マイ・レボリューション 原題:Tout ce qu'il me reste de la révolution
監督・脚本・出演:ジュディス・デイビス
出演:マリック・ジディ、クレア・ドゥーマス、メラニー・ベステル
2018年/フランス/フランス語/1:1.85/88分
★配給未決定
©Agat films & Cie - Ex nihilo
*ストーリー*
共産主義の両親に育てられた30代のアンジェルにとって、現代社会は憤りを感じることばかり。人が真に共存できる町を目指して都市計画家になったのに、リストラで所属事務所からクビを言い渡される。
活動家だった父は歳をとり、母は政治思想を捨て田舎に移住している。
全てに行き詰ったアンジェルは、久々に母に会いに行く・・・
ジュディス・デイビス Judith Davis
1982年パリ生まれ。ソルボンヌで哲学を学んだ後、演劇の世界に入る。2003年ベルギーの劇団にインターンで参加。その後、友人らとともに立ち上げた劇団〈L’Avantage du doute〉の活動を中心に、TVや映画での活動の場を広げる。主な出演映画作品に『ウィークエンドはパリで』(2013年イギリス)、『ローマに消えた男』(2013年イタリア)などがある。本作が初の監督作品となる。(公式サイトより)
◎ジュディス・デイビスインタビュー
2019年6月20日(木) 13:00~13:25
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル 12Fにて
― 人が共存できる町づくりを目指す主人公の姿が素敵でした。
ありがとうございます。
― 5月革命«Mai 68»から、50周年を意識して脚本を書かれたのでしょうか? 私自身、1968年のとき、高校2年生だったのですが、2ヶ月位、授業をしないで毎日教室で学校への要求事項について討論会をしていました。あの頃のような情熱は、もう皆持っていません。
日本でも影響を受けてそのような動きがあったと聞いて、嬉しいです。 ただ、この映画は作るのに7年位かかったので、5月革命50周年の年に出来上がったのは、偶然のタイミングです。脚本を書いて、キャスティングして、資金を集めて・・・と時間がかかりましたから。いつ映画が製作できるかもわかりませんでした。
― 監督ご自身は生まれてなくて経験されていませんが、5月革命を経験した世代である父親と母親には監督のご両親が反映されているのでしょうか?
私自身はもちろん経験していませんが、やはり両親が経験していて家族の中で5月革命の精神などに触れる機会がありました。
ある意味、フランス社会全体が、5月革命の遺産の上に成り立っているといっていいです。家族によって5月革命の話をしないところもありますので、個人によって受け継がれていない場合もあります。
私の仕事の進め方は、もともと五人の俳優で立ち上げた劇団「L’Avantage du doute(疑いの恩恵)」でやってきたことがベースになっています。それを深く掘り下げて映画にしました。5人で共通の問題意識を持って、リーダーを決めずに、皆がすべての責任を負う形です。
政治的取り組みもテーマとして取り上げてきました。
父シモン役を演じた役者は、1968年の時、18歳で、5月革命を経験しているので、物語に反映させています。
私自身が家族から聞いていることも取り入れています。
姉役のメラニーさんの家では、5月革命の記憶は受け継がれてきませんでしたので、個人的に映画などから想像して、妄想で描いたりしています。色々な背景の人たち皆で作り上げています。
― 原題 『Tout ce qu'il me reste de la revolution』の意味は?
直訳すると、「革命から私に残っている唯一のもの」という意味です。自分自身で革命から何が残っているのか自問自答しています。政治的なことなのか、精神的なことなのか、集団的なことなのか、個人的なことなのか・・・・ 入り交じったものなのかを問うているのです。
昔の革命と今の社会を結びつけるのですが、今はせわしくて自問自答している時間もなくて、大事なものを忘れられているのではないか。そんな中で反抗精神を持ち得るのだろうかということも問うています。
― 観る側も自問自答したくなりました。
― これまで女優として活躍されてきましたが、今回は監督を務めながら演じて、これまでとどんな違いがありましたか?
映画では女優として出演してきましたが、劇団では5人で一緒に脚本を書いて、演出もして演じてきましたので、その延長線上にあります。撮影する時に、カメラの前と後を行ったり来たりするのですが、自分が演じる時には、前もってしっかり話し合いをして撮影に入りました。
デュマさんが劇の時にも分身的に仕事をしてきたのですが、自分が監督している時には彼女が役者としてフォローしてくれるし、演じている時には、逆の立場でフォローしてくれました。
一緒に仕事をする時の仕方が、こうした方がいい、ああした方がいいと意見をいうのではなく、お互い、こう理解したけど間違ってない?と確認しながら進めてきました。
― 劇と映画の違いは?
それはもちろん違いますね。プロセスが違いますし、脚本の書き方も違うなどすべてが違いますが、劇での経験は活きています。
5人の仲間たち、皆が問題意識を共有していて、お互いわかりあっています。
劇団の5人がこの作品の前身になっています。
― これからも映画を?
芝居も続けていきますので、5人で次の作品も書いています。
環境問題、男女平等問題などを織り交ぜた作品になります。
個人的には次の映画も考えています。芝居と共通のテーマもありますが、違った視点で描こうと思っています。
私が常に追い求めているのは、今の世の中での矛盾とか、怒りとか苦しみとか、社会に対して何を言いたいかを掘り下げていくことです。今まさに問題になっていることを取り上げたいと思っています。
― フランスでは一番何が問題と感じていますか?
労働、メディア、環境、男女平等、資本主義と男性優位社会の矛盾・・・などたくさんあります。
― それでも、フランスでは女性監督も多いし、日本よりいいと思います。
少しね。でも、まだまだ。
― あっという間に時間になってしまいました。次の作品も楽しみにしています。ありがとうございました。
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最初にお会いした時に、私の胸のアッラーと書かれたペンダントに気づいたジュディス・デイビスさん。
「映画に出てくる青年サイードは、名前からして、アラブ系ですよね?」とお聞きすると、「たぶんね。でも映画の中では、彼の民族とか宗教については、あえて何も語っていません」との答えが返ってきました。
「フランスには、アラブ系の人も普通にいますよね。あえて語る必要ないですね」と返すと、「そうですね」と笑うジュディスさんでした。
取材:景山咲子