第2回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭受賞作

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「受賞者と審査員の皆さん」©Cinema at Sea 2025


2025年2月22日(土)〜3月2日(日)に開催された「第2回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」、受賞作を紹介します。

最優秀長編作品賞
『ルーツ 岩と雲の先へ』(Through Rocks and Clouds)
監督:フランコ・ガルシア・ビセラ 2024/83分/ペルー、チリ

審査員コメント:
見事に作り上げられた作品。巧妙で引き込まれる物語や映画の技術、自然な演技が、この部門の他の候補作品を僅かに上回りました。
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© luxbox

最優秀短編作品賞
『デイリー・シティ』(Daly City)
監督:ニック・ハルタント 2024/16分/アメリカ

審査員コメント:
移民の家族が「アメリカン・ドリーム」に適応しようとする様子を巧みに描いた短編映画。異文化に溶け込もうとする過程を、ユーモアを交えた視点で表現しており、思わず笑いに包まれました。
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審査員賞
『島から島へ
』(From Island to Island)
監督:ラウ・ケクフアット 2024/290分/台湾

審査員コメント:
多層的な物語を織り交ぜた感情に訴える歴史ドキュメンタリー。私たちが人間性を忘れず、過去から学ぶことの大切さを改めて思い出させてくれる作品でした。
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最優秀主演賞
Cast of the girls / 少女たち 『私たちはデンジャラス』
監督:ジョセフィン・スチュワート・テ・フィウ

審査員コメント:彼女達の一体となった演技には、丁寧に作り込まれて、観る者の心をひきつけ、強く印象に残るものです。そして、アンサンブルはこの物語を見事に支えています。最優秀主演女優賞は『私たちはデンジャラス』の少女の皆様に贈ります。
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太平洋島嶼特別賞(笹川平和財団提供)

長編作品:『モロカイ・バウンド』(Moloka’i Bound)
監督:アリカ・テンガン Director:Alika Tengan

審査員コメント:刑務所を出所した若きハワイアンの男性が、家族との絆を取り戻そうと奮闘する物語。この作品は、将来有望な監督とその制作チームの才能を際立たせました。
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短編作品:『女王に花を』(The Queenʻs Flowers)
監督:キアラ・レイナアラ・レイシー Director:Ciara Leinaʻala Lacy

審査員コメント:
この魅力的なアニメーションは、若きハワイアンの少女と、退位させられたハワイの女王との偶然の出会いを通じて、歴史的事実を巧みに織り交ぜています。観る者を笑顔にし、希望の余韻を残してくれる作品でした。
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観客賞
『島から島へ』(From Island to Island)
監督:ラウ・ケクフアット Director:LAU Kek-Huat

ラウ・ケクフアット(本作監督)コメント:
沖縄の観客の皆さんがこの作品を評価し、観客賞を授けてくださったことに、心から感謝いたします。最近、撮影の関係で沖縄線についての研究を始めました。その中で、沖縄が戦争の記憶を積み重ねるために、どれほど努力をしてきたのかを理解するようになりました。以前、私はある老人を撮影したことがあります。彼は戦争を経験し、生き延びたことで、自分の戦争体験を語り続けることが必要だと感じていました。彼が言った言葉を今でもはっきりと覚えています。「私は自分が目にした悲惨で悲しい出来事の証人だ」そう言った彼は、私は目をじっと見つめ、こう続けました。「私は君にこの話を語った。だからこれからは君も証人だ」「君は生き延びた。この話を伝えていく義務がある」。私はこの言葉を胸に刻み、証人としての責任を持って映画を撮り続けています。

スペシャルメンション賞
『湖に浮かぶ家』(Tale of the Land)
監督:ロロ・ヘンドラ Director:Loeloe Hendra

審査員コメント:
この作品では、自身の内面的なトラウマと向き合うために孤独を選んだ女性の姿にとても心を動かされました。その素晴らしい描写を審査員一同が評価しました。
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最優秀企画賞
『煙突清掃人』(The Chimney Sweeper)
監督:太田信吾 Director:Shingo Ota

太田信吾(本作企画者)コメント:昨年も受賞出来ましたので、今回も受賞することが出来て、とても驚いています。ドキュメンタリーを監督することはとてもエネルギーが必要な、長い長い旅路です。こうしてディシジョンメイカーのみなさまとともに、プロセスをシェア出来たり、アドバイスをいただけることはとても光栄だと思います。ピッチングの時にもお伝えしましたが、この映画祭は私たちの一番大好きな映画祭です。この映画祭で温かいアドバイスや言葉をいただけたことに感謝したいと思います。ありがとうございました。
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詳細は公式HPへ
https://www.cinema-at-sea.com/news/r_3AwSxx

「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」 全部門上映作品ラインナップ

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「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」の新設部門を含む全ラインナップが発表されました。

「Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」は、「Cinema at Sea」をコンセプトに、優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深めること、地元ビジネスを支援すること、そして地元の才能あるアーティストの作品を広く発信し、沖縄が環太平洋地域における新たな国際文化交流の拠点となることを目指しています。
「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」では、プログラムの拡大と開催期間を延長し、環太平洋地域における映画芸術を称えるだけでなく、異文化間のつながりを促進していきます。
本年度から「コンペティション環太平洋短編部門」「Islands in Focus」部門「オキナワパノラマ」の3部門を新設し、全部門で計49作品が上映されます。
また、コンペティション部門の審査委員長は、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督に。

【正式名称】 第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭
(2nd Cinema at Sea - Okinawa Pan-Pacific International Film Festival)
【主  催】 特定非営利活動法人Cinema at Sea
【開催期間】 2025年2月22日(土)〜3月2日(日)
【開催会場】 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場、沖縄県立博物館・美術館
【実施内容】 コンペティション作品上映、特集上映、トークイベント、沖縄環太平洋映画インダストリー他
【公式サイト】https://www.cinema-at-sea.com/

【オープニング上映】
『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』(台湾)★ワールドプレミア

【クロージング上映】
『ティナー 私たちの歌声』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア

【コンペティション長編部門】
『光る川』(日本)※アジアプレミア
『ボーイ・イン・ザ・プール』(韓国)※ジャパンプレミア
『島から島へ』(台湾)※ジャパンプレミア
『湖に浮かぶ家』(インドネシア、フィリピン、台湾、カタール)※ジャパンプレミア
『異郷に迷う鳥たち』(マレーシア、台湾)※ジャパンプレミア
『年下の男』(アメリカ)※アジアプレミア
『モロカイ・バウンド』(アメリカ)※アジアプレミア
『私たちはデンジャラス』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『呼吸の合間』(カナダ)※ジャパンプレミア
『ルーツ 岩と雲の先へ』(ペルー、チリ)※ジャパンプレミア

【コンペティション短編部門】※本年度からの新設部門
『1878年』(フランス)※ジャパンプレミア
『追放者のささやき』(インドネシア)※ジャパンプレミア
『女王に花を』(アメリカ)※ジャパンプレミア
『新しく生まれ変わるために』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『隧道』(日本)〇アジアプレミア
『サマー・ウエディング』(アメリカ)〇アジアプレミア
『MAMU』(イギリス、台湾、アイスランド)〇アジアプレミア
『コーン』(韓国)※ジャパンプレミア
『デイリー・シティ』(アメリカ)※ジャパンプレミア

【Director in Focus部門】
『マオリの魂:戦いの呼び声』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『舞台と部族:マオリのシェイクスピアの旅』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア
『マオリ式英雄教育』(ニュージーランド)※ジャパンプレミア

【Islands in Focus部門】※本年度からの新設部門
『宇宙ライブ放送中』(ニューカレドニア)※ジャパンプレミア
『エデンの部族 独立の夢』(フランス)〇アジアプレミア
『探偵ピエロ』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア
『2020年の独立国民投票、その後は?』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア
『小島ビンゴ熱狂』(ニューカレドニア)◎インターナショナルプレミア

【Pacific Film Showcase】
『楽園島に囚われて』(クック諸島、ニュージーランド)〇アジアプレミア
『銀河のせせらぎ』(タイ)※ジャパンプレミア
『パシフィック・マザー』(ニュージーランド、日本)※ジャパンプレミア
『21日目』(シンガポール)※ジャパンプレミア

【特別上映】
『遊歩:ノーボーダー』(日本)★ワールドプレミア
『ルール・オブ・リビング』(日本)
『花束』(日本)
『孤独な楽園』(日本)
『義足のボクサー』(日本、フィリピン)

【オキナワパノラマ】※本年度からの新設部門
『マリの物語』(アメリカ)◎インターナショナルプレミア
『四世』(ペルー)
『オバアの縫い針 時がつなぐ記憶』(ブラジル)◎インターナショナルプレミア
『ENLIGHTENMENT』(日本)※ジャパンプレミア
『誰かが夜と決めたのさ』(日本)★ワールドプレミア
『琉球の恋』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『夕陽西下(せきようせいか)』(台湾)◎インターナショナルプレミア
『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(日本)★ワールドプレミア
『Okinawa Blue Note』(韓国)★ワールドプレミア

【VR体験上映】
『星砂』(フランス、台湾)

【マブイ特別賞】
『アジアはひとつ』(日本)※受賞対象はNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)

登壇ゲスト情報はこちら

審査委員長 ブリランテ・メンドーサ監督紹介
現在最も注目され、重要視されているフィリピンの映画監督の一人です。彼の作品は、「ネオリアリズム」のスタイルで知られ、社会の現実や、非凡な状況における普通の人々の生活を描写することで高く評価されています。
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2005年に『マニラ・デイドリーム』を製作し、映画監督としてデビュー。ロカルノ国際映画祭でビデオ部門金豹賞を受賞。2008年の『サービス』によってフィリピン映画としては24年ぶりとなるカンヌ国際映画祭コンペティション部門への出品を達成。2009年の第62回カンヌ国際映画祭では、2年連続でコンペティション部門出品となった『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』により監督賞を受賞した。また同年、『グランドマザー』が第6回ドバイ国際映画祭で作品賞を受賞した。2012年の第62回ベルリン国際映画祭では『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』がコンペティション部門で上映された。フランス政府から芸術文化勲章(シュヴァリエ)を授与されました。2021年沖縄ロケ映画『義足のボクサー』監督を務めました。

<ブリランテ・メンドーサ氏 コメント>
「2020年に『義足のボクサー』を撮影した沖縄にまた行けることをとても楽しみにしています。今年の「Cinema at Sea -沖縄環太平洋国際映画祭」の審査委員長にご招待いただき大変光栄です。沖縄という場所で映画を体験できることに感謝しています。」

ラインナップ発表記者会見の様子
2025年1月21日(火)に沖縄県那覇市第一牧志公設市場にてラインナップ発表記者会見が行われました。会見にはCinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭エグゼクティブディレクターの黄インイクさん、映画祭アンバサダーの尚玄さん、特定非営利活動法人Cinema at Sea 理事の東盛あいかさんが登壇しました。

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左から 黄インイクさん、尚玄さん、東盛あいかさん

映画祭のコンセプトについて黄さんは「海を通じて島々を繋げていくことで、広い環太平洋の方々が沖縄に集まり、最終的には文化交流の拠点になることを目指しています」と強調。前回の39本よりも10本増え、計49本となった上映作品をオープニング・クロージングをはじめとする各部門ごとに次々と紹介しました。
また、映画祭が1人の監督にフォーカスする「Director in Focus」部門のマイク・ジョナサン監督や、コンペティション部門の審査委員長を務めるブリランテ・メンドーサ監督からのコメントも読み上げられました。

アンバサダーの尚玄さんは「この映画祭は本当にすごく思い入れが強くて、今回も開催できたこと本当に嬉しく思います」とあいさつ。前回開催後の反響について「正直僕が想像してた以上に大きな反響があって、色んな映画祭で声をかけられて、Cinema at Seaの認知度が少しずつ増えてるのを実感しました」と語ります。ただ、その一方で「まだ特に沖縄地元の人たちには認知されていないことが否めない」と、県内での周知の必要性についても言及しました。
さらに「僕自身、昔国際通りにいっぱいあった映画館に足繁く通って映画を見て育った少年だったので、映画で世界中の歴史や文化を学んだこともありますし、映画を通して多様性を知ったことで救われたことがいっぱいあったんです」と振り返りながら、本映画祭については「敷居が高い映画祭にしたくないんです。色んな人が映画を観て、来場されたゲストの方と気軽に対話ができるものにしたい」と話し、「たくさんの方々に気軽にふらっと観に来ていただきたいです」と呼びかけました。

理事を務める東盛さんは、監督でもある自身の実感も込めながら「本映画祭には自分にも通じるような、大切な故郷やアイデンティティを込めた作品が集まっていると思います」とアピール。「そもそも私たち若い世代は(沖縄や世界のことについて)何も知らないなって思うんですよ。今回の上映作品たちが描くことについても、知らないことの方がきっと多くて。映画を通して私たちはきっとたくさんのことを知ることになるし、そして映画と海を通して自分たちが繋がっている、他人事ではないんだなっていうことを、きっと感じることができると思います」と、若い世代の実感を交えて述べます。
その上で、沖縄県内での受容については尚玄さんと意識を共有していることを示しながら「沖縄に根ざした、地元の人たちがちょっとお出かけするぐらいの感じで足を運べるような映画祭にしていけたらなと。映画祭という機会で、自分たちが沖縄から世界を見ること、知ることができる、こんな楽しい機会があるということをもっともっと知ってもらうために、頑張っていきたいと思います」と意欲を見せました。

各作品概要
【オープニング上映】
『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』
(Ocean Elergy :The Tragedies of Mudan and Ryukyu)
監督:ション・フー/2025/102分/台湾
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© Pingtung County Government films

1871年に起こった「牡丹社事件」を台湾の映画監督ション・フー(胡皓翔)が7年の月日をかけて制作したドキュメンタリー。宮古島から首里に年貢を納めた船が帰路で嵐に遭遇し、船に乗っていた69人の琉球人は、あえなく台湾南部へ漂流。そこは原住民であるパイワン族が住む地域で、たどり着いた琉球人の一部が殺害されるという悲劇が起こる。後に牡丹社事件として知られるこの出来事は、日本による台湾侵攻(1874年の台湾出兵)の口実となる。その後の琉球併合にも影響を与え、ひいては東アジアの地政学的状況を大きく変えるきっかけとなった事件をアーカイブ資料、インタビュー、再現映像で紐解いていく。

【クロージング上映】
『ティナー 私たちの歌声』(Tinā)
監督:ミキ・マガシヴァ/2024/124分/ニュージーランド
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©Tu Fa'atasi Films
クライストチャーチ地震で娘を失い、深い悲しみに暮れる母親のマレタ。非常勤の音楽教師として働くことになった彼女は、当初は気が進まなかったものの、生徒たちとの信頼関係を徐々に深めながら、音楽の持つ力や豊かで伝統的なサモア文化を通じて彼らを勇気づけていく。共通の課題を乗り越えていく中で互いに刺激を与え合い、マレタ自身も希望やモチベーション、そしてアイデンティティを取り戻していく。困難に立ち向かい、癒しと変容を描いた感動的で心を揺さぶるストーリー。脚本家兼監督のミキ・マガシヴァの長編劇映画監督デビュー作。

【コンペティション長編部門】
『光る川』(River Returns)
監督:金子雅和/2024/108分/日本
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© 長良川スタンドバイミーの会
1958年、夏の終わり。常に台風被害に脅かされている川沿いの集落で暮らす少年・ユウチャは、集落にやってきた紙芝居屋から、この土地で古くより伝わってきた洪水伝説を教えられる。かつて激しい悲恋の末に山奥の淵へ入水した女の哀しみが、数十年に一度、大洪水を起こすのだと。大型台風が接近する中、ユウチャは少年ならではの好奇心で、女の哀しみを鎮めて洪水を止めるため、大人も恐れる山奥の淵へ向かう…。

『ボーイ・イン・ザ・プール』(Boy in the Pool)
監督:リュ・ヨンス/2024/88分/韓国
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© 2024 KAFA All rights reserved.

静かな海辺の町で溺れかけたソギョンは、ウジュという謎めいた少年に助けられる。それをきっかけに、ウジュが秘めた驚くべき水泳の才能を知ることになる。負けず嫌いで競争心の強いソギョンは、ウジュへの憧れ、嫉妬、そしてほのかな恋心といった様々な感情の間で揺れ動く。秘密を分かち合い強い感情で結ばれた2人は「泳ぐこと」で、複雑な絆を築いていく。

『島から島へ』(From Island to Island)
監督:ラウ・ケクフアット/2024/290分/台湾
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© hummingbird production

第二次世界大戦中、日本の植民地支配下にあった台湾。その日常生活に、当時の日本帝国主義がどれだけ深い影響を与えたのか。マレーシア出身の監督が東南アジア各国の“島から島へ”と撮影を重ね、世代を超えて紡がれていく記憶とアーカイブ資料(口述歴史、家族の手紙、日記、映像)によって浮き彫りにするドキュメンタリー。台湾のアイデンティティや、現在のアジアにおける台湾の役割・位置づけを理解する上で必見の1本。2024年台北金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞、さらに2024年台北映画賞で年間最優秀映画賞と最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。

『湖に浮かぶ家』(Tale of the Land)
監督:ロロ・ヘンドラ/2024/98分/インドネシア、フィリピン、台湾、カタール
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(C) KawanKawan Media

インドネシア・ボルネオで繰り広げられる、祖先の土地を巡る争いで両親を失ったダヤク族の少女メイの物語。祖父トゥハに救われた彼女は現在、岸から遠く離れた仮設の浮家で暮らしている。過去の出来事で心の傷を抱えるメイは、陸地に足を踏み入れるたびに失神してしまうという不思議な症状に悩まされ、村人たちから「呪われた子」と呼ばれるようになる。土地紛争の余波と、それによってもたらされた深い感情的影響に迫る一作。2024年プサン国際映画祭FIPRESCI賞受賞。 

『異郷に迷う鳥たち』(NEXT STOP, SOMEWHERE)
監督:ジェームズ・リー/2024/87分/マレーシア、台湾
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@2024 EMUSE PICTURES (MALAYSIA) SDN BHD

異なる場所にある2つの魂が、異郷の地へと赴くことで自身の自由を手にすることを求めている。雨傘運動後の香港から台北に行き着いた俳優のコウは、パンデミック中の隔離措置によりホテルの部屋に閉じ込められてしまう。一方、経済的な安定を求めて結婚したキムは、本当の愛を知らないままに禁じられた恋に身を投じ、自らの選択と向き合うことを余儀なくされる。疑念に苛まれ困難にさらされる中、2人に問いが突きつけられる。―自由を追い求めるために、どこまで進む覚悟があるのか、と。主演は香港の名優アンソニー・ウォン。

『年下の男』(CHAPERONE)
監督:ゾーイ・アイゼンバーグ/2024/105分/アメリカ
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©TBD, USA Copyright Office, Library of Congress

29歳のミーシャは、ストレスや責任から解放された人生を夢見る自由奔放な女性。周囲が期待する「大人らしさ」に馴染むことを拒み、次第に友人や家族から距離を置くようになる。ある日、彼女を学生と勘違いした18歳のアスリートと出会う。2人のつながりは瞬く間に深まる一方で、その背後には〝危険〟が潜んでおり…。2024年スラムダンス映画祭で「ブレイクアウト部門」のグランプリを受賞したアイゼンバーグ監督のデビュー作は、彼女自身の経験に基づく物語。全編がハワイで地元俳優たちを起用して撮影されている。

『モロカイ・バウンド』(Moloka’i Bound)
監督:アリカ・テンガン/2023/111分/アメリカ
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©Molokai Bound LLC

仮釈放中のカイノアには1つの目的があった。それは、息子と妻との関係を修復して自身の不在によって失われた年月を取り戻すこと。しかし、父親になる準備ができていないほどに若い彼は、重くのしかかってくる過去を抱えながら、容易だが破滅的な選択へと誘われていく。ホールデン・マンドリアル=サントスの鮮烈な演技が光り、エンドロール後も深い余韻を残す。沖縄にルーツを持つハワイ出身のアリカ・テンガン監督は、同名の短編映画の成功を土台に、個人的な物語をセルフアイデンティティ、家族の絆、そして資本主義の影響を鋭く掘り下げた長編映画に仕立て上げた。カイノアの贖罪の旅路を見つめる中で、人と人とのつながりや困難に立ち向かう強さが心に響く。

『私たちはデンジャラス』(We Were Dangerous)
監督:ジョセフィン・スチュワート・テ・フィウ/2024/83分/ニュージーランド
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© 2024 Piki Island Limited

舞台は1950年代のニュージーランド。厳しい環境の非行少女更生施設からの脱走を試みたマオリの少女ネルリー(エラナ・ジェームズ)とデイジー(マナイア・ホール)は、捕らえられて遠隔地の施設に送られてしまう。敬虔な看守長(リマ・テ・ウィアタ)の厳格な支配下で、彼女たちは自由意志を巡る戦いを繰り広げる。抑圧的な環境に抵抗し、改革の名のもとに行われる「慈悲」の意味を問いかけながら、少女たちは互いの友情に救いを見出していく。困難に立ち向かう強さ、友情、そしてニュージーランドの優生学の負の歴史をテーマに、スチュワート=テ・ウィウ監督の卓越したストーリーテリングと若きキャストの繊細な演技が光る一作。2024年SXSW映画祭で長編ナラティブ部門の特別審査員賞、2024年ハワイ国際映画祭でパシフィカ賞(最優秀長編映画)を受賞。

『呼吸の合間』(7 Beats Per Minute)
監督:ユーチー・カン/2024/100分/カナダ
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バハマから南極まで、海の深淵に挑んで人間の限界を押し広げてきた記録破りのフリーダイバー、ジェシア・ルー。水面下300フィートに潜るために必要な精神力と内なる強さに迫るため、監督のユーチー・カンは並外れたルーの物語を映像に収める旅に出ることに。そしてその過程で芽生えた被写体との予期せぬ絆に、監督は自身の制作活動における倫理的な境界線と直面せざるを得ない状況に陥るのだった。2024年のSXSW映画祭とHot Docs カナディアン国際ドキュメンタリー映画祭に選出されたドキュメンタリー。

『ルーツ 岩と雲の先へ』(Through rocks and clouds)
監督:フランコ・ガルシア・ビセラ /2024/83分/ペルー、チリ
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© luxbox

8歳のフェリシアーノは、アンデス山脈の遠く離れた村で仲間たちと共にアルパカの群れを追って暮らしている。フェリシアーノのそばにいるのは人懐っこいアルパカのロナルドと、老いてはいるけれど忠犬のランボー。ペルーのワールドカップ出場への期待に溢れていた平穏な日々に、迫り来る脅威が影を落とす。強引な手法で事業を進める鉱山会社が、村の生態系を危険にさらしていた。その影響で、フェリシアーノの家族や村人たちは窮地に追い込まれることになる。2024年ベルリン国際映画祭のジェネレーションKPlus部門で特別賞を受賞作品。

【コンペティション短編部門】

『1878年』(1878)
監督:オーレリア・ラウル/2024/19分/フランス
物語の舞台は1878年のニューカレドニア。植民者と先住民であるカナック族の間で激しい戦いが繰り広げられる中、1人の宣教師が森の中に隠れている若いカナック族の少女を発見する。

『追放者のささやき』(Whispers of Exiles)
監督:デヴィナ・ソフィヤンティ/2024/16分/インドネシア
癒しの力を持つ神秘的な女性・ダラは、地元の劇場でナレーターとして働いている。ある日、彼女はその力をうっかり明かしてしまい、同僚たちを怖がらせてしまう。さらに事態は悪化してしまい、とうとう職場を去ることになってしまう。 

『女王に花を』(The Queenʻs Flowers)
監督:キアラ・レイナアラ・レイシー/2023/12分/アメリカ
時は1915年、舞台はホノルル。ハワイ先住民の少女エマが、最後の君主リリウオカラニ女王のために特別な贈り物を作ろうとする物語。

『新しく生まれ変わるために』(Reconstruction of New Life)
監督:ファン・シェンジュン/2024/15分/台湾
アニメーション、再現映像、インタビューを独自に組み合わせ、1950年代に緑島に設置されていた収容所「新生訓導処」で暮らした政治犯たちの人生を描き出すハイブリッド形式の短編映画。 

『隧道』(The Tunnel)
監督:本田広大/2023/16分/日本
ある日本人の男がやりたいことができずにブルックリンで葛藤している頃、彼の遠距離関係にあるガールフレンドが、彼のドッペルゲンガーを東京で見つける。彼はそれを信じることができない。だが、それはほんの始まりに過ぎなかった。

『サマー・ウエディング』(Summer Wedding)
監督:ツァイ・ティンリー/2024/11分/アメリカ
妊娠検査を試みるステファニアは、次々と妨害に遭う。そんな中、婚約者との予期せぬ対峙で隠されていた秘密が明かされ、最終的に母親との決戦へと行き着くことになる。

『MAMU』(MAMU)
監督:エフィー・チェン/2024/15分/イギリス、台湾、アイスランド
ロンドンに住む台湾の先住民マヤウは、男手ひとつで2つの人種的ルーツを持つ娘リナを育ててきた。しかし、年齢とともに記憶が薄れていくことで、彼女とのコミュニケーションが次第に難しくなっていく。マヤウはテムズ川の流れの中から太平洋の記憶に思いを馳せ、故郷の台湾とその神話的な守護者の呼び声を聞く。

『コーン』(Cone)
監督:ユ・ジイン/2024/15分/韓国
大好きな子ども向けテレビ番組の「ゴミを減らそう」チャレンジに熱心な7歳のミヌ。その唯一無二の報酬を手に入れる決意をしたミヌは、意欲に燃える。

『デイリー・シティ』(Daly City)
監督:ニック・ハルタント/2024/16分/アメリカ
アメリカに暮らすインドネシア系の少年が、居場所を見つけようと奮闘する両親の振る舞いを見つめる中で、自身のアイデンティティに向き合いつつ、次第に疑問を抱いていく。

【Director in Focus部門】

『マオリの魂:戦いの呼び声』(Struggle without End)
監督:マイク・ジョナサン/2024/114分/アオテアロア(ニュージーランド)
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©Locomotive Entertainment

ニュージーランド戦争中の1864年。ワイカト地方の戦いの中で生まれた、混血の少年兵とマオリの預言者の少女との予期せぬ絆を描く。混乱の中に放り込まれた2人は、信頼関係を築きながら互いを守り、タマリキ(子どもたち)の一団を安全な場所へ導くために奮闘する。絶望的な状況の中で彼らが見せる困難に耐える力、友情、そして生き抜くための闘いが「アオテアロア」(=マオリの言葉でのニュージーランド)の歴史を形作ることになる。

『舞台と部族:マオリのシェイクスピアの旅』(The Road to the Globe)
監督:マイク・ジョナサン/2012/60分/ニュージーランド
テ・レオ・マオリ語で美しく翻案したウィリアム・シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』を、ロンドンの伝説的な劇場グローブ座で上演したラウィリ・パラティネ率いる劇団「ンガーカウ・トア」。12週間にも渡る準備期間を経て、作品をするまでの旅路を追ったドキュメンタリー。「グローブ・トゥ・グローブ」フェスティバルで36か国の36の演劇が36の言語で上演され、2012年にはFIFO映画祭の特別審査員賞を受賞した。

『マオリ式英雄教育』(Heroes for Education)
監督:マイク・ジョナサン/2013/24分/アオテアロア(ニュージーランド)
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©Haka Boy Films Ltd

トゥプナ(祖先)から受け継がれた価値観や伝統に従って生活し、地域社会の模範となっているウェブスター家。すべての人々に知識と愛を分かち合う彼らの姿を通して、感動的で心温まる人生の一端を垣間見ることができる短編ドキュメンタリー。 

【Islands in Focus部門】

『宇宙ライブ放送中』(REFERENDUMBS)
監督:テレンス・シェブリン/2021/29分/ニューカレドニア 
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© Niaouliwood / La Perruque / Canal+ Calédonie

独立の是非を問う住民投票が否決に終わった後、ニューカレドニアは共生の象徴として、2人のカレドニア人を国際宇宙ステーションに派遣することを決めた。計画は綿密に準備され、式典は順調だったにもかかわらず、挑戦へのプレッシャーで過去のわだかまりが最悪のタイミングで再燃してしまう…。

『エデンの部族 独立の夢』(EDEN TRIBAL)
監督:マルタン・ジェイエ
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©BOXFISHPRODUCTIONS/2019

マチルド・ルフォール/2019/52分/フランス
2018年に行われたニューカレドニア住民投票を捉えたドキュメンタリー。ヴィユ・トゥオの部族が対峙する日々の闘いや、カナックの女性が部族の未来を掴み取るため、自らの文化を守る姿が描かれる。伝統的な習わしの刷新に挑む中で、彼女は「共同体が女性を部族のリーダーとして受け入れる準備ができているのか?」という問いに直面する。 

『探偵ピエロ』(Detective Pierrot)
監督:マイ・ル・フロクモエン/2023/16分/ニューカレドニア
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@AMBORELLA PRODUCTIONS @CANAL+

私立探偵のピエロ・レンケットは報道のニュース記事を基に調査をしている。

『2020年の独立国民投票、その後は?』(REFERENDUM 2020… and after?)
監督:フローレンス・ダルトゥイ/2022/52分/ニューカレドニア
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(c)aaaproduction

「ニューカレドニアが完全な主権を達成し、独立を果たすことを望みますか?」2020年10月4日、この問いを掲げた住民投票が行われました。それはマティニョン合意から32年という歴史的な節目を迎える瞬間であり、主要人物たちの視点を通して再訪される出来事でもありました。この映画は、ニューカレドニアの制度的歴史における重要な章を力強い映像で描いています。忠誠派のソニア・バケスとフィリップ・ゴメス、独立派のロック・ワミタンとチャールズ・ワシティンという4人の日常に密着し、投票の前後と投票日当日の彼らの体験を捉えています。投票結果は僅差で「反対派」が勝利するものでした。 

『小島ビンゴ熱狂』(Bingo)
監督:ファビアン・ローブリー/2019/54分/ニューカレドニア

島や本土のビンゴからカジノビンゴまで、ニューカレドニア全土で愛されるゲーム「ビンゴ」の魅力的な旅へと観る者を誘うドキュメンタリー。1970年代に初めて遊ばれてから、ビンゴはニューカレドニアの文化的風景の中核を成す存在にまで成長した。さまざまな人物の個人的な証言や観察眼を通して、ビンゴの多面的な魅力を徹底的に探求し、その文化的意義や社会的影響、そして地域社会のダイナミクスを形成するまでに至った役割に光を当てる。

【Pacific Film Showcase】

『楽園島に囚われて』(Stranded Pearl)
監督:ケン・カーン & プラシャンス・グナセカラン/2017-2024/91分/クック諸島、ニュージーランド
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©Mahayana Films

裕福な起業家のジュリアは新婚の夫とともに出張中に嵐に巻き込まれ、未踏の孤島に取り残されてしまう。唯一の仲間は、逃亡中の犯罪者かもしれない過去を隠した謎めいた男シド。2人が生き延びようと奮闘する中で、少しずつ秘密が明らかになっていく。窮地に陥るだけでなく、避けてきた自らの過去や真実にも向き合わざるを得なくなる彼女たちの運命は…。クック諸島の息をのむような自然の中で描かれる、ロマンティックでアクション満載のストーリー。

『銀河のせせらぎ』(Rivulet of Universe)
監督:ポッサトーン・ワッチャラパニット/2023/89分/タイ
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©Punmore film

カンボジア出身の移民労働者ジットは、過去、現在、未来が交錯する時空の“層”を感知する自身の特別な能力を見出す。この能力を深めるため、ジットは伝説と歴史的な意義に満ちたタイのピマーイへと旅立つ。そこで彼は古代神話の愛の三角関係を奇妙に反映したような、不安定な関係性に悩む若いカップルに出会う。彼らの人生が絡み合いながら、神話と現実の境界線は曖昧になり、歴史と運命が入り混じる旅へと引き込まれていく…。

『パシフィック・マザー』(Pacific Mother)
監督:キャサリン・マクレイ/2023/89分/ニュージーランド、日本
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© 2023 Umi Films

女優でフリーダイバーの福本幸子と、世界チャンピオンのフリーダイバーである彼女のパートナー、ウィリアム・トラブリッジは、伝統的な出産の習慣、地域社会の支援、そして環境保護の深い繋がりを探るため、沖縄からハワイ、タヒチ、クック諸島、アオテアロア(ニュージーランド)と、太平洋を横断する変革の旅に出る。親子関係、レジリエンス(困難を乗り越えて回復する力)、そして人間と自然の相互関係を深く探る作品。2023年Doc Edgeフェスティバルで、最優秀ニュージーランド映画賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞、最優秀撮影賞など複数の賞を受賞。"

『21日目』(21 Days)
監督:ヨン・ムンチー/2021/17分/シンガポール

母親の死から21日後。ジンと父親は彼女を失った悲しみと喪失感、そして彼女のいない新しい生活を歩む。

【特別上映】

『遊歩:ノーボーダー』(YUUHO: No Border)
監督:淺野由美子/2024/104分/日本
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©2024動画工房ぞうしま

ある集会で安積遊歩さんを知った。彼女は車椅子で現れ、愛と性について語った。「私は好きな男性ができたらすぐ告白する。『愛しければ奪ってでも』という言葉も好き」どうしたらこんな生き方ができるのだろう?1956年福島県で生まれの安積遊歩さんは生後間もなく骨形成不全症と診断された。障がい者としての未来に絶望し、自殺未遂をするまで追い詰められた。しかし19歳で障がい者運動を展開した「青い芝の会」と出会い、27歳でアメリカに留学しフェミニズムに触れる。遊歩さんは「私の身体は美しい」という。障がい者運動も社会の不正義もジェンダーの問題も、ばっさばっさと切り開いてきたパンクな女性のシスターフッド・ドキュメンタリー。

『ルール・オブ・リビング』(Rules of living)
監督:グレッグ・デール/2023/113分/日本
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© Mirus Pictures

阿部美久子(49)はバツイチのキャリアウーマン。介護中の母や海外を旅する娘、自分勝手な同僚たちに振り回され、心の余裕を失っている。再婚を勧められる幼馴染・光一との関係にも迷いがある中、突然娘の紹介でアメリカ人観光客ヴィンセントが同居を申し出る。最初は拒絶するも、雨の日の彼の姿に心を動かされ、厳しいルールの下で3か月間の滞在を許可。少しずつ心を通わせる二人だったが、美久子は自分の人生を振り返り、「誰のための人生なのか」と自問する。周囲の期待を超え、自らの望む新しい生き方を模索する美久子は、ヴィンセントに英語を教えてほしいと頼み、自分自身を解放し始める。

『花束』(BOuQuET)
監督:サヘル・ローズ/2024/94分/日本
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© hanataba project

映画であって、映画ではない。物語というものは存在しない。ドキュメンタリーと、ノンフィクションと、ドラマ—これらを融合させた実験映画と云うべきなのか?それとも言葉とお芝居による記億映画とでも云うべきか?8人の少年少女が主人公。誰ひとり役者ではない。一見、どこにでもいる普通の少年少女たち…だが、彼らは幼少期、思春期に普通とは言い難い体験をしている。彼等が児童養護施設で過ごした記憶を辿ると、忘れ難い瞬間(ひととき)があった。奪われた時間、怯え続けた日々の中で、彼等が望んだもの。その忘れ難い瞬間をカメラの前で彼等自身が演じていく。

『孤独な楽園』(Paradise of Solitude)
監督:片嶋一貴/2023/100分/日本
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©2023 nobu pictures

新連載のスタートが控えている人気小説家・津島耀は、スランプに陥り、原稿用紙は白紙のまま時間だけが過ぎてゆく。母に棄てられ、厳格なクリスチャンの父を自死で亡くして心に傷を負っている少女・あやめは、過干渉の叔母に育てられ、島の工場で働きながら変化のない日々を送っていた。ある日、外国人の同僚から依頼され、あやめが代筆した1通のラブレター。「私の愛を見つけてください」たまたま手紙を目にしたのは、津島だった。出会うはずのない2つの人生が交錯したその先に、楽園は見つかるのだろうか?

『義足のボクサー』(GENSAN PUNCH)
監督:ブリランテ・メンドーサ/2021/110分/日本、フィリピン
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© 2022「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会

沖縄で暮らす津山尚生は、プロボクサーを目指し日々邁進している。ひとつだけ人と違うのは、幼少期に右膝下を失った義足のボクサーであること。日本ボクシング委員会にプロライセンスを申請するが身体条件の規定に沿わないとして却下されてしまう。夢をあきらめきれない尚生はプロになるべくフィリピンへ渡って挑戦を続ける。そこではプロを目指すボクサーたちの大会で3戦全勝すればプロライセンスを取得でき、さらに義足の尚生も毎試合前にメディカルチェックを受ければ同条件で挑戦できるというのだ。トレーナーのルディとともに、異なる価値観と習慣の中で、日本では道を閉ざされた義足のボクサーが、フィリピンで夢への第一歩を踏み出す。 

【オキナワパノラマ】

『マリの物語』(The Tale of Mari)
監督:アーニャ・ヴォーン/2024/6分/アメリカ
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© Anya Vaughn 2024

沖縄で幼少期を過ごし、アメリカへと移住したマリ。年老いた彼女が、新聞漫画家になる夢を追いかけたかつての日々を語り出す。

『四世』(Yonsei)
監督:ロペス比嘉 春海/2021/10分/ペルー
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© Harumi López Higa

監督のハルミ・ヒガ・ロペスは、沖縄系移民“四世”。ペルーへと渡った日本人と沖縄人の移民の歴史の中で紡がれてきた曾祖母、祖母、母の個人的な経験を振り返る。それぞれの世代・時代に表出する社会的な難題に立ち向かい、家族のために新たな機会を切り開いてきた彼女たちの奮闘の物語。 

『オバアの縫い針 時がつなぐ記憶』(IN OBA’S SEWING NEEDLES: fragments and the work of time)
監督:安里直美/2021/13分/ブラジル
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ナオミ・アサト監督がおばあ(祖母)の記憶を通して描く、沖縄の女性たちとブラジルのディアスポラ(移民)の物語。大切に残されてきた写真や物品には、日本とアメリカの帝国主義によって引き起こされた暴力の痕跡が静かに雄弁に宿る。移民家族の世代を超え、今なお響き渡る沈黙を捉える。

『ENLIGHTENMENT』(ENLIGHTENMENT)
監督:石川竜一/2025/72分/日本

離婚と離職をして、妻とひとり息子と別れた悟志がコザの実家に戻る。かつてイラストレーターを目指した悟志の部屋は青春時代にため込んだ流行りのサブカルチャーに溢れている。失われた青春の時を埋めるように、再びトレンドのサブカルチャーに没頭し、母親に身を寄せながらその日暮らしの日々にただただ戯れた。バブル期からコロナ禍へと至る30年間で、メディア形態の変遷やインターネットの普及が急激に進み、息子は成長し母親は年老いる。失うものはなくとも、得られることもない時間が積み重ねられた。そんな中、母親が倒れる。ひとり家に取り残された悟志は、社会との接点を求めるかのように部屋の重い扉を開けるのだが…。 

『誰かが夜と決めたのさ』(Who knows The night)
監督:仲村颯悟/2024/22分/日本
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©︎RYU-GOATS

小学4年生のユカは母と2人暮らし。いつも気にかけてくれる母に迷惑をかけないようにと、自分の気持ちを隠しながら生活していた。ある日、いつものように近所の公園で踊っているとキジムナー(妖怪)に出会う。「俺よ、もうすぐ死ぬぜ」と唐突に告げるキジムナーに、ユカの気持ちが揺れ動く。

『琉球の恋』(The Love in Okinawa)
監督:リン・フーディ/1968/90分/台湾
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© 國家電影及視聽文化中心 Taiwan Film and Audiovisual Institute

沖縄で海運業を営む台湾人のリン一家は、次男のホンハイが父親の意向を無視してお見合いを拒否した挙句、ライバル会社の娘シウリンと恋に落ちたことで混乱に陥る。世代間の対立と運命の歪が次々と明らかになる中、苦悩に苛まれたホンハイはアルコール依存になってしまう。“定め”に抗う恋人たちは、家族の対立から解放され、運命を書き換えることができるのか? 

『夕陽西下(せきようせいか)』(Sunset Over the Horizon)
監督:リン・フーディ/1968/108分/台湾
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© 國家電影及視聽文化中心 Taiwan Film and Audiovisual Institute

沖縄の海辺での夕暮れ。無一文で中年の台湾人僧侶チンウェンは、海を見つめる若い日本人女性シズコと出会う。両親の望みで富を得るために結婚することを拒否し、ロマンチックな愛を求めている彼女とチンウェンは惹かれ合う。だが、2人の“年の差恋愛”は、年齢、アイデンティティ、社会的な風潮などの困難に直面する。そしてチンウェンの過去に紐づく根深い「障害」の存在も明らかになってゆく…。愛が始まり、そして終わる海辺で、時間の流れとトラウマの重さに向き合わなければならない2人の愛は、年齢、文化、そして辛い過去の障壁を超えていくことができるのか?

『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(STEP OUT Nii Nii's Nirai Kanai)
監督:堤幸彦、共同監督:平一紘/2023/96分/日本
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©「STEP OUT」製作委員会

舞台は独自の環境とカルチャーによって、暮らしの中に音楽やダンスが溶け込む沖縄。母親の朱音(あかね)、妹の舞(まい)と3人暮らしの照屋踊(てるやよう)はダンススクールのリサに憧れ、ダンスをはじめる。朱音は家計を支えるためにスナックで働き、人とのかかわりが苦手な舞はスクールの前でいつも兄の姿を一心に見つめていた。やがて踊はリサとペアを組むようになり、だんだんとその才能を開花させていく。そんな中、朱音のもとに一本の電話があり、ある男が訪ねて来る。偶然、家の前で男を目撃する踊。後日、テレビでダンスオーディションを開催すると発表した音楽プロデューサーのHIROKIが、その人だった―。 

『Okinawa Blue Note』(Okinawa bluenote)
監督:チョ・ソンギュ/2025/111分/韓国
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@waw

ベストセラー作家のキム・ジョンミンは、新たなインスピレーションを求め、バカンスも兼ねて沖縄を訪れる。しかし、到着初日から次々と予期せぬトラブルに遭遇。その中でも最も驚くべき偶然が、同姓同名の旅行者との出会いだった。彼女はウェブトゥーンアーティストのキム・ジョンミン。特別だと感じた誰かに自分の気持ちを告白するという目的を持って沖縄にやって来ていたのだった。彼は几帳面で控えめ、彼女は楽観的で活気に満ちていて、正反対な性格にもかかわらず、2人は思いがけず旅を共にすることに。その珍道中の道のりで、夢や恐れ、そしてこれまでに想像もできなかったラブストーリーの筋書きに直面することになる。

【VR体験上映】

『星砂』(The Starry Sand Beach)
監督:ニナ・バルビエ、シン・チェンホアン/2021/15分/フランス
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© Lucid Realities - Museum national d’Histoire naturelle

東シナ海のビーチに生息する有孔虫のバクルギプシナ・スファエルラータ(Baculogypsina sphaerulata、和名:ホシスナ)。その星のような砂粒に焦点を当て、北極星、南十字星、そして神話の海蛇にまつわる伝説を掘り下げていく。伝説の再話、水中の森への降下、そして地球の古代の地質記憶への探求を経て、4億年前の有孔虫の起源へ遡る。その中では、海洋酸性化を象徴する海蛇によってもたらされる、海洋微生物への脅威の増大も目の当たりにすることになる。自然、神話、探査が交錯する科学的なファンタジー。

【マブイ特別賞】

『アジアはひとつ』(Asia is One)
監督:日本ドキュメンタリストユニオン/1972/96分/日本
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©神戸映画資料館

「復帰」に伴い集団就職や観光事業が進む沖縄。現代的な風景の一方で、近代日本資本主義の発展過程で犠牲になった西表炭坑夫の歴史、日本の植民地時代を生きた朝鮮人や、戦後帰国できずに放置された台湾人の姿の記録が映し出される。撮影当時、日中国交回復の裏で台湾と断交になったため、寄港を許されない「密航」の台湾漁船に遭遇し、船員らを追ってNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)は台湾へと渡る。奥深い山地に入り、そこで日本兵として戦ったタイヤル民族との予期せぬ出会いのなかで、日本の植民地支配の痕跡を目の当たりにする。東アジアの近現代の民衆史を圧倒的なスケールで描いたNDUの集大成となる作品。

Cinema at Sea プレイベント開催

本映画祭の開催を記念し、映画祭プログラマーとゲストを招いたプレイベントを開催いたします。本年度から新設された「コンペティション環太平洋短編部門」「Islands in Focus」部門「オキナワパノラマ」をはじめ、全49作品の見どころをたっぷり語ります。

①2025年2月8日(土)14:00~
「Cinema at Sea 直前!映画祭の航海術」映画祭見どころ雑談会@那覇
場所:てんぶす那覇テンブスホール(沖縄県那覇市牧志3丁目2番10号)
※参加無料

②2025年2月9日(日)18:00~
「去年の映画、今なら語れる!」『オキナワ・フィラデルフィア』特別上映会+映画祭見どころ雑談会@沖縄市
場所:シアタードーナツ・オキナワ(沖縄市中央1-3-17 胡屋バス停まえ)
上映作品:『オキナワ・フィラデルフィア』

【電話予約】070-5401-1072(シアター直通)10:30~17:00
【料金】一般:1,320円/中高専大生:1,100円/小学生:700円
 1ドリンクオーダー制

その他の上映情報は劇場HPをご確認ください
https://theater-donut.com

「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」公式HP
https://www.cinema-at-sea.com/

登壇ゲスト情報
https://www.cinema-at-sea.com/news/oQIaIEpl

問い合わせ
Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭事務局 PR担当
【Mail】release@cinema-at-sea.com

第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭

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開催期間と新設部門決定
2025年2月22日(土)〜3月2日(日)に沖縄県・那覇市を中心に「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭(以下、本映画祭)」が開催されます。
この映画祭は「Cinema at Sea」をコンセプトに、優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深めること、地元ビジネスを支援すること、そして地元の才能あるアーティストの作品を広く発信することを目指し、最終的には、沖縄が環太平洋地域における新たな国際文化交流の拠点となることを目指しています。
プログラムの拡大と開催期間の延長により、第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭は、環太平洋地域における映画芸術を称えるだけでなく、異文化間のつながりを促進するための主要なプラットフォームとしての地位確立を目指します。

【正式名称】 第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭
 (2nd Cinema at Sea - Okinawa Pan-Pacific International Film Festival)
【主催】 特定非営利活動法人Cinema at Sea(代表理事:黄インイク)
【開催期間】 2025年2月22日(土)〜3月2日(日)
【開催会場】 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場、沖縄県立博物館・美術館等、那覇市内を中心とした会場
【実施内容】 コンペティション作品上映、特集上映、トークイベント、沖縄環太平洋映画インダストリー他
【公式サイト】https://www.cinema-at-sea.com/

第2回映画祭では、地域映画や地元映画産業を支援するため、新たに3つの部門を導入し、大幅に拡大したプログラムを展開。
初めて「コンペティション短編部門」を開催し、環太平洋地域の優れた短編映画にスポットを当てます。また、新部門「Islands in Focus」では、毎年1つの太平洋諸島地域に焦点を当て、対象地域の映画史や名作を通して、彼らのユニークな視点や物語について国際的な認知を高めることを目的とします。そして、新部門「オキナワパノラマ」では、沖縄に関連するクラシック作品の修復版から注目の新作まで多様なラインナップで上映されます。

第二回のメインビジュアルが決定。
本年度の映画祭テーマは「Boarder/less」

第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭のメインビジュアルは、人と自然との境界を立ち位置に活動する画家の山田祐基氏が制作。本年度の映画祭のテーマである「Boarder/less」にあわせて制作されたメインビジュアルの作品名は「あわい/あはひ【間】」。
〈山田祐基氏 コメント〉
海をつなぐ潮の道を通して、ものや思い、血の交歓を得たのも人間であり、そこに国境や海域といったBorderを作ったのもまた人間です。
そのBorderを溶かすこと(Borderless)ができるのも人間だと信じたい。
自身の立ち位置でもあり、制作の軸でもある「あわい/あはひ【間】」をテーマに、向かい合うもののあいだ、また、二つのものの関係を白黒させすぎず、その混じり合った状態を楽しむ様子を表現しました。
「分ける」ために必要だったBorderを「あわい」に進化させていく時代。
Borderなど初めからなかったかのように自由に行き来する動植物たち、子供たちに学ぶことがたくさんあると日々感じます。

オープニング作品決定 ー 映画『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』
のオープニング作品は、1870年代に起きた「牡丹社事件」を題材にしたドキュメンタリー映画『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』(Ocean Elergy :The Tragedies of Mudan and Ryukyu)です。



1871年、宮古島から年貢を納めるために首里へ向かっていた船が暴風雨に遭遇し、南台湾に漂着。この船には琉球人69名が乗船していて、彼らはパイワン族が住む地域に到達しました。しかし、パイワン族の一部がこれらの琉球人を殺害するという事件が発生しました。この事件は後に「牡丹社事件」として知られるようになります。
この事件は単なる地域的な紛争に留まらず、日本の台湾侵攻(1874年の台湾出兵)を正当化する口実として利用されました。さらに、この事件をきっかけに清国がパイワン族と交渉を行い、日本が琉球を併合する流れに繋がるなど、東アジアの地政学に大きな影響を与えました。
今年は牡丹社事件の150周年にあたり、5月に屏東県牡丹郷では150年記念行事が行われました。宮古島市も代表者を派遣し祭典に参加。その後、11月に牡丹郷からも宮古島を訪問し、交流協定覚書を締結するなど、沖縄と台湾側双方がこの悲劇を乗り越えるため和解の歩みを続けています。
たった一つの遭難船事故がどのように東アジア地域の政治地図を再形成したのか?本作は、貴重なアーカイブ資料や専門家と遺族によるインタビュー、再現ドラマ映像を用いて、沖縄と台湾の歴史的な繋がりを掘り下げた力作であり、地域文化と記憶を鮮やかに描き出しています。琉球王国と台湾の先住民族との運命や対立に焦点を当て、海を越えて人々が繋がる物語を繊細かつ力強く描き出しています。
本作は、台湾出身の胡皓翔(ション・フー)監督が七年間かけて製作し、日本と台湾の学者や専門家、さらに宮古島と牡丹郷における牡丹社事件の遺族の皆様の協力によって完成しました。

<『青海原の先ー牡丹と琉球の悲歌』監督 胡皓翔(ション・フー)コメント>
2018年から始まった創作の旅の中で、私は何度も漢民族、先住民、そして琉球の友人たちと向き合いました。彼らの眼差しには真摯な思いが宿っており、繰り返しこう念を押されました。「監督、どうかこの歴史を多くの人に伝えてください!」そのため、このドキュメンタリーがCinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭のオープニング作品として上映されると聞いたとき、心の底から感動しました。この映画祭こそ、この歴史を世界に伝えるのに最もふさわしい舞台だと感じています。
この歴史は、過去100年近くにわたる琉球と台湾の運命に深い影響を与えましたが、政権の変遷によって歴史教科書には十分に記録されることがありませんでした。そのため、多くの人々がこの土地の物語を断片的にしか知らないのが現状です。もしご自身の過去に興味をお持ちであれば、ぜひこのドキュメンタリーをご覧ください。時間に埋もれた足跡をともに探る旅へとご案内します。

<Cinema at Sea - 公式アンバサダー 尚玄 コメント>
このたび『第二回 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭』を開催できることを大変嬉しく思います。昨年11月に開催された第一回目は予想以上の反響をいただき、まだまだ改善すべき点が多々あるとはいえ、やはり沖縄は国際交流の場に相応しい場所であると再確認しました。
私たちの目指すところはこの映画祭を継続し、地域に根付かせていくことです。県内外だけでなく、海外の映画を愛する方々も足を運びたくなるような魅力的な映画祭にしていけるよう、これからも尽力して参ります。ぜひみなさん気軽に遊びに来てください!

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 沖縄・八重山>
日時: 12月13日(金)〜15日(日)
場所: 西表・竹富町離島振興総合センター ※12月13日(金)
石垣・石垣市民会館 ※12月14日(土)、15日(日)
https://www.cinema-at-sea.com/news/cdAp6aJr

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 大阪>
日時: 12月28日(土)~30日(月)
場所: 第七藝術劇場
(大阪市淀川区十三本町1丁目7−27 サンポードシティー 6階)
https://www.cinema-at-sea.com/news/sXt0SVHW

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 台湾・東海岸>
日時: 2025年1月
場所: 花蓮・Hualien Railway Cinema ※1月3日(金)~5日(日)
台東・Just Arts-Taitung Performing Arts House
※1月11日(土)~12日(日)
宜蘭・Media Center 57 ※1月25日(土)~26日(日)

「Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」お知らせ

映画祭名称・ロゴマークリニューアル、第二回映画祭予定、コンペティション募集開始、 第一回作品巡回展

主催のムーリンプロダクションからのお知らせを記します。

●「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭」開催予定
NPO法人Cinema at Sea(代表理事:黄インイク)は、2025年2月下旬から沖縄県・那覇市を中心に「第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭(以下、本映画祭)」を那覇市ぶんかテンブス館テンブスホールをメイン会場に開催いたします。
本映画祭は「Cinema at Sea」というコンセプトに優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深め、将来的に沖縄が環太平洋地域において新たな国際文化交流の場となることを目指しています。
昨年度一回目を開催し、国内外の来場ゲストや来場者等から大きな反響をいただき、第二回目となる本年度から、名称・ロゴを一新し、また多くの方にご来場いただけるように開催時期を2月下旬に変更しました。

第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭 概要
【正式名称】第二回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭(Cinema at Sea - Okinawa Pan-Pacific International Film Festival 2024)
【主  催 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭事務局
【開催期間】2025年2月下旬
【開催会場】那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール等、那覇市内を中心とした会場
【実施内容】コンペティション作品上映、特集上映、トークイベント、沖縄環太平洋映画インダストリー他
【公式サイト】https://www.cinema-at-sea.com/

●コンペティション部門の募集開始のお知らせ
10月10日(木)よりコンペティション部門の作品募集が開始されています。その他の特別招待作品や実施イベントについても、随時発表しますので、こちらも公式ホームページや各種SNSをご確認ください。今年度より短編部門を新設。本コンペティションは環太平洋地区における優れた才能を発掘するだけでなく、上映を通じて観客に新たな視点を提供し、環太平洋地区の過去・現在・未来について考える契機となることを目的とします。本年度からは新たに「環太平洋短編部門(Pan-Pacific Short Film Competition)」を新設。短編ならではの独創的な作品の発掘を目指します。応募締切は11月15日まで。コンペティションの詳細は、公式ホームページをご確認ください。

●映画祭名称・ロゴマークをリニューアル

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「沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」という名称を、本年度より「沖縄環太平洋国際映画祭」に変更することをお知らせいたします。この名称変更は、映画祭のブランドとアイデンティティをさらに深化させ、より多くの方々に親しみやすく、またより広範に認知されることが主な理由です。
名称変更に合わせ、本映画祭をPRするロゴマークも「沖縄」という場所においてつながりの強い「ザトウクジラ」をモチーフにしたロゴマークに一新します。
ザトウクジラは、広い環太平洋の海流を回遊する生き物です。毎年、ザトウクジラは冬の間、出産・子育て・交尾のため、ハワイ・小笠原・沖縄などの暖かい海にやってきます。そのザトウクジラをモチーフにしたロゴマークに一新。また、斜めに向いたモチーフは地軸と同じ角度に設定。地球全体のグローバルな視点をいう意味が込められており、本映画祭が沖縄から世界に向けて大きく羽ばたく映画祭になってほしいとの願いが込められています。

●Cinema at Sea - 巡回映画祭(東京・大阪・沖縄離島・台湾の東海岸)の開催決定

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第一回目の映画祭終了後より多くの反響をいただいた活動の一環として、東京、大阪、沖縄離島、そして台湾東部で昨年度のコンペティション受賞作品を中心とした巡回上映祭を実施します。異なる地域での上映を通じて、地域の文化や価値観を共有し、国際的な映画や文化の交流を深めることを目指しています。

●<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 東京>
日時: 11月22日(金)〜12月5日(木)
場所: キネカ大森(東京都品川区南大井 6-27-25 西友大森店 5F)
上映作品:『オキナワより愛をこめて』『サバイバル』『緑の模倣者』『ゴッド・イズ・ア・ウーマン』『BEEの不思議なスペクトラムの世界』『アキコと過ごした八月』『シンプル・マン』

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 大阪>
日時: 近日上映
場所: 第七藝術劇場(〒532-0024 大阪府大阪市淀川区十三本町1丁目7−27 サンポードシティー 6階)
上映作品:近日発表

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 沖縄・八重山>
日時: 12月13日(金)〜15日(日)
場所:西表・竹富町離島振興総合センター※13日(金)
   石垣・石垣市民会館小ホール※14日(土)/15日(日)
内容: 『オキナワより愛を込めて』『緑の模倣者』『大海原のソングライン』

<Cinema at Sea - 巡回映画祭 in 台湾・東海岸>
日時: 2025年1月中旬~2月上旬
場所: 宜蘭・Media Center 57、花蓮・Hualien Railway Cinema、台東・Just Arts-Taitung Performing Arts House
内容: 『大海原のソングライン』『シンプル・マン』『緑の模倣者』『ばちらぬん』『サバイバル』『オキナワより
愛をこめて』『オキナワ・フィラデルフィア』『あなたの微笑み』

問い合わせ
 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭事務局
 【Mail】staff_cias@cinema-at-sea.com

第一回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル授賞式

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 2023年11月29日(水)、沖縄県那覇市をメインにした新しい映画祭・第一回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバルが閉幕しました。11月23日(木・祝)から一週間にわたった会期中は、コンペティション9作品のほか、特別上映、クリストファー・マコト・ヨギ監督特集(Director in focus)やマブイ特別賞受賞の高嶺剛監督(とキャスト・スタッフ)特集、Pacific Islands ショーケース、VRセレクション、野外上映など多くの映画が上映され、また、トークイベント等も多々催され、充実した映画祭となりました。
 11月29日のクロージングセレモニーでは、コンペティション部門とインダストリー部門各賞が発表されています。審査員長のアミール・ナデリ監督以下ベッキー・ストチェッティ氏(ハワイ国際映画祭エグゼクティブ・ディレクター)、仙頭武則氏(映画プロデューサー)、サブリナ・バラチェッティ氏(ウーディネ・ファーイースト映画祭代表)、伊藤歩氏(俳優)の計5名が審査員を務めました。授賞式冒頭、ナデリ監督は「私たちはたくさんの映画を観ました。たくさんの人たちに出会いました。私たちは家族のように親しい関係になっていたと思います。審査員もまた親交を深めながらベストを尽くしていきました。喧嘩をしながら心からの言葉を尽くして私たちは受賞作品を選んでいきました。素晴らしい役者、編集、すべての作品に賞を与えたいという思いがありましたが、私たちも限られた時間のなかでとても長い議論をして選びました」と審査過程について話され、白熱した会議であったことを明かしました。受賞結果は以下のとおりです。

【コンペティション部門】
最優秀映画賞『緑の模倣者』
The Mimicry/綠金龜的模仿犯 (監督:ジョン・ユーリン 鍾侑霖)

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ナデリ審査員長とジョン・ユーリン監督

受賞理由:シンプルで複雑で深い、そしてイマジネーションを掻き立てるような、カメラワークの正しい作品だった。(審査員長アミール・ナデリ氏談)
受賞コメント(ジョン・ユーリン監督):初めて沖縄に来ました。僕がこの作品で伝えたいことと沖縄は相通じるものがあります。違う民族が共存共生するなかで、皆が違う意見や違う眼差しを持っています。それをどうやって互いに受け入れていくかということがとても重要です。この関係性は人と人のみならず、人とモノ、人とあらゆる生物にも言えることだと思います。グローバリゼーションが進むなかで、この沖縄の島に皆がこうして集まったことはとても感動的です。
 補足:本作は、台湾の客家テレビ局のテレビ映画として製作されたもので、2023年の金鐘奬(放送メディアを対象にした賞)の最優秀テレビ映画賞受賞作。とある集合住宅に住む人々の日常を人間に擬態したコガネムシの視点で描いている。

観客賞『アバンとアディ』
Abang Adik/富都青年 (監督:ジン・オング 王礼霖)

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オング監督とプレゼンターの伊藤歩


 受賞コメント(ジン・オング監督):第一回のこの映画祭で『アバンとアディ』が観客賞を受賞したことをすごく嬉しく思います。2回の上映でのアフタートークで皆さんに涙を流させてしまって申し訳ない気持ちになりました。涙を流しながらこの作品をとても気に入っている、好きだという気持ちを伝えてくださいました。この作品をもって皆さんにお会いできたことを嬉しく思います。

主演俳優賞ウー・カンレン(呉慷仁)『アバンとアディ』

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ウー・カンレンの画像を背にオング監督とプレゼンターの仙頭氏


 受賞コメント(本人不在につきジン・オング監督が代理で登壇):先週(11/25)の金馬奬で最優秀主演男優賞を獲ったばかりのウー・カンレンが、まさかこの沖縄の映画祭でもこのような賞をいただけるとは本当に僕は夢にも思っていませんでした。俳優であれば、このような賞がいかに励みになるか、身に染みることでしょう。今日、彼はこの場にいないのですが、きっと彼にとって嬉しいニュースだと思います。心より感謝申し上げます。
 補足:コンペティションの応募要項に俳優についての賞の記載はなく、カタログにも「最優秀長編部門賞(最優秀映画賞)」と「観客賞」についての記述しかなかった。なお、本作でウー・カンレンは台湾の俳優であるが、このマレーシア映画では全編マレー語の手話を用いて演技をしている。

審査員賞①『アバンとアディ』
 受賞コメント(ジン・オング監督):このような席に3回連続で登壇するとは夢にも思いませんでした。まずは本当にありがとうございます。この賞は、映画に関わったすべてのクルーにとって、とても励みになる、サプライズな賞であると思います。この作品を手掛けてかれこれ3年が経ちますが、いろいろな地域でそれぞれに励ましの言葉をいただいています。本当に感謝申し上げます。

審査員賞②『クジラと英雄』
One with the Whole(監督:ジム・ウィケンズ監督&ピート・チェルコウスキー)

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ビデオメッセージよりウィケンズ監督

 受賞コメント(ジム・ウィケンズ監督よりビデオメッセージで):本当に嬉しく思っています。この映画を撮らせてくれたアラスカの先住民族の皆さんに心より感謝を伝えたいと思います。彼らがいなければこの映画は成り立ちませんし、彼らがこの映画を撮らせて世界に届けることを許してくれました。いま世界では、人々はなかなか感謝し合わずお互いに意見を聞かないということがあると思います。しかし、映画というコミュニケーションツールを通じて、それは人々が再び話をするきっかけとなって魔法のように人々をまたくっつけるように感じています。

【インダストリー部門】
Doc Edge賞「Magnetic Letters」デミ―・ダンフグラ監督
最優秀企画賞「沼影市民プール」
太田信吾監督、竹中香子プロデューサー


 映画祭期間中は、映画祭主催イベントのほか近隣会場での共催企画も開催されました。なかでも「沖縄映画製作者たち、大いに語る」と題したトークショーは会場に入りきれないほどの映画ファンや県外からの業界関係者が集結。映画祭アンバサダーの俳優・尚玄氏のほか、沖縄を拠点に作品を撮る岸本司監督、平一紘監督、東盛あいか監督が一堂に会し、沖縄で映画を撮るに際してのメリット・デメリット、沖縄をテーマにした作品作りについて、沖縄に映画文化を根付かせることの重要性などについて予定時間を超えて語り合いました。

取材&撮影 稲見公仁子