東京国際映画祭 コンペティション部門『雨の中の慾情』舞台挨拶・Q&A (咲)

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片山慎三監督最新作 『雨の中の慾情』は、東京国際映画祭 コンペティション部門に選ばれ、11月29日(金)からの一般公開を前にジャパンプレミアで、成田凌、中村映里子、李杏の3人が登壇し、舞台挨拶とQ&Aが行われました。 

2024年10月30日(水)10時からの上映後
TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12
報告:景山咲子



『雨の中の慾情』
監督・脚本:片山慎三(『さがす』)
原作:つげ義春「雨の中の慾情」
出演:成田凌、中村映里子、森田剛、竹中直人、李杏(りーしん)
★2024年11月29日(金) TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開
シネジャ作品紹介 


◎舞台挨拶・Q&A 

MC: 一言ずつご挨拶を!
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成田:こんにちは。成田凌です。本日は、『雨の中の慾情』日和の日に観ていただきまして、ありがとうございます。今日は関係者以外の方に初めて観ていただける機会でしたので、あとで質疑応答の時間もありますので、いい時間にできたらと思います。

中村:こんにちは。福子役を演じています中村映里子と申します。私にとって特別で、かけがえのない作品となっていますので、今日初めて観ていただいたお客様にとってもいい時間になればいいと思っています。

李杏:台湾から参りました李杏と申します。映画の中でシュンメイという役を演じています。今回、ワールドプレミアに出席することができて光栄です。気に入っていただければ、もっともっと嬉しいです。
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MC:シュンメイというのは、成田亮演じた義男の奥様です。
ワールドプレミア、しかも朝の9時半(開場時間)から皆さんにご覧いただきました。

成田:絶対寝坊した人いるでしょうという景色でした。

MC:でも、最初見逃したらいけないですよね。衝撃的で!

成田:朝早くから観る映画じゃないと思いますが・・・。入ってきたとき、お疲れムード感じました。

MC: 1回だけだと、わからなさが心地いいですよ。私は大失恋したんだという感じが一番残りました。

成田:そうですね。大失恋なのか・・・ 最後には愛という形に見えたので、最後の福子の場面がすべてだなと思います。

MC:もともとはつげ義春さんの同名短編を監督が一つに仕上げて面白い作品にされました。
出演の決め手は何だったでしょう?

中村:片山監督から直接オファーを受けたのですが、片山監督とは『岬の兄妹』のオーディションの時からのご縁で、一度短編映画に出させていただいたことがありました。その後の監督の作品は面白いし、パワーアップしている印象の中で、ご連絡いただいて、脚本を読んだら、ベースに原作のつげ義春さんのキャラクターのユニークさや世界観があって面白いなと思いました。成田さんと森田さんは決まっていて、飛び込んでみたいと思いました。

成田:観ていただいた通り、片山さんの作品は生半可な気持ちじゃできないですよね。でも、こういう作品に出たいと思いますよね。

李杏:2017年に『岬の兄妹』が台湾で公開されたときに観て、大好きになりました。片山監督がわざわざ台湾にいらして対談をしたのですが、それに参加して知り合いました。一つの縁かなと思っています。その後、台湾で撮影をすると言われまして、これはもう何の躊躇もなくお引き受けしました。『岬の兄妹』のストーリーテーラーとしての語りの手法や、映像の強烈なイメージを作ることに感銘を覚えていました。

NC:それでは、会場の皆様からの質問をお受けしたいと思います。
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― 3人の方に、演じられるにあたって、役作りするのに監督からの指示にどういう風にアプローチされたか教えてください。

成田:いろいろありますが、走り方でしょうかね。生活の中でどういう人間なのかということだと思うのですが、肘を曲げない走り方と監督から言われて、気持ちが一致した覚えがあります。

李杏:目を瞬く時のスピードをゆっくりしてくださいと言われました。え?と、こういうことを言われたことがなかったのですが、やってみて面白かったです。観客の皆さんに役者の顔をどういう風に見せるか、片山監督の頭の中にはっきりあるのですね。私にとって、いい経験でした。

中村:福子さんは、とにかく明るく演じてほしいと最初に言われていました。私のお芝居の質もリアルというより、わりと大げさで、思い切りやってみようという感じでした。福子はとても汗っかきという設定で、オイルをいっぱいつけてやったのですが、それも福子のキャラクターのポイントになっていると思います。
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MC:細かいキャラクターのイメージがあったという面白いエピソードをお伺いしました。

― この映画の自分以外の役柄で、演じてみたい役は?

成田:僕はもうやりたくないです。義男も、もういいです。

MC:理由を聞いてもいいですか?

成田:もう大変だったから。もう十分です。

李杏:女性なら中村さんが演じた役はとても難しい役柄。ボールで遊んでいた娘の役をやりたいと思います。楽な役柄ですね。

― いろんな時代を生きている中で、キャラクターどうしの関係も変わっていますが、これだけはぶれないと思って演じたことは?

中村:福子は、義男さんの夢だったり妄想だったりする女性。そういう意識を持って演じることを心掛けていました。

成田:自分は福子が好きという気持ちですね。それが強すぎるが故の地に足がついてないこともあるし、どうしても受け入れないといけないこともあったけど、どうしても福子が好きという・・・、やっぱりラブストーリーなんです。

― 午前中に観てよかったと思います。質問ですが、成田亮の中にいる義男、中村恵理子の中にいる福子がいれば教えてください。

成田:こうしたい、こうなればいいというのが、自分でもわからない時間が長いというのがあるかもしれないですね。あとは、できれば楽をしたいというところですね。

中村:なんだろう。何をしでかすかわからない部分、福子は天真爛漫に映っているかもしれないけれど、衝動的な部分は重なると思います。

― この映画は全編台湾で製作されたとのことで、海外での撮影にあたって役作りに苦労した点があれば教えてください。

成田:1か月くらい台湾にいましたね。なんだろう・・・ 苦労あったかな。海外だからというより、片山監督だから大変だったかなと。楽しいですから、大丈夫ですね。

中村:台湾だから、とっても暖かいと思って行ったのですが、3月で寒暖の差が激しくて、朝晩はほんとにすごく寒くて、昼は暖かくなるのですが、撮影が夜遅くなると、衣装もペラッペラで薄くてとても寒くて、台湾でこんなに寒い思いをすると思いませんでした。

MC:李杏さんは日本の監督とお仕事して、新鮮だったり、びっくりしたことはありますか?

李杏:大きな問題はなかったですが、日本のスタッフはプロフェッショナルな方ばかりで言語の問題もありませんでした。片山監督は事前の準備が非常に万端で、撮影に入ると、とても順調で大きな問題はありませんでした。中村さんが温度差があって大変だったとお話しされましたが、3月は確かに日中は暖かいのですが、夜遅く3時頃まで続いた時には、ほんとに寒くて私も耐えられないと思ったのですが、中村さんは薄い衣装で心配しました。天気以外は、とても順調でした。

MC:成田さん、最後に一言お願いします。
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成田:ほんとにありがとうございます。観てくださった皆さんに何も言うことはないのですが、愛情の溢れる現場で自分も楽しく過ごさせていただいて、それがこのようなエネルギッシュな作品になりました。予告編であまり言うことも少ないまま、ラブストーリーですという表現になっているのですが、自分にとっても大切な作品ですので、皆さんの心に残る作品になれば嬉しいです。今日はありがとうございました。

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取材を終えて、ロビーで李杏さんの通訳を務められたサミュエル周先生に「お疲れさまでした」とお声をかけたら、「朝早くからご覧になって、そちらこそお疲れさまでした」と、ねぎらいの言葉をいただいたのですが、取材は、上映後の12:12からでした! TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12の大きな会場がほぼ満席。成田亮さんが会場をみて、「お疲れムードがいっぱい」とおっしゃったのですが、朝早くてお疲れなのか、映画でお疲れなのか・・・と、成田亮さんはどちらの思いだったのでしょう・・・(咲)


東京国際映画祭 特別上映『対外秘』舞台挨拶報告

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1992年の釜山。国会議員選挙の直前に権力者より公認を取り消されたヘウン。無所属で立候補し、市庁舎から対外秘の再開発計画書類を入手し反撃に出る・・・
権力闘争の表と裏を描いた予測不能のサスペンス。
シネジャ作品紹介

11月15日からの一般公開を前に、第37回東京国際映画祭の特別上映で、『対外秘』のジャパンプレミアが行われ、イ・ウォンテ監督と俳優のチョ・ジヌン、キム・ムヨルが舞台挨拶に登壇しました。
202年11月3日(日)19:40~
角川シネマ有楽町にて
取材:景山咲子


◎舞台挨拶
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イ・ウォンテ監督:こんばんは。僕は、イ・ウォンテ監督です。(ここまで日本語で) お会いできて嬉しいです。今日は文化の日、連休中と聞いています。観にいらしていただいて嬉しいです。

チョ・ジヌン:ほんとうにとても嬉しいです。日本に来て舞台挨拶するのは初めてです。初めて舞台挨拶する俳優チョ・ジヌンを見る日本の皆さんは初めてです。楽しい時間になってくれれば嬉しいです。

キム・ムヨル:こんばんは。私は映画『対外秘』でピルド役を演じたキム・ムヨルです。どうぞよろしくお願いします。(ここまで日本語で) 私は何度も来日し、ミュージカルに出たり、旅行もするくらい、日本はとても好きです。そんな日本で公開していただいて、とても嬉しいです。

MC:今回、たすきをつけていただくことを急遽お願いしたら快く引き受けてくださいました。監督、いかがですか?
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監督:窮屈です。ぎこちないです。(笑)

ジヌン:私は映画の中でつけていましたので、とても楽です。選挙の時には、1番です。よろしくお願いします。

ムヨル:私も映画の中でたくさん選挙運動をしましたので、慣れています。

MC: 1990年代初頭の釜山が舞台ですが、再現するのに工夫されたことは?

監督: 今の釜山は、1990年代と全く違います。発展して、再現できる場所は、ほとんどありませんでした。全国の海辺の町を探して、やっと撮影場所を見つけました。映画全体の中で、釜山で撮影したのは、30%くらいです。それ以外には、90年代を象徴するような小道具も準備して、音楽も当時有名だった大衆歌謡を選びました。

MC: 観客の皆さんは、これからご覧になるので全部は言えないですが、ジヌンさんは、善と悪を超越した政治家の役を見事に演じられているのですが、演じる際に葛藤したり、面白かったりしたことを教えていただけますか。

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ジヌン: 人間の内面には、善と悪は常に共存していると思います。その人物がどんな状況におかれているかによって善の面や悪の面が出てきます。私が演じた人物は、それとは少し違って、まるで悪魔と取り引きするようなところがありました。皆さんも、そのような状況にならざるをえない時があると思います。そういう状況の中で、それを選択せざるを得ないというもこともあって、その時には自分の新たな面を発見することになると思います。この映画の中で描かれていることを観て、自分を遠くから振り返ることができると思います。そんな映画だと思います。私は悪い人ではないのですが、自分自身を振り返ろうという気持ちで演じていました。

MC:今回、残念ながら来日されませんでしたが、イ・ソンミンさんと何度も共演されて、これからも共演されたいとのことですが、イ・ソンミンさんはいかがでしたか?

ジヌン:イ・ソンミンさん最高です! 何度も共演していますが、一番上のお兄さんのような存在で、韓国ではいわずと知れた名俳優さんですし、後輩に優しい方です。演技力はいうまでもないですよね。とにかく最高です。

MC:ムヨルさんは、監督から体重をコントロールしろと言われたそうですね。

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ムヨル: はい、その通りです。監督とは2作目。2度とも体重の指示がありました。先ほどホテルで会った時に、私に「なんでそんなに痩せているの?」と聞かれたのですが、これが普通です。撮影当時、20キロ位増やしていましたので、その気持ちはわかります。俳優というのは作品ごとに新しい顔を見せないといけませんので、常に新しい姿を見せるようにしています。ルックスは一番観客にアプローチしやすいものですので、体系のコントロールはいい経験になりました。ルックスを変えると内面まで変わってきます。すんなりと演技することができました。

MC:どれくらいの期間で、何を食べて増やしたのですか?

ムヨル:私はダイエット講師じゃないですが、増量するには3か月かかりました。撮影が終わって、また次の役の為に一か月以内に体重をもとに戻さないといけませんでした。

ジヌン:私の場合は2週間あれば大丈夫です。

MC:監督はどうしてムヨルさんに体重を増やしてほしかったのですか?

監督:どうしてかわからないのですが、とにかく増やしてほしいとお願いしました。(笑)

MC:ムヨルさん、今回釜山の方言を話されているのですが、釜山弁をどうやって習得されたのですか?

ムヨル:監督もジヌンさんもソンミンさんも、釜山の属する慶尚道(キョンサンドウ)のご出身ですので、助けていただきました。たくさん練習しましたが、いざ現場に着くとセリフが変わっていることもあって、大変な思いもしました。ジヌンさんがそっと近づいてくれて教えてくれたり、まわりが助けてくれました。

監督:ほんとに上手でした。一方では体重は増やさないといけないし、釜山の方言も覚えないといけないしで、二重の苦労をされていました。

ムヨル:ヤバイ!

MC:『対外秘』のタイトルにちなんで、これまで言ってなかった秘密を一つ必ず言ってください。

ジヌン:私はあまり秘密がない方です。一本の映画を作り終えたら、決して後ろを振り返りません。それくらい役に入り込んでいます。すぐに次の作品の準備をしないといけないからなのですが、『対外秘』は長く心に残っている映画です。政治家の持っている明と暗を知ることができました。私自身、政治家になることは考えていません。政治家の皆さんは、ほんとに苦労されていると思いました。生まれ変わるとしても、政治家にはならないと思います。俳優がいいです。

ムヨル:個人的なことですが、少し前に息子が生まれました。息子の顔は公開してないのですが、幸いなことに妻に似ています。

MC:日本の好きな場所や食べ物は?

ムヨル:生ビール、ラーメン。東京はもちろんいいですし、沖縄もとてもよかったです。

ジヌン:福岡。豚骨ラーメンにもつ鍋。

監督:日本には頻繁に来たことがあったのですが、東京は10年ぶりです。大阪や福岡にも行きましたが、冬の札幌が一番です。

MC:最後にメッセージをお願いします。

ムヨル:『対外秘』の撮影には、いい思い出が記憶に残っています。遠いところまできて、私の好きな場所で公開していただいて、多くの皆さんにお会いできるのはほんとうにうれしいです。貴重な時間を割いてきてくださいましたので、長く記憶に残る映画になってくれれば嬉しいです。

ジヌン:最初に申し上げましたが、日本の観客の皆様の前で舞台挨拶をするのは初めてです。東京国際映画祭で皆さんにご挨拶することができて、ほんとうに意義深いことと思っています。作ったのは私たちですが、これから先は皆さんのものです。思い切り楽しんでください。

監督:重みがあってシリアスな作品ですが、とても楽しめる作品だと期待しています。どうぞ楽しんでご覧ください。また次の作品で皆さんとお会いできることを願っています。

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ハードな物語と違って、とても和やかな舞台挨拶でした。



対外秘   原題:대외비(対外秘) 英題:THE DEVIL'S DEAL
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ⓒ 2023 PLUS M ENTERTAINMENT ANDTWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED. 
監督:イ・ウォンテ(『悪人伝』)
出演:チョ・ジヌン、イ・ソンミン、キム・ムヨル

1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウンは、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテが、選挙直前になって、公認候補を自分の言いなりになる男に変える。激怒したヘウンは、釜山地域再開発計画に関する〈対外秘文書〉を手に入れ、チームを組んだギャングのピルドから選挙資金を得て無所属で出馬する。対外秘文書をヘウンが入手したことを知ったスンテが戦慄の逆襲を仕掛ける・・・

2023年/韓国/韓国語/116分/カラー/スコープ/5.1ch
字幕翻訳:鷹野文子
配給:キノフィルムズ 
公式サイト:https://www.taigaihi.jp/
★2024年11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国公開




第37回東京国際映画祭 受賞作品

東京グランプリは吉田大八監督『敵』が受賞! 最優秀監督賞、主演男優賞(長塚京三)合わせて3冠!

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受賞者 ©2024 TIFF

2024年10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕した第37回東京国際映画祭。TOHOシネマズ 日比谷スクリーン12にて授賞式が行われ、下記作品が受賞しました。

受賞作品
コンペティション部門
▼東京グランプリ/東京都知事賞:『敵』(監督:吉田大八)
▼審査員特別賞:『アディオス・アミーゴ』(監督:イバン・D・ガオナ)
▼最優秀監督賞:吉田大八『敵』
▼最優秀女優賞:アナマリア・ヴァルトロメイ『トラフィック』
▼最優秀男優賞:長塚京三『敵』
▼最優秀芸術貢献賞:『わが友アンドレ』(監督:ドン・ズージェン)
▼観客賞:『小さな私』(監督:ヤン・リーナー)

アジアの未来部門 
アジアの未来作品賞
『昼のアポロン 夜のアテネ』(監督:エミネ・ユルドゥルム)

黒澤明賞
三宅唱(映画監督)
傅天余/フー・ティエンユー(映画監督)

エシカル・フィルム賞
『ダホメ』監督:マティ・ディオップ

特別功労賞
タル・ベーラ (映画監督)

受賞作品
『敵』東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞
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(C)1998 筒井康隆/新潮社 (C)2023 TEKINOMIKATA

映画紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP13

『アディオス・アミーゴ』審査員特別賞
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作品紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP01

『わが友アンドレ』最優秀芸術貢献賞
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映画紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP09

『小さな私』観客賞
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作品紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP02

『昼のアポロン 夜のアテネ』アジアの未来作品賞
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作品紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37003ASF01

『ダホメ』監督:マティ・ディオップ エシカル・フィルム賞
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作品紹介
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37005WFC02

<第37回東京国際映画祭 クロージングセレモニー>
■開催日:2024年11月6日(水)17:00-18:30
■会場:TOHO シネマズ日比谷 スクリーン 12
■登壇者 :
各賞の受賞者
アジアの未来部門 審査委員:ニア・ディナタ、山下宏洋、横浜聡子
コンペティション部門国際審査委員長:トニー・レオン
コンペティション部門国際審査委員: エニェディ・イルディコー、橋本愛、キアラ・マストロヤンニ、ジョニー・トー
クロージング作品『マルチェロ・ミオ』:キアラ・マストロヤンニ
ゲスト:東京都副知事 松本明子
安藤裕康チェアマン

安藤チェアマンが総括する第37回東京国際映画祭
https://2024.tiff-jp.net/news/ja/?p=65914

以上 東京国際映画祭HPより      まとめ 宮崎 暁美

第37回 東京国際映画祭 開幕! 『10セカンズ』『冷たい風』『娘の娘』そして、パヤル・カパーリヤー×是枝裕和 対談 (咲)

2024年10月28日(月) 第37回 東京国際映画祭が開幕しました。
29日から連日会場に出向かないといけないので、初日は体力温存で、家で開幕の様子を見守りました。
アフガニスタン『シマの唄』や、トルコ『10セカンズ』のゲストの姿を確認できました。
審査委員長トニー・レオン、にこやかな顔で登場! ジョニー・トー監督も一緒に審査員を務めるので、リラックスして、とても嬉しそうです。

レッドカーペット
https://www.youtube.com/watch?v=opt-yNIFkws
オープニングセレモニー
https://www.youtube.com/watch?v=lpDEF7zOpKM&t=5s

10/29 (火)
★11:30~  
『10セカンズ』*ウィメンズ・エンパワーメント
監督:ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ、トルコ 
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© Sky Films
イスタンブルのボスポラス海峡を見下ろす名門ウィリアム高校。娘が退学処分を言い渡された裕福な母親が、進学カウンセラーの女性に娘を復学させろと詰め寄ります。半端じゃない迫力! 昼休みになり、カウンセラーを慕う生徒たちが次々にドアをノックするので、場所を広いホールに移して、さらに二人は言い争う・・・  さて、軍配はどちらに? 驚きの結末でした。

観終わって、迫力の会話の余韻にドキドキしながら、シネスイッチ銀座から5分程で行けるお気に入りのレストラン「マトリキッチン」へ。 
もうすぐ1時で、ちょうど席が空いてすんなり入れました。
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チキンソテー(レモン味バルサミコソース)。サラダ、ボルシチ、カボチャのプディングがついて、1100円♪

★13:50~
『冷たい風』 *アジアの未来
監督:モハッマド・エスマイリ、イラン 
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雪山で4人の登山隊が強い北風の中で遭難。生還したのはサレム一人だけ。やがて、ひとりの男が遺体で発見される。捜索が進むうちに、その亡くなった男の友人の妹が15年前に焼死した事が浮上する・・・
主任捜査官が、関係者に次々に聴取する形で物語が進み、人間関係の整理が大変でした。
言葉を一言も聞き漏らすまいと緊張!
 
16:21~
『娘の娘』*コンペティション
舞台挨拶、Q&A 
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登壇ゲスト:ホアン・シー(監督/脚本)、シルヴィア・チャン(俳優/エグゼクティブ・プロデューサー)、カリーナ・ラム(俳優)、ユージェニー・リウ(俳優)

18:00~19:00 
交流ラウンジ パヤル・カパーリヤー×是枝裕和 対談  
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昨年の山形ドキュメンタリー映画祭で大賞に輝いた『何も知らない夜』。山形には来られなかったパヤル・カパーリヤー監督が登壇されるので、これは直接お話を聴きたいと申込み。
是枝監督が審査員を務めた今年のカンヌで、パヤル・カパーリヤー監督の『All we imagine as light』がグランプリを受賞した縁で、是枝監督がこの度の交流ラウンジの為に招聘されたもの。『All we imagine as light』は、来年4月、渋谷ル・シネマで公開予定とのことで、楽しみです。
対談が終了してから、パヤル・カパーリヤー監督にお声をかけました。ナマステと、アッサラームアライクムの両方の挨拶に、応えてくださいました。(ちなみにムスリマではありません・・・)

充実の私の一日目でした。

第37回 東京国際映画祭 新設「ウィメンズ・エンパワーメント部門」 シニア・プログラマー アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさんに聞く

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今年、東京国際映画祭に新設された「ウィメンズ・エンパワーメント部門」のシニア・プログラマーであるアンドリヤナ・ツヴェトコビッチさんに、この度、この部門が新設されたことへの思いや、作品選定の過程をお伺いする機会をいただきました。 
景山咲子



「ウィメンズ・エンパワーメント部門」シニア・プログラマー
アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ プロフィール
初代駐日マケドニア大使で、2022年にはWIN Inspiring Women Worldwide Awardを受賞。日本大学で映画研究の博士号を取得、欧州大学で名誉博士号を授与され、京都大学では客員教授を務めた。映画監督としては映文連アワードの部門優秀賞を受賞。その他、世界経済フォーラムや国連気候変動会議で講演を行う。東京国際映画祭では2023年に「SDGs in Motion トーク」のプログラム・キュレーター、2021年にはAmazon Prime Video テイクワン賞の審査委員を務めた。
(東京国際映画祭公式サイトより)



★注:2019年2月12日にギリシャとの合意により、国名が「北マケドニア共和国」に変更されています。 アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさんの駐日大使時代は、マケドニア共和国。

★ラインナップ記者会見での発言は、こちらをご参照ください。
第37回東京国際映画祭 「ウィメンズ・エンパワーメント」部門新設!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/505000752.html


●アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさん インタビュー

◆女性映画人活躍の後押しになることを願う
― シネマジャーナルでは1987年に「第2回東京国際映画祭」の取材を開始し、その時から東京国際女性映画祭の前身である「カネボウ国際女性映画週間」も取材を始め、25回目の2012年にフィナーレを迎えるまで取材し本誌にレポートを掲載してきました。
東京国際女性映画祭の高野悦子さんは常々、「本当は女性映画祭が必要なくなるのが理想」とおっしゃっていました。志半ばで病に倒れ、残念ながら「東京国際女性映画祭」は終わってしまいましたが、それから10数年、少しづつ女性監督は増え、映画の現場にも女性は増えてきています。 しかし、女性監督が増えたと言っても、まだまだ商業映画などの分野で活躍している女性監督は少ないですし、後押しが必要かと思います。
今回、「ウィメンズ・エンパワーメント部門」が開設された意味は、そういう後押しという役目も担っていると考えていいのでしょうか?
「ウィメンズ・エンパワーメント部門」シニア・プログラマーを指名されたことへの思いも、あわせてお聞かせください。

アンドリヤナ: 今年、「ウィメンズ・エンパワーメント部門」が新設されたのは、東京国際映画祭にとって、とても大事な節目だと思います。 新設された経緯ですが、映画祭の皆さんと話し合う中で、日本の映画界の現状や、世界の映画のムーヴメントをみて、このような部門を設立する時が来たのではないかという結果になりました。東京都の協力も得ることができましたので、とても幸運だったと思います。
私がこの部門のシニア・プログラマーを務めるに至った経緯ですが、前々から東京国際映画祭とプログラミングについて関わりがありました。 元マケドニア大使を務めていたこともあって、人脈もあるので、 コロナ禍の間には日本映画のサポートをする意味もあって東京国際映画祭と話し合ってきました。
2021年の第34回東京国際映画祭では、「Amazon Prime Video テイクワン賞」の審査員を務めさせていただきました。Amazon のモットーとして、若い世代をサポートしていかないといけないという方針がありました。2023年には、「SDGs in Motion トーク」のプログラム・キュレーターを務めさせていただき、地球環境やSDGs、ジェンダー平等にフォーカスしました。トークセッションに日本とマケドニアの監督さんを呼んで企画させていただきました。
そんな関わりがあって、この夏、「ウィメンズ・エンパワーメント部門」のシニア・プログラマーを拝命しました。これは非常に良いスタートだと思います。なぜ女性たちの活躍を後押ししなくてはならないかを声高に訴えかける機会になればいいと思っております。監督だけでなく、脚本家や撮影なども含めて女性がどんどん活躍するべきだと思っております。


◆映画どうしが語り合うような7作品を選んだ
― ラインナップ記者会見で、作品を選ぶのにあたり、「物語としてのパワー」「視点の多様性」「監督の明確なヴィジョン」という3つの基準を定めたとおっしゃっていました。どのくらいの作品の中から7作品に絞ったのでしょうか。また、候補作は、アンドリヤナさん以外にも選定を担当された方がいたのでしょうか?

アンドリヤナ:東京国際映画祭のセレクションチームが、あまたな候補作品の中から40本くらい選択してくれて、そこから絞り込みました。どれも素晴らしい作品で、どうやって7作品を選べばいいのか、とてもハードな仕事でした。 どれもクオリティが高く、芸術性もあって、しかもどれも面白いストーリーを語る映画でした。一つ意識したのは、単体としての作品ではなく、部門として提供するべき作品としてはまるかどうかということでした。7作品すべてを観られたときに、より豊かな気持ちになっていただけるものをと考えました。 女性のストーリーで、監督や脚本家が女性。世界の様々な女性の物語で、かつ、現代の世界を生きる女性の物語。
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例えば『私の好きなケーキ』は、イランの中年女性が恋愛をするという物語。普段見ないような意外な側面がみられます。
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香港の『母性のモンタージュ』は、ワーキングマザーの話。日々のオフの時間にみせる母親の姿。 私も母親で、息子が生まれたときのことをまざまざと思い出しました。男性監督が撮ったら、もう少し日常をはしょったかもしれません。女性監督ですから、日々の暮らしを詳細に描いています。
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コスタリカの『灼熱の体の記憶』は、3世代の3人の女性が自分の身体やセクシャリティについて自由に語るという素晴らしい作品です。
日本映画『徒花-ADABANA-』は、主人公は男性ですが、女性キャラクターにすごい存在感があります。近未来の人間とはなんぞやという物語。
『イヴォ』には緩和ケアの看護師、『徒花-ADABANA-』には臨床心理士の女性という、似たような人物が出てきます。7つの映画が作品どうしで語り合っているように感じていただければと思います。

◆映画は知らない世界を覗ける窓
― 私は、イスラーム文化圏に特に興味を持っていますので、7作品の中にイランやトルコの映画が入っていて嬉しいのですが、アンドリヤナさんの故国・北マケドニアの作品が入っていません。ご遠慮されたのでしょうか?

アンドリヤナ:近隣地域の映画として、イラン映画2本、トルコ映画1本をセレクションさせていただいたのですが、これには、私の幼少期の経験が反映していると思います。マケドニアで育ったのですが、人口の20~30%は、ムスリムです。私たちとは別の世界に住んでいて、特にイスラームの女性たちが結婚してからどういう生活をしているかを知ることができませんでした。彼女たちの暮らしぶりを垣間見ることすらできない。私たちには特定の地域の人たちの姿が見えていないとつくづく感じています。もちろん、イランには素晴らしい監督がたくさんいて、キアロスタミ監督の作品にも女性を主人公に描いたものがありますが、女性監督が語る女性を観たいと思いました。
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例えば、『マイデゴル』は、イランにいるアフガニスタンの10代の少女がタイボクシングに挑戦する物語。ちょうどこの夏のオリンピックで、アルジェリアのトランスジェンダーのボクシング選手がいました。まだまだわからない世界があると感じました。より多様性を受容するには、映画がいろいろな地域をみる入口になると思います。
実は、北マケドニアの映画は、1作品推薦されていて、素晴らしい監督の作品だったのですが、特に俳優が出ているものではありませんでした。今回はほかの作品との関連性が何かしらあるものにしたかったので、選出しませんでした。

◆北マケドニアでは女性映画人を政府が後押しする5か年計画も!
― 北マケドニアにおける女性映画人の活躍状況についてお聞かせください。

アンドリヤナ:東京国際映画祭についていえば、去年、SDGs部門で上映された『ハニーランド 永遠の谷』は、二人の監督の作品ですが、そのうちの一人は女性監督です。 2022年 コンペティション部門で上映された『カイマック』も推薦させていただいたのですが、監督は男性ですが女性たちの物語でした。
北マケドニア本国の話をしますと、私もいろいろ働きかけて、マケドニア国際映画祭などに女性監督の作品をもう少し増やせないかと進言しています。
2024年5月に就任したゴルダナ・シルヤノフスカ=ダフコバ大統領は、初の女性大統領で、彼女にも若い女性の映画人を育てるプログラムについて何かできないかとお話させていただきました。
マケドニアの映画界における女性の割合は、まだ少なくて15~20%位ですが、日本より多いと思います。女性監督を後押しするために、北マケドニアでは、政府の中で若い女性の映画人を育てる5か年計画があります。政府が絡んで、いろいろPRしていかないと、なかなか解決しません。
女性監督にとって必要なものは、資金と「私には映画監督として映画を作ることができる」という自信をつけることだと思っています。

― まだまだお伺いしたいことがあったのですが、時間がきてしまいました。今後も、女性が輝く映画をご紹介いただけることを期待しています。 本日はありがとうございました。

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東京国際映画祭「ウィメンズ・エンパワーメント部門」新設にあたり、シネマジャーナルのこれまでの取組み
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/505332492.html
★こちらは、アンドリヤナさんにインタビューの事前に参考資料としてお届けした資料です。