東京フィルメックス 『迂闊(うかつ)な犯罪』 リモートQ&A

★12月6日(日)までオンライン配信中!
  詳細は、こちらで

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『迂闊(うかつ)な犯罪』Careless Crim
イラン / 2020 / 139分
監督:シャーラム・モクリ(Shahram MOKRI)

1979年イスラム革命前夜、西欧文化を否定する暴徒によって多くの映画館が焼き討ちにされた。それから40年後、4人の男たちが映画館の焼き討ちを計画する……。奇抜な発想を知的な構成で映画化したモクリの監督第4作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。
(公式サイトより)

*物語*
映画館で、座席の列を増やす算段をする男たち。
500席を700席にした。さらに1000席にしたいとボス。
税金があがったらしく、詰めれるだけ詰めないとやっていけないとぼやく。

1979年2月のイラン革命成就の6か月前のこと。
アバダンの映画館レックス座が火事で焼け、400名以上が犠牲になる。
レックス座では、マスウード・キミヤーイー監督の『鹿』(1974年)を上映中だった。
客席が多かった
放火の疑いがある
発火したとき映写室に従業員がいなかった
鍵が閉まっていた・・・等々、取沙汰される。
革命家の仕業とされたが、王命だったという説も発表された。

一転して、現在のテヘラン。
映画博物館に薬を持っているという男を訪ねていく。
大きな被り物を被っていて、男の顔は見えない。

砂漠の泉のそばで『鹿』の上映会を開こうとしている女の子たち。
兵士たちが、このそばでミサイルが見つかったという。

新作映画『迂闊な犯罪』が上映される映画館での放火を企てている4人の男たちの姿が、時折、織り込まれながら映画は進む・・・

*****
10月30日夜の上映を観た友人たちが口を揃えて「疲れた」と言っていた作品。確かに、40年前と現在が複雑に入り込んでいるので疲れるのも、さもありなんと思いました。私は、11月2日(月)10時10分からの上映で拝見。くらくらしましたが、興味深い作品でした。上映後に、アメリカに滞在しているシャーラム・モクリ監督とリモートでQ&Aが行われ、いろいろな謎が解けました。
(それにしても、フィルメックスで上映される映画は、謎が多いです)
ちなみに、シャーラム・モクリ監督の作品『予兆の森で』を2014年のアジア・フォーカス福岡国際映画祭で観ましたが、ワンカットで撮りながら、複雑に入り込んだ作品でした。


◆『迂闊な犯罪』リモートQ&A
TOHOシネマズ シャンテ

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*登壇*
監督:シャーラム・モクリ監督
司会:市山尚三さん(東京フィルメックス ディレクター)
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん(ペルシア語)

動画URL https://youtu.be/grlbdFqRBBk
★印:動画にはない部分

市山:アメリカにいらっしゃる監督にQ&Aにご参加いただいております。

監督:劇場まで足を運んでいただきありがとうございます。劇場で映画を観ることが夢のようなことになっていますが、いつか皆さんと一緒に劇場に座って映画を観られるようになることを願っています

市山:映画の中に映画が出てくる複雑な構成で面白い映画でした。どのように思いつかれたのでしょうか?

監督:シネマ・イン・シネマのやり方が好きです。アッバス・キアロスタミ監督の『クローズ・アップ』や『オリーブの林をぬけて』も、そのような作りです。いつか試したいと思っていました。レックス劇場の放火は歴史的に有名な事件で、映画にしたいと思っていました。自分の世代はよく知っていますが、若い世代はあまり知りませんので、シネマ・イン・シネマの形で撮ってみようと思いました。
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市山:時間が螺旋のように繰り返すのは?

監督:レックス劇場の事件は、40年前。現在とどう語ればいいか考え、当時のキャラクターをどう今のテヘランに入れればいいか考えて、パズルのように現在と過去を繋ぎました。将来、こういうことが起きないようにと・・・

市山:感想で、異なる時代と場所が繋がっていく斬新な作品でしたといただいています。その方の質問です。
ミサイルが出てきましたが、これは実際の話でしょうか?

監督:イランイラク戦争の時に使われたミサイルや爆弾が爆発しないものがあちこちに残っていると聞いています。
最後のシーンで人形が空を見上げたらミサイルが飛んでいます。イランの周辺は、ミサイルが飛ぶかもしれない危険な地域です。話のルーツにはリアリティがあります。

Q:『迂闊な犯罪(Careless Crim)』というタイトルに込められた意味は?

監督:シネマレックスのことはとても重要です。事件について3つの説明がなされています。革命前の体制が政治的に見ていて、お互いのせいにしています。その日、ほんとは何が起きたのかをリサーチしました。政治的な意図でなく、ケアレスな犯罪だったという説が出てきました。映画の最初の方で、モノクロの無声映画を挿入しましたが、ケアレスな男が煙草をぽいっと捨てたために火事になる内容です。ケアレスな犯罪だったという調査結果を映画のタイトルにすればいいなと思いました。

Q:その挿入された映画は、元々ある無声映画なのでしょうか?

監督:もともとあるものです。ハロルド・ショーンがハリウッドで作ったものです。レックス劇場放火事件は、4人がレストランに行ったことなど、ほんとの話を入れました。

Q:「レックス劇場で上映されていたキミヤーイー監督の『鹿』は、今はイランでは観れないのでしょうか?

監督:革命後、公開許可が出てないのですが、アンダーグランドでは観れます。DVDも手に入ります。

市山:公開できない理由は内容の問題でしょうか? それとも手続き上の問題でしょうか?

監督:革命後、革命前の映画の公開が出来なくなったのは、内容よりも、女性の髪の毛が出ているとか、肌が出ているといったことが問題にされるからです。スーパースターが出ていて、革命後は活動していないという理由もあります。『鹿』は革命後数日だけ公開されましたが、その後、検閲で上映できなくなりました。

Q:光について教えてください。時々画面が白くなるのは、どんな効果を狙ったものですか?

監督:光について、撮影監督と相談して、3つのアイディアが出ました。
・劇場の中で感じる映写機の光
・炎を感じる明るさ
・さらに、キャラクターが混乱している時のライティングをどうしようと考えました。

Q:カメラは何台使ったのでしょうか?

監督:1台だけです。テクニックを変えたので、何台も使っているように見えたのだと思います。放火犯はカメラを手持ちで追っています。劇場の中は三脚を使いました。
泉のシーンは、クラシックな撮り方をしました。
素晴らしい質問をありがとうございました。

******

1978年8月9日のアバダンの映画館放火事件は、当時から反政府組織がやったという説と王政側がやったという説があって、いまだに不明。上映後のリモートQAで、監督が調べたところ、実は政治的なものでなく、色々な悪条件が重なって、ケアレスに火がついたという説もあって、それをモチ―フにしたとの説明がありました。
このレックス劇場の火事が、じわじわとくすぶっていた反政府運動に火がついて革命成就に至ったので、ほんとにケアレスなものだったとしたら、すごいことだなと思いました。

イランのイスラーム革命成就直後に作られたドキュメンタリー映画『自由のために』(原題:Barâ-ye âzâdi)について、下記スタッフ日記で紹介した中に、アバダンの映画館放火事件の真相が不明であることに言及しています。ご参考まで!
http://cinemajournal.seesaa.net/article/463646371.html

景山咲子




東京フィルメックス 最優秀作品賞『死ぬ間際』 リモートQ&A

★12月6日(日)までオンライン配信中!
  詳細は、こちらで
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『死ぬ間際』 In Between Dying
監督:ヒラル・バイダロフHilal BAYDAROV
アゼルバイジャン・メキシコ・アメリカ / 2020 / 88分

タル・ベーラの薫陶を受けたアゼルバイジャンの新鋭ヒラル・バイダロフの長編劇映画第2作。行く先々で死の影に追われる主人公の一日の旅を荒涼たる中央アジアの風景を背景に描き、見る者に様々な謎を投げかける。ヴェネチア映画祭コンペティションで上映。
(公式サイトより)

霧の中に立つ男。幻想的な幕開け。
青年ダヴドは麻薬密売の元締めの手下を殺してしまい、町を出てひたすら逃げる。そこで出会う女性たち。最初に逃げ込んだ家畜小屋では、父親に5年間も鎖に繋がれていた少女に助けられる。次には、アル中の暴力夫に悩む女性。夫に襲われたダヴドを助ける名目で夫を殺す。白いウェディングドレス姿で走ってきた女性をバイクに乗せる。兄に望まぬ結婚を強いられて逃げてきたが、結局兄に射殺されてしまう。そして、母親を埋葬しようとする盲目の少女・・・
行く先々で死に出会うダヴド。美しい自然の中で、台詞の代わりに詩が語られることが多く、なんとも不思議な独特の世界でした。


10月30日(金)15:50からの上映後、エジプト映画祭に参加中のヒラル・バイダロフ監督とリモートQ&Aが行われ、不思議世界の謎が少し解けました。

◆『死ぬ間際』Q&A(リモート)
TOHOシネマズ シャンテ

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登壇:
ヒラル・バイダロフ監督
司会:市山尚三さん(東京フィルメックス ディレクター)
通訳:松下由美さん

動画URL https://youtu.be/5404YA2zsZs
★印:動画にはない部分

市山:この映画を作ったきっかけをお伺いします。何かもとになったストーリーなどはあるのでしょうか?

監督:15年前、高校生の時に仏陀の人生のことを読みました。王族で父親が過保護で貧困や悪いものを見せませんでした。ある時、王宮を出た彼は病に侵された貧しい人々の現実を見てショックを受けて、二度と王宮に帰らないと決意します。その話はすっかり忘れていました。この映画を作ろうと思った時には、1日で偶然人生が変わる話を描きたいと考えました。青年は死と出会って、自分の闇の部分を自己発見します。家を出る決心もしないので、仏陀とは違うけれど、出発点は仏陀の話です。

Q 白馬は何を表しているのでしょうか?

監督:脚本には1行も書かれていません。美しい白い馬が偶然湖のそばにいたので、オーナーにお願いして撮らせてもらいました。
故郷のコーカサスの村で、白い馬を飼っていた子供時代のことが蘇りました。死んだ時にとても悲しくて泣き続けました。愛する父と母がいて自然があって馬がいるという子供時代のことを思い出して、この場面を入れました。
家族3人のシーンが出てきますが、主人公が求めている聖なるほんとの家族を象徴しています。

Q 男女の差別ついて、この作品の中でどう考えられたでしょうか?

監督:編集前に何を見せようと考えました。若い主人公ダウドの経験することを見せたかったのですが、編集前のものを母に見せたら、これはよくない、このまま見せちゃいけないといわれました。ちなみに母は最後の場面に出ています。自分でその後編集を重ねて、最終的にチャプターに分けました。盲目の女性、狂犬病の女性、湖の白い馬など。何を見せたかったかというと、男女間の差別より、愛を描きたかったのです。同じ人の別の側面を描いていることをご覧になって気づかれたかと思います。差別というより、違いがないことを描きたかったのです。愛の様々な側面を描いたといえます。

 イスラーム神秘主義スーフィズムにインスパイアされた作品と感じました。どれくらい意識をされたのでしょうか?

監督:スーフィズムに関するものは読みましたが、私の人生はほど遠いものです。教養として知っているのと、母の影響を強く受けて、母が引用してくれたものを取りいれています。小さな存在の私が語るにはスーフィズムは大きすぎます。映画でそれを見せようとは思っていません。でも、読みすぎたので、要素は表れているということはあると思います。
あと、ロシア文学のチェーホフや、イランの詩人などの影響も反映されていると思います。こういったものが私の魂を形作っています。

Q 霧や雨、降りしきる紅葉など自然物の演出が圧倒的だったのですが、どれくらい人為的に作ったのでしょうか? 自然の撮影にはどのような苦労があったのでしょうか?   

監督:アリガトー。良い質問! 数学、情報学を学んできて、科学的なものを信じてきましたが、映画は違う。直観に従って撮っています。詩的でなければ映画じゃない。雨、霧が出てきてくれて、自然に支えられて出来た映画です。出会ったものに触発されて撮りました。霧が出てきたら、詩を書いてダウドに渡して詠んでもらいました。湖があった時にも自分の直観に従いました。

Q アゼルバイジャンの映画事情は? また、タルベーラから薫陶を受けたそうですが、経緯を教えてください。

監督:小さな国で、周辺国も映画の歴史はありますが、ソ連から独立したあと、映画業界が崩壊して作れない時代がありました。今また若手も育って映画が作られるようになりました。次世代が育っています。
タルベーラ監督の『サタンタンゴ』『ニーチェの馬』などを観てショックを受けました。サラエボ・フィルムアカデミーをタルベーラ監督が主催すると知って、参加しなくてはと行きました。実はタルベーラと映画の話を直接できたことはあまりありません。サラエボで生活費を稼ぐためにあちこちでチェスをしていて、学校にあまり行かなくて、チェスを通して映画を学びんだと言っています。

Q ロケーションや土地の特徴に物語的意味がありましたら教えてください。

監督:映像にメッセージを込めることは信じていません。ロケ地から読み取れるものはありません。ダヴドが逃亡する場所ですが、私の住む近くだけでなく、アゼルバイジャンのあちこちで撮影しました。車で走ってここはいいなと思うと車を止めてカメラを出して撮りました。基準としては、私のインスピレーションを引き出してくれるところです。
落ち葉のシーンは、葉っぱを落とすようなテクノロジーは持っていません。直観に従って求めたところ、イメージtに合ういいところに出会えました。

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市山:日本映画がとても好きで、ほんとは来日したかったとのことでした。また凄い作品を作られることと思いますので、次の機会にお呼びしたいと思います。

監督:ほんとにご覧くださってありがとうございます。日本の映画や巨匠に大いなる敬意を表しています。溝口監督や新藤兼人監督など巨匠の国にぜひ行きたい。次回は直接皆さんにお会いできればと思います。

授賞式でのヒラル・バイダロフ監督のメッセージは、こちらでご覧ください。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478502965.html

景山咲子


★オンライン配信で、12月6日まで視聴できます。
https://filmex.jp/2020/online2020




東京フィルメックス・オンライン上映(11/21~12/6)

今年の第21回東京フィルメックスで上映された作品の中から、12作品がオンラインで配信されます。

実施期間:11月21日から11月30日まで → 11月22日(日)午前10:00時配信開始~ 11月30日(月) 12月6日(日)23:59まで ★11/27変更
料金:1作品1,500円均一  → 1作品13米ドル 
決済方法:クレジットカードのみ
視聴方法・諸注意:
・作品の購入後から48時間以内再生可能。再送開始時点から更に72時間以内に視聴可能時間が終了になります。
・配信は特設サイトよりご覧頂けます(11月21日よりアクセス可能)。
 詳細は映画祭HP(https://filmex.jp/2020/online2020 )からご確認下さい。
・日本国内からの視聴可能となります。海外からのご利用はできません。
・各作品には視聴可能者数制限があり、視聴可能者数は作品ごとに異なります。
・対象作品は11月16日(月)現在での予定です。急な変更の可能性がありますので、予めご了承下さい。

★対象作品★
『風が吹けば』Should The Wind Drop
監督:ノラ・マルティロシャン(Nora MARTIROSYAN) ★女性監督
フランス・アルメニア・ベルギー / 2020 / 100分

『死ぬ間際』 In Between Dying
監督:ヒラル・バイダロフ(Hilal Baydarov)
アゼルバイジャン・メキシコ・アメリカ / 2020 / 88分

『迂闊(うかつ)な犯罪』 Careless Crime
監督:シャーラム・モクリ(Shahram MOKRI)
イラン / 2020 / 139分

『イエローキャット』 Yellow Cat
監督:アディルハン・イェルジャノフ(Adilkhan YELZHANOV)
カザフスタン・フランス / 2020 / 90分

『アスワン』 Aswang
監督:アリックス・アイン・アルンパク(Alyx Ayn ARUMPAC)★女性監督
フィリピン / 2019 / 85分

『無聲(むせい)』 The Silent Forest
監督:コー・チェンニエン(KO Chen-Nien) ★女性監督
台湾 / 2020 / 104分

『デニス・ホー:ビカミング・ザ・ソング』 Denise Ho: Becoming the Song
監督:スー・ウィリアムズ(Sue WILLIAMS)
アメリカ / 2020 / 83分

『日子』 Days
監督:ツァイ・ミンリャン(TSAI Ming Liang)
台湾 / 2020 / 127分

『海が青くなるまで泳ぐ』 Swimming Out Till The Sea Turns Blue
監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhang-ke)
中国 / 2020 / 111分

『平静』 The Calming
監督:ソン・ファン(SONG Fang)
中国 / 2020 / 89分

◆特集上映:エリア・スレイマンより
『消えゆくものたちの年代記』 Chronicle of a Disappearance
パレスチナ / 1996 / 84分

『D.I.』Divine Intervention
フランス、パレスチナ / 2002 / 92分

第21回東京フィルメックス 授賞式

最優秀作品賞は、アゼルバイジャンの詩的な『死ぬ間際』に!
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例年、11月下旬に開催されていた東京フィルメックスですが、今年は東京国際映画祭と連携し、いつもより早い10月30日(金)~11月7日(土)の日程で開催されました。
コロナ禍で、東京国際映画祭ではコンペティションをやめて、観客賞のみとなりましたが、東京フィルメックスでは、例年通り、12作品のコンペティション作品の中から受賞作を選定し、7日に授賞式が行われました。
司会:レイチェル・チャンさん(J-WAVE)

◆第21回東京フィルメックス受賞結果◆
最優秀作品賞:『死ぬ間際』ヒラル・バイダロフ
審査員特別賞:『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』池田暁
スペシャル・メンション:『Pierce』ネリシア・ロー、『KANAKO』北川未来
観客賞:『七人楽隊』アン・ホイ、ジョニー・トー、ツイ・ハーク、サモ・ハン、ユエン・ウーピン、リンゴ・ラム、パトリック・タム
学生審査員賞:『由宇子の天秤』春本雄二郎

New Director Award:『熱のあとに』(日本/山本英監督)
New Director Award 審査員特別賞:『まどろむ土(仮)』(日本/金子由里奈監督)

タレンツ・トーキョー・アワード 2020:『Oasis of Now』(マレーシア/チア・チーサム)
タレンツ・トーキョー・アワード 2020 スペシャル・メンション:『Pierce』(シンガポール/ネリシア・ロー)
タレンツ・トーキョー・アワード 2020 スペシャル・メンション:『KANAKO』(日本/北川未来)


◎授賞式
発表された順に報告します。

◆New Director Award
東京フィルメックス 特別協賛のシマフィルムによって設けられた、若い映画製作者を対象とした新しい部門。シマフィルム 田中誠一さんより発表が行われました。

New Director Award最終選考選出者11名の中から、New Director Awardには、『熱のあとに』の山本英監督が選ばれました。
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山本英監督:誰かの側にいること、いれないことを描いた脚本です。イナウォンさんと二人で紡いだ企画です。(左がイナウォンさん)

New Director Award 審査員特別賞
『まどろむ土(仮)』

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金子由里奈監督



◆タレンツ・トーキョー
今年のタレンツ・トーキョーは、11月2日~7日の6日間、オンラインで実施され、アジア各国の15名が参加。パク・キヨン監督をはじめとする4人のメイン講師のほか、黒沢清監督や是枝裕和監督のマスタークラスが開催されました。

タレンツ・トーキョー・アワード 2020:『Oasis of Now』
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マレーシア チア・チーサム監督
「困難な時期にオンラインで開催を可能にしてくださり、ありがとうございます。多様な仲間から多くを学びました」


◆観客賞
『七人楽隊』香港、2020年 
監督:アン・ホイ、ジョニー・トー、ツイ・ハーク、サモ・ハン、ユエン・ウーピン、リンゴ・ラム、パトリック・タム

市山さんが7人の監督の名前を思い出しながらあげたのですが、「誰か忘れてますね」との言葉に、会場から「サモ・ハン!」と声があがりました。10月17日のチケット売り出しの時にも、真っ先に売り切れた人気作です。

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ジョニー・トー監督が代表してビデオコメントを寄せられました。


◎コンペティション 各賞発表
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各賞発表の前に、プログラムディレクターの市山尚三氏より挨拶。
「コロナ禍の中、連日会場に足を運んでいただいた皆様に感謝申しあげます。今年の4月の時点では開催できるかどうかが微妙でしたが、リアルな開催にこぎつけることができたのは、サポートしてくださった皆さまのお陰です。東京国際映画祭との共催も手探り状態でした。上映が重なってしまったとの声もありますが、日本映画界を盛りあげていく為に今後も続けていきたいと思っています」

また、一部の作品をオンライン上映することが発表されました。
11月21日~30日の期間限定で、上映作品等詳細は公式サイトで確認ください。
東京フィルメックス 公式サイト
★オンライン特設サイト 11月21日よりアクセス可能

◆学生審査員賞:『由宇子の天秤』
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学生審査員:常間地裕(多摩美術大学)、千阪拓也(日本大学芸術学部)、田伏夏基(明治大学)の3人が登壇し、学生審査員賞を発表しました。
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春本雄二郎監督「釜山国際映画祭でも受賞(ニューカレンツ部門 最高賞ニューカレンツアワード)しましたが、オンラインでも授賞式をしていません。 Winerには、違和感があります。勝者というけれど、負者が存在するのか? 世の中、敵か味方か、白か黒かと単純に二極化するこごあ加速化し、良い未来が築けるのか? 『由宇子の天秤』は、正しさについて問う内容です。今、私たちに必要なのは、見えている世界が都合の良いものに最適化されていることに気づくこと。その外に手を伸ばせる力が映画にあると信じています。学生審査員賞は、これからを担う人たちからいただいたもの。若い世代に映画作りの指針になるよう頑張っていきたい」


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【コンペティション審査員】
万田邦敏(審査委員長:日本/映画監督)
クリス・フジワラ(米国/映画評論家)
坂本安美(日本/アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
エリック・二アリ(米国/プロデューサー)
トム・メス(オランダ/映画評論家)


◆審査員特別賞『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
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池田暁監督 「最優秀作品は何かな、もう1回呼ばれるといいなと思っています。期間中、ずっと映画を観ていました。いい作品がたくさんあったので、また日本で上映されるきといいと思います。このような中で開催してくださったことに感謝します」


◆最優秀作品賞『死ぬ間際』

審査委員長 万田邦敏監督:「一人ぼっちの人間がこの世界とつながるには何が必要か?神話的で重層的、中央アジアのとんでもない大自然。映画監督だったら誰でも撮ってみたい風景、そしてユーモアが描かれていました。人と人がつながるには愛が必要という単純なことに行きつくのですが、そこに行きつくまでをみごとに描いていました」

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ヒラル・バイダロフ監督からのビデオメッセージ:
「選んでくださって嬉しいです。アゼルバイジャンの映画を初めて観た方もいらっしゃると思います。映画祭の皆さま、ありがとうございました」
★『死ぬ間際』ヒラル・バイダロフ監督とのリモートQ&Aの模様は後日お届けします。

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最後に行われた受賞者記念写真も、ソーシャルディスタンスを保って行われました。

☆こちらに掲載しきれなかった写真も含めて、下記のアルバムを作成しています。
facebookアルバム「第21回東京フィルメックス  授賞式」
https://www.facebook.com/cinemajournal/photos/?tab=album&album_id=1340432292989793


☆東京フィルメックスを終えて☆
コロナ禍の中、例年同様の作品を揃えてリアルな上映を行い、外国からのゲストの来日が叶わない中、上映後にリモートでQ&Aを行うなど、最大限の努力をしてくださったことに感謝です。
日程を早めた為か、会期中、平日の半分以上の会場は、朝日ホールではなくTOHOシネマズ シャンテとなり、定員が朝日ホールより少ないため、作品によっては満席になって入れない方もいたようです。
今後も東京国際映画祭との連携を続けるとの市山さんの言葉がありましたが、同時期開催で、鑑賞作品を絞らざるをえなくて、究極の選択を迫られました。できれば、これまで同様、違う時期に開催してほしいと切に願います。(景山咲子)


報告:景山咲子   写真:宮崎暁美、景山咲子

第21回東京フィルメックス ラインナップが発表されました 

9月24日(木)3時よりオンライン記者会見で、プログラムディレクターの市山尚三氏よりラインナップ発表が行われました。
アジアを中心に、今回も充実の内容です。特別招待作品には、東京フィルメックスでおなじみの監督たちの新作が揃いました。
東京国際映画祭との連携により、開催日程が例年より3週間程早くなりましたが、一部、11月22日にも上映があります。
東京国際映画祭との連携は、同時期に開催することにより、来日ゲストの交流や、遠方よりの観客にとって一気にアジア映画が観られるなどの相乗効果を狙ったものとの説明がありました。今年はコロナ禍で残念ながら来日ゲストは望めませんが、今後の展開に期待したいところです。

期間 : 2020年10月30日(金) ~ 11月7日(土) (全9日間)+11月22日(日)

会場 :TOHOシネマズ シャンテ 10/30(金)〜11/5(木)
ヒューマントラストシネマ有楽町 10/30(金)〜11/5(木) *レイトショー
有楽町朝日ホール 10/30(金) – 10/31(土)、11/6(金)- 11/7(土)+11/22(日)
アンスティチュ・フランセ東京 11/5(木) – 11/6(金)
アテネ・フランセ文化センター 11/6(金)

公式サイト:https://filmex.jp/2020/

上映スケジュール:https://filmex.jp/2020/schedule

◆コンペティション部門
https://filmex.jp/2020/news/information/tokyofilmex2020_lineup_competition

アジアの新進作家の2019年~2020年製作映画12作品。(内、女性監督3作品)
通常10作品程度ですが、今年は多め。また、日本映画4作品はこれまでで最多です。

『風が吹けば』Should The Wind Drop
監督:ノラ・マルティロシャン(Nora MARTIROSYAN) ★女性監督
フランス・アルメニア・ベルギー / 2020 / 100分

『死ぬ間際』 In Between Dying
監督:ヒラル・バイダロフ(Hilal Baydarov)
アゼルバイジャン・メキシコ・アメリカ / 2020 / 88分

『迂闊(うかつ)な犯罪』 Careless Crime
監督:シャーラム・モクリ(Shahram MOKRI)
イラン / 2020 / 139分

『イエローキャット』 Yellow Cat
監督:アディルハン・イェルジャノフ(Adilkhan YELZHANOV)
カザフスタン・フランス / 2020 / 90分

『マイルストーン』 Milestone
監督:アイヴァン・アイル(Ivan AYR)
インド / 2020 / 98分

『アスワン』 Aswang
監督:アリックス・アイン・アルンパク(Alyx Ayn ARUMPAC)★女性監督
フィリピン / 2019 / 85分

『無聲(むせい)』 The Silent Forest
監督:コー・チェンニエン(KO Chen-Nien) ★女性監督
台湾 / 2020 / 104分

『不止不休』 The Best Is Yet To Come
監督:ワン・ジン(WANG Jing)
中国 / 2020年 / 115分

『泣く子はいねぇが』 Any Crybabies Around?
監督:佐藤快磨(SATO Takuma)
日本 / 2020年 / 108分

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』 The Blue Danube
監督:池田暁(IKEDA Akira)
日本 / 2020年 / 105分

『由宇子の天秤』 A Balance
監督:春本雄二郎(HARUMOTO Yujiro)
日本 / 2020年 / 152分

『オキナワ サントス』 OKINAWA SANTOS
監督:松林要樹(MATSUBAYASHI Yoju)
日本 / 2020年 / 90分

☆コンペティション 国際審査員
万田邦敏(審査委員長/日本/ 映画監督)
クリス・フジワラ(アメリカ/映画評論家)
坂本安美(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
エリック・ニヤリ(アメリカ/プロデューサー)
トム・メス (オランダ/映画評論家)

審査員の方には、実際にスクリーンでご覧いただきたいと思っていたところ、コロナ禍ですが、外国の3人の方は偶然日本に滞在中とわかり依頼することができたとのことです。


◆特別招待作品
https://filmex.jp/2020/news/information/tokyofilmex2020_lineup_specialscreening

【オープニング作品】
『愛のまなざしを』
監督:万田邦敏 
日本 / 2020 / 102分

【クロージング作品】
『天国にちがいない』 It Must Be Heaven
監督:エリア・スレイマン(Elia SULEIMAN)
フランス、カタール、ドイツ、カナダ、トルコ、パレスチナ / 2019 / 102分

『クラッシュ』 Crash  *4K修復版
監督:デヴィッド・クローネンバーグ(David CRONENBERG)
カナダ / 1996 / 100分

『デニス・ホー:ビカミング・ザ・ソング』 Denise Ho: Becoming the Song
監督:スー・ウィリアムズ(Sue WILLIAMS)
アメリカ / 2020 / 83分

『ハイファの夜』 Laila in Haifa
監督:アモス・ギタイ(Amos GITAI)
イスラエル、フランス / 2020 / 99分

『照射されたものたち』 Irradiated
監督:リティ・パン(Rithy PANH)
フランス、カンボジア / 2020 / 88分

『日子』 Days
監督:ツァイ・ミンリャン(TSAI Ming Liang)
台湾 / 2020 / 127分

『七人楽隊』 Septet: The Story of Hong Kong
監督:アン・ホイ (Ann HUI)、ジョニー・トー (Johnnie TO)、ツイ・ハーク (TSUI Hark)、サモ・ハン (Sammo HUNG)、ユエン・ウーピン (YUEN Wo Ping)、リンゴ・ラム (Ringo LAM)、パトリック・タム (Patrick TAM)
香港 / 2020 / 113分

『海が青くなるまで泳ぐ』 Swimming Out Till The Sea Turns Blue
監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhang-ke)
中国 / 2020 / 111分

『平静』 The Calming
監督:ソン・ファン(SONG Fang)
中国 / 2020 / 89分

『逃げた女』 The Woman Who Ran
監督:ホン・サンス(HONG Sang-soo)
韓国 / 2020 / 77分

『水俣曼荼羅』 Minamata Mandala
監督:原一男(HARA Kazuo)
日本 / 2020 / 369分

『仕事と日(塩尻たよこと塩谷の谷間で)』 The Work and Days (of Tayoko Shiojiri in the Shiotani Basin)/
監督:C.W.ウィンター & アンダース・エドストローム(C.W. WINTER, Anders EDSTRÖM)
アメリカ、スウェーデン、日本、香港 / 2020 / 480分

【特別上映】 『繻子の靴』 The Satin Slipper
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ( Manoel de OLIVEIRA)
ポルトガル、フランス / 1985 / 410分
★第21回東京フィルメックスの本会期終了後の11月22日より特別上映


◆特集上映:エリア・スレイマン
https://filmex.jp/2020/news/information/tokyofilmex2020_lineup_eliasuleiman
クロージング上映される最新作『天国にちがいない』と共に、エリア・スレイマン監督がこれまでに発表した長編映画3本を一挙上映

『消えゆくものたちの年代記』 Chronicle of a Disappearance
パレスチナ / 1996 / 84分

『D.I.』Divine Intervention
フランス、パレスチナ / 2002 / 92分

『時の彼方へ』The Time That Remains
パレスチナ、フランス / 2009 / 105分