックス イラン映画『アミールの胸の内』Q&A報告

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『アミールの胸の内』  原題:daroon-e amir  英題:Inside Amir  
イラン / 2025 年/ 103分
監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)
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テヘランに住む青年アミールは、イタリアへの移住を目前に控えている。彼より先に移住した恋人タラと再会し、新しい人生を始めるためだ。彼は愛用の自転車に乗り、配達の仕事をこなしつつ、友人たちとサイクリングを楽しむ。気の置けない仲間たちとかけがえのない時間を共有し、タラと過ごした過去を回想しながら、「去るか留まるか」という心の中の問いに彼は静かに向き合う。(公式サイトより)
*さらに詳しい内容を末尾に掲載しています。


◆アミール・アジジ監督Q&A
2025年11月22日(土)12時半からの上映後 
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司会:神谷直希プログラム・ディレクター
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

監督:観ていただきありがとうございます。日本にずっと来たいと思っていたので、自分の作品がここで上映されて嬉しいです。

神谷:主人公の名前がアミール。監督もアミール。その意図は?

監督:タイトルは後から付けたのですが、主人公アミールと、自分の内面の気持ちは確かに似ています。映画の最後に妹エルナズに捧ぐと入れたのですが、妹はアメリカにいて、主人公と私の気持ちが一緒になりました。 実は、ドバイからのフライトで来たのですが、スーツケースが行方不明で、機内で着ていたTシャツのままで失礼します。

★会場より
― テヘランに住む人たちの日常が描かれていてよかった。小津安二郎の映画のようでした。ピアノの弾き語りの歌がとてもよかった。あの歌を入れた理由は?

監督:アミールのキャラクターは、絶望的になっているところがあるのですが、あの歌でどこかで望みをもらったよう。経済的に裕福じゃない。いつも配達している女性が朗報のお礼にと大金をくれます。あの歌は小さな灯りです。

― フランス映画のようでした。恋人のタラ以外、女性があまり出てこなくて、男同士の親密な繋がりが描かれていてよかった。皆いい人のようでした。彼らのキャラクターをあのように設定したのは?

監督:アミールは、50%自分。ご覧になった出来事や、友人たちの姿は現実に基づいています。彼らの寂しさや悩みも自分の周りの人たちからヒントを得ました。それは自分たちの現実とあまり変わらないものです。私たちは大変な状況の中で生活をしているかもしれません。作られている最近の映画は、そのような大変な状況を描いているものが多いです。でも、私の映画ではほんとの私たちの普段の姿を描きました。一人一人はいい人。叔父さんも素晴らしい心をもっているのですが、昔の過ちを抱えています。

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― テヘランの街のあちこちが出てきて、タラが街を折りたたんで持っていければいいのにという言葉もあって、私自身も懐かしい思いにかられました。テヘランの街がもう一つの主人のように感じました。監督としてのお気持ちは?
(私の質問でした。折りたたんで持っていきたいほど大好きな街なのに、この40年、数多くのイランの人たちが国を離れたことに思いが至ったことを、ほんとは伝えたかったのでした)

監督:まずお答えする前に、心の底から有難いのは、この映画祭では私の映画について質問してくださることです。ほかの映画祭では、全然違う質問がでます。(イランに関する政治的質問が多かったのだと察します)
おっしゃる通り、テヘランは、とても大事なキャラクターです。テヘランはとても美しい街です。醜いところを知りません。人生の大きな一部で、仕事をしている場所でもあります。古い町で、たくさんの物語があります。映画の中でドラマチックなことは起こりませんが、美しいテヘランは大きなキャラクターです。

― 自転車で街を駆けるのが、とても自由な感じがしました。猫が2匹出てきましたが、片目がない感じでした。狙ってあのような猫を集めてきたのでしょうか?

監督:私の友人シャヒーンの飼っている猫で、クビとフランという名前で、いずれも目が見えないの意味があります。片方の猫は片目がなくて、もう1匹も片目がよくみえません。シンボル的に出しました。地図を見れば、イランは猫の形をしています。猫を置いていくというのは、イランを置いていくということなのです。

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― フランス映画の香りがしました。会話の中で自然な形で人生の重要な出来事が語られていました。ブラジル帰りの友人など、どういうところから内容を?

監督:映画を愛している人たちや、映画を学ぶ我々にとって、小津や黒澤は偉大で尊敬する方です。お墓参りに行く予定です。 彼らから映画作りを学びました。映画の中に、友人たちの会話を自然に入れようと思いました。 映画の中の会話は、ほぼ脚本通りです。ナリマンは耳が聴こえないので、撮影時には、脚本はあるけれど、その場の雰囲気で自由に話していいと伝えましたが、ほかの役者は脚本に沿って自然な感じで演じてくれました。
直訳すれば「肌はとても厚くなっている」という言葉があります。我慢しているけれど、望みは捨ててない。美しさを見出せば、絶対、街にさよならとはいえないです。


監督 最後の一言
8~9人のスタッフで作った映画です。最後までいらしてくださってありがとうございます。スーツケースが早く届くことを願っています。寒くてしょうがないです。



監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)
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1984年イラン、アフヴァーズ生まれ。2003年に映画界に入り、ラクシャン・バニエテマドら著名監督の助手に。『The Idiot』(2007年)、『Two Cold Meals for One Person』(2009年)、『Family Portrait』(2010年)などの短編が国内外の映画祭で上映。初長編『Temporary』(2015年)がMedFilm Festivalで審査員賞。長編第2作『Two Dogs』(2020)はワルシャワ映画祭などで上映された。(公式サイトより)




★翌日の23日、『サボテン』上映前に監督にばったり。
スーツケースが届いて、ちゃんと上着をお持ちでした。
監督は、イラン南部のアフワーズのご出身。アバダーンにも住んでいたことがあるそうです。そういえば、映画の中で、アバダーン訛りの話が出てきました。

会場から政治的質問が出なくて、私もほっとしたのですが、映画を観て、まず、おぉ~っと思ったのが、女性たちが髪の毛を出していることでした。そして、女性が自転車に乗ることも、かつては禁止されていました。お酒を酌み交わすことも、日常ながら、映画で堂々と描くことはなかったように思います。 そんなことからも、確かにイラン社会が動いているのを感じました。 別の時に、また監督にお会いしたので、そのことをお伝えしました。「まさにそう! 今のイランそのままだよ」と。
それは、いつも接しているイランの方たちからも聞いていることではあるのですが、さて、どんな風にイランは動くのでしょう・・・ 
革命後、世界の各地に多くのイランの人たちが移住して、外国で生まれた世代もいます。 世界のどこにいても、ノウルーズ(イランの新年・春分の日)や、シャベヤルダー(冬至の夜)を伝統的な形で家族や友人たちと祝い、詩を愛でるイランの人たち。 故郷をいつまでも忘れない・・・ そんなイランの人たちの心情をずっしり感じた作品でした。(咲)


★映画の中で印象に残った場面や言葉

まず冒頭、人生を語る詩。
(著作者の名前はなく、監督の自作?)

自転車で街を行く
テヘランタワー
美しい並木道・・・・

友人のナリマンとナデルが暮らす家へ
ナデル:ブラジルに4年いた。息苦しかった。テヘランのことばかり考えていた。タフな男が、帰りたいと泣いてた。貧しさじゃなくて、孤独がつらかった。
(ナデルは恋人と別れてブラジルに行った。うまくいかなくて、寂しさもあってテヘランに戻り、ナリマンのところに転がりこんだことが後で明かされる)

アミール:こうして冗談言いながら、食事を作ってると、行きたくなくなる。

ピンポンしながら語る友人のピールーズ。
保護観察中で、脚にGPSを付けられている。ヴァリアスル通りを越えられない。越えたら電話がかかってくると笑う。

(回想) 
恋人タラと一緒に自転車で街をいく。
並木道、モスクの見えるロータリー、ヘジャーブをしてない女性たち。
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タラ: もうテヘランには誰もいない。両親も向こう。こっちにいるのは、あなただけ。皆、向こうで慣れて暮らしてる。私は、慣れるのは嫌だけど。

アーブグーシュト(壺に入った肉・ジャガイモ・豆の料理)を食べながらの会話。
エスファハーン訛りの話。
バンダリダンスの女性たちの言葉、アバダン訛り。
僕が行く南イタリアの言葉、アバダン訛りに近い。
アモーレ、ポルファボーレ

タラ:街を持ち運べたら、折りたたんで好きなところに持っていくのに

タラ:こちらに来て、8ヶ月経った。あなたがいればいいのに。囚われの身みたい。ママは勉強するには、こっちがいいと言うけど。そっちにいれば、あなたもいたから上手くやれたのに。流されなければよかった。

ピールーズが遊びにくる。
越境して遊びにきたのか?  
監視から解放された。

詩を詠む。
その意味は、人生は、はかない。くよくよするな。命は、ロウソクのように短い。

ロウソクの灯のもとで酒を酌み交わし、絨毯の上で雑魚寝する。

いつも配達にいく女性から呼び止められる。朗報を運んでくれたお礼と、100ドル渡される。
彼女の家の中へ招かれる。
森の中に住む指揮者に手紙でしか連絡が取れず、何度も曲を手紙を送ったら、やっと引き受けるという返事を貰った。『アモール(愛)』という恋の歌。ピアノの弾き語りで聴かせてくれる。女性はパシュトゥーン風の帽子を被っている。

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叔父はバツイチ。
モジデと結婚したばかりの頃、ニューヨークに着いて、楽しいことが手招き。モジデは妊娠2ヶ月だった。話しにくいけど、快楽に走って恋をした。モジデのことをほぼ忘れて。モジデはすぐに悟った。後悔でいっぱい。人に話したのは初めて。お前の教訓になるかと。

アミール:タラと一緒にいたい。タラとの出会いを思い出す。コンビニでプロテインを探していたら声をかけられた。「あなたを見かけたのは、2回目。話したい」と言われる。
ある通りに連れていかれる。「この通りで、自転車に立ち乗りしているのを見かけた」
「この近くに友達がいる。こんなふうに話しかけられたのは初めて」
「自転車に乗ってる姿が、あまりに自由に見えたから」

ピールーズ、監視は外されたけど、境界は自分の中にあるかも。

ナデルとナリマンと3人で山へ。
ついに大使館からビザが下りたとのメール!
荷造りするアミール。
2匹の猫は連れていけない・・・

アーモンドを刻むアミル。
サブジの処理をする叔父。
花を飾り、ご馳走を並べる。
酒を酌み交わす。
叔父:自分の一部もアミールと一緒に外国に行ってしまうよう。

タラとのビデオ通話
タラ:こっちに来ること、どんな気持ち?
アミール:やっと会える。明後日、空港にいるなんて!
タラ:街の一部をもってきてくれるみたい。 
アミール:ラーレ公園をもっていくね

ナリマンの誕生日を祝う。 一緒にケーキのろうそくを消す。

空港へ・・・

妹エルナズへ 

報告:景山咲子



第38回東京国際映画祭クロージングセレモニー報告 (咲)

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10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭。11月5日(水)に閉幕を迎え、クロージングセレモニーが行われました。
東京グランプリに輝いたのは、パレスチナの女性監督の作品『パレスチナ36』。
英国統治時代の1936年に、パレスチナで何があったのかを描いた映画で、パレスチナ情勢が混迷を極める中での受賞は意義深いものだと感じます。
本作については詳細を報告しています。
東京国際映画祭 東京グランプリ 『パレスチナ36』記者会見 Q&A報告 (咲)

受賞一覧は、こちら

クロージングセレモニーの模様を、受賞の発表順に登壇者のコメントと共にお届けします。


◆第38回東京国際映画祭 クロージングセレモニー◆
2025年11月5日(水)17:00-18:30
会場:TOHO シネマズ日比谷 スクリーン 12
MC:マイケル・リーバス

MC: 10日間の開催期間中、コンペティション、アジアの未来部門など国内外の作品184本の上映のほか、著名人による交流ラウンジ、野外上映会などが開かれました。期間中には黒澤明賞、エシカルフィルム賞など様々な授賞式も開かれました。映画祭の中盤を盛り上げるセンターピース作品として、山田洋二監督の最新作『東京タクシー』が上映され、山田洋二監督には特別功労賞が授与されました。また、今年もウィメンズ・エンパワーメント部門に力を入れ女性の活躍を応援、さらにアジア学生映画コンファレンスを新設し、新たな映画の未来への対策を目指しております。本日、無事にクロージングセレモニーを迎えることができました。

◆アジア学生映画コンファレンス
15作品の中から、作品賞と審査委員特別賞2作品が選ばれました。

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審査員 左から、クリスチャン・ジュンヌ(カンヌ国際映画祭代表補佐兼映画部門ディレクター)、映画監督 リティ・パン(審査委員長)、岡本多緒(俳優/モデル/映画監督)

岡本多緒さん講評:とても完成度の高い作品が多く、楽しませていただきました。自然と審査員全員が一致し、心から納得できる審査になりました。受賞に至らなかった方たちも、今後も独創性のある作品を生み出してほしいです。

審査委員特別賞 『永遠とその1日』 
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チュン・リーシュエン監督 (台湾芸術大学)
映画の中のような出来事が今も世界のあちこちで起きています。この世からこのようなことが一日でも早く無くなるよう、祈っています。

審査委員特別賞 『エンジン再始動』 
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チョン・へイン監督(韓国映画アカデミー)
あまりにも驚いてどう感想を申し上げていいかわかりません。この映画を一緒に創ってくれたチームのみんなに感謝を伝えたいです。何よりも応援してくださった韓国映画アカデミーの院長、先生方にも感謝を伝えたいです。

作品賞 『フローティング』 
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イ・ジユン監督(韓国映画アカデミー) 
映画祭で上映していただけただけでも光栄ですのに、受賞を嬉しく思っております。この映画は、個人的な場所から出発し、アメリカンドリームへの問いかけや悩みを映画の中で表現しました。苦労してくれた撮影監督やプロデューサー、デザイナーなどチームの皆に感謝を伝えたいです。先ほどチョン・ヘインさんが感謝を述べていましたが、韓国芸術アカデミー第41期の同期にもありがとうと言いたいです。この賞にはこれからも諦めずに映画を作ろうという意味が込められていると思います。これからも一生懸命映画を撮っていきます。


◆アジアの未来
長編3作目までのアジア(日本・中東を含む)の新鋭監督の作品を対象とし、新たな才能の発掘を目指す部門。10作品の中から作品賞が選ばれました。

作品賞『光輪』(韓国) 
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ノ・ヨンワン監督 
このような賞をいただけるとは思ってもいませんでした。このような国際映画祭の授賞式も初めてです。実は賞をいただける時には前日に知らせていただけると思っていました。連絡がなかったので、ダメだったのだなぁと慰める意味でお酒をたくさん飲んでしまいました。見えないところで頑張ってくださったスタッフに感謝したいと思います。この映画は光を目指して進んでいくのですが、ずっと影の中にいる状態が描かれています。主人公は宅配ドライバーです。見えないところで生活をしている平凡な市民の物語です。実は、今日、この場にも来ているのですが、本作のプロデューサーでもある私の妻の誕生日です。誕生日のプレゼントとして、この賞を分かち合えるのを光栄に思います。

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アジアの未来部門審査員との記念撮影
左から、西澤彰弘(東京テアトル株式会社 編成担当)、松永大司(映画監督)、ノ・ヨンワン監督、エレン・キム(釜山国際映画祭アジアンコンテンツ&フィルムマーケットディレクター)



◆コンペティション

観客賞受賞『金髪』
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安藤裕康チェアマンと坂下雄一郎監督

坂下監督:このような大きな映画祭で広く観客の皆さまから受け入れられたことを光栄に思います。また作品を作って、この映画祭で上映できるよう励んでいきたいと思います。

ここで、コンペティション部門審査員登壇
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カルロ・シャトリアン審査委員長 総評:
賞をお渡しする前に審査員を代表してお話しさせていただきます。映画祭に来るということは経験です。生きている映画を映画館において素晴らしい審査員と共に観るということはありがたいことです。安藤チェアマン、市山プログラミングディレクター、映画祭のスタッフの皆さんのご尽力に感謝します。映画の幅が、いかに広いかを象徴するセレクションに向き合うことになりました。この仕事は非常に難しかったですが、多様性を尊重することを大切にしました。標準化を推し進めようとする傾向の中で、非常に大きな成果だと思っています。様々な経歴、好みは異なりますが、すべての決定は合意の結果です。すべて満場一致で賞を贈呈しました。

最優秀芸術貢献賞授賞 
 『マザー』 

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左:ヴィヴィアン・チュウ 右:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督

ヴィヴィアン・チュウ 講評:
歴史上の人物を予想できない方法で、観客を常に惹きつける俳優の印象的な演技によって際立つ本作は、緻密な編集と型にはまらない音楽の使用によってさらに引き立てられています。

テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督:
私は50歳になりましたが、18歳の少年のような大胆さをようやく見つけることができました。この映画が女性たちに力を与えることを願っています。私たちに力を!


最優秀男優賞授賞 
ワン・チュアンジュン 『春の木』 (中国)
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グイ・ルンメイ 講評:
演じる空間が限られている中、繊細で説得力のある演技を見せてくれました。この世代で最も著名な俳優です。

ワン・チュアンジュン:
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東京国際映画祭、そしてチャン・リル監督に感謝申し上げたいと思います。
私は目立つのが怖くて、いつも隅にいて口数も少ないのです。時には傲慢だと誤解されることもあります。年を取るにつれて、肝っ玉がどんどん小さくなっています。このような賞をいただくとは夢にも思ってなかったです。共演の女優のリュウ・タンさんに心から感謝したいと思います。彼女の素晴らしい演技が光となって、闇にいる私を照らし出すことになったんです。彼女の光のお陰で賞を受賞することができました。監督、カメラマン、編集、スタッフに皆さんに感謝したいと思います。
中国映画が今年120周年を迎える年に受賞できたことで、歴史の一部になれました。大変めでたいことだと思っています。私の母校の上海戯劇学院も来週80周年を迎えますので、とてもいいギフトになりました。上海にいる父親、さらに亡くなった母親、妻と二人の娘にも感謝したいと思います。妻は私よりもいい俳優です。小さな娘から、お父さんかっこいいといわれ、私も今ある人の光になったのだ、ほかの人に光を照らすことができればと思います。


最優秀女優賞授賞 
福地桃子、河瀨直美 (『恒星の向こう側』)

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齊藤工 講評:
分かり合おうとしなかった母と娘が、余命宣告と新たな命の誕生の隙間でお互いの体温を確かめ合いながら、限られた時間の中でゆっくりと本音で歩み寄っていく・・・。今年のコンペティション部門には力強く物語を牽引するヒロインたちが数多く登場しました。その中で、丁寧に静かに存在することに徹したお二人の姿はひときわ印象的で際立っていました。

福地桃子:
歴史ある素敵な賞をいただけて光栄です。生まれ育った故郷での映画祭で、大切な作品を通して映画に携わった一人としてお話しさせていただけることは身の引き締まる思いです。撮影したのがちょうど1年前のこの季節で、主人公を演じるにあたって、人物を見つめて追いかけて溶け合っていくような時間は決して一人では乗り越えられる時間ではありませんでした。この物語を生み出してくださった中川監督、そして、大変な撮影の中、理解を深めて撮影する環境を徹底して作ってくださったチームの皆さん、そして、共に受賞することができた母である河瀨直美さんに感謝したいと思います。
この経験を胸にこれからも1つ1つの作品に向き合ってまいりたいと思います。

河瀨直美:
監督として映画祭に参加したことはあっても、俳優としてこのような場に立たせていただけたのは中川監督のおかげです。チームや共演の皆さんがいたからこそ、自分自身のすべてを出し切れたのかなと思っています。難しい役柄でしたが、娘役の福地さんとは衣装合わせした時から、あまり話さないという徹底した役積みをしていました。カットがかかっても冷たい態度を取り続けて、嫌われたかなと思っていましたが、最後に彼女の温かさを背負えた瞬間に自然と涙が溢れました。人はきっとこうして繋がって、その温かみを自分のものとして感じられた時に、生きていてよかったなと思える、そういう生き物だと思っております。
レッドカーペットを歩かせていただいたときに感じた思いをお話しさせてください。コロナのあと、世界では人と人が殺めあう現実があります。ここ東京では映画という芸術を通じて国を超えて繋がりあえる素晴らしい体験ができることを幸せに思いながら歩かせていただきました。
私自身が俳優としてここに立たせていただきましたが、私自身の最新作では中川監督に俳優として出ていただいております。表現者が立場を超えて、繋がりあっていく、生きているそのことだけが表現であることを噛みしめながら感謝したいと思います。


最優秀監督賞
アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督(『裏か表か?』) 
チャン・リュル監督(『春の木』)


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ヴィヴィアン・チュウ、チャン・リュル監督(『春の木』)、アレックス・C・ロー(『裏か表か?』プロデューサー)、マチュー・ラクロー

ヴィヴィアン・チュウ&マチュー・ラクロー講評:
二つの全く異なる映画に心を動かされました。
ウェスタンというジャンルをイタリアに現代な形で復活させ国の歴史を書き換えました。

チャン・リュル監督(『春の木』):
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先ほど、主演のワン・チュアンジュンが登壇しましたが、まったく笑顔がありませんでした。私も笑いが上手ではないのですが、努力してみます。私の作品を評価してくださりありがとうございます。またこの場を借りて俳優の皆さん、チームの皆さんに感謝したいと思います。製作会社、配給会社にも感謝します。個人的に、監督賞はチーム全体に与えられる賞だと思っております。映画人として誰もが知ってると思いますが、チームに誰もいなければ監督はただの馬鹿です。50年前のクルーのことなのですが、リーダーが壇上にいて、下に座っている者たちに聞きました。君は何が得意?と聞いて、脚本、撮影、美術と決めていきました。ずっと下を向いていた人に聞いたら、「話をするのが上手じゃない」と答えたので、「じゃ君は監督だ」と。このリーダーは映画製作の本質を見抜いていたと思います。皆さまの健康と幸せを心からお祈りいたします。

『裏か表か?』 アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督 
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動画でメッセージ:
いま、ちょうどローマにもどり最優秀監督賞の受賞を知ったところです。とても嬉しいです! とてもとても興奮しています! いまちょうど荷物が回ってくるのを待っているところです。東京国際映画祭そして審査員の皆さん、この賞をありがとうございます。東京で素晴らしい時を過ごしました。映画を見てもらったこと、観客からの反応など、映画祭が私たちを招き入れてくれたこと、そしてこの素晴らしい賞をありがとうございます。


審査員特別賞受賞
 『私たちは森の果実』

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左:マチュー・ラクロー 右:リティ・パン監督
(審査員一人一人に握手してから写真撮影に臨まれました)

マチュー・ラクロー 講評:
森林破壊という厳しい現実に直面したコミュニティに着目し、伝統を失うこと、人々への表現の機会を与えることで映画はレジリエントなものの味方だということを教えてくれました。

リティ・パン監督:
たくさんの方にお礼を申し上げたいと思います。とりわけこの会場にいるプロデューサーのカトリーヌ・デュサールさんに感謝を申し上げたいと思います。4年にも及んだ撮影期間、長旅でしたが、ずっとサポートしてくださいました。この映画に出てくる家族にも感謝したいと思います。たくさんのことを学びました。謙虚であること、世界の観方も学びました。メルシー。

東京グランプリ/東京都知事賞授賞 
『パレスチナ36』(アンマリ―・ジャシル監督)

カルロ・シャトリアン審査委員長 講評:
この作品の感情面で心を動かされました。ほぼ未知の歴史的事実を描き、土地の美しさに魅了されました。今は開いた傷のように見えています。審査員満場一致で決定しました。

アンマリ―・ジャシル監督は、すでに帰国され、少女アフラ役を演じたワーディ・エイラブーニさんが登壇。
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小池百合子東京都知事:
世界中の才能が東京に集って、映画という芸術を通じて新たな物語が紡がれていくことを大変嬉しく思っております。映画は言葉、文化の壁を超えることができます。心を繋ぐ力を持っている大変パワフルなアートでございます。世界中で残念ながら分断が起こっていたり、自然災害が猛威を振るっていたりします。人の心を癒してくれ、悲しみや苦しみ、そして楽しみや喜びを表現する映画は大変な力を持っているものでございます。
今年からアジア学生映画コンファレンスが新設されたということで、アジア各国の学生さんたちの挑戦がこのコンファレンスを通じて大きく広がることを心から期待を申し上げます。東京から発信される映画の魅力が多くの人々の心に届くことを、そして東京国際映画祭が創造性と多様性に満ちた文化の祭典として今後もますます発展し続けることを期待しております。

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審査員全員とフォトセッション

アンマリ―・ジャシル監督 動画でメッセージ:
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映画祭でとてもすばらしい数字を過ごしたあと、わたしはちょうど帰国したところです。初めての日本、東京の滞在で、この映画を観客の皆さんに見ていただき、とても特別な気持ちです。作品を評価していただき映画祭に招待してくださった市山尚三さんにはとても感謝しています。そして帰国後、審査委員からすばらしい知らせをいただきました。審査委員のみなさま、わたしたちの映画『パレスチナ36』をこの賞に選んでくださり、本当に光栄です。このような賞をいただけて、チームにとってもわたし自身にとっても、この作品の制作に懸命に力を尽くしてきたすべての人たちにとって、大きな意味を持つものです。この作品をみなさんにお見せしてこのような栄誉を頂くことは本当にすばらしいことです。ありがとう、ありがとうございます。みなさん、すてきな夜をお過ごしください。

ワーディ・エイラブーニ:
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こちらに来ることができとても光栄に思っております。素晴らしい皆さんと一緒にこの素晴らしい重要な賞を受けることができたのは、あまりにも大きな意味を持っています。
映画祭、審査員の皆さま、『パレスチナ36』を支えていただき、ありがとうございます。受賞できてとても光栄です。またこの作品に関わることができてとてもうれしいです。


<クロージング作品>
『ハムネット』
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クロエ・ジャオ監督:
クロエです。この映画を作りました! もうすぐ皆さんにご覧いただくことができます。

MC:これまでアメリカの大地や様々な土地で人々を撮ってこられました。今回は、16世紀のイギリスを舞台にされていますが、どんな人間の姿に惹かれて、この物語を撮られたのでしょうか?

監督:最初の4つの長編はなるべく遠くへ、広く世界のありとあらゆるところで水平線を追いかけてきました。『ハムネット』を作った私は、今までと違う40代の監督です。より内なる風景に目を向けました。一つのフレーム、一つのステージに制約し、自分の中に深く入り込むことをこの映画では目指しました。内なる風景のより深いところを探求しました。

MC: 『ハムネット』は、シェイクスピアという偉大な名前の陰にある家族の物語でもあります。400年以上前の出来事を描きながら、今を生きる私たちに通じるところがあると思います。監督ご自身はどのような普遍的な感情を描こうとされたのでしょうか?

監督:主に悲しみでしょうか。悲しみというのは人間の非常に自然な感情です。四季が移り変わり、人が生まれ、死ぬ。これは宇宙の自然な状態です。物事は永久に続かない。しかし我々は生と死のサイクルの一部であることを忘れてしまい、それに抵抗することで多くの苦しみが生まれます。悲しみにどう対峙するのか。悲しみが喜びと同様に私たちを結びつけます。

MC:ご覧になる観客には、どのように受け止めてもらいたいですか?

監督:わかりません。どんな感情を持たれてもかまいません。感じたいことを感じてほしいと思います。この映画は、ストーリーテリングの力を称えるものです。古くから、私たちの祖先は人間であるとう矛盾を語ってきました。愛をもって心を開く、しかしいつか愛を失って、死んでしまう。この人間であるということは、なんという矛盾でしょう。それをストーリーテリングで解決しています。私たちの仕事は聖なる仕事です。どうぞ楽しんでください。

安藤裕康チェアマン:
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今年も16万人を超える皆様にお越しいただき楽しい映画祭を過ごすことができました。しかし外に目を向けますと、世界中が分断と対立に悩まされているのが現況でございます。それでも国際映画祭というのは、国境を越え、考え方の違いを超えてお互いが向き合って対話を行い、そして共通の理解を深めあっていく場だと思っております。おかげさまで今年も東京国際映画祭に2500人を超える外国からのゲストにお越しいただき、200本近い映画を上映し、多くのイベントを開催して、実のある交流ができたと思います。その交流の中から新しい相互理解が生まれることを、そして友情が育つことを願っております。
チケットも売れ行きがよくて、去年を上回ることができました。
特に、日本で初めて上映されました『MISHIMA』は15分でチケットが完売になりました。お客様からぜひもう一度上映してほしいと事務局に要望が殺到しました。そこで特別追加上映ということで、11月8日、9日と二日間で1回ずつ追加上映をさせていただくことになりました。詳細は東京国際映画祭の公式サイトで発表いたしますので、ご覧になっていただきたいと思います。去年一昨年と、陰で支えてくれているボランティアの方々を壇上にあげて紹介しましたが、映画祭では500名を超えるスタッフが日夜働いてくれています。今年はその一部の方を映像で紹介したいと思います。
(様々な場で働く方たちの姿)
こういう方々に支えられながら、来年も東京国際映画祭を頑張っていきたいと思いますので、映画を愛する皆さん方から絶大なるご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
これを持ちまして第38回東京国際映画祭閉幕を宣言いたします。

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この後、受賞者フォトセッション

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報告:景山咲子



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