フランス映画祭2020 横浜

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期間:2020年12月10日(木)〜12月13日(日)全4日間
*当初、6月25日(木)〜6月28日(日)に予定されていたものを延期して開催

会場:横浜みなとみらい21地区、イオンシネマみなとみらいほか
主催:ユニフランス
共催:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、横浜市
特別協賛:日産自動車株式会社
公式サイト:https://www.unifrance.jp/festival/2020/

上映作品
オープニング作品
『ゴッドマザー』
監督:ジャン=ポール・サロメ 出演:イザベル・ユペール 
  ★オープニングの本作のみ日本公開未定
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作品内容は、こちらで!


『カラミティ(仮)』
『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』
『FUNAN フナン』
『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』
『パリの調香師 しあわせの香りを探して』
『MISS(原題)』
『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』
『私は確信する』
『マーメイド・イン・パリ』


◆特別マスタークラス  *SSFF & ASIAとのコラボ企画
フランス映画祭2020 横浜
×
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 特別マスタークラス

配信日時:12月11日(金)11:00〜12:00 (予定)*生配信
配信URL:https://www.youtube.com/c/フランス映画祭2020横浜
(フランス映画祭2020 横浜公式チャンネル)
テーマ フランスのショートフィルムでみる親と思春期の子の関係
対象作品
『真西へ 』(原題:Plein Ouest)監督:アリス・ドゥアール
『アデュー』(原題:Un adieu)監督:マティルド・プロフィ
『ローラとの夜』(原題:La Nuit, tous les chats sont roses)監督: Guillaume Renusson / BSSTO作品

★ブリリア ショートショートシアター オンラインで6作品配信

上記特別マスタークラスの3作品のほか、下記3作品を無料配信
『音楽家』(原題:Navozande, le musicien)監督:レザ・リアヒ
『岸辺』(原題:Rivages)監督:ソフィ・ラシーヌ
『思い出たち』(原題:Souvenir Souvenir)監督:バスティアン・デュボワ

配信サイト:ブリリア ショートショート シアター オンライン
特設ページ: https://sst-online.jp/magazine/9184/
配信期間:12/5(土)10:00〜12/18(金)10:00

作品内容ほか詳細はこちらで
https://www.unifrance.jp/festival/2020/event/

『音楽家』と『思い出たち』は、こちらもどうぞ!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478868949.html


東京国際映画祭 『赦し』(トルコ) TIFFトークサロン (咲)

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『赦し』 英題:Forgiveness  原題:Af
監督:ジェム・オザイ
出演:ティムル・アジャル、エミネ・メルイェム、ハカン・アルスラン
2020年/トルコ/95分/カラー/トルコ語  *長編1作目の監督作品
TOKYOプレミア2020国際交流基金アジアセンター共催上映
上映:11月4日(水)20:50~ 11月7日(土)20:05~
https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP14

厳しい父に愛されずに育った兄はある日、間違って猟銃で弟に発砲してしまう。お気に入りの次男に起こった事故に愕然とする父、沈黙する母、絶望する長男。家族に希望は訪れるのか。新鋭監督の重厚なドラマ。(公式サイトより)

*物語*
霧深い山奥で木を切り出して暮らす一家。
父親は次男メレクを贔屓にして、長男アジズに何かと厳しく当たっている。
父に銃の使い方を教えてもらった兄弟。アジズが試している時に足元に蛇が来て、驚いたとたんに発砲し、弟を撃ってしまう。
お気に入りの次男が亡くなり、ますますアジズにつらく当たる父。
アジズを赦す時は来るのか・・・

村の小さなモスクでクルアーンを学ぶ兄弟。
試験に受かったご褒美に弟が父に買ってもらったドローンをアジズは木に引っかけてしまいます。木片を集める作業中に、要領のいい弟がちょっと遊ぼうと言った時の出来事でした。それでも父は兄を悪者と決めつけてしまいます。
母親がアジズを気遣うのも気に入らない様子の父親。
父親の眼光が鋭くて、過去に何があって、そこまで長男を疎むのかと、アジズが気の毒になりました。
何十年も前の話かと思ったら、ドローンが出てきて現在の話とわかりましたが、地方ではまだまだ家父長制が強いことを感じさせてくれる物語でした。でも、こうした親の子どもたちに対するえこひいきは、どこにでも存在すること。普遍的な物語でもあると気づきました。子どものいない私にはわからないけれど、やっぱりお気に入りの子を贔屓にしてしまうかも。
TIFFトークサロンで、監督の知り合いに実際にあった出来事が、この映画の発端だと知りました。



TIFFトークサロン
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11月8日(日)17:30~
『赦し』
登壇者:ジェム・オザイ(監督/脚本/編集)
司会:石坂健治さん(TIFFシニア・プログラマー)
トルコ語通訳:野中恵子さん
英語通訳:王みどりさん
アーカイブ動画  https://youtu.be/hfZFojHTDg4

監督:メルハバ!

石坂:『赦し』をワールドプレミアで出していただき、ありがとうございます。

監督:このような形でお会いできて、私の作品を観た方たちから感想を聞くことをできるのが嬉しいです。この困難な日々の中で東京国際映画祭を開催いただきまして、関係者の方たちに感謝します。

石坂:複数の方たちからいただいている質問で、その中には日本トルコ協会アナトリアニュースの担当者の方もいらっしゃいます。Q「この作品を撮るきっかけは何だったのでしょうか?」

監督:知り合いの人の実際にあった話がきっかけです。映画のデコレーション関係の仕事の師匠の立場の方から、家族との間でこういう問題があると聞いたことから着想を得て、この映画のプロジェクトが始まりました。

石坂:脚本からお書きになっているのですね。次の質問です。やはり複数の方からいただいています。「キャスティングが素晴らしいです。兄役は、演技と思えない緊張感がありリアリティがあって素晴らしかったです。お父さん役にも圧倒されました」

監督:兄役ハカン・アルスランは、撮影現場の地方で暮らしている少年。とても賢い子で、どうすればいいか素早くキャッチしてくれました。自然の中で隔絶されているところです。内向的で静かな子という、探し求めていたアジズの精神的なものも備えたキャラクターでした。自然な立ち居振る舞いもよかったです。カメラの前に立ったことのない子です。撮影期間中、見事に役割を演じてくれました。弟役ユスフ・バイラクタルもアマチュア。母役エミネ・メルイェムはプロです。リハの時や撮影の休憩中もとても貢献してくれました。

石坂:長男アジズは誤って弟を撃ってしまう役。子役にはとても重い役だと思います。撮影中、心のケアなど、気を付けられたことはありますか?

監督:アジズ役も弟役も重い憂鬱な心理状況にならないようにしなければなりませんでした。彼らに対してこれは芝居でありゲームであると言って協力してもらうようにしました。ドラマの持つ深みを認識しないように仕向けました。お陰で、いい結果を得ることができました。子どもに演じてもらうのは難しい。一方、容易であるともいえます。彼らの認識は浅いので、撮影環境の中で集中してくれて、成功したと思います。

石坂:Q「ロケ地が素晴らしかったです。どのように決めたのですか? 監督ゆかりの地ですか?」 

監督:いろいろなところを見ました。頭の中にあったのは、山の中の村。隔絶された地で、社会との交わりのない、時が止まったような場所。今回の家族の悲劇は、内向的に閉じ込められ追い詰められたようなところで起こりました。父親の役柄を表す為にも、地理的にも困難なところである必要がありました。子どもたちに成功することを強要する父親。そのような気持ちになる場所ということで、ここで撮らなきゃと思いました。交通も不便で到達するのも難しいところです。私の作品にふさわしいと思いました。

石坂:Q「劇中に音楽がBGMとして使われなかったのは?」

監督:音楽は映画を感情的にさせてしまいます。メロドラマ的にしたくありませんでした。心理状態のリアリティを反映させるために音楽はいれないのが正しいと思いました。現場の家族の背景にある厳しく激しい自然の自らの音に任せるのがいいと思いました。

石坂:これは私からの質問です。父親に疎まれる長男と、好かれている次男、その関係から悲劇が起こることから、旧約聖書のカインとアベルを思い出しました。実際にあった話とのことですが、古典の物語をどこかで意識していたのでしょうか?

監督:古典を意識したことはないです。旧約聖書のカインとアベルは違う。彼らの関係は嫉妬の感情。この兄弟の関係はえこひいき。公正でないという関係です。父親は成功を求めていて、長男にはより多くを求めています。二人の子がいて、公正でないことはよくあることです。よりできる子を贔屓にすることがあります。ここで表現したのは、父親のかたくなで圧力的な態度です。

石坂:Q「子豚のシーンが印象的でした。お父さんが粉をかけましたが、何だったのでしょう?」

監督:ネズミを殺すための粉でした。

石坂:残念ながら時間となりました。最後のメッセージをお願いします。

監督:初めての長編です。観た方と初めてお会いできました。時間をとって観ていただき、関心を示してくださりありがとうございました。それに見合う内容であったならば嬉しいです。

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スクリーンショットタイム

まとめ 景山咲子



第17回ラテンビート映画祭

11/19(木)オープニング特別上映
『Forgotten We'll Be』
 原題:El Olvido Que Seremos
@新宿バルト9(1回のみ)

【オンライン配信】
2020年11月20日(金)0:00〜12月13日(日)23:59
公式サイト:https://lbff.jp/index.html

★作品一覧 https://lbff.jp/#peliculas
★視聴方法 https://lbff.jp/2020/howto.html

■11月20日より配信開始
家庭裁判所 第3H法廷/Courtroom 3H
息子の面影/Sin Señas Particulares
老人スパイ/El Agente Topo
ビボス ―奪われた未来―/Vivos
モラル・オーダー/Ordem Moral

■11月26日より配信開始
エピセントロ ~ヴォイス・フロム・ハバナ~/Epicentro
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ベネズエラ/Once Upon a Time in Venezuela
マリアの旅/La vida era eso

【短編】15の夏
*視聴料金:1作品 1000円[税込] (短編のみ300円[税込])※購入後72時間視聴可能。

◆スペイン大使館で二つの美術展
異国の恋人 井上雄彦とガウディのバルセロナ

ハビエル・マリスカルとハバナの歴史

場所:スペイン大使館(東京)
期日:2020年11月16日〜2021年1月22日
料金:入場無料


東京フィルメックス 『迂闊(うかつ)な犯罪』 リモートQ&A

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『迂闊(うかつ)な犯罪』Careless Crim
イラン / 2020 / 139分
監督:シャーラム・モクリ(Shahram MOKRI)

1979年イスラム革命前夜、西欧文化を否定する暴徒によって多くの映画館が焼き討ちにされた。それから40年後、4人の男たちが映画館の焼き討ちを計画する……。奇抜な発想を知的な構成で映画化したモクリの監督第4作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。
(公式サイトより)

*物語*
映画館で、座席の列を増やす算段をする男たち。
500席を700席にした。さらに1000席にしたいとボス。
税金があがったらしく、詰めれるだけ詰めないとやっていけないとぼやく。

1979年2月のイラン革命成就の6か月前のこと。
アバダンの映画館レックス座が火事で焼け、400名以上が犠牲になる。
レックス座では、マスウード・キミヤーイー監督の『鹿』(1974年)を上映中だった。
客席が多かった
放火の疑いがある
発火したとき映写室に従業員がいなかった
鍵が閉まっていた・・・等々、取沙汰される。
革命家の仕業とされたが、王命だったという説も発表された。

一転して、現在のテヘラン。
映画博物館に薬を持っているという男を訪ねていく。
大きな被り物を被っていて、男の顔は見えない。

砂漠の泉のそばで『鹿』の上映会を開こうとしている女の子たち。
兵士たちが、このそばでミサイルが見つかったという。

新作映画『迂闊な犯罪』が上映される映画館での放火を企てている4人の男たちの姿が、時折、織り込まれながら映画は進む・・・

*****
10月30日夜の上映を観た友人たちが口を揃えて「疲れた」と言っていた作品。確かに、40年前と現在が複雑に入り込んでいるので疲れるのも、さもありなんと思いました。私は、11月2日(月)10時10分からの上映で拝見。くらくらしましたが、興味深い作品でした。上映後に、アメリカに滞在しているシャーラム・モクリ監督とリモートでQ&Aが行われ、いろいろな謎が解けました。
(それにしても、フィルメックスで上映される映画は、謎が多いです)
ちなみに、シャーラム・モクリ監督の作品『予兆の森で』を2014年のアジア・フォーカス福岡国際映画祭で観ましたが、ワンカットで撮りながら、複雑に入り込んだ作品でした。


◆『迂闊な犯罪』リモートQ&A
TOHOシネマズ シャンテ

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*登壇*
監督:シャーラム・モクリ監督
司会:市山尚三さん(東京フィルメックス ディレクター)
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん(ペルシア語)

動画URL https://youtu.be/grlbdFqRBBk
★印:動画にはない部分

市山:アメリカにいらっしゃる監督にQ&Aにご参加いただいております。

監督:劇場まで足を運んでいただきありがとうございます。劇場で映画を観ることが夢のようなことになっていますが、いつか皆さんと一緒に劇場に座って映画を観られるようになることを願っています

市山:映画の中に映画が出てくる複雑な構成で面白い映画でした。どのように思いつかれたのでしょうか?

監督:シネマ・イン・シネマのやり方が好きです。アッバス・キアロスタミ監督の『クローズ・アップ』や『オリーブの林をぬけて』も、そのような作りです。いつか試したいと思っていました。レックス劇場の放火は歴史的に有名な事件で、映画にしたいと思っていました。自分の世代はよく知っていますが、若い世代はあまり知りませんので、シネマ・イン・シネマの形で撮ってみようと思いました。
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市山:時間が螺旋のように繰り返すのは?

監督:レックス劇場の事件は、40年前。現在とどう語ればいいか考え、当時のキャラクターをどう今のテヘランに入れればいいか考えて、パズルのように現在と過去を繋ぎました。将来、こういうことが起きないようにと・・・

市山:感想で、異なる時代と場所が繋がっていく斬新な作品でしたといただいています。その方の質問です。
ミサイルが出てきましたが、これは実際の話でしょうか?

監督:イランイラク戦争の時に使われたミサイルや爆弾が爆発しないものがあちこちに残っていると聞いています。
最後のシーンで人形が空を見上げたらミサイルが飛んでいます。イランの周辺は、ミサイルが飛ぶかもしれない危険な地域です。話のルーツにはリアリティがあります。

Q:『迂闊な犯罪(Careless Crim)』というタイトルに込められた意味は?

監督:シネマレックスのことはとても重要です。事件について3つの説明がなされています。革命前の体制が政治的に見ていて、お互いのせいにしています。その日、ほんとは何が起きたのかをリサーチしました。政治的な意図でなく、ケアレスな犯罪だったという説が出てきました。映画の最初の方で、モノクロの無声映画を挿入しましたが、ケアレスな男が煙草をぽいっと捨てたために火事になる内容です。ケアレスな犯罪だったという調査結果を映画のタイトルにすればいいなと思いました。

Q:その挿入された映画は、元々ある無声映画なのでしょうか?

監督:もともとあるものです。ハロルド・ショーンがハリウッドで作ったものです。レックス劇場放火事件は、4人がレストランに行ったことなど、ほんとの話を入れました。

Q:「レックス劇場で上映されていたキミヤーイー監督の『鹿』は、今はイランでは観れないのでしょうか?

監督:革命後、公開許可が出てないのですが、アンダーグランドでは観れます。DVDも手に入ります。

市山:公開できない理由は内容の問題でしょうか? それとも手続き上の問題でしょうか?

監督:革命後、革命前の映画の公開が出来なくなったのは、内容よりも、女性の髪の毛が出ているとか、肌が出ているといったことが問題にされるからです。スーパースターが出ていて、革命後は活動していないという理由もあります。『鹿』は革命後数日だけ公開されましたが、その後、検閲で上映できなくなりました。

Q:光について教えてください。時々画面が白くなるのは、どんな効果を狙ったものですか?

監督:光について、撮影監督と相談して、3つのアイディアが出ました。
・劇場の中で感じる映写機の光
・炎を感じる明るさ
・さらに、キャラクターが混乱している時のライティングをどうしようと考えました。

Q:カメラは何台使ったのでしょうか?

監督:1台だけです。テクニックを変えたので、何台も使っているように見えたのだと思います。放火犯はカメラを手持ちで追っています。劇場の中は三脚を使いました。
泉のシーンは、クラシックな撮り方をしました。
素晴らしい質問をありがとうございました。

******

1978年8月9日のアバダンの映画館放火事件は、当時から反政府組織がやったという説と王政側がやったという説があって、いまだに不明。上映後のリモートQAで、監督が調べたところ、実は政治的なものでなく、色々な悪条件が重なって、ケアレスに火がついたという説もあって、それをモチ―フにしたとの説明がありました。
このレックス劇場の火事が、じわじわとくすぶっていた反政府運動に火がついて革命成就に至ったので、ほんとにケアレスなものだったとしたら、すごいことだなと思いました。

イランのイスラーム革命成就直後に作られたドキュメンタリー映画『自由のために』(原題:Barâ-ye âzâdi)について、下記スタッフ日記で紹介した中に、アバダンの映画館放火事件の真相が不明であることに言及しています。ご参考まで!
http://cinemajournal.seesaa.net/article/463646371.html

景山咲子




東京フィルメックス 最優秀作品賞『死ぬ間際』 リモートQ&A

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『死ぬ間際』 In Between Dying
監督:ヒラル・バイダロフHilal BAYDAROV
アゼルバイジャン・メキシコ・アメリカ / 2020 / 88分

タル・ベーラの薫陶を受けたアゼルバイジャンの新鋭ヒラル・バイダロフの長編劇映画第2作。行く先々で死の影に追われる主人公の一日の旅を荒涼たる中央アジアの風景を背景に描き、見る者に様々な謎を投げかける。ヴェネチア映画祭コンペティションで上映。
(公式サイトより)

霧の中に立つ男。幻想的な幕開け。
青年ダヴドは麻薬密売の元締めの手下を殺してしまい、町を出てひたすら逃げる。そこで出会う女性たち。最初に逃げ込んだ家畜小屋では、父親に5年間も鎖に繋がれていた少女に助けられる。次には、アル中の暴力夫に悩む女性。夫に襲われたダヴドを助ける名目で夫を殺す。白いウェディングドレス姿で走ってきた女性をバイクに乗せる。兄に望まぬ結婚を強いられて逃げてきたが、結局兄に射殺されてしまう。そして、母親を埋葬しようとする盲目の少女・・・
行く先々で死に出会うダヴド。美しい自然の中で、台詞の代わりに詩が語られることが多く、なんとも不思議な独特の世界でした。


10月30日(金)15:50からの上映後、エジプト映画祭に参加中のヒラル・バイダロフ監督とリモートQ&Aが行われ、不思議世界の謎が少し解けました。

◆『死ぬ間際』Q&A(リモート)
TOHOシネマズ シャンテ

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登壇:
ヒラル・バイダロフ監督
司会:市山尚三さん(東京フィルメックス ディレクター)
通訳:松下由美さん

動画URL https://youtu.be/5404YA2zsZs
★印:動画にはない部分

市山:この映画を作ったきっかけをお伺いします。何かもとになったストーリーなどはあるのでしょうか?

監督:15年前、高校生の時に仏陀の人生のことを読みました。王族で父親が過保護で貧困や悪いものを見せませんでした。ある時、王宮を出た彼は病に侵された貧しい人々の現実を見てショックを受けて、二度と王宮に帰らないと決意します。その話はすっかり忘れていました。この映画を作ろうと思った時には、1日で偶然人生が変わる話を描きたいと考えました。青年は死と出会って、自分の闇の部分を自己発見します。家を出る決心もしないので、仏陀とは違うけれど、出発点は仏陀の話です。

Q 白馬は何を表しているのでしょうか?

監督:脚本には1行も書かれていません。美しい白い馬が偶然湖のそばにいたので、オーナーにお願いして撮らせてもらいました。
故郷のコーカサスの村で、白い馬を飼っていた子供時代のことが蘇りました。死んだ時にとても悲しくて泣き続けました。愛する父と母がいて自然があって馬がいるという子供時代のことを思い出して、この場面を入れました。
家族3人のシーンが出てきますが、主人公が求めている聖なるほんとの家族を象徴しています。

Q 男女の差別ついて、この作品の中でどう考えられたでしょうか?

監督:編集前に何を見せようと考えました。若い主人公ダウドの経験することを見せたかったのですが、編集前のものを母に見せたら、これはよくない、このまま見せちゃいけないといわれました。ちなみに母は最後の場面に出ています。自分でその後編集を重ねて、最終的にチャプターに分けました。盲目の女性、狂犬病の女性、湖の白い馬など。何を見せたかったかというと、男女間の差別より、愛を描きたかったのです。同じ人の別の側面を描いていることをご覧になって気づかれたかと思います。差別というより、違いがないことを描きたかったのです。愛の様々な側面を描いたといえます。

 イスラーム神秘主義スーフィズムにインスパイアされた作品と感じました。どれくらい意識をされたのでしょうか?

監督:スーフィズムに関するものは読みましたが、私の人生はほど遠いものです。教養として知っているのと、母の影響を強く受けて、母が引用してくれたものを取りいれています。小さな存在の私が語るにはスーフィズムは大きすぎます。映画でそれを見せようとは思っていません。でも、読みすぎたので、要素は表れているということはあると思います。
あと、ロシア文学のチェーホフや、イランの詩人などの影響も反映されていると思います。こういったものが私の魂を形作っています。

Q 霧や雨、降りしきる紅葉など自然物の演出が圧倒的だったのですが、どれくらい人為的に作ったのでしょうか? 自然の撮影にはどのような苦労があったのでしょうか?   

監督:アリガトー。良い質問! 数学、情報学を学んできて、科学的なものを信じてきましたが、映画は違う。直観に従って撮っています。詩的でなければ映画じゃない。雨、霧が出てきてくれて、自然に支えられて出来た映画です。出会ったものに触発されて撮りました。霧が出てきたら、詩を書いてダウドに渡して詠んでもらいました。湖があった時にも自分の直観に従いました。

Q アゼルバイジャンの映画事情は? また、タルベーラから薫陶を受けたそうですが、経緯を教えてください。

監督:小さな国で、周辺国も映画の歴史はありますが、ソ連から独立したあと、映画業界が崩壊して作れない時代がありました。今また若手も育って映画が作られるようになりました。次世代が育っています。
タルベーラ監督の『サタンタンゴ』『ニーチェの馬』などを観てショックを受けました。サラエボ・フィルムアカデミーをタルベーラ監督が主催すると知って、参加しなくてはと行きました。実はタルベーラと映画の話を直接できたことはあまりありません。サラエボで生活費を稼ぐためにあちこちでチェスをしていて、学校にあまり行かなくて、チェスを通して映画を学びんだと言っています。

Q ロケーションや土地の特徴に物語的意味がありましたら教えてください。

監督:映像にメッセージを込めることは信じていません。ロケ地から読み取れるものはありません。ダヴドが逃亡する場所ですが、私の住む近くだけでなく、アゼルバイジャンのあちこちで撮影しました。車で走ってここはいいなと思うと車を止めてカメラを出して撮りました。基準としては、私のインスピレーションを引き出してくれるところです。
落ち葉のシーンは、葉っぱを落とすようなテクノロジーは持っていません。直観に従って求めたところ、イメージtに合ういいところに出会えました。

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市山:日本映画がとても好きで、ほんとは来日したかったとのことでした。また凄い作品を作られることと思いますので、次の機会にお呼びしたいと思います。

監督:ほんとにご覧くださってありがとうございます。日本の映画や巨匠に大いなる敬意を表しています。溝口監督や新藤兼人監督など巨匠の国にぜひ行きたい。次回は直接皆さんにお会いできればと思います。

授賞式でのヒラル・バイダロフ監督のメッセージは、こちらでご覧ください。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478502965.html

景山咲子


★オンライン配信で、12月6日まで視聴できます。
https://filmex.jp/2020/online2020