第33回東京国際映画祭2020 (暁) 『遺灰との旅』『トゥルーノース』『チャンケ:よそ者』

新コロナウイルスの影響で、今年は3月の大阪アジアン映画祭に行った後、試写や映画館での映画鑑賞もままならず、4月、5月は自宅で自粛生活。6月から試写や映画には行き始めたけど映画祭は行かず、第1回から通っていた9月の第25回あいち国際女性映画祭はとうとう不参加に。そして10月の東京での映画祭シーズンに突入。今年は、私が参加したい「中国映画週間」、「東京国際映画祭」、「東京フィルメックス」が下記のように重なっていて、どのように観たい作品を組み合わせるかに四苦八苦。

10月27日~11月1日 中国映画週間2020(主に日比谷の映画館)
10月30日~11月7日 第21回東京フィルメックス(主に有楽町の映画館) 
10月31日~11月9日 第33回東京国際映画祭2020(主に六本木の映画館)

情報集めが間に合わないままチケットを買う日が来てしまったし、ネットを使ってチケットを買うのが苦手な私は、いつものようにとりあえず集まった情報から、どうしても観たい作品のチケットを買い、あとは当日の身体の調子や時間の合うもの、当日券のあるもの、そしてプレスで観ることができるものなどを組み合わせて観ることにした。それにしても今年は東京国際とフィルメックスがもろ重なってしまい、どちらをあきらめるか迷いました。10月27日の中国映画週間から映画祭が始まり10月30日までは中国映画週間。東京国際映画祭は11月1日から参加。
ここ10年くらいオープニングのレッドカーペットの写真を撮っているのだけど、今年はゲストが少ないのもあるけど、31日はフィルメックスのほうで原一男監督の『水俣 曼荼羅』(約6時間作品)があるので、こちらの鑑賞を優先した。せめて場所が近ければ行ったり来たりすることができるのだけど、そうも行かず、東京国際映画祭の日、フィルメックスの日というように日替わりで映画祭に参加することに。結局、東京国際映画祭で観た作品は10本だけ。そんな中から印象に残った作品をいくつか紹介します。

『遺灰との旅』 原題「Ashes on a Road Trip」 
TOKYOプレミア2020国際交流基金アジアセンター共催上映
監督:マンゲーシュ・ジョーシー
2020年製作/インド

インド・プネーに住むカルカニス一族の家長が亡くなり、「遺灰は先祖の土地とパンダルプールの川に撒くように」と遺言を残した。遺言が成就するまでは遺書の封を切ることができない。残された息子が車を運転し、遠くに住んでいる父の弟や妹(叔父や叔母。アメリカやインドでも離れている場所)とともに故郷の川を目指す。指示された遺言があり立つまで遺書の封を切ることができない。叔父や叔母は、実はいろいろ事情があってお金がすぐにでも必要な状態で、一刻も早く遺産の分け前がほしい。しかし、道中、祭りがあったり、車が故障したり、いろいろなことが起こり、なかなか目的地にたどり着かない。コミカルと皮肉、インド的な笑いと涙に溢れたこの道中のファミリー・コメディ。監督自身の体験にもとづいたフィクションとのこと。インドの社会事情、風情、人情、そしてブラックユーモア。

『トゥルーノース』 英題「True North」 
ワールド・フォーカス
監督:清水ハン栄治
2020年/日本・インドネシア合作 英語日本語字幕

ぎりぎり間に合い、もう試写会場が暗くなってから席についたのだけど、内容を何も確認せず、ただ日本とインドネシアの合作ということだけで入ったのに、北朝鮮の強制収容所を描いた作品でアニメ、しかも英語の語り。会場を間違えたかと思った。まさかアニメだと思っていなかったし、日本とインドネシアの作品なのに英語の語りとはびっくり。状況を理解するのに、数分かかった。
北朝鮮の政治犯強制収容所に生きる家族や人々の姿を描いた作品だった。北朝鮮の政治犯強制収容所のことは、収容所内で生まれ育った脱北者シン・ドンヒョクさんを描いた『北朝鮮強制収容所に生まれて』で、北朝鮮には政治犯強制収容所が何ヶ所もあることを知り、シン・ドンヒョクさん本人も来日して話を聞き、北朝鮮の実状にショックを受けたことを覚えている。

そのシネマジャーナル記事はこちら
『北朝鮮強制収容所に生まれて』シン・ドンヒョクさん来日報告
http://www.cinemajournal.net/special/2014/umarete/index.html

このアニメは、その『北朝鮮強制収容所に生まれて』の内容を踏襲したもので、収容所の出来事は真新しいものはなかったけど、絶望の淵で生きる人たちの姿をアニメで描くことで、子供たちにも入ってきやすいかもしれない。
この作品では、60年代の帰還事業で日本から北朝鮮に渡った家族が政治犯として強制収容所に収容され、10年に渡ってここで暮らし、生きてきた日系家族の10年にわたる人間性の探求を描いている。
日本公開の予定があるという。

『チャンケ:よそ者』 原題「醬狗」
英題「Jang-Gae: The Foreigner」
TOKYOプレミア2020国際交流基金アジアセンター共催上映
監督:張智瑋(チャン・チーウェイ)
北京語、韓国語(日本語・英語・台湾語字幕) 2020年製作/台湾

韓国で、台湾人の父、韓国人の母と暮らす高校生クァンヤン。成績優秀、性格もおだやかな彼だが、同級生からは外人と呼ばれ、いじめられたり、仲間はずれにされてクラスに馴染めない。家では(身体の調子が悪い)父との確執に悩み、学校では外国人として見られることで疎外感に苦しみ、自らのアイデンティティに悩んでいる。ダブルカルチャーを持つ移民2世の青年の苦悩。いじめと初恋、病気がちの父親との確執を織り込んだ辛口の青春映画。
監督のチャン・チーウェイは、クァンヤンと同じく、台湾人の父と韓国人のは母の間に生まれ南アフリカで育ったという。監督自身、このようなことに悩みを持ち、韓国で「ファギョ」と呼ばれている華僑が、長い間直面してきた問題や困難を描いた映画がこれまでになかったから、この作品を作ったという。「海外で生まれ、人生のほとんどを海外で過ごしたので、母国の台湾はもちろん、南アフリカでも韓国でもアウトサイダー。アイデンティティをめぐる葛藤や文化的混乱は、ずっと私の中心にあったことが、この作品を考えた第一のきっかけです」「韓国では、政治的・歴史的な理由によってファギョは韓国の市民権を取得することができず、台湾政府が発行した非市民/非居住者パスポートしか持っていません。つまり、彼らは政治的孤児と言えるのです。韓国ではファギョは中国人と見なされ、台湾では韓国人と見なされます。日本人の皆さんに分かりやすく言うと、在日の問題とよく似ています」と語っている。韓国で政治的孤児と言えるような中華系韓国人がいるとは全然知らなかったし、外人と言われ、差別されているというのも知らなかった。台湾のパスポートでは韓国で生まれて育ったとしても市民権は得られないのか。
今年の大阪アジアン映画祭でも、父母の国籍が違い、二つの文化の狭間で葛藤する子供の姿を描いた作品『燕 YAN』と『フォーの味』が上映されていたけど、これまでもそういう子供はいたと思うけど、そういう映画はほとんどなく、今年になってそういう作品が続いて出てきたというのはどうしてだろう。そういう経験をして育ってきた人が映画製作に関わるようになってきたということなのだろうか。自分は一体何人なのか、自分がいるべき場所はどこか、どこを故国と呼べば良いのか、そういうことを思うようになるのかも。どこかで折り合いつけて生きていくしかないのだろうけど。
ジャージャー麺がうまく取り込まれていると思った。ジャージャー麺は、もともと中華料理だけど、すっかり韓国の料理になっている。それが、韓国に暮らす「ファギョ」といわれる華僑の人々の姿に繋がっていると思えた。

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