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公式HPより
インターナショナル・コンペティション
山形映画祭第1回目からのプログラム。世界中から長編を対象に募集し、応募された1,132本から厳選。バラエティに富む世界の最先端の表現が凝縮した珠玉の15本を紹介。
審査員
オスカー・アレグリア(映画監督)
エリカ・バルサム(映画批評家)
陳界仁(チェン・ジエレン)(アーティスト、映画作家)
ヤンヨンヒ(映画監督)
張律(チャン・リュル)(映画監督)
上映作品
アンヘル69 Anhell69
コロンビア、ルーマニア、フランス、ドイツ/2022/75分
監督:テオ・モントーヤ Theo Montoya
同世代のクィア・コミュニティの友人たちと、幽霊の出てくるB級映画制作を故郷コロンビアのメデジンで企画した監督。SNSで「Anhell69」というアカウント名をもつ友人アンヘル(Angel)を主人公に予定していたが、彼も薬物過剰摂取で命を断つ。2016年の政府と反政府左翼ゲリラFARC間の和平合意は儚く、未だ確固たる将来は見えない。監督は、自らが横たわる棺を載せた霊柩車でこの暴力的で保守的な街を走りつつ、仲間とともに、夢、恐怖、映画制作の葛藤を回想し、手法を凝らした描写で真摯に生きている「あかし」を映画に刻む。
ターミナル The Bus Station
アルゼンチン/2023/62分
監督:グスタボ・フォンタン Gustavo Fontán
アルゼンチンのコルドバ州にあるバスターミナル。労働者たちが行き交うこの場所は、活気があるというよりはむしろ穏やかな気配に包まれている。仕事の行き帰り、旅の出発あるいは終着点、見送り、待ち合わせ……。自在なテンポで撮られた人々の姿に重ね合わされるのは、愛についての追憶だ。初めての恋、生涯たった一度の愛、失われた関係への思慕。映像と声とが幾重にも層になって愛の物語が生まれ、言葉が途切れては再び続いていく。差し込む光の粒子や空気の流れ、夜の暗さの細部までも捉えるかのような繊細なショットに目を奪われる。
交差する声 Crossing Voices
フランス、ドイツ、マリ/2022/123分
監督:ラファエル・グリゼイ、ブーバ・トゥーレ Raphaël Grisey, Bouba Touré
1977年にマリ人移民労働者らによって設立された農業共同体ソマンキディ・クラ。パリの工場で安い賃金で搾取され、劣悪な環境で暮らしていた彼らが、農民として自立し豊かに生きることを目標に、マリに戻り土地を得て灌漑を行い、作物の栽培を開始した。設立者の一人ブーバ・トゥーレによりパリの路上とソマンキディ村で記録され続けてきた膨大なアーカイブ写真と映像、そして収集された音源が、一つの芸術実践として編集され、そのラディカルな抵抗・帰還運動を蘇らせる。植民地時代以降の同胞の苦難から、グローバル企業による大規模農業の弊害まで、アフリカの人々と大地が経験してきた近現代史を見つめる、一当事者による力強い記録。
東部戦線 Eastern Front
ラトビア、ウクライナ、チェコ、アメリカ/2023/98分
監督:ヴィタリー・マンスキー、イェウヘン・ティタレンコ Vitaly Mansky, Yevhen Titarenko
2022年2月ロシアによる侵攻を受け、本作の共同監督でもあるイェウヘン・ティタレンコは、友人たちと共にウクライナ東部戦線にボランティアの救護隊員として赴く。映画は、6ヶ月にわたる、若者たちの前線での経験を、焼けこげたビルや車両、傷つき苦しみの声を上げる兵士たち、飛び交う銃弾、砲撃の映像とともに生々しく伝える。同時に、家族や友人たちとの束の間の休息の時間を通じて、2014年以来の東部戦線での経験や、ロシアのプロパガンダに踊らされた人々の体験が語られる。一見のどかな野辺のくつろぎの時間が終われば、若者たちは再び戦場に向かって旅立つ。
日々“hibi”AUG "hibi" AUG
日本/2022/120分
監督::前田真二郎 Maeda Shinjiro
作者が設定した「撮影/編集ルール」に則り、8月の「連日15秒x31カット」を15年間連ねることで生まれた長編。ルールとは、満月の日は深夜0時に撮影するなど月の運行に準じて毎日撮影時間帯をずらし、撮った映像から15秒を切り出しつなげていくというものだ。約1ヶ月かけて日の出から日没までの時間を映像に推移させ、撮影できなかった日には日付が表示される。ショットの集合体は互いに連関しないが、時折挿入される音楽や朗読により撹乱され、そこに作者のまなざしがふと立ち現れる。見る者の記憶を呼び覚まし、意味から解き放ち、新たに記憶を紡ぐための、映画の試み。
あの島 The Island
フランス/2023/73分
監督:ダミアン・マニヴェル Damien Manivel
翌日にはモントリオールへ旅立つローザ。彼女と友人たちはその夏最後のパーティを、“あの島”と呼ぶ岩の周りで続けることにする。しかしそこに「ローザとの最後のパーティ」を演じる俳優たちの稽古場での練習風景、時間帯の異なるリハーサルの様子が挿入され、作品全体として多層的な構成をなしながら、物語は進んでいく。物語、そして演技の中で生起する感情と、夏の夜の闇の中では見えなくなってしまった顔や手の些細な表情や動きが、それぞれに作品を彩っていく。
ニッツ・アイランド Knit's Island
フランス/2023/98分
監督:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク Ekiem Barbier, Guilhem Causse, Quentin L'helgoualc'h
ゾンビで溢れた世界でサヴァイブせねばならないオンライン・ゲーム『DayZ』。その仮想空間を利用し、匿名のユーザーたちが交流しているコミュニティの内側にフランスの映画クルーが潜入、963時間の取材を敢行する。ゲーム内で暴虐を尽くす集団、博愛主義者のグループ、単独行動を続けるユーザーらと出会い、それぞれがプレイに没入してきた理由がインタビューで語られていく。画面のアバターに重なる声、マイクがひろう生活音が、オフラインにいる生身の存在を伝える。やがて映画クルーは、ゲーム空間の限界を探索する旅へ向かう。
何も知らない夜 A Night of Knowing Nothing
インド、フランス/2021/100分
監督:パヤル・カパーリヤー Payal Kapadia
映画を学ぶ学生のL(エル)が恋人へあてた手紙が学生寮の片隅で発見された。女性の朗読に託された架空の物語は、Lの恋愛の破局の背後にあるカースト制へと導かれ、さらに2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件へと接続される。若者の日常の光景、Lの悲恋の逸話、路上デモや警官との衝突のシーンにおける緊迫した闘争の様子がモノクロームの映像の中で融合し、フィクションと現実が境界をなくしていく。抵抗する者たちの情熱や信念、映画作家たちの意志の記録とともにインドの現在を描き出す。
ある映画のための覚書 Notes for a Film
チリ、フランス/2022/104分
監督:イグナシオ・アグエロ Ignacio Agüero
19世紀、チリの一部となったばかりの先住民族マプチェの土地アラウカニア。鉄道建設の技師としてギュスターヴ・ヴェルニオリーがベルギーから赴任した。監督は、彼の日記を基に俳優を配して足跡を辿り、往時の冒険を回想する。スタッフ、監督自身が時間軸を超えてフレームの中と外を自在に行き交いつつ、鉄道遺構、風景、人々の間を往還する映画の試みは、同時に、植民地化の深い傷跡が残るマプチェ・コミュニティで続く土地闘争を描き出す。本作は、アラウカニアの土地の記憶と現在に生きる個々人の経験を等しく見つめることで、ひいては世界と映画に対する新しいアプローチを実践している。
自画像:47KM 2020 Self-Portrait: 47 KM 2020
中国/2023/190分
監督:章梦奇(ジャン・モンチー) Zhang Mengqi
監督の父の故郷「47KM」と呼ばれる中国山間部の村を舞台とした連作の最新作。2020年、コロナ禍にあっても村では例年どおり四季を通じて農作業が繰り広げられる。前作で完成した「青い家」では、子どもたちや村の人々が集い、監督と一緒に体操をしたり、映画を見たり。感染症の噂は耳に届けども、大人も子どもも日々の暮らしに忙しい。皆がカメラに向ける表情は和やかで、監督もカメラももはや共同体の一員になったかのようである。中国三年大飢饉の体験記録収集プロジェクトFolk Memory Projectの一環で制作された「自画像:47KM」シリーズの10作目。
紫の家の物語 Tales of the Purple House
レバノン、イラク、フランス/2022/184分
監督:アッバース・ファーディル Abbas Fahdel
映画作家と、画家であるその妻が、ベイルート郊外に立つ紫の家で暮らしたコロナ禍の二年間を、三部構成で示していく。猫たちと静かな生活を送りながら、隣人の移民の子供と交流を重ね、絵を描き続ける日々。リビングのテレビには、小津安二郎やアンドレイ・タルコフスキーらの映画の一場面が流れていく。他方で2020年に起きた港湾の大爆発事故、反政府デモの様相、経済危機に追い討ちをかけるウクライナ戦争の勃発も、彼らの日常と地続きの出来事として記録された。崩壊する世界を生きること、そこに芸術が存在する意義にも迫っていく。
三人の女たち Three Women
ドイツ/2022/85分
監督:マキシム・メルニク Maksym Melnyk
カルパチア山脈の麓にあるウクライナ・ストゥジツヤ村。大学院の修了制作のため母国に戻った監督は、村に暮らす三人の女性たちと出会う。生物学者として日々節足動物の採集に勤しむネルヤは、カメラも気にせず我が道を突き進み、村人に年金を手渡している郵便局員のマリアは、監督たちを伴い村人宅を訪ねてまわる。一人で牛を飼育する農家のハンナは、悪態をつきつつ撮影を拒否するが……。生活のためにこの地に留まるか他国へ去るか人々が選択を迫られる村で、彼女たちの確固とした生の営みが、移ろいゆく季節とともに重層的に編み上げられる。
不安定な対象 2 The Unstable Object II
アメリカ/2022/204分
監督:ダニエル・アイゼンバーグ Daniel Eisenberg
ドイツ、ドゥーダシュタットにあるオットーボック社の義肢製造工場、南フランス、ミヨーにあるメゾン・ファーブルの高級革手袋縫製アトリエ、トルコ、イスタンブールとデュズジェにあるレアルコム社のジーンズ工場という三つの工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。消え去る運命にある手仕事の現場に密着した「視覚的思考」の試みでもある、ナレーションも字幕も排した労働のイメージの時間は、私たちを見ることの陶酔へと誘いながら、手による思考と分析の未来への問いかけともなっている。
訪問、秘密の庭 The Visit and a Secret Garden
スペイン、ポルトガル/2022/65分
監督:イレーネ・M・ボレゴ Irene M. Borrego
前衛芸術に参画した女性たちの最初の世代とされ、スペイン有数の画家のひとりであったイサベル・サンタロは、1980年代以降、芸術の表舞台から姿を消した。彼女の姪である監督は、現在では家族との付き合いも断ち隠遁生活を送る彼女の住まいを訪ねる。 本作はイサベル・サンタロという芸術家の作品や生涯を詳しく紹介する代わりに、猫とともに暮らす年老いた女性のたたずまいをじっと見つめる。彼女はなぜ絵画を発表するのをやめたのか。なぜ孤独な生活を選んだのか。やがて彼女が語り出す言葉が、芸術家として生きること、そして女性として生きることの真髄に触れる。
ホワット・アバウト・チャイナ? What About China?
アメリカ、中国/2022/135分
監督:トリン・T・ミンハ Trinh T. Minh-ha
中国南東部で1993、94年に撮影されたHi8ビデオ映像が、30年後の今日、作家自らの手で新たに組み直された。客家の伝統的な円形集合住宅、土楼をイメージの中心に置き、さらに古代の詩や歌謡、水墨画、そして自叙伝や詩、哲学的考察を語る複数の「私」の声が重ねられる。その映像と音響の独特なモンタージュが、中国という国とその社会的変容についての豊かな連想を誘う。農村部の急激な都市化、生活のデジタル化、そしてパンデミックが襲った現代の中国社会。「調和」の概念をキーワードに、その過去と現在、未来を考察する。
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アジア千波万波
荒削りでもキラリと光るアジア19作品。作り手が全身で受け止め、映し出す、この世界へ。
審査員
リム・カーワイ(映画監督)
陳凱欣(タン・カイシン)(映画作家、マルチ・アーティスト)
地の上、地の下 Above and Below the Ground
ミャンマー、アメリカ、タイ/2023/84分
監督:エミリー・ホン Emily Hong
ミャンマー北部カチン州のミッソンダム建設に反対し続けている2人の女性活動家。川の過去から未来へと映画は旅をしながら、志を同じくする若い女性やバンドとの連帯を描く。
壊された囁き Broken Whispers
シリア、イラン/2023/63分
監督:アミール・マスウード・ソヘイリー、アミール・アーサール・ソヘイリー Amir Masoud Soheili, Amir Athar Soheili
創作に疲れた画家の老人は瓦礫から壊れた楽器を見つけ修理する。彼の生徒たちがその楽器を演奏できる人を探して回ると、戦争に傷ついた芸術家たちと出会う。
-確かめたい春の出会い Encounters on an Uncertain Spring
レバノン、ポルトガル、ハンガリー/2022/25分
監督:タイムール・ブーロス Taymour Boulos
リスボンで父の薬を探すレバノン人の監督が、中古のビデオカメラを手に入れ、徒然なる旅 路で出会う人々、言葉、 哲学。春の陽光とリズムが心地よい短編。
-またたく光 Flickering Lights
インド/2023/90分
監督:アヌパマ・スリーニヴァサン、アニルバン・ダッタ
Anupama Srinivasan, Anirban Dutta
ミャンマー国境で、主権国家という理想を掲げるナガの人々が住む村に、とうとう電気がやってくる。困難を極める工事の末に家々を照らした光は、村人たちの生活や人生をどう変えるのか?
-GAMA
日本/2023/53分
© 2023 Toyonaka Performing Arts Center / trixta
監督:小田香 Oda Kaori
沖縄戦で多くの住民が命を落とした自然洞窟「ガマ」の中で、平和の語り部としてガイドを務める男性。その傍らに佇む青い服の女性が、現代と過去の交差を表現する。
-ホーム・ストーリー Homemade Stories
シリア、エジプト/2021/69分
監督:ニダール・アル・ディブス Nidal Al Dibs
住人の帰りを待つダマスカスの我が家。監督は、娘の成長に光を見出すように、カイロの廃墟となった映画館の物語、各地に散らばった映画人の思いを紡ぐ。
鳥が飛び立つとき Journey of a Bird
ミャンマー/2021/28分
監督:匿名 anonymous
仲間と結成したメディア・グループ。ヤンゴンの街を自由に歌い、羽ばたく鳥のように、ポップなリズムと真っ直ぐなハートで、10代が起こした革命の旅が始まる。
-我が理想の国 Land of My Dreams
インド/2023/74分
監督:ノウシーン・ハーン Nausheen Khan
イスラム教徒を迫害するインド市民権改正法(CAA)への抗議デモ。監督は抗議する人々の声に耳を傾け、ムスリム女性としての自身のアイデンティティを見つめる。
-負け戦でも Losing Ground
ミャンマー/2023/23分
監督:匿名 anonymous
檻のような部屋で若者たちは窓から射す光に向かい、絵を描く、楽器を弾く、叫ぶ。自由を奪われたヤンゴンの鬱屈とした空気を収めた短編。
-ベイルートの失われた心と夢
A Lost Heart and Other Dreams of Beirut
フランス/2023/36分
監督:マーヤ・アブドゥル=マラク Maya Abdul-Malak
幻影のように、失ったものたちを語る声がひっそりと聞こえてくる。平穏な街、海岸、廃墟、通りのあちらこちらに、死者の思念が宿る、ベイルートの日常。
-ルオルオの青春 Luoluo's Youth
中国/2023/93分
監督:洛洛(ルオルオ) Luo Luo
父や孫の世話を焼きながら10代の日記を手繰るルオルオ。仲間と繋がり、家族を巻き込みながら、コロナ禍で引きこもった家に「表現の喜び」が溢れる。
-ナイト・ウォーク Night Walk
韓国/2023/65分
監督:ソン・グヨン Sohn Koo-yong
川のせせらぎに誘われて夜の散歩に出かけよう。青く、静かに蠢く山の風景と、落書きのような絵、古い詩とが、音もなく対話する。寂しくも胸昂らす夜。
-ここではないどこか Nowhere Near
フィリピン/2023/96分
監督:ミコ・レベレザ Miko Revereza
オバマ政権時の政策で、「不法移民」状態にケリがつくはずだった。ロスにいる監督は、こうなった経緯を遡るように、フィリピンへ、その先へと向かう。
-平行世界 Parallel World
台湾/2022/177分
監督:蕭美玲(シャオ・メイリン) Hsiao Mei-ling
アスペルガー症候群の娘との12年。むきだしの感情を受け止め、創作と自立への歩みを見つめる。時に寄り添い、隔てられては結び止めた母と娘の繋がり。
-それはとにかくまぶしい Radiance
日本/2023/18分
監督:波田野州平 Hatano Shuhei
「親愛なる友達のみんなへ。」家族と過ごす一年間の日記。どこにでもある日々の小さな煌めきの断片は、次第に、どこにもない不思議な景色をつくりあげる。
-記憶の再生 Raise Me a Memory
エストニア/2023/69分
監督:ヴァルン・トリカー Varun Trikha
ある国境地帯の静かな村。今そこに住まう人たちの夢の語りから立ち現れる、それぞれの喪失。祖父の知られざる過去を知った監督もまた、夢を重ねあわせる。
-私はトンボ Saving a Dragonfly
韓国/2022/80分
監督:ホン・ダイェ Hong Da-ye
高校3年生の監督は大学受験に直面する友人たちと自らを撮影し始める。彼女たちがともに過ごした多感で不安定な8年間の、ありのままの姿をカメラは捉える。
-列車が消えた日 Trip to Lost Days
中国、シンガポール/2022/73分
監督:沈蕊蘭(シェン・ルイラン) Shen Ruilan
列車乗務員の仕事を辞め、僧侶になると決めた男が列車に乗って向かった先に……。男と乗客の記憶を呼び覚まし、交わりながら、我々を幻想世界へと誘う旅路。
-石が語るまで Until the Stones Speak
韓国/2022/100分
監督:キム・ギョンマン Kim Kyung-man
1948年、済州島4・3事件で無実の罪で投獄された女性たち。70 年を経てようやく、彼女たちが重い口を開き真実を語る時、凄惨な情景がかの地に蘇る。
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あとのプログラムは映画祭の公式サイトにアクセスしてみてください。
特別招待作品
https://www.yidff.jp/2023/program/23p9.html#si
日本プログラム
https://www.yidff.jp/2023/program/23p3.html
野田真吉特集:モノと生の祝祭
https://www.yidff.jp/2023/program/23p5.html
Double Shadows/二重の影 3
https://www.yidff.jp/2023/program/23p6.html
やまがたと映画
https://www.yidff.jp/2023/program/23p8.html
ともにある Cinema with Us 2023
https://www.yidff.jp/2023/program/23p7.html
未来への映画便
https://www.yidff.jp/2023/program/23p6-0.html
街を見つめる人を見つめる――ユネスコ創造都市の世界
https://www.yidff.jp/2023/program/23p4.html
ヤマガタ・ラフカット!
https://www.yidff.jp/2023/program/23p3-0.html
関連イベント:野外スクリーン! で東北を魅る
https://www.yidff.jp/2023/program/23p9e1.html
山形国際ドキュメンタリー映画祭を支援する
山形国際ドキュメンタリー映画祭は、皆様からいただく年会費やご寄付、ご協賛などで運営されています。映画祭をぜひ支援してください。
https://www.yidff.jp/support/support4.html
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 (暁)
山形国際ドキュメンタリー映画祭が10月5日[木]~12日[木]に開催されます。「山形国際ドキュメンタリー映画祭2023」の上映プログラムなど開催概要などが決定しました。4年ぶりになる山形での映画祭開催です。
インターナショナル・コンペティション審査員は、ヤンヨンヒ(映画監督)、チャン・リュル(映画監督)、オスカー・アレグリア (映画監督)、エリカ・バルサム(映画批評家)、ほか1名、アジア千波万波の審査員はリム・カーワイ(映画監督)ほか1名。
世界の「いま、ここ」を切り取った最先端の映像芸術を迫力ある大画面で体感できる場、ここでしか見られない貴重な映画を大勢の観客とともに楽しみ語り合う喜び、興奮と熱気あふれる会場が復活します。豊かな温泉や食べ物、自然の絶景に恵まれた秋の山形に、世界の最新の力作が揃います。皆さまぜひ足をお運びください!
公式HPより
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023
[日程]2023年10月5日[木]-12日[木]
[会場]山形市中央公民館、山形市民会館、フォーラム山形、やまがたクリエイティブシティセンターQ1 ほか
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[共催]山形市
[助成]文化庁文化芸術振興費補助金(映画祭支援事業)
[特別協力]国立映画アーカイブ
[協力]ユニフランス、アンスティチュ・フランセ日本、ゲーテ・インスティトゥート東京、経済産業省
プログラム
インターナショナル・コンペティション
世界各地より応募された中から15作品を上映。
アジア千波万波[New](約20作品予定)
アジアの新進ドキュメンタリー作家の作品を紹介。
特別招待作品[New]
ドキュメンタリー映画の巨匠監督の最新作等話題作を紹介するプログラム。
日本プログラム[New]
日本のドキュメンタリー作品の様々な試みを世界に向けて紹介するプログラム。
主に新しい作品で構成する。
野田真吉特集:モノと生の祝祭[New]
戦前より映画制作に関わり、数多くの創造運動に参加したドキュメンタリー映画作家であり、詩人でもある野田真吉。日本のドキュメンタリー映画史において重要な作品を生み出してきたにもかかわらず、これまで体系的に紹介されることがなかった野田の多岐にわたる活動を回顧する特集プログラム。没後30年の節目にあたる今年、映画作家の自由を求め続けた野田の軌跡をたどり、その創造活動の核心に迫る。
※フィルム作品中心の回顧上映。
野田真吉(1913-1993)について:1937年にP.C.L映画製作所に入社、戦後は東宝争議を闘ってフリーの映像作家となり、企業PR映画や教材映画、社会運動と連携するドキュメンタリー、実験映画、民俗神事芸能の記録などを手がけた。また、「記録映画作家協会」や「映像芸術の会」、「杉並シネクラブ」などの芸術・映画運動にも参加、「日本映像民俗学の会」の発起人でもある。
Double Shadows/二重の影 3[New]
YIDFFでは、映画についての映画、すなわち「映画史」や「映画」そのものを主題ないしは対象として制作された映画を2015年、2019年に特集した。3回目の今回も、映画史や映画制作の手法を批評的に捉え、その探究自体を作品にした国内外のドキュメンタリー作品を集め、プログラムを組む。
やまがたと映画[New]
山形という町を映画によって再発見するプログラム。ドキュメンタリー映画にとどまらず、山形に関連したさまざまな作
品を集め、上映する。 今年は昨年他界した故髙橋卓也理事の業績に関連した追悼上映を中心に行う。
ともにある Cinema with Us 2023[New]
今回で7回目となる、東日本大震災に端を発する作品を特集するプログラム。発災から10年を超え、震災についての記憶
も薄れつつある現在、伝聞でしか当時を知らない世代も増えてきた。そうしたなか、震災の記憶、そして現在とともにあるために、映画/映画祭はどのようなことが可能か。 新しい作品だけでなく、311ドキュメンタリーフィルムアーカイブなどこれまでの蓄積を踏まえながら特集する。
未来への映画便2[New]
主に高校生・大学生を対象とした、ドキュメンタリー作品を鑑賞し映画批評を体験するワークショップ型の映画教育プログラム。鑑賞を軸としながらも参加者自身が思考し、他者との関係や異なる文化や社会について理解を深める試み。
また国内外で行われている映画鑑賞教育の実施団体や専門家と議論や交流を行うワークショップも同時に行う。
街を見つめる人を見つめる――ユネスコ創造都市の世界
山形市および山形市創造都市推進協議会が主体となり、ユネスコ創造都市ネットワークに「映画」分野で認定されている各都市にて制作された優れた映画を紹介するプログラム。今年は公募で選ばれた6都市からの8作品と山形市制作作品5作品を上映し、それらの作品を通して各都市に暮らす人々の多様な生活や経験、街の独自性を共有する。
詳しくはこちら
ヤマガタ・ラフカット! ヤマガタ映画批評ワークショップ
「ヤマガタ・ラフカット!」では、撮影・編集途上にあるプロジェクトを公募、粗編集版の上映と公開対話を行い、より豊かな映画の誕生を模索する。
「ヤマガタ映画批評ワークショップ」は、公募によって選出された一般参加者がプロの批評家の添削を受けながら、映画祭上映作品についての「批評」を執筆し、発表するワークショップ企画。
*新・香味庵クラブ について
映画祭の夜の社交場、ゲストと観客、市民と映画関係者の出会いの場として、1993年の開始以来、世界中の映画人に愛された「香味庵クラブ」。その空間は残念ながら2020年の丸八やたら漬の廃業とともになくなってしまいましたが、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023では「新・香味庵クラブ」として場所を変え再始動。
新たな会場は山形七日町ワシントンホテル2階のレストラン 三十三間堂(山形市七日町1丁目4-31)です。
30年にわたり山形国際ドキュメンタリー映画祭を支えてくれた思いは受け継がれていきます。ぜひご注目ください。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023公式HP
https://www.yidff.jp/2023/2023.html
タイムテーブル
https://www.yidff.jp/2023/schedule/pdf/yidff2023timetable.pdf
イベント情報
https://www.yidff.jp/2023/info/23events.html
チケット情報
https://www.yidff.jp/2023/info/23tickets.html
問い合わせ
https://www.yidff.jp/contact.html
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021(6) 10月7日~10月14日『丸八やたら漬 Komian』『武漢、わたしはここにいる』『理大囲城』『異国での生活から』(暁)
シネマジャーナル本誌105号に掲載した記事を元に転載します。
2020年に始まった新型コロナウイルスの流行は2022年4月現在も続いていて、17回目の「2021山形国際ドキュメンタリー映画祭」は、史上初となるオンラインでの開催になった。この状況下、仕方ないとは思ったけど、オンラインが苦手な私は、ちゃんと観ることができるだろうかと心配だった。案の定、なかなかアクセスできず、やっと観ることができたのは最後の3日間だけ。ウインドウズ7でWiMAXーMAX使用の私は動画を観ることがなかなか難しかった(動画が止まってしまう)。3日間で10GBまでしか使えないので、結局、観ることができたのは4作品だけ。ほんとは、あと4本くらい観たかったけど、それでも初めてオンラインを使えたので満足。3日で10GBまでで観ることができるのは4作品くらいとわかったし、以後オンライン試写も使えるようになった。
もう一つ、映画祭にとって悲しい出来事が。映画祭期間中、映画関係者と映画ファンがボーダーレスに語り合える空間だった「香味庵」こと、老舗漬物店「丸八やたら漬」が新型コロナウイルスの影響で135年もの歴史に幕を閉じたこと。私は2015年から山形に通っているけど、夜遅くからの開店だったので1回も行ったことがない。毎回、次回こそと思っていたのに行けなかったので、2021年こそと思っていたら、まさかの閉店。その「丸八やたら漬」を描いたドキュメンタリー作品が上映されたのでこの作品から紹介します。
『丸八やたら漬 Komian』 やまがたと映画 日本 2021
監督:佐藤広一 プロデューサー:髙橋卓也
企画:里見優 ナレーション:田中麗奈
2020年春、山形市の老舗漬物店「丸八やたら漬」が惜しまれつつ閉店した。山形の台所ともいわれた漬物店で地域の食文化を担い、山形国際ドキュメンタリー映画祭では自由な交流空間として映画祭を支えた。親しまれてきたこの場所はなぜ消えていかざるを得なかったのか。
地域や映画祭に関わる人たちにいかに親しまれていたかを描いたドキュメンタリー。
山形市の旅篭町に根付いた蔵文化を受け継いだ建物は大正時代に建築され、国の登録有形文化財に指定されていた。また同店の蔵座敷は映画祭期間「香味庵クラブ」になり、立場や国籍を超えた交流拠点として世界中の映画関係者が集い、夜明け近くまで映画を語り合う映画祭のシンボル的なスポットとして国内外の多くの映画人から愛されていた。「香味庵で会いましょう」が映画祭に来た人の合言葉にもなっている。
新関芳則社長、地元民、映画祭スタッフ、香味庵に通う映画監督など関係者が思いを語る。生活の変化で漬物への需要が減り、コロナ禍でさらに追い打ちがかかった。大事なものがいつの間にか無くなってしまう移りゆく時代を描き、失われる悲しみや思い出を引き出す。
製作委員会の里見優会長は「地方の漬物店の廃業ということだけでなく、全国各地の街で起こり得る文化と歴史の消失だ。継承について考えるきっかけにしてほしい」と語る。
『武漢、わたしはここにいる』 特別招待作品
中国 2021 監督:蘭波(ラン・ボー)
新型コロナウイルスが世界的流行しているこの2年を象徴する作品として上映された。劇映画撮影のため武漢に入ったクルーは、突然の都市封鎖(ロックダウン)に遭遇し、目の前で起こる出来事を記録しようと、路上に出て撮影を始めた。
物資の配布に動くボランティア、検査のために行った病院の前で待たされる人たち。目まぐるしく変わる状況に翻弄される人たちが映し出される。高齢者世帯などへネットで集めた物資を無料配布するボランティアに一緒に携わり、車で街を走りながら密着取材。スマートフォンが位置情報の連絡、そして撮影と大活躍。物資の供給が足りない場合は、SNSで発信し、他の地域からの救援に結びつけた。
ロックダウンで、病院では非感染の病人が退院を余儀なくされるなか、クルーたちは何とか新しい入院先をと奔走する。彼らが一般市民と行動を共にしたのは、武漢で起きているすべてのことを撮るということだったのだが、いつのまにか市民に協力して活動を手伝っていた。
ボランティアたちの信頼を得て、クルーが撮影できない所では、誰かが撮影し、映像が記録として残った。監督が求めたのは公の映像には出てこない封鎖中の武漢の様子や、援助が必要な人にどう対処しているか、また市民ボランティアの活躍。新型コロナ発祥の地と言われている武漢での状況を伝える貴重な一本だった。
『理大囲城』 香港 2020
インターナショナル・コンペティション 大賞!
監督:香港ドキュメンタリー映画工作者
一国二制度が急速に揺らぐ香港。「犯罪容疑者を中国本土に引き渡せるようにする」という逃亡犯条例改正に反対する運動と香港当局との衝突が激化を極めた2019年11月、民主化を求めるデモ隊は重装備の警官隊よって包囲され、理工大学キャンパス内に、11日間に及ぶ籠城を余儀なくされた。それを内部から捉えた映像。
警棒でたたいたり、催涙弾や水を浴びせたり、粗暴な警官隊に力ずくでねじ伏せられる若者たちの憔悴や不安。どういう方法で突破するか、救援隊を待つのか。退路を絶たれた学生たちが日ごとに憔悴してゆく姿を克明に捉えている。
防護マスクやモザイク処理によって顔を隠された学生たちだが、不安や恐怖が伝わってくる。
監督たちも安全上身元を明かすことのできないので匿名である。身の安全を理由に監督が氏名を明かせないのは異例のこと。
私は劉徳華(アンディ・ラウ)の紅磡(ホンハム)コロシアムでのコンサートに行ったことがあり、理工大横の歩道橋を通って行ったので、理工大を見たことがある。その大学で起こったことなので観ていてとても心が重かった。私が通っていた歩道橋が何度も映し出されたし、紅磡コロシアムも映像の中に出てきた。
2017年山形で上映された『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』(陳梓桓チャン・ジーウン監督)から数年しかたっていないし、2015年製作の『十年』から10年たたずに香港の自治が踏みにじられてしまった。香港はどうなっていくのだろう。監督たちは「これからも撮影を継続し、アクションを起こし続ける」と語っている。その言葉は心強いけど、香港ではデモや、民主化を求める行動自体が制限され、その機会自体がなくなってしまうのではないかとも思う。東琢磨審査員長は「最も大事なことは、世界が彼らのことから目を離さずにいることだ」と述べている。
『異国での生活から』 アジア千波万波
台湾 2020 監督:曾文珍(ツォン・ウェンチェン)
過酷な労働や医療保障のない状態などから、雇用先を逃亡し、不法滞在で職業を転々として生活しているベトナム人出稼ぎ労働者たち。
台湾でも『海辺の彼女たち』(藤元明緒監督)と同じような状況があると知った。外国人が働く条件は日本とどう違うのかはわからないけど、やはり台湾でも3年間は働けるけど、それ以上の契約更新はなくて自動的に帰国しなければならないようだ。子供の成長を見守れないまま10年以上台湾に滞在した女性の、帰国を決断した姿にホロリとした。帰国した彼女の姿も映される。彼女の明るい笑顔がまぶしかった。
台湾で働く外国人労働者は2019年に71万人位。そのうち5万人が逃亡労働者とのこと。
宮崎 暁美
2020年に始まった新型コロナウイルスの流行は2022年4月現在も続いていて、17回目の「2021山形国際ドキュメンタリー映画祭」は、史上初となるオンラインでの開催になった。この状況下、仕方ないとは思ったけど、オンラインが苦手な私は、ちゃんと観ることができるだろうかと心配だった。案の定、なかなかアクセスできず、やっと観ることができたのは最後の3日間だけ。ウインドウズ7でWiMAXーMAX使用の私は動画を観ることがなかなか難しかった(動画が止まってしまう)。3日間で10GBまでしか使えないので、結局、観ることができたのは4作品だけ。ほんとは、あと4本くらい観たかったけど、それでも初めてオンラインを使えたので満足。3日で10GBまでで観ることができるのは4作品くらいとわかったし、以後オンライン試写も使えるようになった。
もう一つ、映画祭にとって悲しい出来事が。映画祭期間中、映画関係者と映画ファンがボーダーレスに語り合える空間だった「香味庵」こと、老舗漬物店「丸八やたら漬」が新型コロナウイルスの影響で135年もの歴史に幕を閉じたこと。私は2015年から山形に通っているけど、夜遅くからの開店だったので1回も行ったことがない。毎回、次回こそと思っていたのに行けなかったので、2021年こそと思っていたら、まさかの閉店。その「丸八やたら漬」を描いたドキュメンタリー作品が上映されたのでこの作品から紹介します。
『丸八やたら漬 Komian』 やまがたと映画 日本 2021
監督:佐藤広一 プロデューサー:髙橋卓也
企画:里見優 ナレーション:田中麗奈
2020年春、山形市の老舗漬物店「丸八やたら漬」が惜しまれつつ閉店した。山形の台所ともいわれた漬物店で地域の食文化を担い、山形国際ドキュメンタリー映画祭では自由な交流空間として映画祭を支えた。親しまれてきたこの場所はなぜ消えていかざるを得なかったのか。
地域や映画祭に関わる人たちにいかに親しまれていたかを描いたドキュメンタリー。
山形市の旅篭町に根付いた蔵文化を受け継いだ建物は大正時代に建築され、国の登録有形文化財に指定されていた。また同店の蔵座敷は映画祭期間「香味庵クラブ」になり、立場や国籍を超えた交流拠点として世界中の映画関係者が集い、夜明け近くまで映画を語り合う映画祭のシンボル的なスポットとして国内外の多くの映画人から愛されていた。「香味庵で会いましょう」が映画祭に来た人の合言葉にもなっている。
新関芳則社長、地元民、映画祭スタッフ、香味庵に通う映画監督など関係者が思いを語る。生活の変化で漬物への需要が減り、コロナ禍でさらに追い打ちがかかった。大事なものがいつの間にか無くなってしまう移りゆく時代を描き、失われる悲しみや思い出を引き出す。
製作委員会の里見優会長は「地方の漬物店の廃業ということだけでなく、全国各地の街で起こり得る文化と歴史の消失だ。継承について考えるきっかけにしてほしい」と語る。
『武漢、わたしはここにいる』 特別招待作品
中国 2021 監督:蘭波(ラン・ボー)
新型コロナウイルスが世界的流行しているこの2年を象徴する作品として上映された。劇映画撮影のため武漢に入ったクルーは、突然の都市封鎖(ロックダウン)に遭遇し、目の前で起こる出来事を記録しようと、路上に出て撮影を始めた。
物資の配布に動くボランティア、検査のために行った病院の前で待たされる人たち。目まぐるしく変わる状況に翻弄される人たちが映し出される。高齢者世帯などへネットで集めた物資を無料配布するボランティアに一緒に携わり、車で街を走りながら密着取材。スマートフォンが位置情報の連絡、そして撮影と大活躍。物資の供給が足りない場合は、SNSで発信し、他の地域からの救援に結びつけた。
ロックダウンで、病院では非感染の病人が退院を余儀なくされるなか、クルーたちは何とか新しい入院先をと奔走する。彼らが一般市民と行動を共にしたのは、武漢で起きているすべてのことを撮るということだったのだが、いつのまにか市民に協力して活動を手伝っていた。
ボランティアたちの信頼を得て、クルーが撮影できない所では、誰かが撮影し、映像が記録として残った。監督が求めたのは公の映像には出てこない封鎖中の武漢の様子や、援助が必要な人にどう対処しているか、また市民ボランティアの活躍。新型コロナ発祥の地と言われている武漢での状況を伝える貴重な一本だった。
『理大囲城』 香港 2020
インターナショナル・コンペティション 大賞!
監督:香港ドキュメンタリー映画工作者
一国二制度が急速に揺らぐ香港。「犯罪容疑者を中国本土に引き渡せるようにする」という逃亡犯条例改正に反対する運動と香港当局との衝突が激化を極めた2019年11月、民主化を求めるデモ隊は重装備の警官隊よって包囲され、理工大学キャンパス内に、11日間に及ぶ籠城を余儀なくされた。それを内部から捉えた映像。
警棒でたたいたり、催涙弾や水を浴びせたり、粗暴な警官隊に力ずくでねじ伏せられる若者たちの憔悴や不安。どういう方法で突破するか、救援隊を待つのか。退路を絶たれた学生たちが日ごとに憔悴してゆく姿を克明に捉えている。
防護マスクやモザイク処理によって顔を隠された学生たちだが、不安や恐怖が伝わってくる。
監督たちも安全上身元を明かすことのできないので匿名である。身の安全を理由に監督が氏名を明かせないのは異例のこと。
私は劉徳華(アンディ・ラウ)の紅磡(ホンハム)コロシアムでのコンサートに行ったことがあり、理工大横の歩道橋を通って行ったので、理工大を見たことがある。その大学で起こったことなので観ていてとても心が重かった。私が通っていた歩道橋が何度も映し出されたし、紅磡コロシアムも映像の中に出てきた。
2017年山形で上映された『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』(陳梓桓チャン・ジーウン監督)から数年しかたっていないし、2015年製作の『十年』から10年たたずに香港の自治が踏みにじられてしまった。香港はどうなっていくのだろう。監督たちは「これからも撮影を継続し、アクションを起こし続ける」と語っている。その言葉は心強いけど、香港ではデモや、民主化を求める行動自体が制限され、その機会自体がなくなってしまうのではないかとも思う。東琢磨審査員長は「最も大事なことは、世界が彼らのことから目を離さずにいることだ」と述べている。
『異国での生活から』 アジア千波万波
台湾 2020 監督:曾文珍(ツォン・ウェンチェン)
過酷な労働や医療保障のない状態などから、雇用先を逃亡し、不法滞在で職業を転々として生活しているベトナム人出稼ぎ労働者たち。
台湾でも『海辺の彼女たち』(藤元明緒監督)と同じような状況があると知った。外国人が働く条件は日本とどう違うのかはわからないけど、やはり台湾でも3年間は働けるけど、それ以上の契約更新はなくて自動的に帰国しなければならないようだ。子供の成長を見守れないまま10年以上台湾に滞在した女性の、帰国を決断した姿にホロリとした。帰国した彼女の姿も映される。彼女の明るい笑顔がまぶしかった。
台湾で働く外国人労働者は2019年に71万人位。そのうち5万人が逃亡労働者とのこと。
YIDFF 2021 ON SCREEN! 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 リバイバル上映
やまがた秋の芸術祭/YIDFF 2023 プレ・イベント
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭2021でオンライン配信された作品が、この度、初めて劇場で上映されます。
YIDFF 2021 ON SCREEN!
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 リバイバル上映
期間:2022年10月7日(金)~10日(月・祝)
会場:フォーラム山形 スクリーン3、5(山形市民会館 南隣)
主催:認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
後援:山形市
詳細:https://www.yidff.jp/2021/onscreen/21os.html
スケジュール
https://www.yidff.jp/2021/onscreen/21os22s.html
☆上映作品☆
◆YIDFF 2021:インターナショナル・コンペティション
光の消える前に
カマグロガ
最初の54年間 ― 軍事占領の簡易マニュアル
彼女の名前はエウローペーだった
理大囲城
ミゲルの戦争
ナイト・ショット
核家族
ヌード・アット・ハート
自画像:47KMのおとぎ話
私を見守って
発見の年
◆YIDFF 2021:アジア千波万波
午後の景色
蟻の蠢(うごめ)き
言語の向こうにあるもの
心の破片
駆け込み宿
エントロピー
怖れと愛の狭間で
炭鉱たそがれ
それは竜のお話
リトル・パレスティナ
異国での生活から
ルオルオの怖れ
メークアップ・アーティスト
東北おんばのうた ― つなみの浜辺で
沈黙の情景
夜明けに向かって
燃え上がる記者たち
◆YIDFF 2021:特別招待作品
武漢、わたしはここにいる
◆YIDFF 2021 特集プログラム:やまがたと映画
丸八やたら漬 Komian
◆YIDFF 2021 特集プログラム:未来への映画便 &プログラム関連作品
若き孤独
牛 ★上映後 ワークショップ開催
☆作品紹介について☆
昨年、Web版シネマジャーナルで紹介した作品については、リンクを貼りました。
なお、2022年4月発行のシネマジャーナル105号に、8ページにわたりYIDFF 2021の特集を組んでいます。
その一部をWebに掲載しました。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021(6) 10月7日~10月14日
『丸八やたら漬 Komian』『武漢、わたしはここにいる』『理大囲城』『異国での生活から』(暁)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/491583469.html
★未来への映画便 映画鑑賞ワークショップ
10月9日14:15からの『牛』上映後、高校生・大学生世代を対象とした映画鑑賞ワークショップを開催。
ファシリテーター
中村高寛(映画監督、東北芸術工科大学映像学科准教授)
土田環(「未来への映画便」コーディネーター、早稲田大学基幹理工学部表現工学科講師)
ワークショップ参加者は、『牛』の鑑賞、ワークショップともに無料で参加できます。
事前申し込み要領は、9月中旬発表予定。
ドキュメンタリー・ドリーム・ショーー山形in東京2022
新宿K's Cinema 11月5日(土)~18日(金)
アテネ・フランセ文化センター 11月19日(土)~26日(土)
http://www.yidff.jp/
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023(YIDFF 2023)
2023年10月.5日(木)~12日(木)
http://www.yidff.jp/
『リトル・パレスティナ』(山ドキ・小川紳介賞受賞作品)オンライン上映 監督講演会
2021年の山形国際ドキュメンタリー映画祭のアジア千波万波部門で上映され、小川紳介賞を受賞した『リトル・パレスティナ』の監督講演会付きのオンライン上映会が開催されます。参加無料、どなたでも参加できます。(要申し込み)
<オンライン上映会&監督講演会>
上映作品:『リトル・パレスティナ―包囲下の日々―』(Little Palestine, Diary of a Siege)、レバノン・フランス・カタール、89分、2021年
日時:2022年2月6日(日)
18:00~20:00 映画上映
20:00~21:00 アブドゥッラー・ハティーブ(Abdallah Al-Khatib)監督講演会(司会:山本薫 聞き手:岡崎弘樹 通訳:森晋太郎)
言語:アラビア語(字幕・通訳あり)
会場:オンライン
申し込み:https://forms.gle/4WAFg4uJ7jdKvgkY7
(視聴準備のため2月4日(金)24時に申し込みを締め切ります)
参加費:無料
*******
作品の詳細と、山ドキでのQ&Aの模様はこちらでご覧ください。
山形国際ドキュメンタリー映画祭 『リトル・パレスティナ』
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/483878449.html
シリア、ダマスカスにあるヤルムーク・パレスティナ難民キャンプ。
アブダッラー・アル=ハティーブ監督自身の出身地である、この難民キャンプが、アサド大統領により道路が封鎖され、インフラは止まり、食料にも事欠くようになった。
本作は、監督がそれまで縁のなかったカメラを廻し、封鎖下の難民キャンプの日常生活を2013年から2015年にわたって記録したもの。
<オンライン上映会&監督講演会>
上映作品:『リトル・パレスティナ―包囲下の日々―』(Little Palestine, Diary of a Siege)、レバノン・フランス・カタール、89分、2021年
日時:2022年2月6日(日)
18:00~20:00 映画上映
20:00~21:00 アブドゥッラー・ハティーブ(Abdallah Al-Khatib)監督講演会(司会:山本薫 聞き手:岡崎弘樹 通訳:森晋太郎)
言語:アラビア語(字幕・通訳あり)
会場:オンライン
申し込み:https://forms.gle/4WAFg4uJ7jdKvgkY7
(視聴準備のため2月4日(金)24時に申し込みを締め切ります)
参加費:無料
*******
作品の詳細と、山ドキでのQ&Aの模様はこちらでご覧ください。
山形国際ドキュメンタリー映画祭 『リトル・パレスティナ』
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/483878449.html
シリア、ダマスカスにあるヤルムーク・パレスティナ難民キャンプ。
アブダッラー・アル=ハティーブ監督自身の出身地である、この難民キャンプが、アサド大統領により道路が封鎖され、インフラは止まり、食料にも事欠くようになった。
本作は、監督がそれまで縁のなかったカメラを廻し、封鎖下の難民キャンプの日常生活を2013年から2015年にわたって記録したもの。