東京国際映画祭『ジャスト 6.5』(イラン)11/2 記者会見 及び Q&A

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コンペティション 最優秀監督賞 & 最優秀男優賞
『ジャスト 6.5』  
原題:metri shesh va nim  英題:Just 6.5  

監督:サイード・ルスタイ
出演:ペイマン・モアディ、ナヴィド・モハマドザデー、ファルハド・アスラニ
2019年/イラン/ペルシア語/134分/カラー

*物語*
麻薬依存者であふれる町。
麻薬撲滅警察特別チームのサマド(ペイマン・モアディ)は、末端の売人たちを検挙する。多くはホームレスや貧しい者たちだ。やがて、元締めがナセル・ハクザド(ナヴィド・モハマドザデー)だと突き止める。彼が潜む贅を尽くしたホテルのペントハウスに検挙しに行くが、ナセルは自殺を図っていた・・・
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32CMP07

11/02(土)14:00~、11/04(月)16:20~、11/05(火)14:20~の3回上映されました。
11月2日に行われた記者会見と、上映後のQ&Aを取材しました。
また、3日には、サイード・ルスタイ監督とナヴィド・モハマドザデーさんにインタビューの時間もいただきました。
インタビューはこちらで!
なお、物語の詳細を、インタビューの末尾に掲載しています。

◆11月2日(土)記者会見
15:14-15:44 
登壇:サイード・ルスタイ(監督/脚本)、ナヴィド・モハマドザデー(俳優)
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司会:ナヴィドさん、役と違って、ずいぶん優しい顔をしていらっしゃいますね。
まずは監督から一言お願いします。

監督:映画をご覧いただきましてありがとうございます。美しい日本に来られて嬉しいです。

ナヴィド:美しい町に来れて、優しい皆さんの前で上映できて嬉しいです。

― 最後のシーンで、ハイウェーをドローンで撮ったショットは、あの車と人の量。どのように撮影したのでしょう?

監督:
とても大変でした。普通のハイウェーで車を置いてわざと渋滞を起こしました。ラジオで「今日はどうして渋滞が?」とまで言われました。どうしても、その日のうちに撮らなければなりませんでした。
携帯で写メを撮ってSNSで流した人たちがいて、「イランでは、大変なデモが行われています。それはアメリカの制裁があるからです」と海外のマスメディアが流しました。

司会:罰せられたりはしなかったのでしょうか?

監督:
警察には、あと5分、あと5分と言い続けて、結局1日ずっと警察をだましてしまいました。
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― 取引の相手が日本だったり、レザー・ジャポニーと呼ばれている人物が出てきたりしました。なぜ日本を選んだのですか?

監督:
一番最初に脚本を書いていた時に選んだ役者が日本人っぽい顔だったので、レザー・ジャポニーの愛称にしました。その役者は結局出演しませんでしたが。レザー・ジャポニーは発音が優しくて、言いやすいということもあります。

ナヴィド:レザー・タイランドやレザー・サウディアラビアじゃ、ちょっと言いにくいでしょ。それにレザー・ジャポニーは綺麗。

― まだ震えが止まりません。貧困と麻薬という大きな二つの問題を描いていて、教育が大事だとも思いました。処刑前の面会の時に、少年が側転して見せるところや、家族が家に帰るとき、狭い路地で誰ともすれ違わずにたどり着いて、ラッキーだったことが何かを象徴しているように感じました。
貧困と麻薬の問題を解決するにはどうしたらいいと思いますか?

監督:貧困と麻薬の問題には経済的な影響も大きいです。隣りの国アフガニスタンでは、麻薬をたくさん作っていて、この20年で100倍以上になりました。イランに麻薬がたくさん流れてきて、安くなって皆が簡単に手にすることができるようになりました。政府が頑張っても、なかなかコントロールできません。

司会:
ナヴィドさんが演じたのは独特の悪役。モデルがいたのでしょうか?
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ナヴィド:監督と組むのは2度目。撮影に入る前に、1~2年、監督とキャラクターについて話しました。二人の協力によって、この人物像はできあがりました。私は12人兄弟の一番下。年長の兄が、父親のような気持ちで兄弟皆の面倒をみるのは、よく理解できます。このキャラクターの気持ちをよく理解していました。もちろん私は麻薬の売人ではないし、成功もしていませんが。
尊敬している三船敏郎は、自分の役を自分で判断されます。それを見習いました。

― (ペルシア語で質問。NHKペルシア語放送の男性)イラン人を代表して伺います。これまでにない、とても新しい雰囲気の映画で素晴らしかったです。どれ位がフィクションで、どれくらいのリアリティを追求されたのでしょうか?

監督:26歳の時、初めて映画を作り、今、30歳です。これまでも現実に近づいた映画を作ろうとしてきました。社会の一部に目線を置いて撮ろうと思いました。現実からは離れていません。離婚問題を描いたら、すべてのイラン人が離婚するわけじゃない。お父さんに子どもが怒られるシーンがあっても、皆がそうじゃない。この映画に対して、イランの中でも批判がありました。社会の一部をできるだけ現実に近づけて描きました。違うと批判する人は、そういう部分に目が行ってないだけなのだと思います。低予算の映画では、現実と違うといわれても、ほかの部分を撮れなかっただけのことです。現実の一部を描いているので、悪い部分だけを見せているという批判を受けることはあっても、自分の国は大好きです。

司会:最後にひと言お願いします。

監督:短い時間でいろいろ話が出来ませんでした。これからQ&Aもありますので、ぜひいらしてください。

ナヴィド:ひと言だけ。黒澤明監督愛してます。三船敏郎、愛してます。

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★EXシアターでも、少しずらした時間に上映されていて、上映後のQ&Aに走りました。

◆11月2日(土)Q&A
14:00からのEXシアターでの上映後 
登壇:サイード・ルスタイ(監督/脚本)、ナヴィド・モハマドザデー(俳優)
司会:矢田部吉彦さん
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

来日できなかった警官役のペイマン・モアディのビデオ・メッセージが、まず流されました。
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イランからペイマン・モアディさん
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素晴らしい東京の皆さんと、東京国際映画祭の関係者の皆さんにご挨拶申し上げます。
映画祭に参加することを楽しみにしていましたが、残念ながら映画の撮影のスケジュールが変わり、伺えなくなりました。私の気持ちは皆さんと一緒にいます。次の東京国際映画祭で新作でお目にかかれればと思います。映画祭に参加している監督と役者の皆さんには成功を、また観客の皆さんにも素晴らしい作品を観て映画祭を楽しんでいただけますよう、心からお祈りしています。


矢田部さんが監督とナヴィドさんを呼び込みます。
(拍手がなかなかなりやみません)

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司会:とても興奮しております。ド迫力の作品をイランから持ってきていただき、観たことのないような作品を日本で上映してくださってありがとうございます。
一言ずつご挨拶をお願いします。

監督:ご覧いただき、ありがとうございます。矢田部さんから優しい言葉をいただき、ありがとうございます。最後まで観ていただいて感謝しています。

ナヴィド:大勢の皆さんの顔を見て、時差ぼけも飛んでしまいました。遠いところから日本に来て、こんなに多くの方がご覧いただいたことを知って、ほんとに嬉しいです。

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*会場よりQ&A*
― 興奮しています。海外の映画を観ると、その国の社会問題がわかります。この映画で描かれた麻薬のことは実際にイランで起こっていることでしょうか?

監督:麻薬の問題はどこの国でも存在していることだと思います。社会を破壊してしまうことがもっとも問題だと思います。
イランの隣のアフガニスタンでは。この20年で麻薬の生産が1000倍に増えて、イランに流れてきていて大きな問題になっています。

― 上質なノワール映画を見ているようで、迫力がありました。最初の家宅捜査のシーンで奥さんの身体検査をした女性たちがいましたが、警察の人でしょうか? 女性警官はイランにどれ位いるのでしょうか?

監督:もちろん身体検査をしたのは女性警官です。質問にびっくりしました。イランでは車を運転する女性も大勢いますし、女性警官もいます。
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司会:どれ位真実で、どれ位フィクションなのかに皆さん興味を持たれているようです。ジャンキーたちのたまり場ですとか、収容された時に裸になって身体検査されるところとか、刑務所の状況とか、どれくらい真実なのでしょうか?

監督:麻薬が大きな社会問題になっているのは間違いありません。私たちは一つの社会のある暗い部分に視点を置いて描いています。麻薬が隣の国アフガニスタンから流れてくるのを、政府は防ごうとしているけれど、警官が殺されてしまう場合もあります。どんどん入ってくるので値段が安くなって、入手しやすくなっています。
一つの視点で捉えて、多少映画的にしているけれど、それほど手を加えていません。麻薬中毒の人たちは本物です。ロケーションはセットを作って麻薬中毒者の人たちに協力してもらいましたが、警察からは、これほどじゃないと言われました。

―(イランの女性。ペルシア語で質問)ナヴィドさんの演技がとても上手でした。自分の中にどれくらいキャラクターが入り込みましたか?
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ナヴィド:私はドラッグディーラーではありません。今セットして見えないかもしれませんが、白髪が増えたのは、この映画のせいです。自分の中に、人物を入れ込んで、さらに足して演じていると思います。
子どもの時から、こういうタイプの映画を観ると警官より麻薬の売人の方に入れ込みました。次の作品で警官役だとしたら、実際は売人で警官の制服を着ているという役かもしれません。

― 迫力があって、心理劇がすごかった。人間の欲を求めているうちに欲に溺れてしまう。麻薬のラボの場面では、どんな風に演技指導をしたのでしょうか?
役者の方には、どういう意識を持って演じたのかお聞きしたいです。
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監督:ナヴィドとは、10年来の親友。映画で組むのは2度目です。彼のパーソナリティはよく知っています。演技力があるのも知ってます。ちょっと気が狂った人なので、それに合わせて脚本を書きました。
役者の顔や表情、どうしゃべるかは、本人からあまり離れたものは作れません。限りなく彼に近づけて書いたけど、彼が自分から離れてどんどん役に入っていって、精神的に苦労したと思います。キャラクターを家まで持って帰るような状況になってしまって、白髪になってしまったのだと思います。いつも魂を入れた人物を演じてくれるのを知っています。そういうタイプの役者です。

ナヴィド:たくさん褒めてくれたね。
ペイマン・モアディとは2度共演したのですが、力のある人で、彼からずいぶん学びました。今回一緒に来られなくて残念です。

司会:日本がちょこちょこ出てくるのは、監督の好みですか? イランで日本は麻薬のいい客先なのでしょうか?

監督:この世の中、日本のことが嫌いな人はいないでしょう。私も日本は大好きですし、日本映画も大好きです。特に、黒澤監督や小津監督が大好きです。

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★EXシアターでの上映を観ていたイラン好きの友人たちと合流。皆、興奮ぎみ。
2階で行われたサイン会に参加した友人たちを待ちながら、しばし立ち話。この映画、絶対日本で公開してほしいというのが一致した意見。
サインを貰った友人、一人一人丁寧に応対してくれたとのこと。監督たちも、日本の観客といい時間を過ごしたようです。

報告:景山咲子





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