東京フィルメックス 『ある女優の不在』 主演女優ベーナズ・ジャファリさんQ&A(11/24)

映画製作を禁止されているパナヒ監督からの依頼に東京に行くことを条件に即決
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特別招待作品
『ある女優の不在』  原題:Se rokh 英題3 faces
監督:ジャファル・パナヒ
出演:ベーナズ・ジャファリ、ジャファル・パナヒ、マルズィエ・レザイ

*物語*

人気女優ベーナズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から悲痛な動画メッセージがパナヒ監督経由で届く。女優を志して芸術大学に合格したのに家族に反対され自殺を図るというのだ。ベーナズはパナヒ監督の運転する車で、少女マルズィエの住む北西部アゼルバイジャン州のサラン村を目指す。山間のじぐざぐ道で結婚式に出会い、誰かが自殺した気配はない。マルズィエの家を探しあてるが、3日前から家に戻らないと母親が困り果てていた。芸人に対する偏見が根強い村で、弟も姉が女優になることに猛反対で荒れ狂っている。
やがて、マルズィエが町外れで暮らす革命前に活躍した女優シャールザードのところに身を寄せているのを知る・・・

◎Q&A 
11月24日(土) 21:15からの上映後
TOHOシネマズ日比谷スクリーン12にて

ゲスト:ベーナズ・ジャファリさん
司会:市山尚三東京フィルメックス・ディレクター
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

市山:今回はベーナズさんに来ていただいて、ほんとに嬉しく思います。その理由はなぜかというと、第1回東京フィルメックスのオープニング作品に上映されたサミラ・マフマルバフ監督の『ブラックボード 背負う人』は、ベーナズさんが主演だったのです。その時はサミラしか呼んでなくて、申し訳なかったのですが、20年後に20回目の記念の会にベーナズさんを日本にお呼びすることができて、ほんとに嬉しく思っております。

ベーナズ:ご挨拶申しあげます。実は日本に来ることは昔からの夢で、今回夢が叶って、日本にいることをとても嬉しく思っております。日本は私にとって太陽の国です。神様がくれた機会に感謝しています。

*客席とのQ&A
― ジャファル・パナヒ監督の映画を観ていると、どこまでが作りもので、どこまでがドキュメンタリーなのか、いつもわからなくて不思議な思いで観ています。今回の映画の中で、山間の道でのクラクションのくだりであるとか、墓の穴を掘って、自分の終の棲家だといって寝ているおばあさんだとか、どこまでが作りものなのでしょうか?

ベーナズ:この映画の場合、すべての内容が脚本に書かれていました。完璧な脚本を持って撮影場所に行きました。アゼルバイジャン州の小さな村で、村それぞれに特別なやり方や伝統があって、それにあわせて多少変えることもありましたが、基本は脚本に書かれた通りに撮りました。例えば、村の中で目の見えないお爺さんに会うと、それにあわせて少し変えたりしていました。
夜、私が歩いていて、お爺さんと中庭で話す場面があるのですが、そのお爺さんは村の小さな舞台で宗教的な劇をしている人でした。パナヒ監督は彼らと話して、うまく入れ込みながら撮影を進めていました。

― 割礼の儀式で、割礼した皮をどこに埋めるかでその男の子の運命が決まるというのは、どこでもある話なのか、その村の話なのか、それとも監督が作ってしまった話なのでしょうか?

ベーナズ:割礼の皮を大事な場所に埋めるという話は、その村の人たちが信じてやっていることなのですが、村だけでなく、ほかでもやっていると聞いたことがあります。親は子どもの幸せを願っているので、そのための儀式の一つです。どこでも、親は子どもの幸せを願って、何かやりたいと思うものだと思います。

― 電話を村の下にかけに行くという女優さんを、パナヒ監督は僕は眠いからといって一人で行かせます。イランに行ったことがあるので、夜、女性が一人で歩いても安全だということは知っているのですが・・・

ベーナズ:その村は、パナヒ監督が小さい時に育った村なので、あちこちに親戚がいて、最初に村に入った時も皆さんに歓迎されました。夜遅く一人で歩いても安心さがありました。映像から村人の優しさが伝わってきたと思います。パナヒ監督も安心して撮影に臨むことができたと思います。

― 女の子を家に送り届ける時に、こういうことは女性の方が得意だから僕は車で待っているという場面がありました。イランではそれが普通なのでしょうか?

ベーナズ:私は監督じゃないのでわからないのですが、弟が出て来て、窓ガラスを割ったりするのは映画として必要だったから入れたのだと思います。
今度、監督に聞いてみようと思います。

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― 3代の女性の物語で、革命前に活躍していた女優さん、現在活躍している女優さん、そしてこれから女優になろうとする少女が出てきます。田舎なので、様々な偏見もあると思うのですが、時代の違いで、イランの社会が見る目が違うということはあるのでしょうか?

ベーナズ:3世代の女優を描いていますが、いろいろな時代の伝統や社会の決まりを説明するためだと思います。

― 演じることは、とてもパーソナルな感情に基づくことだと思います。ある少女を助けなければいけないという、女優が持つ公的な立場も描いていました。感情についての表現でパナヒ監督といろいろとやりとりがあったと思います。ご自身の意見を通されたようなことがあれば教えてください。

ベーナズ:実際、1回もめたことがありました。彼女が自殺してないとわかって、殴るシーンがあるのですが、パナヒ監督からはほどほどにしてくださいと言われてました。手加減して殴ったのですが、撮影が終わって帰る時に、どうも納得がいかないと監督に言いました。わざわざ撮影を抜けてまで心配して村にやって来たのに嘘だとわかれば、私だったら、彼女を殺すか、もっときつく殴ると言いました。監督は、わかったので、明日撮り直すけど、彼女には伝えません、好きにやってくださいと言われました。翌日4時までしか撮影できなかったのですが、私がすごく怒って殴ったら、彼女は事前に聞いてなかったから、すごくびっくりして逆切れして、暴言を吐いて攻撃してきたので、これはとても使えないと監督はカットを出しました。彼女はもうテヘランに戻ると暴れ出していて、これは映画のためだったよと話して、私も映画のために騙されたことがあると彼女に話して、3回目を撮りました。

市山:最後のひとことをお願いします。

ベーナズ:
パナヒ監督から出演依頼を貰った時に、私を必ず東京に行かせてくださいと言って承諾しました。カンヌに出品される時に、電話があってカンヌに行ってと言われ、カンヌはどうでもいいから東京に行かせてくださいと言ったら、監督から、カンヌだよ、アホかと言われました。ほんとに東京に行きたかったので、こうして東京に来られたのが嬉しくて、ギフトを貰ったような気持ちです。

市山: 『ある女優の不在』は12月13日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷他で公開されます。皆さん、どうぞ皆さんよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


★このQ&Aの前に、ベーナズ・ジャファリさんにインタビューの時間をいただきました。
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報告:景山咲子





東京フィルメックス 『戦場の讃歌』(イスラエル) で、VRを初体験

東京フィルメックスのメイン会場である朝日ホールが入っている有楽町マリオンビル9階に、「コニカミノルタプラネタリアTOKYO」がオープンし、VR作品の上映が可能になったことより、VRプログラム上映が企画されました。
初めてのVRプログラムとして上映されたのは、ヴェネチア国際映画祭VR部門コンペティション出品作品である『戦場の讃歌』。
フィルメックスの会期中、1日3回上映され、11月30日には、イスラエルより監督を招いてのトークイベントも開催されました。
イスラエルの作品なので、これは観なくてはと、時間を捻出しました。

初めて体験したVR作品と、トークの模様をお届けします。

◆『戦場の讃歌』 原題: Battle Hymn
イスラエル / 2019 / 11分. ※日本語字幕ナシ、英語字幕付き
監督:ヤイール・アグモン(Yair AGMON)

Director:ヤイール・アグモン(Yair AGMON)
毎晩多くのイスラエル国防軍(IDF)の兵士たちがヨルダン川西岸地区のパレスチナの村でたくさんの拘束任務を行っている。イスラエル国防軍の根本的なルーティーンが一時的なピークに達するのを、映画「Battle Hymn(讃歌)」は観客にみせる。そこには男らしさと恥、強さと弱さ、卑しさと権力が混在する。こうしてこの映画は、現実と非現実、そして私が家と呼ぶこの狂った悲しいシュールな場所について物語るのだ。2019年ヴェネチア国際映画祭にて上映。(公式サイトより)
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© 2019 Yalla films – Tal Bacher &Yair Agmon, All Rights Reserved


「コニカミノルタプラネタリアTOKYO」は、広々としたロビーの両脇に、上映や展示、グッズや飲食物の販売コーナーがあって、ちょっと近未来的な空間。
上映コーナーには、大きなカプセル型のソファが向かい合わせに並んでいて、え? スクリーンはどこに? とVRが何かを知らなかった私!
そも、たった11分の作品なのに、千円? という思いも。
(すみません・・・ プレス枠で拝見したので、私は払ってないのですが)

開始時間になり、指定席に案内され、VRを観るための器具を頭に装着。結構重たくて、うっとうしいです。画面は双眼鏡のように覗き、音はヘッドフォンから聴こえてきます。

銃を手入れしながら、きわどい雑談をする兵士たち。
上下左右に画面が広がり、うつむくと、まるで私の手のように、私の位置にいる兵士の手が見えます。
夜になり、点呼が行われ、7人の兵士は車に乗ってパレスチナ人の家へ。
アラビア語で「全員出て来い!」と叫び、母親と子どもたち、そして父親が出てきます。
「息子のファディはどこにいる?」
「友達の家」
犬が吠える。
ヤツは中に違いないと、2階にあがっていく兵士たち。
ファディを捕まえ、手を縛り、目隠しして、車で連れていく。
基地に戻り、ファディを見張る兵士たち。
ファディが目隠しされたまま歌いだす。
アラビア語だが、イスラエルの守護神を称える歌。
いつしか、イスラエル兵たちも口ずさみ、楽器を持っている者は伴奏する・・・

****
日常茶飯事で行われているイスラエル兵によるパレスチナ人の掃討作戦。
夜中に押しかけ、無理矢理連行することに慣れっこになっている兵士たち。
一方、夜も落ち着いて眠れないパレスチナの人たち・・・
なんとも、理不尽。
捉えられたパレスチナの青年が歌うのが、アラビア語とはいえ、イスラエル賛歌というのが、ちょっと解せない気もしましたが、皆で一緒に歌う姿は、監督なりの和平への願いと感じました。


監督の思いが聞きたくて、トークイベントに参加しました。
(イラン大使館での講演会を中座してまで!)

◆VRプログラム「戦場の讃歌」について監督に聞く。

2019年11月30日(土)4時~5時
有楽町朝日スクエア
登壇者:
ヤイール・アグモン(監督)
タル・バッファ(プロデューサー)

司会:市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
通訳:松下由美



★トークイベント

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市山:VRをフィルメックスで上映するのは初めてなのですが、今回1本だけ上映できることになりました。

監督:2回目の日本です。私たちはVRの可能性を強く信じています。

タール:
今回は機会をいただきありがとうございます。
私たちは一緒に兵役についたことがあって、ある程度経験に基づいて描きました。

市山:ヤイールさんはこれまでVR作品の経験は?

監督:
VRは初作品。これまでドキュメンタリーを撮っていました。イスラエルのファンドを使ってVRで撮れるのでやってみようとタールさんから言われました。

市山:劇映画は?

監督:長編はないです。短編ではフィクションも撮っています。

司会:
VRのファンドについて、タールさん、教えてください。

タール:イスラエルでファンドというと、ほぼ公的なもの。今回のファンドは、新しいメディアのもので、短編かつドキュメンタリーという枠組みでした。金額は、わずかなものでした。

司会:どれくらい?

タール:すべてこのファンドで作りました。

監督:200万円弱です。
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市山:年間に何本もVRは作られているのでしょうか?

監督:
昨年は、6つのプログラムがVRで作られました。
今年は4つのプログラム。カナダのファンドも入っています。

市山:日本ではVR作品は、どちらかというとゲームの為に作られています。
このようなアーティスティックなVRはあまり観たことがなかったので、どういう仕組みで作られたのか気になっています。

監督:イスラエルでは、ゲームの為には限られています。一方、VRは映画業界からは全く無視されているので、手掛けながら学んでいきました。作る上でテーマに制限はないのですが、環境、エネルギーなどがいいのかなと思いました。会話のある劇が好まれることを学びつつ、ほとんどワンショットでシチュエーションを決めて撮るのが適していると学びました。

市山:本来、VRで描くのなら、攻撃されたり、銃撃戦が起こったり、すごいことが起こるのではないかと思ったのですが、淡々と進んでいって、逆にある種の恐怖感が伝わってきて感動しました。このような作り方は意識的にされたのでしょうか?

監督:
シンプルにストーリーを伝えることに注力しました。私も兵士だった時、指揮官として夜、逮捕する仕事をして大変だったのですが、恋人や家族にそのつらさを伝えるのは難しいものでした。戦争があって、兵士が国を守っているという状況があるわけです。目標として、自分の母にわかってもらえるようなものをリアルに作ろうと二人で話し合いました。俳優が出演していますが、彼らも従軍していますので、充分知った上で演じています。唯一、リアルでないのは最後のシーンです。

市山:11分という時間で、すぐに終わるなと思っていたら、実際観終わってみたら、結構ヘビーで、これぐらいが充分だと思いました。長さはどのように決めたのですか?

監督:ストーリーがよければ、長くてもいけるのではないかと思っています。

*会場よりQ&A*
― カメラの位置は? あたかも自分が登場人物のようでした。

監督:
まさに、観ている人の視点で映画が展開します。タールさんの弟さんにヘルメットをかぶって貰って、その上にマネキンのようなものにカメラを持たせて撮りました。

― 何がVRに適しているのでしょうか?

監督:
まさに今問われるべきことだと思います。答えを持ち合わせていませんが、軍隊の状況を伝えるとか、複数の人が一緒に行動すること、たばこを吸っておしゃべりするような、二人以上の状況を作って伝えるのが適しているのではないかと思います。
カメラをどこに置くのかが重要。部屋のどこかに置いたのでは、面白くありません。
人の上に置けば、人の視線になります。
車にカメラを設置して、渋滞の中で人がいらいらする姿を見せることも考えています。

― VRの使い方が発展している中で、よりゲーム的なものを考えていますか?

監督:
この映画の設定は、ゲームとして機能するのではとタールは言っていますが、私自身はゲームは好きじゃありません。ヴェネチア国際映画祭に参加したのですが、インストラクテォイブなものが多かったです。

タール:
すでにあるものをVRで伝えるということも出来ると思います。

市山:
私もこの作品をヴェネチアのVR部門で観たのですが、台湾の『ニーナ・ウー』のメイキングがあって、そちらとどちらにしようかと最後まで迷ってました。

監督:そっちの方が出来がいいから、そちらを呼ぶべきでしたね。(笑)

― リアルで下を観ると手許が見えて不思議な感覚でした。アラブの人の逮捕シーンもリアルなのに、最後がファンタジー。イスラエルの兵士を経験したり、アラブの逮捕された経験者の方の感想を聞かれたことはありますか?

監督:あまり上映の機会がなくて、今、ハイファの映画祭で上映されています。とてもリアルだという反応
エンディングは、イスラエルの人にとって、とてもパワフル。捕まったパレスチナの彼が歌うのは、とても有名なもので、歌というより通常はシナゴーグで唱えられるもの。それをアラビア語で歌っていて、兵士たちが彼のバンドになるというもので、とても人々に響くものがあって話題になっています。

監督:イスラエル国籍のパレスチナ人の友達がいるのですが、兵士の経験はとてもつらいものだったと打ち明けてくれました。

注:『テルアビブ・オン・ファイア』サメフ・ゾアビ監督(イスラエル国籍のパレスチナ人)にインタビューした折に、「イスラエル国籍のパレスチナ人には兵役は義務ではありません。志願はできますが、99%は、兵役につきません」と伺いました。ヤイール監督のご友人は、奇特な1%のパレスチナ人ということになります。

市山:残念ながら、時間になりました。本日はありがとうございました。

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第20回東京フィルメックス  TOKYO FILMeX 2019

【第20回東京フィルメックス 開催概要】
期間 : 2019年11月23日(土) ~ 12月1日(日) (全9日間)
会場 :
【メイン会場】有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)
【レイトショー会場】TOHOシネマズ 日比谷
公式サイト: https://filmex.jp/2019/

記念すべき20回目の節目を迎える東京フィルメックス。
10月10日(木)3時より、ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センターにて、ラインナップ発表記者会見が行われました。

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ディレクターの市山尚三氏より開催概要の説明があった後、コンペティション部門の2本の日本作品、『静かな雨』の中川龍太郎監督と、『つつんで、ひらいて』の広瀬奈々子監督が登壇しました。
また、昨年、特別協賛された木下グループが1年で撤退することになり、新たな特別協賛を引き受けたシマフィルムの田中誠一氏(右端)が挨拶に立たれました。


*上映作品*

◆東京フィルメックス・コンペティション
  10作品

『水の影』
Shadow of Water
インド、監督:サナル・クマール・シャシダラン

『昨夜、あなたが微笑んでいた』
Last Night I Saw You Smiling
カンボジア・フランス、監督:ニアン・カヴィッチ

『熱帯雨』
Wet Season
シンガポール、監督:アンソニー・チェン

『評決』 Verdict
フィリピン、監督:レイムンド・リバイ・グティエレス

『ニーナ・ウー』
NINA WU
台湾・マレーシア・ミャンマー、監督:ミディー・ジー

『気球』
Balloon
中国、監督:ペマツェテン

『春江水暖』 Dwelling in the Fuchun Mountains
中国、監督:グー・シャオガン

『波高 (はこう)』 Height of the Wave
韓国。 監督:パク・ジョンボム

『静かな雨』 It Stopped Raining
日本、監督:中川龍太郎

『つつんで、ひらいて』book-paper-scissors
日本、監督:広瀬奈々子



◆特別招待作品


オープニング作品

『シャドウプレイ』
 The Shadow Play
中国、監督:ロウ・イエ

クロージング作品
『カミング・ホーム・アゲイン』 Coming Home Again
アメリカ・韓国、監督:ウェイン・ワン

『完全な候補者』
The Perfect Candidate
サウジアラビア・ドイツ、監督:ハイファ・アル=マンスール

『ヴィタリナ(仮題)』 Vitalina Varela
ポルトガル、監督:ペドロ・コスタ
配給:シネマトリックス

『ある女優の不在』
3 faces
イラン。監督:ジャファル・パナヒ
配給:キノフィルムズ

『夢の裏側〜ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』 Documentary on the Shadow Play
中国、監督:マー・インリー
配給:アップリンク

◆特別招待作品 フィルメックス・クラシック
『牛』 The Cow
イラン、監督:ダリウシュ・メールジュイ

『HHH:侯孝賢』
HHH: A Portrait of Hou Hsiao-Hsein
フランス・台湾、監督:オリヴィエ・アサイヤス

『フラワーズ・オブ・シャンハイ』 Flowers of Shanghai
台湾、監督:ホウ・シャオシェン

『大輪廻』 The Wheel of Life
台湾、監督:キン・フー、リー・シン、パイ・ジンルイ

『空山霊雨』
Raining in the Mountain
台湾、監督:キン・フー


◆特集上映 阪本順治

『鉄拳』 1990年
『ビリケン』 1996年
『KT』 2002年

◆歴代受賞作人気投票上映
節目の20回を迎えるにあたり、歴代の受賞作品人気投票を実施。(8/22〜9/10)
映画ファンの選んだ上位作品の中から下記3作品を上映。

『ふゆの獣』Love Addict
日本、監督:内田伸輝

『息もできない』
Breathless
韓国、監督:ヤン・イクチュン

『ふたりの人魚』Suzhou River
中国。監督:ロウ・イエ

(1位の『SPL〈殺破狼〉』(香港)と3位の『天使の眼、野獣の街』(香港)は、残念ながら権利元や素材の確認が出来ず、上映を断念)


◆バリアフリー上映

『夜明け』 監督:広瀬奈々子


東京フィルメックス・コンペティション
https://filmex.jp/2019/news/information/lineupannounce-fc

特別招待作品 / フィルメックス・クラシック
https://filmex.jp/2019/news/information/lineupannounce-ss

特集上映 阪本順治 / 歴代受賞作品人気投票上映
https://filmex.jp/2019/news/information/lineupannounce-sp



東京フィルメックス『タングスィール』Q&A ~26歳のナデリが、黒澤を手本に作った活劇~ (咲)

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2018年11月25日(日)9:50~
「特集上映アミール・ナデリ」の最後を飾って、革命前にイランで撮った『タングスィール』がフィルメックス最終日に追加上映されました。

『タングスィール』 Tangsir
イラン / 1973年 / 114分

ナデリが26歳の時に撮った監督第3作。
サーデク・チューバク(1916年イラン、ブーシェフル生まれ)の同名小説の映画化。
イラン南西部ブーシェフル。実直な男ザエル・モハメッドは、汗水垂らし20年かけて貯めた全財産を悪徳な商人に奪われてしまう。法律家や聖職者も結託して町を牛耳っている。絶望したザエルは、彼らに復讐を誓い、銃を手に商人の屋敷に向かう・・・

◆舞台挨拶

市山:この作品は、日本では、かなり状態の悪いビデオでしか見られなかったのですが、この度、イランのフィルムアーカイブが、35mmのプリントの良い状態のところを集めて、DCPにして送ってくれました。ところによって、きれいなところと多少筋が入っていたりするところもありますが、予想以上にいい状態のものが送られてきました。
それでは、ナデリ監督をお呼びしたいと思います。拍手でお迎えください。

ナデリ:グッドモーニング! グッドモーニング! グッドモーニング! グッドモーニング!  今日は自分の映画の最後の上映で、マラソンが終わるような気持ちです。
今回の映像は観たことがありません。状態がいいのかどうかわかりません。この映画自体、完成して1回観たきり、今まで観たことがありません。クラシックのイラン映画として、映像の状態が悪くても、皆さんに我慢して是非観ていただきたい。私の3本目の監督作です。ドラマ性の強い映画ですが、これから後の私の映画にはドラマはほとんど入っていません。
黒澤監督の影響で作った映画で、シネマスコープで作りました。今回の私の特集の最後の上映を、どうぞごゆっくりご覧ください。
この場を借りて、市山さんにお礼を申し上げたいと思います。市山さんがいなければ、イランでDCPを作ってもらうこともできませんでした。インッシャッラー、 終わりましたら、またお話しましょう。CUT!

映画『タングスィール』上映

人の集まる墓場に牛が走ってくる。
真ん中にある小さな祠に、人々が逃げ込む。
祠にはカルバラーの悲劇の壁画。
牛に立ちむかう男。
女性が髪の毛を振り乱してやってくる
「牛を救ってくれ。唯一の財産。生きていけない」と未亡人のサキーネ
もう生かしておけない。楽にしてやれと人々。
刀を渡されたザエルが牛にとどめをさす。
牛を殺さずに、財産を奪ったやつらと闘え!

冒頭から、迫力ある場面。
こうして、ザエルは、自分の財産を奪った悪徳商人や結託した町の重鎮たちへの復讐を誓い、立ち向かう・・・

伝統的な家並みの町で繰り広げられる復讐劇に、手に汗握って画面を見つめた114分でした。

◆Q&A
大きな拍手で迎えられるナデリ監督。
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ナデリ:
信じられません。自分が作ったとは! その時、国が作る許可をくれたのもわからない。革命前でしたが。原作があります。自分の父は、小さい時にザエルに会ったことがあるのです。銃を持って走って回っているところを見たことがあると話していたそうです。おばあさんから、その話を聞かされました。
主役のザエル役のベヘルーズ・ヴォスーギは、当時スーパースターでした。脇役たちも、当時とても有名な役者たちです。
26歳の時に撮った3本目の映画です。これを作って数ヵ月後に『ハーモニカ』を作りました。政治的な考えは何もなくて、黒澤監督のようなクラシックな映画を作りたいと思ったのです。
私もザエルと同じ南の生まれなので、血が湧き出して作ったのではと思います。
時代劇なので、アスファルトの部分には5か月位かけて砂を持ってきて乗せたり、壁の字を消したりしました。絶対セットの中で作りたくなかったから、町から新しいものを消して、古い町を作り出しました。今は、このような町並みも残っていません。当時は、まだクラシックな建物が残っていました。
一人一人の出演している役者がとても有名な方たちで、若者の監督の私が彼らから演技を取るのは大変でした。でも結果は、ご覧の通りです。セットも衣裳もすべて自分で準備しました。

◆会場とのQ&A

―(矢田部吉彦氏)活劇を楽しみました。ザエルは実在の伝説的人物とのことですが、生き延びたのですか?

ナデリ:ザエルは実在の人物です。有名な作家が小説にしました。90歳まで、その地で生きていたと聞いています。曾孫さんから、「映画を作ってくださってありがとうございます」という手紙を貰いました。
今のイランの人たちも、『タングスィール』を観て、エネルギーを貰うと言います。でも、神様に誓って、政治的なものは作っていません。『ハーモニカ』は、お祖母さんの為に、『タングスィール』はお父さんの為に作ったものです。

― タングスィールとは、土地の名前かと思ったのですが、民族の名ですか?

ナデリ:イギリス人が南から石油を狙って押し寄せた時、南の町はずれの海辺のタングスィールという地の人たちが、果敢にイギリス相手に闘いました。
(注:イランでは、その町の人のことを、町の名前をつけて呼びます。テヘラン → テヘラーニー(テヘランっ子)。日本なら、大阪に住む人を、「大阪人」というように)

― 黒澤映画の雰囲気がよく出ていました。主役も三船のようでした。顔つきや動作に武士道精神を見るようでした。

ナデリ:若い時に『七人の侍』を観て、私の血の中にずっと流れています。次に『蜘蛛巣城』を観て、次から次に黒澤作品を観ました。映画を観て、イランと日本は似ているところがあると思っていました。主役のベヘルーズ・ヴォスーギには、黒澤明監督の三船敏郎の映画を全部観て、ボディ・ラングエージを三船から学んでくださいとお願いしました。主役には、前半はフラットな動き、後半は踊るように演じてもらいました。刀じゃなくて銃なのですが。衣装も黒澤の雰囲気で地域のものを選びました。銃のほかに、もう一方の手には斧を持たせ、黒澤の雰囲気を出しました。自分の人生をすべて日本に捧げても、まだ足りません。

― 黒澤映画への愛を感じました。ライフル銃を敵の胸にあてて撃つシーンが多かったのですが、意図があったのでしょうか?

ナデリ:ザエルは苦しみを感じて生きてきた人物です。撃つ前に相手に苦しみを与えたくて至近距離で間を持たせたのです。
シネマスコープをイランで初めて使った映画です。端から端まで人を動かさないといけない。カメラの動きは黒澤。人をいっぱい撮っています。どれだけ人物に近づくか、レンズの選び方、ロングショットなのかズームで撮るのかなど、黒澤映画を観て研究しました。
黒澤のような人は、まだこの世に生まれない。アンソニー・マンは少しだけ黒澤に近づこうとしたと思います。黒澤は時代劇をオペラのように作るために生まれてきた方だと思います。

市山:野上照代さんが手をあげていらっしゃいます。

*ナデリ監督が立ち上がって、「皆さん、野上さんに注目を!」と、拍手を送りました。

―(野上照代さん)どうもありがとうございます。今、お話を聞いて納得しました。セットを初めから全部作るのは大変。ナデリさんが26歳で作ったのはすごい。イランでは皆が知っている事件?

ナデリ:小説もあるので、皆が知っている有名な話です。口から口に伝わって伝説になっています。

野上:どこの国でも、小さな町の人たちが歴史を作ったようなことがありますね。
それにしても、その若さで、よく撮ったなと感心しました。

ナデリ: 『ハーモニカ』も同じ年に作りました。『タングスィール』が内容的に危ないと思って、公開できなかったら、『ハーモニカ』を公開してもらおうと思って作ったのです。『ハーモニカ』は、一晩上映されたあと、上映禁止になりました。『タングスィール』は、2週間で上映禁止になりました。主役がものすごく有名な人で、ロイヤルファミリーも彼が好きだったので、2週間上映できました。革命で王政が倒された後、彼はロイヤルファミリーと親しかったためにアメリカに移ることになって、40年間ずっとアメリカに住んでいます。

野上:ほんとに、よく頑張って作ったわね。

ナデリ:I love you!
撮っている時、町から町へと歩いて、23日間くらい靴を脱いだこともありませんでした。やっと靴を脱いだら、足が結構膿んでいました。その時だけで終わる映画じゃなくて、後世に残る映画を作りたかったのです。それで頑張ったのです。

野上:映画は、そういうものだと思います。

ナデリ:市山さんのお陰で今回古い映画が上映されて、自分で観て、力が湧いて、また作れるなと思うくらいでした。

市山:
20年ほど前に、VHSビデオを入手して、なんとか上映できないかなと思ってました。

ナデリ:経済的には何もないけど、21本の映画が財産です。サウンドの使い方も編集もすべて黒澤監督に学びました。

野上:生きていたら喜んだでしょう。

ナデリ:黒澤はずっと生きています!  日本がある限り、黒澤監督はいらっしゃいます。

野上:ありがとうございます。


市山:それでは、最後の質問です。

― 牛は演技で死んでいるのでしょうか?
(え? 最後の質問がこれ? という空気が・・・)
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ナデリ:いえ! 殺してません。映画のために悪いことばかりしてきましたが。なぜ、そんな質問をするのですか~
これで、最後の上映になりましたので、市山さんにあらためてお礼を申しあげます。フィルメックスは映画監督を育てている映画祭なので、一生応援しています。

市山:ナデリ監督の作品『山<モンテ>』が2月にアップリンクで公開になります。

ナデリ:モンテ! モンテ! 私の映画が好きでしたら、絶対観てください。
I love you!
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*****

この後、会場の外では、ナデリ監督のファンが次から次にナデリ監督に駆け寄り別れを惜しみました。フィルメックスのスタッフの方たちとも記念写真を撮るナデリ監督でした。

『タングスィ―ル』を何度も観ているイラン人の友人も、「こんなに綺麗な状態のは初めて」と感激していました。撮影当時なら、南部にはまだあのような町は残っていると思っていたので、アスファルトの道路に土を盛ったと知って、びっくりしたとも言っていました。
ザエルを匿った酒屋の店主を演じたのは、アルメニア人の俳優さん。ほかの革命前のイラン映画でも、よく酒屋さん役で出ているそうです。お酒がOKだった革命前とはいえ、やっぱり酒屋はムスリムよりアルメニア人なのだと思いました。

ナデリ監督の映画というと、忍耐を強いられる作品が多かったのですが、ちゃんとスト―リ―のあるものを初期には作っていたことも、この目で確認することができました。1週間経った今も、『タングスィール』を観た興奮が冷めません。ほんとにフィルメックスに感謝です。(景山咲子)










第19回東京フィルメックス(2018) 受賞結果 (暁)

【最優秀作品賞】 
『アイカ(原題)』Ayka
ロシア、ドイツ、ポーランド、カザフスタン、中国 / 2018
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ (Sergei DVORTSEVOY)

授賞理由:
最優秀作品賞はセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督の『アイカ』に贈る。出産後新生児を残して病院を逃げた25歳のキルギス人の女性の物語。借金を返そうと様々な仕事に就こうとするがうまくいかない。
本作はこの女性に降りかかる過酷な現実とモスクワで移民として生き抜いて行こうする彼女の意志を見事に描いている。ドキュメンタリー映画出身の監督は残酷な境遇を核心的でリアルなやり方で捉えている。各シーンは緊張に満ちていて見る者の心を打つ。
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セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督

【審査員特別賞】 
『轢き殺された羊』 Jinpa
中国 / 2018 監督:ペマツェテン(Pema Tseden)

授賞理由:
「私の夢を教えても、おそらくあなたは忘れるだろう。私が夢に従って行動すれば、あるいはあなたは覚えるかもしれない。ただ、私の夢にあなたを巻き込めば、それはあなたの夢にもなる。」
このチベットに箴言に始まるこのポップな西部劇ロードムーヴィは二人ともジンパという名の謎の人物とココシリへと私たちを誘う。一人は復讐のために人殺しを企て、もう一人は誤って殺してしまった羊の済度を求める。
息をのむ映像で神秘的でオペラのような夢の如く物語は語られ、チベット語で歌われる「オーソレミオ」で強調される。
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ペマツェテン監督

【スペシャル・メンション】 
『夜明け』 His Lost Name
日本 / 2018 監督:広瀬奈々子(HIROSE Nanako)

授賞理由:
審査員は広瀬奈々子監督の「夜明け」をスペシャルメンションとしたい。
本作は、見事な脚本と演出により、柳楽優弥が人生を模索する青年を力強く演じるファミリードラマである。この若い女性監督の明晰なデビュー作品。
日本映画の未来への一条の明るい光となった。
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広瀬奈々子監督

■観客賞

『コンプリシティ』 Complicity
監督:近浦啓 (CHIKAURA Kei)
日本、中国 / 2018 製作:クレイテプス
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近浦啓監督

■学生審査員賞
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』
Long Day’s Journey into Night
監督:ビー・ガン(BI Gan)
中国、フランス / 2018 / 140分
配給: リアリーライクフィルムズ / ガチンコ・フィルム / シネフィル

授賞理由:
男と女、2人の究極的な愛は、地球の自転にも抗った。
男が誰と出会ったのか、本当に出会ったのかさえ不確かだが。
ようやく縫い合わせた錆びた記憶の欠片たちと、眠ってしまったのかと錯覚してしまう夢のような一時。
「意味」は遥か先に隠され、どこを探しても見つけらない。
僕らは宇宙からやってきた監督に別世界に、別の宇宙に連れ去られた。
大冒険は終わったのか、まだ帰ってきているのかも分からない。
映画表現へのこの革命的ギャンブルは、新たな扉を叩いただろう。
そして、映画に対する確固たる愛と覚悟を見せつけ、僕らの背中も大きく押してくれた。
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シャン・ゾーロン(プロデューサー)


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受賞者と審査員

前列左からシャン・ゾーロンプロデューサー、ペマツェテン監督、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督、広瀬奈々子監督、近浦啓監督
後列 第19回東京フィルメックス審査員


受賞理由フィルメックスHPより