第32回東京国際映画祭『フォークロア』シリーズ「TATAMI」「母の愛」 Q&A

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第32回東京国際映画祭の「CROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」で、エリック・クー製作総指揮によるHBOアジア製作オムニバスホラー「フォークロア・シリーズ」のうち2作品が上映された。
日本編「TATAMI」の齊藤工監督、北村一輝と、インドネシア編「母の愛」のジョコ・アンワル監督が登壇し、観客とのQ&Aに応じた模様をレポートしたい。

フォークロア(伝承)シリーズは、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、タイのアジア6ヵ国の監督が、各々の国の文化、風土、社会の中で培われた伝承をテーマにしている。

日時:10月30日
場所:東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズ
登壇:斎藤工、北村一輝、ジョコ・アンワル


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日本編は齊藤工監督が初のホラー作品に挑戦した意欲作。父の葬儀に帰郷した男が、家族の秘められた過去を知る…という物語。

司会:撮る題材の着想はどこから?
齊藤:この企画を聞いたのは何年も前。『Blank 13』をプロデューサーが観てくれていた。僕が主演した『家族のレシピ』のエリック・クー監督から声をかけて頂いた。ホラー映画のアジア選手権のような気持ちで胸が踊った。日本の伝承として畳が浮かんだ。”畳”という言葉は日本語でしか表せず、英語はない。まず言葉から入った。 美術スタッフに藁人形200体を作って貰い、”念”を表現したかった。

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司会:役作りはどうでしたか?
北村:芝居を上手く、ではなく世界観、監督が何を表現したいのか、映画の魅力を伝える使者として演じた。映画では耳が聞こえない役なので、主人公を通して作品を観てもらう立ち位置と思い、客観視した役作り。どうカメラに収まるか、監督と相談しながらリアクションは最小限に心がけた。
司会:齋藤工監督は如何でした?
北村:怖かった(笑) 冗談冗談!十分な準備時間をとってくれたし、人柄のように爽やかな風が流れているような現場。作品とは雰囲気が違う。俳優を尊重し、ディスカッションしながら作っていけた。


20年前に業界に入って北村さんの撮影現場を見学したのが最初、という逸話を話してくれた齋藤監督。その北村さんを主演として映画を作れたことを誇りに思っているそう。
北村さんも「監督したら呼んでよ、と言っていたので実現して嬉しい」と2人の和やかな関係が伝わった。

「第51回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭」ワールドプレミア上映
「第32回東京国際映画祭」CROSSCUT ASIA部門出品
「Asian Academy Creative Awards」日本代表「TATAMI」3部門ノミネート
・主演男優賞:北村一輝/主演女優賞:神野三鈴/撮影賞:早坂伸UT ASIA部門出品

インドネシアのホラー王として知られるジョコ監督。
「母の愛」は、インドネシアでは大きな胸をもち、親に愛されない子どもを誘拐して胸の裏に隠すという女のお化けがいる。子供の頃に、早く家に帰らないとそのお化けにさらわれるよ、と母に言われた。なので映画は僕の母親がモデル。厳しい母親だったが僕を愛してくれた。男の子は僕がモデル。
と作品を解説した。

最後に齋藤監督から、
「TATAMI」は御殿場で撮影を行ったが、台風19号で大きな被害を受けた。御殿場でなければ作れなかった映画。一日も早い復旧を望んでいる。
と被災地への思いを語った。
また、アジア・太平洋地域16か国の中から優れたコンテンツを選出するAsian Academy Creative Awardsで、本作から主演男優賞(北村)、主演女優賞(神野三鈴)、撮影賞(早坂伸)に選出された

との報告があった。

フォトセッションでは、会場に来ていた出演俳優の名脇役・黒田大輔さんも呼び、自ら畳のモチーフを持ってカメラに収まった齋藤監督。まさに温かな風を感じる”ワンチーム”を見た思いだった。

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★BSスターチャンネルにて11月10日(日)より独占日本初放送★

写真・文:大瀧幸恵

第32回東京国際映画祭 受賞作品・受賞者 

2019年11月5日(火)東京国際フォーラム ホールCにて開催されたクロージング・セレモニーで、第32回東京国際映画祭の各部門受賞作品および受賞者が発表されました。
クロージング・セレモニーの模様は、取材に行っている暁さんから後日お届けしますが、取り急ぎ、結果のみお届けします。
皆さんがご覧になったお気に入りの作品は受賞されたでしょうか?

◆コンペティション
東京グランプリ/東京都知事賞
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『わたしの叔父さん』
監督:フラレ・ピーダセン

審査委員特別賞

『アトランティス』
監督:ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ

最優秀監督賞
サイード・ルスタイ
『ジャスト 6.5』

最優秀女優賞

ナディア・テレスツィエンキーヴィッツ
『動物だけが知っている』
"Only the Animals[Seules Les Bêtes]"

最優秀男優賞

ナヴィド・モハマドザデー
『ジャスト 6.5』

最優秀芸術貢献賞

『チャクトゥとサルラ』
監督:ワン・ルイ

最優秀脚本賞

『喜劇 愛妻物語』
原作/脚本/監督:足立 紳

観客賞
『動物だけが知っている』
監督:ドミニク・モル


◆アジアの未来

アジアの未来 作品賞
『夏の夜の騎士』
監督:ヨウ・シン

国際交流基金アジアセンター特別賞

レザ・ジャマリ
『死神の来ない村』

◆日本映画スプラッシュ
日本映画スプラッシュ 作品賞
『i -新聞記者ドキュメント-』
監督:森 達也

日本映画スプラッシュ 監督賞
渡辺紘文
『叫び声』



◆東京ジェムストーン賞
ヨセフィン・フリーダ(『ディスコ』主演)
伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』主演)
吉名莉瑠(『テイクオーバーゾーン』主演)
佐久間由衣(『“隠れビッチ”やってました』主演)


アメリカン航空アウォード 大学対抗ショートフィルムコンテスト
◆グランプリ
『Down Zone』
監督:奥井琢登(大阪芸術大学)

第32回東京国際映画祭 開催概要

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期間:2019年10月28日(月)〜 11月5日(火) 9日間
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区) 他
主催:公益財団法人ユニジャパン(第32回東京国際映画祭実行委員会)
共催:経済産業省(TIFFプラス)、国際交流基金アジアセンター(アジア映画交流事業)、東京都(コンペティション部門、ユース部門)
公式サイト: https://2019.tiff-jp.net/ja/

9月26日、東京国際映画祭ラインナップ記者会見が開催され、コンペティション部門を始め、全上映作品が発表されました。
これまで特集として取り上げられてきた日本のアニメが、今回、「ジャパニーズ・アニメーション部門」となりました。 
世界に誇る日本の映像作品としてのアニメーションの位置を明確にした部門化といえます。

本年度のオープニング作品に決定した『男はつらいよ お帰り 寅さん』の山田洋次監督、コンペティション部門における邦画2作品、『ばるぼら』)の手塚眞監督と、『喜劇 愛妻物語』の足立紳監督が登壇。
また、第32回東京国際映画祭のフェスティバル・ミューズは広瀬アリスさんに決定したことが発表されました。

コンペティション部門 審査委員長: 女優・チャン・ツィイーさん
第 16 回のコン・リーさん以来の女性の審査員長
デビュー作 『初恋のきた道』が特別上映されます。

ほかにも注目したい催しがいっぱい!
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★多彩な上映作品のスケジュールが、9月30日に発表されました。


(1)上映作品から日程を見る 
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html
上映作品ごとに、上映日程と共にチケット売り出し日も記載されています。

(2)日にちから上映作品を見る
https://2019.tiff-jp.net/ja/schedule/list/



第31回 東京国際映画祭観て歩き(暁) 『輝ける日々に』『十年』『ソン・ランの響き』『カンボジアの失われたロックンロール』「ピート・テオ特集」『家族のレシピ』

9月のあいち国際女性映画祭に始まり、中国東京映画週間、東京国際映画祭、ベトナム映画祭、東京フィルメックスと続き、なかなか映画祭記事をまとめられないでいたら、フィルメックスが終わったとたん、疲れが出たのか右後頭部に帯状疱疹ができてしまい、3週間近く原稿どころではなくなってしまった。「やっと直ったので、これから秋の映画祭記事を書かせてもらいます」と書きましたが、12月26日~3月31日まで、子供の頃からの夢だった世界一周の旅にピースボートででかけています。12月に入ってからずっと、この旅行の準備もあり、なかなか記事も書けずで遅くなってしまいました。
というわけで、オープニングのレッドカーペット記事、クロージングの写真などはすぐに載せたものの、細かい記事についてはまた、と思っていたのになかなか取り掛かれずでした。

今年の東京国際映画祭はプレス試写で10本、一般上映で5本の作品を観ました。その中でも印象に残ったのは、ベトナム、カンボジア、インドなどの音楽に関する作品。また『サニー』(韓国)、」『十年』(香港)など、オリジナルの作品を自国の事情に合わせてリメイクした作品も興味深かったです。それらの作品について書こうと思います。

『輝ける日々に(『サニー』ベトナム版)』
2018 ベトナム 117分
監督:グエン・クアン・ズン 
出演:ホン・アイン ティン・ハン ミ・ウエン 
  トゥエン・マップ ミー・ズエン
 
韓国版『サニー・永遠の仲間たち』(2011年 カン・ヒョンチョル監督作)をリメイクして、この秋、公開された日本版『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年大根仁監督)と、期せずして?同時期にリメイクされたベトナム版がこの映画祭で上映されたので、さっそく観にいった。
韓国版・日本版は、それぞれ製作された現代から、25年前の高校時代を振り返るかたちになっているが、ベトナム版は2000年を舞台に25年前の75年ごろの高校時代を振り返っている。1975年はベトナム戦争が終わり、南北統一された年で政治や社会が混乱していた時期。ボートピープルになり出国する人たちがいる一方で、街では反政府デモも行われ、そこで乱闘する「荒馬団」という少女たちも出現。実際モデルになった人たちがいたのだろうか。これはベトナムらしさなのだろうか。ベトナムの人たちのイメージは、我慢強く、芯が強いというのが私のイメージ。ベトナム戦争でアメリカに負けなかったというイメージからの印象だけど。
韓国版では「サニー」の仲間は7人だけど、日本版、ベトナム版では6人に。6人の特徴も、韓国版のメンバーのイメージと大体同じだけど、少しづつベトナムの国の特徴や事情に合わせて変えている。年代の違いもあるかもしれない。<おでぶ>のラン・チーが小さな質屋を経営していて、心臓病の娘の手術代工面に苦労しているという設定。かつての仲間探しでは、下町の人情なのか、ラン・チーの人徳なのか、隣人たちが総動員してあたる。ベトナムにも下町の人情的なところがあるのだと思った。
1975年のサイゴンが、戦後すぐにしてはきれい過ぎる気はするが、復興が早かったのかもしれない。あるいは映画だから少しきれいに描いているのか。いずれにせよ、ベトナム戦争の影響を監督は入れたかったのだろう。
亡くなる前にミ・ズンが、高校時代の仲間に残した遺言は、涙なしには見られない、仲間の未来を考えた遺言だった。
韓国版では元のタイトルにある「サニー」の名曲が流れていたけど、この時代のベトナムではこの曲は知られていなかったので、使わなかったと監督は語っていた。
しかし残念だったのは、ベトナムで75年頃にはやった歌を全然知らなかったこと。ベトナム戦争が終わって、ほっとしたベトナムの人たちの間ではどんな歌がはやったのだろう。
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左からグエン・クアン・ズン監督、ホン・アインさん


『サニー』(韓国)は、日本、ベトナムでリメイクされたけど、この各国競作は、『怪しい彼女』(韓国)が最初。『怪しい彼女』は、その後、日本、中国、ベトナム、インドネシアでリメイクされている。
そして、『十年』(香港)は、日本やタイでリメイク。日本作はこの秋公開されたが、この映画祭ではタイ版が上映された。

『十年』2018 タイ 93分
監督:アーティット・アッサラット ウィシット・サーサナティナン チュラヤーンノン・シリボン アビチャッッポン・ウィーラセタクン  

この『十年』は、オリジナルは香港製作。日本版はこの秋公開されたが、タイでも製作され、この映画祭での上映が行われた。世界的プロジェクト「十年」の1本だそう。タイ版は4人の監督によるオムニバス作品。「自由が抑圧された世界」を描いていることは香港版と共通しているが、香港映画と比べると、不思議世界がたくさん。
アビチャッポンはじめ、名だたる監督が参加しているようで、香港の『十年』とは違う方向で描きたい近未来の暗黒社会を描いたという感じがした。香港版から離れたいという意図はあったのだろうが、香港版『十年』は今とつながってすぐ傍にある未来の恐怖を描いているけど、タイ版はミステリー風味で描かれていたように感じた。

『Sunset』 (アッサラット監督)
ある女性写真家の写真展に、突然警官や軍関係者?が来て、展示されている笑顔や、泣き顔などの写真を、「人々の心を惑わすもの」として検閲する。
映画は、公務中の運転手の青年警官が会場係の若い女性に心ひかれ、メール交換を申し込むという、いわば権力を傘にきた「押し付け」が描かれる。モノクロで、4本の中ではわりと地味な作品だけど、4本の中では最も香港版のテイストに近い作品だと思う。

『Catopia』 (サーサナティヤン監督)
猫が支配する世界に、2年間身分を隠してきた人間の若者が、親切心を出したことからばれてしまい、とうとう拘束されてしまう。そして殺されてしまったのかもしれないという、恐ろしい世界が描かれる。猫の被り物をかぶった人間たちの不思議世界が怖い。なんか不気味だった。

『Planetarium』 (シリポン家督)
ピンクの軍服に身を固めた女性の独裁者が支配する世界。彼女のスマホ操作で、市民の行動が支配制御され、反したものはピンクのタイをつけた少年兵たちが逮捕する。そして殺され?、衣類をはがされて宇宙に放逐される。こちらも、不思議な恐怖政治世界が描かれる。
しかし、独裁者の女性はじめ、支配者の側も決して自由ではない世界が描かれる。おとぎ話的に描かれるのだが、なんだかちゃっちいのだ。そこも狙っているのかもしれないが。しかし、女独裁者がピンクで身を固めているというのはこっけいさの象徴のよう。

『Song of the City』 (アピチャッポン監督)
これは今とほとんど変わらない未来風景なのか? 元大統領(?)の銅像が見下ろす公園。鼓笛隊のならす行進曲の音、工事で掘り返している現場、そしてその音、集っている人たちの会話など、混然とした世界。無農薬野菜を作っていると久しぶりに会った知人に宣伝する男とか、楽隊の宣伝をする男、怪しげな機器?を通りがかりの女性にセールスする男とかが淡々と描かれる。10年たっても変わらない?抑圧の世界?なのか。あまりよくわからない。なんとなくアピチャッポン的不思議な静的世界という感じはある。 

『ソン・ランの響き』ベトナム 2018年
監督:レオン・レ
出演:リェン・ビン・ファット、アイザック・スアン・ヒェップ

1980年代のサイゴン(1980年代でサイゴン?ホーチミンでは?)。借金の取立て屋をしているズンは、押しかけた家でカイルオン(南部の大衆歌舞劇)の押しかけた家で俳優のリン・フンと出会う。
実はズンの父は、大衆歌舞劇の演者だった。そしてズンは幼い頃からソン・ラン(ギターの原型のような楽器)の演奏を父から教わっていた(ソン・ランは『海角七号』の中に出てきたバンドメンバーの中でおじいさんが弾いていたような丸い形のギターのような楽器)。そして、ほんとはかなりうまく弾けるのだけど、父親と仲たがいしてから弾くことを封印してきた。そして、借金取りをしていたのだった。
ズンとリン、反目するふたりだったが、あることがきっかけでしだいに親しくなった。その日、酔っ払ったリンは家に帰れなくなり、ズンの家に泊まった。そこで、このカイルオンの有名な演目を歌うことになり、ズンはしまってあったソン・ランを出してきて、リンの歌に合わせて演奏をした。その演奏を聴いたリンは、彼の所属する劇団で演奏しないかと薦めた。何年もソン・ランを弾いていなかったズンは最初断ったが、借金取りでない人生を歩もうと、劇団のオーディションを受ける約束をした。しかし、事件が起きてしまった。
歌と踊りと男の友情とソン・ランが描かれた作品。
ズンを演じたリェン・ビン・ファットさんが新人賞である東京ジェムストーン賞を受賞した。
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リェン・ビン・ファットさん

『カンボジアの失われたロックンロール』
2014年 アメリカ・カンボジア
監督:ジョン・ピロジー
出演:シン・シサモット、ロ・セレイソティア、バイヨンバンド

クメール・ルージュによって弾圧されるまでの1950年代~1970年代までの音楽を取材によって掘り起こした、カンボジアのポピュラー音楽史を描いたドキュメンタリー。生存者へのインタビューや、知られざるアーカイブ映像から失われた歴史が見える。
ロックンロールと書いてあるけど、日本人の感覚からすると、歌謡曲、大衆歌謡の歴史というようなイメージだった。エッ!これロック?という感じだったが、カンボジアの音楽が描かれている。こんな豊かな音楽環境があったんだとびっくりした。残った資料や生存者も少ない中、貴重なものをみつけてきて、それを元に構成している。
生存者へのインタビューや、アーカイブの映像を駆使して歴史を蘇えらせた。日本と同じような年代、ミッキー・カーチスや平尾昌晃たちが活躍していた年代に同じようにアメリカから入ってきた音楽があったし、ムード歌謡のようなものもあった。しかしロックのような音楽は出てこなかったので、なぜロックンロールというタイトルをつけたのかな?と思った。これを作ったのはカンボジアの人かと思ったら、カンボジア在住のアメリカ人だった。カンボジアの音楽の歴史に興味があったジョン・ピロジー監督と同じように長年カンボジアの音楽に興味がありカンボジアに10年以上住むリサーチャーのジェイソン・ジョーンズさんが加わって、貴重な音源や映像なども得ることができたらしい。
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左からジェイソン・ジョーンズさん、ジョン・ピロジー監督

「ピート・テオ特集」
今映画祭、アジア部門の審査員であるピート・テオ。
マレーシアのマルチクリエーターであるピート・テオは、ミュージシャンにして映画俳優、プロデューサー、監督もこなす活動歴から、ピートが関わった映像作品を紹介をする特集が組まれた。短編や、15人のクリエイターたちの作品を集めた『15Malaysia』など、多彩な作品でマレーシアの姿が映し出される。

『Vote!』 (原題:Undilah) 約4分/2011年
監督:ベンジー・リム
エグゼクティブ・プロデューサー:ピート・テオ
若い世代に向けて投票に行こうと呼びかける。ちょっと政府の選挙キャンペーンのような映像で、政府のまわしものみたいな感じだったけど、その後政権が変わったという。

『Malaysia Day: Slipstream』 (原題:Hari Malaysia)
作曲、プロデューサー、監督:ピート・テオ
約4分/2013年
1957年と63年の建国記念式典のニュース映像を加工。
マレーシアの歴史的な出来事を、この時代に蘇らせ、それを東京で観ることができたというのは貴重な体験だった。

『Here in My Home』  [Music video]
監督:ヤスミン・アフマド、ホー・ユーハン
プロジェクト・プロデューサー、作曲:ピート・テオ
約4分/2008年
人種差別反対を訴えてヤスミンさんやピートたちが歌い踊るシーンがあるミュージック・ビデオ。ヤスミンさんの姿を見て涙が出た。

『15Malaysia』
監督:ホー・ユーハン、ヤスミン・アフマド、アミール・ムハマド、ライナス・チャン、リュウ・センタック、デスモンド・ン 、カマル・サブラン、タン・チュイムイ、ウー・ミンジン、ジェームズ・リー、ベンジー&バヒール、ジョアン・ジョン、カイリル・バハール、ナム・ロン、スレイマン兄弟
プロデューサー:ピート・テオ
80分/2009
ピート・テオ企画によるマレーシアの監督15人によるオムニバス。マレーシア社会の多様性が15の作品で描かれる。ジェームス・リー、ホー・ユーハン、タン・チュイムイ、リュウ・センタックら、日本で作品が上映されたことがある「マレーシアニューウェイブ」の監督たちの作品もある。
そしてなんといっても注目は、ヤスミン・アフマドの遺作となった『Chocolate』。最後の『タレンタイム~優しい歌』(09)を仕上げ、祖母のルーツを日本で撮る「ワスレナグサ」の準備中に逝ってしまった彼女の最後の作品。ヤスミン亡き後の、マレーシアのクリエイターたちの総まとめ役がピート・テオということだろう。これからもマレーシアのクリエイターたちの兄貴分として、引っ張っていってほしいと思った作品だった。

『I Go』 [Music video]
監督:カマル・サブラン
プロデューサー、作曲、アーティスト:ピート・テオ
約4分/2008年
『タレンタイム~優しい歌』挿入歌のセルフ・カヴァー。
映画が終わってからのトークで、「今、思うとこれはヤスミンのために作ったかもしれない」と語っていた。当初、韓国でシングルリリースするために書いた曲だったそうだけど、ヤスミン監督が気に入り、『タレンタイム』で使いたいといって主題歌になったという。結局『タレンタイム~』の音楽の全体を担当したそう。マレーシアのライブで歌った時は、最後まで歌えなかったと語っていた。「アイゴー」は韓国では、悲しみを表すことばですという観客からの発言があり、その不思議な一致に、なんという偶然と思った私。
東京フィルメックスで上映されたイン・リャン監督の『自由行』にも出演していて、主人公の夫役を演じていた。変幻自在の大活躍。これからもマレーシアのインディーズを牽引していってほしい。
終わってからサイン会をしていたので、私も並び、順番が来たときに「シネマジャーナルのメンバーです。高田渡さんと同じアパートだったのは私です」といったら大喜び。他のメンバーがピートさんをインタビューした時「日本の歌い手で一番気になっている人は?」と訪ねたら、「高田渡」と答えて、その時「シネマジャーナルのスタッフで高田渡さんと同じアパートに住んでいる人がいる」といったら驚いて、大受けだったと言っていたので、覚えているかなと思って言ったのでした。覚えていた。
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ピート・テオさん

参考資料
シネマジャーナル ピート・テオインタビュー 2007年

『家族のレシピ』
シンガポール・日本・フランス合作
2019年3月9日 シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:エリック・クー
出演:斉藤工、マ-ク・リー、ジャネット・アウ、伊原剛志、別所哲也、ピートリス・チャン、松田聖子

「世界中の家族にその家族の味がある。一口食べれば記憶が蘇り、家族や故郷につながることができる」という思いで、シンガポールのエリック・クー監督が日本とシンガポールを舞台に作品を作った。日本のラーメンとシンガポールのパクテーをモチーフにソウルフードが離れ離れになっていた家族を結びつけるドラマができた。
群馬県高崎市で行列ができるラーメン屋をやっている3人の男たち。店主の和男(井原剛志)と弟の明男(別所哲也)、和男の息子の真人(斉藤工)。黙々と働き、仕事が終われば和男は一人、酒を飲みに行く。真人は家に帰りレシピの研究。和男が突然死に、真人は父の遺品の中に、亡くなった母メイリアンの日記をみつけた。母はシンガポール人で、和男とシンガポールで出会い結婚した。
和男はシンガポールで店を持っていたけど、メイリアンが亡くなって日本に引き揚げたらしい。そしてこのラーメン屋を始めた。真人は10歳までシンガポールにすんでいた。母の日記の中にはレシピが書いてあり、メイリアンの弟からの手紙と写真が入っているのをみつけた真人はシンガポールへと旅立った。
母の弟がやっている店をみつけ、叔父と再会した真人は、なぜ祖母が自分と会ってくれないのかを知りたかった。
シンガポールは太平洋戦争中、日本が占領し、昭南島といっていた。祖母の父は日本軍に殺されていた。そのことがあって、真人の両親の結婚を受け入れられなかったのだ。真人はシンガポールと日本の間の歴史をネットで検索し、シンガポールの戦争博物館に行き、日本軍の蛮行を知る。
祖母との和解は難しく思われたけど、真人は祖母のために心を込めてラーメンを作り、そのラーメンを食べた祖母の心がほぐれていった。
シンガポールが太平洋戦争中、日本軍に占領されていたという歴史は知っていたけど、こんなにもシンガポールの人を傷つけていたとは思ってもみなかった。
実は今、ピースボートで世界一周の旅に出ている(12月26日~3月31日まで)。シンガポールも寄港地のひとつで、この作品に出てきた「戦争博物館」=「旧フォード工場」にも1月5日に行く予定。2017年、この博物館がリニューアルされた時、政府が「昭南ギャラリー」という名前に変えようといたそう。市民の反対の声があり、その名前になることはなくなったという。
このレポートはまたスタッフ日記に書く予定。


来年の東京国際映画祭は、どんな作品が上映されるのか、今から楽しみ。
期待しています。

東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」を振り返る  (咲)

10月に開催された第31回東京国際映画祭。
中東の映画が少なくて寂しかった中、私にとって嬉しかったのは、「イスラエル映画の現在 2018」の特集が組まれたことでした。
すっかり遅くなってしまったのですが、特集の全容をまとめました。

「イスラエル映画の現在 2018」上映作品
コンペティション部門
『テルアビブ・オン・ファイア』

ワールド・フォーカス部門
『赤い子牛』
『彼が愛したケーキ職人』
『靴ひも』
『ワーキング・ウーマン』


上記5本が、「イスラエル映画の現在 2018」特集として上映されましたが、ワールド・フォーカス部門で上映された『サラとサリームに関する報告書』(パレスチナ他)も、イスラエルを舞台にした作品でした。併せて、ご報告します。(なんとか年内に駆け込み!)

今回の特集は、プログラミング・ディレクター 石坂健治氏が何本も観た中から厳選したもの。正統派ユダヤが登場するもの、まったく宗教とは無縁の世俗的な暮らしをしているユダヤ人の物語、ユダヤではタブーの同性愛、人生を考えさせられるもの、大笑いできるコメディーと、ほんとうにバラエティに富んでいました。パレスチナが絡むものも、絡まないものも! イスラエル映画の多様性を垣間見ることのできる特集でした。

◆『テルアビブ・オン・ファイア』
監督:サメフ・ゾアビ
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人気メロドラマの制作ADのパレスチナ青年が、毎日通るイスラエルの検問所主任から脚本家と勘違いされ、ドラマの筋書きに介入される物語。
イスラエル国籍のパレスチナ人のであるサメフ・ゾアビ監督が描いた、大笑いのブラックコメディー。

パレスチナ人とユダヤ人が、ドラマの筋書きを巡ってとはいえ、対等に向かい合って話し合う姿は、政治の世界にもあってほしい!

★映画の詳細および上映後のQ&Aは、こちらで!


◆『赤い子牛』
監督:ツィビア・バルカイ・ヤコブ   ★女性監督
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母を亡くし、ユダヤ教聖職者の厳格な父と暮らす少女。自分と正反対の明るい性格の少女と出会い、やがてそれは恋心に・・・

少女が自我に目覚める姿を描き、正統派ユダヤではタブーの同性愛にも挑戦。
ユダヤの祈りを捧げる窓の向こうにイスラームの岩のドームが見える象徴的な構図が素晴らしい。

★映画の詳細および上映後のQ&Aは、こちらで!


◆『彼が愛したケーキ職人』

監督:オフィル・ラウル・グレイツァ
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(C)All rights reserved to Laila Films Ltd. 2017
夫を亡くした妻を癒してくれたのは、夫が愛したベルリンのケーキ職人だった・・・
エルサレムを舞台に繰り広げられる愛の物語。


金曜日の夕方、安息日の始まりを告げるサイレンが鳴る。肉用と乳製品用が別になったユダヤ仕様の台所のアパートも出てきて、さすがユダヤ人のために作られた国!
ユダヤの食物規定(コシェル)にこだわる人、こだわらない人の双方が出てくるのもイスラエル社会の現実。オフィル・ラウル・グレイツァ監督自身、信心深い父と、宗教に無頓着な母に育てられたことが、この映画に反映されている。監督自身ゲイ。宗教に厳格な父親からどのように思われているか想像がつきます。

★2018年12月1日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開

★映画の詳細および上映後のQ&Aは、こちらで!


◆『靴ひも』
監督:ヤコブ・ゴールドワッサー
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母が急死し、発達障害のある35歳の息子ガディがあとに残される。別居していた父親ルーベンが息子を引き取り、一緒に暮らし始める。ガディの世話も大変だが、ルーベン自身、腎不全で人工透析を受ける身で、障害のある息子の行く末が心配だ・・・

障害のある子を遺して逝かなければならない親の気持ちに迫った作品。どこの国でもありえる話ですが、病院のシーツの模様がダビデの星で、さすがイスラエルと興味津々でした。

★映画の詳細および上映後のQ&Aは、こちらで!


◆『ワーキング・ウーマン』
英題:Working Woman  原題:Isha Ovedet
監督:ミハル・アヴィアド   ★女性監督
2018年/イスラエル/ヘブライ語/カラー/94分
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夫と3人の子どもと暮らすオルナは、夫が始めたレストランの客入りが悪く、家計の助けにと不動産会社の面接を受ける。偶然、社長は、かつて軍で同じ部隊にいて、彼女の有能さを見込んで即採用が決まる。仕事はリゾートマンションの売り込み。社長と一緒にパリに出張し、余生をイスラエルで送りたいユダヤ人たち相手にプレゼンテーションを行うことになる。務め始めた頃に、社長からキスをされたことがあって、泊りがけの出張に戸惑いはあったが、案の定、パリのホテルで襲われてしまう・・・

夫のレストラン事業がうまくいってなくて、セクハラを受けても辞めるに辞められないオルナの思いが切々と伝わってきました。くやしくても、夫に打ち明けられない。しかも、そのことに気づいた夫からは、隙があったからと疑われてしまう。
生きていくために、パワハラやセクハラがあっても我慢するしかない、いずこの世界にもありえる物語。オルナは、表立って訴えることなく、また、社長の妻の前でもセクハラを知られることなく、再就職のための推薦状へのサインを、まんまと社長から取り付けます。実に小気味いい解決策でした。
イスラエルらしかったのは、パリのお金持ちユダヤ人たちへのプレゼンの場面。オルナは、子どもの頃、近くのシナゴーグで近隣の人たちと集まって過ごした思い出を語り、皆さんが一緒に購入してくださるなら、マンション内に皆で集まれるサロンを作ると約束し、「願わくば、来年の過ぎ越しの祭りは皆でイスラエルで過ごしましょう」と結びます。

「#MeToo」の年にタイムリーに完成した作品ですが、脚本を担当したシャロン・エヤールさんは、6年前にミハル・アヴィアド監督からセクシャルハラスメントの作品を撮りたいと依頼を受け、一緒に脚本を作り上げたと、上映後のQ&Aで明かしています。

★公式サイトのQ&Aは、こちらで!


★番外★
ワールド・フォーカス部門
◆『サラとサリームに関する報告書』
原題:The Reports on Sarah and Saleem
監督:ムアヤド・アラヤン
2018年/パレスチナ・オランダ・ドイツ・メキシコ/アラビア語・ヘブライ語・英語/カラー /132分
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西エルサレムでカフェを営むイスラエル人女性サラ。東エルサレムから毎日パンを届けに来るパレスチナ人男性サリームと、いつしか不倫の仲になる。今週は今日しか会えないという夜、サリームがベツレヘムに品物を届ける仕事を引き受けてしまい、サラは同行しチェックポイントを越える。ベツレヘムで入ったパブで、サリームが席を外した時にサラにパレスチナ人の男が言い寄ったことから、喧嘩になる。イスラエル女性を売春目的で連れまわしていると通報され、警察沙汰になる。仲介に入ってくれた知人が、仕事上でイスラエル女性をベツレヘムに同行したと証言して、その旨の調書を残す。ところが、その後、その調書を入手したイスラエル軍が、サリームにスパイ容疑をかけてくる・・・


ただの浮気が、イスラエルとパレスチナを背景にすると、こんな政治的大事件になってしまうという物語。しかも、書類を接収したのはサラの夫の所属する軍の掃討作戦の時という皮肉。サラの夫は、軍から妻に作戦を事前に明かしたのではとまで疑われます。
それにしても、サラの夫も素敵だし、サリームの妊娠中の奥さんもチャーミング。何も危険をおかしてまで、サラとサリームは密会を続けなくてもよかったのにと! でも、男女の仲は、理屈ではないですねぇ。

公式サイト



*なお、11月下旬に開催された東京フィルメックスでは、イスラエル映画として、アモス・ギタイ監督による下記2作品が上映されました。

『エルサレムの路面電車』

2018年/イスラエル・フランス/90分

『ガザの友人への手紙』

2018年/イスラエル/34分