2011年にスタートし、今年で第13回を迎えたヨコハマ・フットボール映画祭。
6月17日(土)と18日(日) に、東神奈川駅そばのかなっくホールで開催された、多数のゲストを迎えての上映会には行けなかったのですが、シネマ・ジャック&ベティでの追っかけ上映で、2本観てきました。
いずれも上映前に、ヨコハマ・フットボール映画祭主宰の福島成人さん(写真上)より、映画祭の主旨と、上映作品についての簡単な解説がありました。
サッカーは、世界で一番広く愛されているスポーツ。選手の自伝、成功したチームの話、貧困、宗教、国際情勢などをサッカーを切り口に描いて社会問題を身近に感じることのできる映画など、年間、世界で100本位のサッカー映画が作られています。その中から、みんなで観たい映画を実行委員会で選んで、字幕も自分たちでつけています。
今年のYFFFアワード2023 グランプリに輝いたのは、アメリカ映画『LFG-モノ言うチャンピオンたち-』(アンドレア・ニックス・ファイン、ショーン・ファイン監督。ポスター左)。
アメリカ女子代表チームは、FIFA女子ワールドカップとオリンピックでそれぞれ4回、合計8回の優勝を果たして、実績面で男子代表を上回っているのに、ギャラも少なく、練習場所も限られています。ミーガン・ラピノーを先頭にアメリカ女子代表選手が男女同一賃金実現に向けて闘った姿を描いたドキュメンタリーです。
主宰者インタビューも、ぜひお読みください。
http://m1-v2.mgzn.jp/sys/rd.php?m=evIqjPW0mN3RDQx35wlMe
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6月20日(火)20:00~
『バック・トゥ・マラカナン』 ★審査員特別賞
原題:BACK TO MARACANÃ
監督:ホルヘ・グールビッチ
出演:アサフ・ゴールドシュテイン、アントニオ・ペトリン、ロム・バルネア
2018 年/ イスラエル・ブラジル・ドイツ / 90分
2014年、ブラジルW杯の年のこと。
イスラエルに住む40歳のロベルトは、事業は失敗、妻にも逃げられ、踏んだり蹴ったり。ブラジルから移民してきた父サミュエルが余命宣告を受け、死ぬ前にブラジルに里帰りし、W杯を観たいという。そんな折、別れた妻からドイツ人の彼と出張するので、12歳の息子イタイを預かってほしいと頼まれる。ブラジルに連れていくしかないが、イタイはサッカーに全く興味がない。
リオデジャネイロに着き、まずはサミュエルの両親のお墓参り。そして、サミュエルの姉の家へ。親戚一同歓迎してくれるが泊めてもらうわけにはいかない。W杯でホテルは満室。キャンピングカーを借りる。
リオデジャネイロでのブラジル対ドイツ戦。なんと、別れた妻とドイツ人の彼が来ていて、チケットをくれる。
そして、いよいよ決勝戦の行われるマラカナンスタジアムを目指す。サミュエルとロベルトは、サッカーに興味のないイタイに、「マラカナンの悲劇」のことを説明する。1950年にブラジルで開催されたW杯。決勝戦でブラジル優勝間違いなしと思われていた終盤にウルグアイに逆転され優勝を逃し、ブラジル中が悲しみに打ちひしがれた出来事。ブラジルは、またしても自国開催のW杯決勝戦をマラカナンで迎えるのだ。サミュエルは有り金はたいて闇で決勝戦チケットを購入するが、2枚しか入手できず、息子と孫にチケットを渡す・・・
ブラジルからイスラエルに移民したユダヤ人の物語と知って、これはぜひ観たい!と駆けつけた次第でした。
ブラジルに着いて、祖父サミュエルの両親のお墓参りに行きます。ダビデの星のついたお墓に、サミュエルは石を置きます。(ユダヤ式のお墓参り) サミュエル12歳の時に父親は心臓発作で亡くなったと、ロベルトたちは聞かされます。お父さんの没年は、1950年。マラカナンの悲劇の起きたW杯の年。これが物語の肝。これ以上の種明かしはやめておきますが、父親が亡くなったのは、夢だったサッカー選手にサミュエルがなれなかったことにもかかわる事でした。
事業にも結婚にも失敗したロベルトは、ブラジルで人生の夢を見つけます。これがまた素敵な話。いつか上映の機会があることを切望する心温まる映画です。
サミュエルおじいちゃんにベストサポーター賞が贈られました。
私が一番印象に残った場面は、リオデジャネイロでホテル探しをしている時に、イランの旗を振って応援する人たちがいるのを見て、おじいちゃんが「ここはやめておこう」と立ち去ったところ。イスラエルとイランの関係がしっかり反映されてました。
6月21日(水)20:00~
『I AM ZLATAN / ズラタン・イブラヒモビッチ』 ★観客賞受賞
原題:Jag är Zlatan
2021 / スウェーデン / 102分
監督:イェンス・フェーグレン
出演:グラニット・ルシティ、ドミニク・アンデション・バイラクターティ、シドミール・グライソビック
©Foto Mark de blok
イブラヒモビッチの同名ベストセラー自伝の映画化。
アクロバティックなゴールの数々に挑発的な言動。ファンをいまも魅了し続ける生きる伝説、ズラタンとは。
彼の幼少期からユベントス移籍までが、劇映画として描かれる。
本人も太鼓判の必見作!手の付けられない悪ガキが、スターになるまでのサクセスストーリー!
主演のグラニット・ルシティはスウェーデンでグルドバッゲ 主演男優賞を受賞!
サッカー選手にそれほど詳しくない私は、ズラタン・イブラヒモビッチのことをまったく知らなかったのですが、イブラヒモビッチという名前から、旧ユーゴスラビアのモスレム人(イスラーム教徒)だと想像して、観てみたいと思ったのでした。
まさしく、彼のお父さんは、現在のボスニア・ヘルツェゴビナのビイェリナ出身で、1977年にスウェーデンに移住したボシュニャク人。お母さんはクロアチア人でザダル近郊のプルコス出身。ふたりは移住先のスウェーデンで出会ったのですが、ズラタンが2歳の時に離婚したとのこと。「イブラヒモビッチ」という姓は「イブラヒムの息子」という意味。
少年時代、「移民は国に帰れ」と言われたことや、移民は2倍上手じゃないと試合に入れないなどの場面がありました。
ズラタンは、折しも今年6月に引退宣言をしています。
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今回は、2作品しか観ることができませんでしたが、ほかの作品も興味津々。
公式サイト:https://yfff.org/yfff2023/
来年のヨコハマ・フットボール映画祭で、どんなサッカー映画が上映されるか楽しみです。
2022年の映画祭でグランプリを受賞したドイツ映画『はなれていても』は、シネマ・ジャック&ベティでの「見逃シネマ2022」で観ることができました。
スタッフ日記 今年最後の映画は『はなれていても』@シネマ・ジャック&ベティ(咲)
今回見逃した作品も、上映の機会がありますように!
景山咲子