第22回東京フィルメックス コンペティション 受賞結果

11月7日(日)16:50より朝日ホールで授賞式が開かれ、各賞が審査員より発表されました。
コンペティション部門 最優秀作品賞は2作品に授賞され、審査員特別賞は今年はありませんでした。

◆最優秀作品賞 2作品

『見上げた空に何が見える?』What Do We See When We Look at the Sky?
監督:アレクサンドレ・コべリゼ(Alexandre KOBERIDZE)
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分

『時の解剖学』Anatomy of Time
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン(Jakrawal NILTHAMRONG)
タイ、フランス、オランダ、シンガポール / 2021 / 118分

◆観客賞
『偶然と想像』Wheel of Fortune and Fantasy
監督:濱口竜介(HAMAGUCHI Ryusuke)
日本 / 2021 / 121分

◆学生審査員賞
『見上げた空に何が見える?』What Do We See When We Look at the Sky?
監督:アレクサンドレ・コべリゼ(Alexandre KOBERIDZE)
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分

授賞理由は、下記サイトをご覧ください。
https://filmex.jp/2021/program/competition



◎タレンツ・トーキョー 授賞作品

東京都などが主催する映画の人材育成プロジェクト「タレンツ・トーキョー」の授賞作品も併せて発表されました。

◆タレンツ・トーキョー・アワード2021
「Your Hair is Come From Blue-green Fruits」(木村あさぎ(KIMURA Asagi)/日本)

◆スペシャル・メンション
「A Useful Ghost」(ラッチャプーン・ブンブンチャチョーク(Ratchapoom Boonbunchachoke)/タイ)

「Ria」(アルヴィン・ベラルミノ(Arvin BELARMINO)/フィリピン)

授賞理由など詳細はこちらでご覧ください。
https://talents-tokyo.jp/2021/news/talents-tokyo-2021-award

東京フィルメックス 7日の「特別上映A 」は『時代革命』(香港)

jidai kakumei.jpg

第22回東京フィルメックスもあと2日となりました。
最終日である明日11月7日(日)の12:40より上映する「特別上映A 」の上映作品につきまして、ようやく発表がありました。

本プログラムの上映作品につきましては、諸般の事情により、タイトルの発表を控えておりました。しかし、無事に上映素材も到着し準備が整ったと判断致しまして、遅ればせながら発表することと致します。
特別上映として『時代革命(Revolution of Our Times)』(2021年、香港、キウィ・チョウ監督)を上映します。


特別招待作品
特別上映A『時代革命』
Revolution of Our Times
監督:キウィ・チョウ( Kiwi CHOW )
香港 / 2021 / 152分
11月7日(日) 12:40~ @有楽町朝日ホール 
チケット購入はこちら

2019年の「逃亡犯条例」改正案は、香港を中国の権威主義的支配に対する戦場へと変えてしまった。本作は、その法案が提出されて以降の香港市民による抵抗運動を、その歴史的背景を踏まえつつ、最前線で戦う若者たちの姿を中心に描いたドキュメンタリー作品だ。監督は『十年』の中の1篇『焼身自殺者』のキウィ・チョウで、他の制作スタッフの名は安全上の理由のため、明かされていない。2019年以降の抵抗運動は、「分権化されたリーダーシップ」、柔軟な戦術を意味する「水になる」、領土全体を使った運動を展開する「どこでも開花する」などの特徴や指針を持っていたが、本作は役割やリーダーシップが分散化された運動家たちのいくつかのグループや個人を追い、この運動の多様な動きの全体像を捉えようとしている。

詳細はこちらで!
https://filmex.jp/2021/program/specialscreenings/ss9

第22回東京フィルメックス ラインアップが発表されました

10月6日(水)3時より、第22回東京フィルメックスのラインアップ発表記者会見がオンラインで開催されました。

tokyo filmex 2021 poster.jpg

会期:10月30日(土)-11月7日(日) (全9日間)
会場:有楽町朝日ホール(10/30-11/7)、ヒューマントラストシネマ有楽町SCR2(10/30-11/6 レイトショー会場)、オンライン
チケット販売: 10月17日(日)10am開始予定
上映日程 https://filmex.jp/2021/schedule
公式HP: https://filmex.jp/


◆新プログラム・ディレクター神谷直希氏より発表
これまでのプログラム・ディレクター市山尚三氏が、2021年4月に東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターに就任され、新たなプログラム・ディレクターとして5月に着任した神谷直希氏よりラインアップ発表が行われました。

ラインアップ発表の前に、神谷直希氏が就任の経緯を含めて自己紹介されました。
「2000年の第1回東京フィルメックスに関わり、第2回目以降は作品・プログラム担当スタッフとして、林加奈子さんや市山尚三さんをサポートして、上映作品の選定やゲストの招聘業務に携わり、フィルメックスの過程を見てきた一人です。2年ほど、フィルメックスから離れていたのですが、昨年末から市山さんの後任を探している中で候補にあがり、出戻ってきました。外部から新しい人を招くという選択肢もあったと思うのですが、フィルメックスが培ってきたものを継承していく意向です。市山さんからも継続性についてお話がありました。良い部分は継承していくべきで、またアジアの映画祭として、アジアの作品を紹介していくという意義も担っていきたいと思っています」

「今回も東京国際映画祭と同時期開催となりますが、充分棲み分けが出来たと思います。作品ありきですので、結果に反映させたい。東京国際映画祭で市山さんがプログラミングに携わっていることに対する影響はあると思います。ディレクターが代わったことに対して、不安に思っている方もいらっしゃると思いますが、あらためて信頼を勝ち取っていくしかない。引き続き、フィルメックスをどうぞよろしくお願いします。」


東京フィルメックス・コンペティション 10作品

『見上げた空に何が見える?』 What Do We See When We Look at the Sky?
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分
監督:アレクサンドレ・コベリゼ(Alexandre KOBERIDZE)

『朝が来ますように』 Let it be Morning
イスラエル、フランス / 2021 / 101分
監督:エラン・コリリン(Eran KOLIRIN)

『砂利道』 Hit the Road  ★長編監督デビュー作
イラン / 2021 / 93分
監督:パナー・パナヒ( Panah PANAHI )

『小石』 Pebbles  ★長編監督デビュー作
インド / 2021 / 74分
監督:P.S.ヴィノートラージ(P.S. VINOTHRAJ)

『時の解剖学』 Anatomy of Time
タイ、フランス、オランダ、シンガポール / 2021 / 118分
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン(Jakrawal NILTHAMRONG)

『ホワイト・ビルディング』White Building
カンボジア、フランス、中国、カタール / 2021 / 90分
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)

『ユニ』Yuni
インドネシア、シンガポール、フランス、オーストラリア / 2021 / 95分
監督:カミラ・アンディニ(Kamila ANDINI)

『永安鎮の物語集』Ripples of Life
中国 / 2021 / 123分
監督:ウェイ・シュージュン(WEI Shujun)

『ただの偶然の旅』 Bipolar  ★長編監督デビュー作
中国 / 2021 / 110分
監督:クィーナ・リー( Queena LI )

『青春墓場』 Graveyard of Youth
日本 / 2021 / 96分
監督:奥田庸介(OKUDA Yosuke)



特別招待作品 9作品

【オープニング作品】
『偶然と想像』 Wheel of Fortune and Fantasy
日本 / 2021 / 121分
監督:濱口竜介(HAMAGUCHI Ryusuke)

【クロージング作品】
『メモリー・ボックス』 Memory Box
フランス、レバノン、カナダ、カタール / 2021 / 100分
監督:ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ(Joana HADJITHOMAS & Khalil JOREIGE)

『アヘドの膝』 Ahed's Knee
フランス、ドイツ、イスラエル / 2021 / 109分
監督:ナダヴ・ラピド(Nadav LAPID)

『永遠に続く嵐の年』 The Year of the Everlasting Storm
アメリカ、イラン、チリ、タイ、イギリス、シンガポール / 2021 / 121分
監督:ジャファール・パナヒ(Jafar PANAHI)、アンソニー・チェン(Anthony CHEN)、マリク・ヴィタール(Malik VITTHAL)、ローラ・ポイトラス(Laura POITRAS)、ドミンガ・ソトマヨール(Dominga SOTOMAYOR)、デヴィッド・ロウリー(David LOWERY)、アピチャッポン・ウィーラセタクン(Apichatpong WEERASETHAKUL)

『狼と羊』 Wolf and Sheep
デンマーク、フランス、スウェーデン、アフガニスタン / 2016 / 86分
監督:シャフルバヌ・サダト( Shahrbanoo Sadat )

『魔法使いのおじいさん』The Bogeyman
インド / 1979 / 90分
監督:G.アラヴィンダン( G.ARAVINDAN )

『瀑布』The Falls
台湾 / 2021 / 129分
監督:チョン・モンホン( CHUNG Mong-Hong )

『行くあてもなく』 I'm So Sorry
香港、フランス、オランダ / 2021 / 96分
監督:チャオ・リャン( ZHAO Liang )

『麻希のいる世界』 The World of You
日本 / 2021 / 89分
監督:塩田明彦( SHIOTA Akihiko )
配給:シマフィルム


メイド・イン・ジャパン部門 4作品

『春原さんのうた』 Haruhara-san's Recorder
日本 / 2021 / 120分
監督:杉田協士( SUGITA Kyoshi )
配給:イハフィルムズ

『夜明けの夫婦』Dawning on Us
日本 / 2021 / 135分
監督:山内ケンジ( YAMAUCHI Kenji )
配給:スターサンズ

『MADE IN YAMATO』
日本 / 2021 / 120分
監督:冨永昌敬( TOMINAGA Masanori )、清原惟( KIYOHARA Yui )、山本英( YAMAMOTO Akira )、竹内里紗( TAKEUCHI Risa )、宮崎大祐( MIYAZAKI Daisuke )
配給:boid/VOICE OF GHOST

『リング・ワンダリング』Ring Wandering
日本 / 2021 / 103分
監督:金子雅和( KANEKO Masakazu )
配給:ムービー・アクト・プロジェクト


プレ・オンライン配信 3本
今年のフィルメックス・コンペティションで上映する3監督の過去フィメックスで紹介した作品を映画祭開催に先立ってオンラインでプレ配信

『消失点』Vanishing Point
タイ / 2015 / 100分
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン(Jakrawal NILTHAMRONG)

『昨夜、あなたが微笑んでいた』 Last Night I Saw You Smiling
カンボジア、フランス / 2019 / 77分
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)

『見えるもの、見えざるもの』The Seen and Unseen
インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール / 2017 / 86分
監督:カミラ・アンディニ(Kamila ANDINI)


オンライン配信

配信期間:11月7日(日)-11月23日(火・祝) (予定)
料金:1作品1,700円
配信方法:公式サイトにて告知
https://filmex.jp/2021/news/information/online2021


京都フィルメックス2021

2020年の開催で第21回を迎えた、アジアの新進気鋭の作家が放つ渾身の作品が集う日本有数の国際映画祭〈東京フィルメックス〉のラインナップが、京都シネマ、京都みなみ会館、出町座の京都3劇場で特集上映されます。

現在、遠距離を行き来することもままならない状況が続くなか、京都の劇場3館が連携して取り組み、また全国のミニシアターを応援するべく映画俳優有志が集う「ミニシアターパーク」や、京阪神で映画館を応援する学生が集う「映画チア部」も協力し、上映だけにとどまらない企画が実施されます。
映画の未来を灯もす志で、多様性にあふれ個性を発揮する世界の映画表現を発見し続ける東京フィルメックスの魅力、ぜひこの機会に触れてください。ゲストを交えてのトークイベントなども随時開催予定です。


【開催日程】 2021年1月22日(金)~2月4日(木)

【会場】
出町座 1/22(金)~2/4(木)18時台(調整中)
京都みなみ会館 1/22(金)~1/28(木)14時台(調整中)
京都シネマ 1/29(金)~2/4(木)13:30頃(調整中)

主催:認定NPO法人東京フィルメックス
共催:シマフィルム
協力:京都シネマ、巖本金属、アテネ・フランセ文化センター、フーリエフィルムズ、MINI THEATER Park、映画チア部
https://t.co/SB0CJAmpnL

【上映ラインナップ】 14 作品、各作品 2 回上映予定。

【第 21 回東京フィルメックス コンペティション作品より】

『死ぬ間際』In Between Dying
【第 21 回東京フィルメックスコンペティション最優秀作品賞受賞】
監督:ヒラル・バイダロフ(Hiral BAYDAROV)
2020 年/アゼルバイジャン、メキシコ、アメリカ/88 分
タル・ベーラの薫陶を受けたアゼルバイジャンの新鋭ヒラル・バイダロフの長編劇映画第 2 作。行く先々で 死の影に追われる主人公の一日の旅を荒涼たる中央アジアの風景を背景に
描き、見る者に様々な謎を投げか ける。ヴェネチア映画祭コンペティションで上映。

10/30東京フィルメックス リモートQ&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478738883.html

『風が吹けば』Should the Wind Drop
2020 年/フランス・アルメニア・ベルギー/100 分
監督:ノラ・マルティロシャン(Nora MARTIROSYAN)
アルメニアとの国境に隣接し、アゼルバイジャンからの独立を主張するナゴルノカラバフ地区。戦争で破壊 され、停戦後に再建された空港を調査するために来訪したフランス人技師が見たものは……。「カンヌ 2020」に選出されたノラ・マルティロシャンの監督デビュー作。


『イエローキャット』Yellow Cat
2020 年/カザフスタン・フランス/90 分
監督:アディルハン・イェルジャノフ(Adilkhan YELZHANOV)
カザフスタンの草原地帯を舞台に、裏社会から足を洗って映画館を開こうとする前科者の主人公の苦闘をコ メディ・タッチで描いた作品。その多くが国際映画祭に選ばれている俊英アディルハン・イェルジャノフの 最新作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。


『迂闊(うかつ)な犯罪』Careless Crime
2020 年/イラン/134 分 監督:シャーラム・モクリ(Shahram MOKRI)
1979 年イスラム革命前夜、西欧文化を否定する暴徒によって多くの映画館が焼き討ちにされた。それから 40 年後、4 人の男たちが映画館の焼き討ちを計画する……。奇抜な発想を知的な構成で映画化したモクリ の監督第 4 作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。

11/2東京フィルメックス リモートQ&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478745700.html


『マイルストーン』Milestone
2020 年/インド/98 分
監督:アイヴァン・アイル(Ivan AYR)
北インドを舞台に、激しい腰痛に苦しみながら亡くなった妻の家族への賠償金のために働くベテランのト ラック運転手の苦悩を描く。デビュー作『ソニ』が高く評価されたアイヴァン・アイルの監督第 2 作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。

11/5 東京フィルメックス リモートQ&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478873142.html


『アスワン』Aswang
2019 年/フィリピン/85 分
監督:アリックス・アイン・アルンパク(Alyx Ayn ARUMPAC)
麻薬患者や売人をその場で射殺する権利を警察に与えたフィリピンのドゥテルテ政権。その政策の下で苦闘 する人々を追ったドキュメンタリー。題名はフィリピンの民間伝承に登場する妖怪の名からとられた。アム ステルダム国際ドキュメンタリー映画祭で上映。


『無聲(むせい)』The Silent Forest
2020 年/台湾/104 分
監督:コー・チェンニエン(KO Chen-Nien)
聾唖学校に転校してきた少年がスクールバスである“ゲーム”を目撃する。それは彼がその後目にする残酷な 現実の序章に過ぎなかった……。台湾で実際に起こった事件を元にしたコー・チェンニエンの監督デビュー 作。台北映画祭でオープニング作品として上映された。


【第 21 回東京フィルメックス 特別招待作品より】

『海が青くなるまで泳ぐ』Swimming Out Till The Sea Turns Blue
2020 年/中国/111 分
監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhang-ke)
文学者たちへのインタビューを通して近代中国のこの 70 年の変遷を描いたドキュメンタリー。映画「活き る」の原作者として知られるユェ・ホァら世代の異なる 4 人の作家たちが自己の体験や中国の社会、文化に 対するそれぞれの見解を語る。ベルリン映画祭で上映。


『日子』Days
2020 年/台湾/127 分
監督:ツァイ・ミンリャン(TSAI Ming Liang)
郊外の瀟洒な住宅に暮らすカンは首の痛みをいやすために街に出てマッサージ師を呼ぶ。やがて一人の移民 労働者がカンが宿泊するホテルを訪れる……。対照的な境遇の二人の男の出会いを描いたツァイ・ミンリャ ンの最新作。ベルリン映画祭でテディ審査員賞を受賞。


『照射されたものたち』Irradiated
2020 年/フランス、カンボジア/88 分
監督:リティ・パン(Rithy PANH)
広島、長崎の原爆投下、ナチスのホロコースト、カンボジアのポル・ポト政権下の虐殺。人類史上の3つの 悲劇を大量の資料映像のモンタージュによって描いたリティ・パンの最新作。ベルリン映画祭コンペティ ションで上映され、最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞。


『平静』 The Calming
2020 年/中国/89 分 監督:ソン・ファン(SONG Fang)
『記憶が私を見る』で高い評価を受けたソン・ファンの監督第 2 作。東京から越後湯沢、香港へと旅する アーティストを主人公に、友人や家族との会話の中で自己の“平静”を取り戻してゆく女性を描く。チー・ シー、渡辺真起子が出演。ベルリン映画祭で国際アートシネマ連盟賞を受賞。


【特別関連上映】
『記憶が私を見る』 Memories Look at me
2012 年/中国/87 分 *
第 13 回東京フィルメックス コンペティション審査委員特別賞受賞
ソン・ファン監督自らが自身の家族と共に撮った長編第 1 作作品。彼女が南京に暮らす両親のもとを訪れる。 人々との会話の中、ファンの脳裏に過去の記憶が呼び起こされる。ソン・ファンは『ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン』に出演した経歴もあり、若手作家を積極的にサポートするジャ・ジャンクーがプロ デューサーをつとめた。ロカルノ映画祭でワールド・プレミア上映され、最優秀新人監督賞を受賞。


【第 21 回東京フィルメックス 特集:エリア・スレイマン より】
『消えゆくものたちの年代記』Chronicle of a Disappearance
1996 年/パレスチナ/84 分
監督:エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
ヴェネチア映画祭で最優秀新人監督賞を受賞し、スレイマンの国際的評価のきっかけとなった記念すべき長 編デビュー作。普通の人々の何気ない日常生活を点描的に描きつつ、政治や社会を鋭く風刺するその後のス レイマン作品のスタイルが既に確立されている。

『D.I.』Divine Intervention
2002 年/フランス、パレスチナ/92 分
監督:エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
イスラエル領とパレスチナ自治区とに分断されたパレスチナ人カップルを主人公として中東問題を膨大な ギャグとユーモアを交えて描き、カンヌ映画祭で審査員賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞したスレイマン の代表作。原題は「神の手」という意味であるという。

監督 エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
1960 年 7 月 28 日ナザレに生まれたエリア・スレイマンは、1981 年から 1993 年までニューヨークで暮ら していた。この時期に、最初の短編 2 作品「Introduction to the End of an Argument」と「Homage by Assassination」を監督し、いずれの作品も数々の賞を受賞した。1994 年エルサレムに移り、欧州委員会か らの依頼でビルツァイト大学に映画メディア学部を設立する。長編デビュー作『消えゆくものたちの年代 記』は、1996 年のヴェネチア映画祭で最優秀初長編作品賞を受賞した。2002 年『D.I.』がカンヌ映画祭で 審査員賞、ローマで開催されたヨーロッパ映画賞で最優秀外国語映画賞を受賞。『時の彼方へ』は、2009 年のカンヌ映画祭コンペティション部門で上映された。2012 年には、オムニバス映画『セブン・デイズ・ イン・ハバナ』に参加し「初心者の日記/木曜日」を監督、作品はカンヌ映画祭ある視点部門で上映された。

【WEB】
第21回東京フィルメックス
https://filmex.jp/2020/

シマフィルム
http://shimafilms.com/

京都シネマ
https://www.kyotocinema.jp/

京都みなみ会館
https://kyoto-minamikaikan.jp/

ミニシアターパーク
http://minitheaterpark.net/

映画チア部(京都支部)
https://moviecheerkyoto.amebaownd.com/


東京フィルメックス クロージング作品『天国にちがいない』 リモートQ&A (咲)

tengoku.jpg

© 2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION


東京フィルメックス 特別招待作品 
クロージング作品

『天国にちがいない』 原題:It Must Be Heaven
監督:エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
フランス、カタール、ドイツ、カナダ、トルコ、パレスチナ / 2019 / 102分
配給:アルバトロスフィルム/クロックワークス
公式サイト:https://tengoku-chigainai.com/
★2021年1月29日( 金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開.

新作映画の企画を売り込むため、故郷ナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る映画監督。そんな中、思いがけず故郷との類似点を見つけてしまう。果たして本当の故郷はどこに…? 昨年のカンヌ映画祭でダブル受賞した名匠エリア・スレイマン10年ぶりの傑作。(公式サイトより)

*物語*
ナザレ。
映画監督のES(エリア・スレイマン)が自宅のテラスでくつろいでいると、隣人と名乗る男が悪びれもなく庭のレモンを取っている。声をかけたが、返事がなかったと。
墓参りの帰り、こん棒を持った青年たちに出会う。
車椅子など不要になったものを処分し、ESは旅に出る。

パリの町。
アジア系の男女に「ブリジットさん?」と聞かれる。
首を振ると、お辞儀する二人。日本人だった。
ノートルダム寺院、ルーブル美術館、どこも人がいない。
ホームレスの女性のあとを5人の警官が追う。
黒人の清掃人二人。缶を箒で飛ばして、側溝に入れて遊んでいる。

tengoku paris3.jpg

© 2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION

戦車が町を行く。軍事パレードだった。花火があがる。
賑わうセーヌ川。
映画会社に企画を持ち込む。
「パレスチナ色が弱い」とフランス語で却下され、何も答えなかったら、英語で「言ったことはおわかりに?」と言われる。

夜のニューヨーク。
タクシーに乗り、運転手に「どこの国から?」と聞かれ、「ナザレ」と答える。
「それは国か?」と運転手。
「パレスチナ人だ」とES。
「パレスチナ人に初めて会った!」とはしゃぐ運転手。
「カラファトのだろ?(アラファトだよ!)ナザレはイエス様の故郷」

皆、大きな銃を持って歩いている。

紅葉が美しい公園。
天使の羽根を付けた女の子を追う警官たち。
バギーを押しながら運動する5人のママたち。

映画学校の講義やアラブ・フォーラムにゲストとして登壇するES。
なんとも居心地が悪い。

映画会社「メタ・フィルム」のロビーで、友人のガエル・ガルシア・ベルナルと一緒に人を待つES。
「パレスチナ出身でコメディを撮ってる。次の作品のテーマは中東の平和」とガエルがプロデューサーに紹介してくれるが、「もう笑えちゃう。またいつか」と、あっさり断られる。ガエルだけが中に入っていく

タロット占い。
「この先、パレスチナはあるのか?」
「必ずやある。ただし我々が生きているうちじゃない」

ナザレに帰ってくる。
オリーブの林。民族衣装の女性が頭に桶を載せている。
クラブで踊る人たち・・・

パレスチナに捧ぐ
父母を偲んで


今回のフィルメックスで、エリア・スレイマン監督特集が組まれ、長編デビュー作『消えゆくものたちの年代記』(1996年)を久しぶりに拝見することができました。
kieyuku.jpg

あれから、4半世紀近く。ご両親は天国に召され、エリア・スレイマンもずいぶん老けて、時の流れを感じました。
パレスチナの置かれた状況は、ますます悪くなっているのに、映画の企画を持ち込んでも却下され、誰にも関心を持ってもらえない現状を突き付けられた思いがしました。

冒頭、「たとえ神様が来ても開けない」という扉を、神父が裏から暴力的に押し入ります。パレスチナの地が蹂躙されていることを象徴したような幕開けです。
映画には、エリア・スレイマンらしいウィットに富んだ場面やエピソードが満載。
ナザレの老人が話す蛇の恩返しの話。
「ハゲタカが蛇を狙っていたので、ハゲタカを撃ったら、蛇がお礼のお辞儀を。
別の日、タイヤがパンク。蛇が空気を入れてパンパンにしてくれた」
情景が目に浮かび、可笑しくて忘れられません。
ニューヨークの公園で、バギーを押しながら運動する5人のママたちの姿も、目に焼き付いています。
そして、所在なく居心地悪そうにアラブ・フォーラムの壇上の隅っこに座るエリア・スレイマン監督。
故郷ナザレで、平穏に暮らせる日が監督の生きているうちに来ることを祈るばかりです。



◎東京フィルメックスでの上映&リモートQ&A
2020年11月7日(土)  17:20からの授賞式終了後 @有楽町朝日ホール

上映後、フランスにいるエリア・スレイマンと、リモートでQ&Aが行われました。

『天国にちがいない』Q&A(リモート)
DSCF4135.JPG

登壇:
エリア・スレイマン(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
松下 由美(通訳)
動画 https://youtu.be/bxQbdL-v-S4
下記のうち、★印:動画にはない部分

市山: 前の作品『The Time That Remains(邦題『時の彼方へ』)』から10年。どれ位の期間をかけて準備をされて昨年完成されたのでしょうか?

監督:新しい脚本を手掛けるのに、いつも時間がかかります。生きて、観察して、経験をしたうえで、蓄積をメモに書き溜めて、脚本を書くためのヒントが満ちるまでに時間がかかるんです。私の働き方は時系列的に話が進むという脚本の書き方ではありません。例えば、画家のアトリエで200点くらい作品があって、常に何かしら手を加えているという形で進行しています。10年の間に、キューバでオムニバス映画(『セブン・デイズ・イン・ハバナ』2012年)を撮りました。私の映画のタイプは資金がかかるけど、商業的な回収は難しいです。

― パリで人が少なかったですが、理由があるのでしょうか? どのように撮影を?

監督:皆が聞くけれど、私自身、謎です。どうしてこういう状態が撮れたのか。ここは観光地で人が多いから、他の場所を選んでくださいと言われてました。黙示録的雰囲気の中で撮りたかったので、町の中心で撮ると自分の意思を曲げませんでした。実は、パリ市長オフィスのフィルムコミッションのような許可を出す係の方が私のやってることを理解してくれて、多大な協力をしてくれました。

― スズメが素晴らしい演技をしていますが、CGでしょうか? スズメの演技を待っていたのでしょうか?  

tengoku suzume.jpg

© 2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION

監督:複雑な仕組みです。一部は3Dで作っています。一部はほんとうのスズメで撮っています。トレーナーが何か月もかけて、20羽をトレーニングして、そのうちの2羽を推薦してくれました。私の依頼した演技をそのうちの1羽がとてもうまく演じてくれたので採用しました。3Dよりリアルなスズメの方が扱いやすかったです。裏話をしますと、現実に基づいています。妻が家族を亡くした孤児のスズメを持ち帰って、置いていたら、私のパソコンにジャンプして乗っかってきたのです。それに触発されて入れた場面です。 

― 初期の作品で「I Put a Spell on You」の歌を使っていましたが、今回も別のシンガーのものを使っていました。この歌に思い入れがあるのでしょうか?

監督:いろいろ音楽を探したのですが、シーンに合うものを150曲くらいの中から、一番合うものを選びました。一番しっくりした曲だったから選んだのです。『D.I.』で使ったのはナターシャ・アトラスのキッチュな雰囲気でした。今回は違うバージョンにしました。

― 日本人が出てくるシーンがありましたが、なぜこのようなシーンを作られたのでしょうか?

監督:まさにあの場所で全く同じことが起きたので、これは絶対映画に入れなくてはと思いました。

― 日本で映画を撮りたいと思いませんか?

監督:私のセンチメンタルな箱を開けてしまいました。私はとても日本を愛してます。妻と2回訪れました。今も日本にいられたらと思います。そして撮りたいところです。お気に入りの国なので、どこにカメラを置いても私の好みぴったりな絵が撮れます。明日にでも呼んでくださったら行きたいです。マスタークラスや取材で何度も言っていて聞き飽きたと思いますが、私が映画を撮り始めたのは、小津監督がいたからです。日本に降り立って最初に小津監督のお墓参りをしました。

― キャスティングをいつもしているジュナ・スレイマンさんはドキュメンタリー作家でもあると思います。監督のご親戚でしょうか?

監督:私の姪です。はい、ドキュメンタリー作家でもあります。パレスチナだけで撮った時は、全面的にキャスティングを担当してくれました。今回は、3か所でしたので、パレスチナ部分を担当してくれました。

― 監督が演じる主人公は、いつも台詞がありません。これには理由があるのでしょうか?

監督:戦略的に自分が出て何も話さないと決めた訳じゃありません。短編を撮り始めたときから、自分で演じてこのようなスタイルでした。自分がカメラの前に立たなければいけないのはわかっていました。非常に個人的なことを綴っていますので。一般的に、私の作品はセミサイレント映画で、音に溢れているけれど、人の話す言葉は少ないです。好みとして、映像の最大の効果を狙うために、人の言葉を最小限にしています。人の言葉に頼らないで作りたいという思いがあります。

― イギリスの作家ジョン・バージャーへの献辞がありましたが、その方への思いは?  

監督:パリで偶然会ったのは、ものすごく前のまだ若い時で、将来何をしたいか決めてないときでした。何がしたいかと聞かれ、映画とぽろっと言いました。その意味を理解せずに伝えたのがきっかけでした。それ以降、彼は守護天使のように見守ってくれていて、彼の影響で本を読んで自分自身を見つめることを始めました。常に応援してくれていて、家族のような関係がずっと続いていました。クリスマスを家族ぐるみで一緒に過ごしたりしました。

― 森の中で遭遇する女性が頭の上に桶のようなものを載せてました。彼女は祈りをささげるような儀式をしていたのでしょうか?  

監督:私の古い記憶から描いたものです。私の生まれたナザレから10キロくらいのところのベドウィンの村から女性がヨーグルトをポットに入れて売りに来ていました。映画でご覧になっていたように、ポットを二つ持ってきていて、一つを置いて、また一つを取りにいってということを繰り返していたのです。このシーンは私の覚えているかつてのパレスチナの情景です。オリーブの林があって、女性がいてという、郷愁に基づいて作られたシーンです。

市山:今までになく、50を超える質問がきていますが最後の質問になってしまいました。何人の方からの質問を選びました。タイトルに込めた思いは? 天国はパレスチナのことと考えていいでしょうか?

監督:天国はパレスチナを指していません。世界全体がパレスチナ化していることを映画で描いています。主人公は天国を探して移動するのですが、世界中どこにも問題がある。グローバル化であったり、すぐに警察が稼働して、どこに行ってもチェックポイントがあるような状態です。天国は理想の場所で、皆が探し求めているのではないでしょうか。グローバル化で問題のない場所は結局ないということですね。

市山:いつか機会があればスレイマン監督を日本にお招きしたいと思います。新しい作品を近いうちに観れることを期待したいと思います。

まとめ:景山咲子