初めての山形国際ドキュメンタリー映画祭、中東・インド中心の鑑賞作品の覚書 (咲)

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恐らく1990年代から気になっていた山形国際ドキュメンタリー映画祭。
今回、念願叶って、初めて現地で参加しました。
25年程前に、確か神田の日本家屋の木の床に座って、イラン映画を鑑賞した後、大鍋の芋煮を囲んでの、山ドキ風の懇親会に参加したことがあって、いつか山形に行きたいと思っていました。

2013年の 「それぞれの「アラブの春」だったか、2015年の 「アラブをみる――ほどけゆく世界を生きるために」の特集があった時には、東京での記者会見に参加しました。
プログラム・コーディネーターの加藤初代さん(写真:右端)が、中東関係を担当されていて、2017年には 「政治と映画:パレスティナ・レバノン70s-80s」の特集。
それでも山形まで出向かなかったのは、9月中旬にアジアフォーカス福岡国際映画祭に毎年出かけていて、懐具合と、あまり親を一人に出来ないという事情でした。
翌年、「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー—山形in東京」で、気になる作品の多くが観られるという安心感があったからかもしれません。
それでも、2019年には、「リアリティとリアリズム:イラン60s-80s」の特集が組まれ、これは行かなくては!と、初めて予定を組んだのですが、台風に阻まれて、山形は夢と消えました。貴重なイラン革命前のイラン映画を観損ねてしまいました。今も台風が恨めしいです。
前回の2021年、コロナ禍でオープニングとクロージング以外は、オンラインでの開催でした。
たくさんの作品を観ることが出来ましたが、やっぱり山形で観たい!と思ったのでした。

そして、今年。
アジアフォーカス・福岡国際映画祭は、2020年の第30回で終了、父も昨年8月に旅立ってしまい、やっと山形に行くことができました。

日程を迷ったのですが、クロージングでハナ・マフマルバフの『リスト』が上映されるので、最終日までいることにして、5日のオープニングは諦め、6日に出発。
以下、鑑賞作品を含めた山ドキの覚書です。 気になる作品については、別に詳しく報告することにします。

10月6日(金)
東京8:56発の新幹線つばさ129号で、山形11:37着。 駅から徒歩3分程のホテルニュー最上屋に荷物を預けて、[アズ七日町4階]山形市中央公民館大会議室に設置された事務局にプレスパスを受け取りに。 ホテルから歩いて15分ほどでした。山形駅から七日町の中央公民館までは、結構遠いと聞いていたからか、案外、楽勝でした。雨だとバスに乗りたくなるかもですが、歩きで大丈夫そうと確信。

この日、1本目の上映会場は、「フォーラム山形」。 山形駅方面に戻る途中にあるのですが、初めての道はちょっと不安。 もう一つのメイン会場である市民会館を通り過ぎて、フォーラム山形へ。

13:30-14:39 フォーラム山形5 
◆『ホーム・ストーリー』   
監督:ニダール・アル・ディブス 
シリア、エジプト/2021/69分
ダマスカスの家で娘の成長を撮り続けていた記録が、内戦でエジプトからさらにノルウェーに逃れた監督一家の貴重な故郷の思い出に。 いつまでも落ち着かないシリアのことを憂いました。

17:40-20:00  中央公民館
◆『ホワット・アバウト・チャイナ?』 
監督:トリン・T・ミンハ
アメリカ、中国/2022/135分
ベトナム人である監督が、1993、94年に中国南東部で撮影した伝統建築の映像に、詩や歌、水墨画を重ね、自分史などを一人称の声で綴った抒情溢れる作品。
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最初に出てきた福建省の客家の円形土楼は、1993年に撮影したもので、私が訪ねたのが、それより少し前。懐かしい映像でした。会場でのQAのあと、さらに別の場所で続きのQA。監督に今はどうなっているか聞いたら、中国政府が綺麗に修復して、人を住まわせて観光地にしてるのだとか。ちょっと興ざめです。
別会場のQAで会った知人が、毎回、山ドキに来ていて、七日町ワシントンホテルでの新・香味庵クラブに連れていってくださいました。

10月7日(土)
土日は、ホテルニュー最上屋が満室で、すぐ近くの「おかざわ」に荷物を預けに。 ここは、名古屋のミッキーさんお気に入りの宿。

10:10-11:31  フォーラム山形3 
『確かめたい春の出会』
監督:タイムール・ブーロス
レバノン、ポルトガル、ハンガリー/2022/25分
リスボンで暮らすレバノン人の監督。レバノンにいる父が癌に罹り、ベイルートで手に入らないという薬を探す・・・ 離れた穏やかな町で、故郷を思う気持ちが静かに伝わってくる作品でした。

『ベイルートの失われた心と夢』
監督:マーヤ・アブドゥル=マラク
フランス/2023/36分
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ベイルートで暮らす3人の人たちの夢。2020年8月4日のベイルート港爆発事故の衝撃が皆の心に深く宿る。監督にとっても忘れられない悪夢。

13:00-13:44 山形クリエィティブシティセンター
風景x映画 映像で山形ルネッサンス
『山形×和菓子 ~未来を彩る伝統文化~』

制作:BAQSAN株式会社
日本/2022/27分
ふうき豆、板かりんとう、練り切り、のし梅・・・ 山形の伝統ある和菓子の数々。新しい形で発展を遂げている姿も。

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『鍛 ―刀匠 上林恒平の道―』 
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監督:長岡宏昭
日本/2023/12分
山形でただ一人の刀鍛冶・上林恒平氏の日本刀作りに挑戦し続ける姿に迫った作品。

実は、上林恒平氏の奥さまである恵美子さんとは、20代の頃に角館のユースホステルで知り合った仲。会場は、元小学校。恵美ちゃんから定員30名なので、早めに行ったほうがいいといわれ12時過ぎに到着。12時半には、すでに15人ほどが並び、椅子を会場いっぱいに入れて50席にするも、入れなかった人が続出。シネジャの千絵さんも入れずでした。

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15時から、クリエィティブシティセンターの上映会場で、「日本酒&和菓子 おふるまい」が行われました。美しい練り切りと日本酒、意外と合う組み合わせ♪
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16:30-19:59  市民会館 大ホール
『不安定な対象 2』 
監督:ダニエル・アイゼンバーグ
アメリカ/2022/204分
ドイツ、フランス、トルコの工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。 もともと、19:10からの映画を観るために途中で出る予定だったのですが、3か国の工場を順に映しだすものとわかり、一番観たいトルコの部分は観れないことが判明。淡々とした映像にも、ちょっと耐えられなくて、10分程で退出。名古屋のミッキーさんは、最前列でかぶりつき。一睡もせずに見守ったとのこと。

17:40-18:54  フォーラム山形3
『わが理想の国』
監督:ノウシーン・ハーン
インド/2023/74分
2019年に可決されたインド市民権改正法に基づく国民登録簿からイスラム教徒が外されたことに抗議する女性たち。監督はムスリマである自身のアイデンティティも見つめなおす。

9日に観る予定だったのですが、『不安定な対象 2』を退出したので、急きょ観ることに。
力強い作品で、監督のQ&Aを聴きたかったのですが、次のお目当ての上映が始まるので諦めました。

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市民賞を受賞! 10月11日、表彰式が終わった直後に、大きなこけしを抱えたノウシーン・ハーン監督とお話することができました。
「着ているサリーの色も、抗議を込めた色なのよ」と。


19:10-20:32 市民会館 小ホール
『これからご覧いただく作品は』
監督:マキシム・マルティノ 
フランス/2023/11分
映画の冒頭で掲げられる断り書きを次々に映し出した作品。この冒頭のひとことで、その映画への期待が高まることもありますよね。でも、本作に集められた前置きは、脅しに近いものもあって、身構えてしまうようなものが多かったように思います。だからこそ、本編が観たくなる??

『イーストウッド』
監督:アリーレザー・ラスーリーネジャード
イラン/2021/71分
古い新聞に大きく掲載されたクリント・イーストウッドがケルマーン州のシールジャンを訪れたという写真に触発され、シールジャンに赴く監督。こんな沙漠の町をイーストウッドが訪れた?? ヘルメットを被った監督が、真相を探る・・・
今回の山形で上映された唯一のイラン映画。イランっぽくて笑えました。字幕を担当したのが、大学後輩の山本久美子さん。彼女のまわりのイランを知らない人からは、今ヒトツな評判だったらしいです。いや~面白かったです。 タイトルから、イラン映画とは気がつかなかった人もいるようで残念!


10月8日(日)
10:10-11:13  フォーラム山形3
『壊された囁き』
監督:アミール・マスウード・ソヘイリー、アミール・アーサール・ソヘイリー
シリア、イラン/2023/63分
シリア内戦で荒れたムハルデの町で、爆撃で壊れた楽器を修理する画家の老人。彼の生徒たちが弾き手を探して町を歩く。
上映後、アミール・アーサール・ソヘイリー監督が登壇。映画はアラビア語でしたが、Q&Aは、ペルシア語で行われました。
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Q&Aが終わって、監督に声をかけ、「映画の中でしばしば出てきた古代からシリアの人たちの心の支えになってきたバール神は、イラン人にとってのゾロアスター教のアフラマズダのようなもの?」と伺ったら、まさにそうと。イスラームが入ってくる前からの伝統は、シリアでも根強いことを知りました。

12:30-14:10  フォーラム山形5
『石が語るまで』
監督:キム・ギョンマン
韓国/2022/100分
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1948年、済州島4・3事件で無実の罪で投獄された女性たちが、70年の時を経て、当時の凄惨な経験を語る。
上映後のQ&Aで、全編、済州の自然と共に証言のみが綴られ、当時の写真や記事を使わなかったことを問われ、「写真や記事を使うとそれが真実であると捉えられるので、自然に事件に接するような形をとりました」と監督。70年もの間、口にすることも出来なかった彼女たちの深い苦しみに涙。

14:50-16:23  フォーラム山形3
『ルオルオの青春』
監督:洛洛(ルオルオ)
中国/2023/93分
父や孫の世話をしながら、10代の頃の日記を捲り語るルオルオ。毛沢東の肖像画が表紙のぼろぼろになった日記。びっしりと綴られた綺麗な文字。文革の頃の様子が伝わってきて興味津々。
一方、コロナ禍で、ルオルオは中国全土の仲間たちとオンラインで繋がっている。


17:20-18:25 フォーラム山形3 
『ナイト・ウォーク』
監督:ソン・グヨン
韓国/2023/65分
山際の静かな夜の住宅街。月明りの町の風景に、イラストと詩が重なる。音がまったくない静寂に包まれた作品。
お腹が空いていたのと、次に観る予定の『列車が消えた日』を疲れた時に観ない方がいいと聞いていたので、静寂に耐え切れず、10分で退出。(忍耐強くないのです・・・)

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月カフェという素敵なお店を見つけ、美味しい食事で生き返りました。

19:30-20:43  フォーラム山形3 
『列車が消えた日』
監督:沈蕊蘭(シェン・ルイラン)
中国、シンガポール/2022/73分
列車乗務員の仕事を辞め、僧侶になると決めた男が列車に乗って向かった先は・・・
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列車が出てきたのは最後のほう。むしろチベット仏教のお寺などが出てきて、シンガポールの映画と勘違いしていたのですが、舞台は中国。タイトルから思い描いていたものと全く違いました。
上映後のQ&Aでは、4人中3人が中国語で質問。中国の人たちにとって、注目の作品だったようです。

10月9日(月)
再び、ホテルニュー最上屋へ。
ミッキーさんと千絵さんと、昨日見つけた月カフェでモーニング。暁美さんは起きられず・・・でした。
3人で、この日何を観るか相談。できるだけ違う作品を観て紹介したいという次第。

私は午前中観る予定だった『わが理想の国』を7日に観てしまったので、『三人の女たち』を観ようかなと思っていたのですが、千絵さんが観るというので、『キムズ・ビデオ』を観ることに。

10:00-11:28市民会館 小ホール
『キムズ・ビデオ』
監督:デイヴィッド・レッドモン、アシュレイ・セイビン
アメリカ/2022/88分
かつてニューヨークにあった韓国移民のキム・・ヨンマンが経営するビデオ・レンタル店。2008年、時代の趨勢から店を閉めることにしたキム氏。55,000本もの貴重なコレクションを、入札結果、イタリアのシチリア島サレミという小さな村に譲る。観光活性化で映画祭も開くと言っていたが、監督たちが現地に行ってみると、当時の市長は国政に転出し、ビデオは環境の悪いところに放置されていた・・・
滅法、面白い作品で、拾い物でした。

12:50から韓国の『私はトンボ』を観るつもりでいたのですが、気が変わってミャンマーの作品を観ることに。
12:20-13:31 フォーラム山形5
『負け戦でも』 
監督:匿名 
ミャンマー/2023/23分
生まれ育った町、ヤンゴン。2021年2月。すべての自由がなくなった。軍が権力を握り、未来も奪われた・・・

『鳥が飛び立つとき』
監督:匿名
ミャンマー/2021/28分
軍事クーデーターの起こる前日、自分の未来が変わることも知らずにはしゃぐ姿が映し出される。
そして,一変。長編映画を撮る予定だったが、今の状況を世界に発信したいと、ありのままの自分たちを映し出す。いつか軽やかに飛び立てるようにと願って。

15:10-16:40 フォーラム山形3 
『またたく光』
監督:アヌパマ・スリーニヴァサン、アニルバン・ダッタ
インド/2023/90分
ミャンマー国境に近いナガのトラ村。バプテスト派のキリスト教徒の多い村だ。ようやく電気が引かれると知り、監督二人は何度も村を訪れるが、今年のクリスマスにも間に合いそうにない・・・
政治的辺境の地に、電気は人々の生活や人生に何をもたらすのか。
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ベンガル出身のアニルバン・ダッタ監督と、タミル出身のアヌパマ・スリーニヴァサン監督。
二人の共通語はヒンディー語と英語。

17:00-18:43 市民会館 大ホール
『東部戦線』
監督:ヴィタリー・マンスキー、イェウヘン・ティタレンコ
ラトビア、ウクライナ、チェコ、アメリカ/2023/98分
監督の一人イェウヘン・ティタレンコは、ウクライナ東部戦線に救護隊員として赴く。激しい戦闘の合間に、くつろいで語らう兵士たち。時にジョークも飛ぶ。

『またたく光』の監督お二人とロビーで話していたため、15分遅れで入場。見始めた時の映像は、湖のそばで寝そべっておしゃべりする兵士たちの姿でした。 その後に展開する身体も吹っ飛ぶ戦闘シーン。現実を突きつけられました。上映後、ロビーでQ&Aが行われました。席が足りず、立っている人も大勢いましたが、皆、立ち去らず熱心に監督の話に聞き入りました。
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合間合間に、仲間たちとくつろぐ姿を映したのは、ロシアと戦っているのは、ウクライナの普通の人たちであることを見せたかったからと語っていたのが印象に残りました。
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19:50-20:28 市民会館 大ホール
『言葉の力』
監督:ジャン=リュック・ゴダール
フランス/1988/25分
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に書かれる不倫と殺人をめぐる会話を、電話越しに口するひと組の男女。そしてもうひと組の男女が、ボードレールによって仏訳されたことでも名高いエドガー・アラン・ポーの『言葉の力』を、台詞にして対話する・・・
二つの物語を交互に行ったり来たり見せる手法。ただただクラクラ。

『火の娘たち』 
監督:ペドロ・コスタ
ポルトガル/2023/8分
カーボ・ヴェルデのフォゴ火山噴火で離散した3人の若い姉妹。3人それぞれが歌い憂う姿が横長にワイドに並ぶ画面が、一転してスタンダードサイズに変わり、噴火で被災した家から人々が飛び出してくる姿を映し出します。一瞬にして変わる画面に、いったいこれは?と驚かされました。

ペドロ・コスタ監督の意向で、『言葉の力』『火の娘たち』の順で上映され、上映後には、クリス・フジワラさんの解説。通訳は藤原敏史さん。 解説は高尚過ぎて、私にはとてもついていけませんでしたが、『火の娘たち』は驚きの映像で、観ることができたのを幸せに思いました。
(*今年の東京フィルメックスでも上映されます。)


10月10日(火)
10:10-13:19 中央公民館
『紫の家の物語』
監督:アッバース・ファーディル  
レバノン、イラク、フランス/2022/184分

レバノン南部の緑豊かな丘の上にある淡い紫色の家。監督と、画家の妻がここで暮らしたコロナ禍の2年間を。3部構成で静かに映し出した作品。リビングに置かれたパソコンの画面には、小津安二郎やタルコフスキーなどの映画が静かに流れていると思ったら、2020年に起きた港湾の大爆発事故、反政府デモ、さらにウクライナ戦争のニュース映像も映し出されます。
キリスト教の教会とモスクが並んで立ち、村の誰かが亡くなると、拡声器でアナウンスされます。奥さまが移民の子供たちに絵を教えていて、多様な人々が共生していることが伺われます。
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アッバース・ファーディル監督はイラクのバビロン生まれで、フランスで映画を学んだ方。会場でのQ&Aのあと、4階で続きのQ&Aが行われました。移動中に、監督にアラビア語で挨拶したら、とても喜んでくださいました。もっとも挨拶以上には話は続かず・・・なのですが。 笑顔が素敵で、とても穏やかな方でした。

14:45-16:25 中央公民館
『何も知らない夜』
監督:パヤル・カパーリヤー
インド、フランス/2021/100分

公立大学の学生寮の片隅で、映画を学ぶ学生のL(エル)が恋人へあてた手紙が見つかった。Lの恋愛はカースト制に阻まれたことが綴られていた。映画は、さらに2016年に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件を映し出す・・・

モノクロームの映像に、手紙を朗読する女性の静かな声が重なり、今の政権下で暮らす低カーストの人たちの息苦しさを感じました。『わが理想の国』では、ヒンドゥー至上主義の政権下で差別されるイスラーム教徒の憤りが描かれていましたが、ヒンドゥー至上主義とは、すなわち、カースト制度もきっちり守ることなのだと気づきました。ヒンドゥー教徒であっても、低カーストや、カースト外のダリットにとっては、差別的な暮らしを強いられるということなのだと。モディ政権はいつまで続くのでしょう・・・

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この日の夕食は、山形の友人たちと、郷土料理の美味しいお店でいただきました。これは、ほんの序の口。


10月11日(水) 
17:00からのクロージングまで時間があるので、仙台の友人が車で湯殿山や月山の麓に連れていってくださいました。私のために榎木孝明さんが出演した映画『いしゃ先生』のロケ地にも案内してくれました。こちらは別に報告します。
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17:00~ 中央公民館 
表彰式
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表彰式の模様はこちらでご覧ください!
女性監督が圧倒的に多かったです。

引き続き、クロージング上映
『リスト』
監督:ハナ・マフマルバフ
イギリス/2023/65分

2021年8月、アフガニスタンでタリバンが突如復権。身の危険に晒された多くの芸術家、映画人たちを出国させようと奮闘するモフセン・マフマルバフ監督とその一家。ロンドンの自宅から電話とパソコンを駆使して奔走する。脱出させるべき文化人たちの「リスト」を壁に張り出すが、脱出用の飛行機に乗せられる人数には限りがある。さらに絞り込んだリストを出してほしいといわれる・・・

マフマルバフ一家も、イランからパリを経てロンドンに逃れている身。必死になって、国外脱出を手助けしようとする一家の姿を、末娘ハナが映し出しています。「おじいちゃん、おばあちゃん」のまわりをうろつく幼い子どもたちは、サミラの子でしょうか?  ハナの兄メイサムも、おじさんになったなぁ~と、マフマルバフ一家の今に感慨深いものがありました。

この日の夜は、中央公民館近くの七日町ワシントンホテル泊。


10月12日(木) 
受賞作品の上映日。昨日の表彰式の前に、もしかして観ていない作品が受賞するかも・・・と、山形19:31発のつばさのチケットを購入。 観ていなくて、観たい作品が午前中と夕方にあって、合間に山形の街歩きを楽しむことができました。 

10:10-11:54  中央公民館
『ある映画のための覚書』
監督:イグナシオ・アグエロ
チリ、フランス/2022/104分
19世紀、先住民族マプチェの土地アラウカニアが、チリに占領される。鉄道が敷設されることになり、技師としてギュスターヴ・ヴェルニオリーがベルギーから赴任した。監督は、彼の日記を基に俳優を配して足跡を辿り、往時の冒険を回想する。

植民地化により踏みにじられていくマプチェ族のコミュニティ。こうした横暴が世界各地で起こってきたことに思いがよぎりました。


16:55-18:00  中央公民館
『訪問、秘密の庭』
監督:イレーネ・M・ボレゴ
スペイン、ポルトガル/2022/65分
スペイン有数の画家のひとりであったイサベル・サンタロは、1980年代以降、芸術の表舞台から姿を消した。彼女の姪である監督は、現在では家族との付き合いも断ち隠遁生活を送る彼女の住まいを訪ねる・・・

猫と暮らす白髪の年老いた女性。アトリエのドアを閉ざし、彼女の作品を見せてはくれないのです。前衛芸術だったらしく、頑固そうな風貌から、さて、どんな作風だったのだろうと思い巡らしました。
ずっと無言の彼女を映していたのですが、語り始めた声がドスがきいて、迫力がありました。人を寄せ付けない頑固さも感じました。過去にどんな経験をしたのだろうとも想像しました。
山ドキ最後に、壮絶なものを観たという思いです。

ゆっくりどこかで夕食をいただきたいところでしたが、追加のお土産を物色しているうちに時間切れ。19:31発のつばさで帰宅。
7日間の滞在で、短編も含めて、25本鑑賞。充実の山形でした。

景山咲子



★Facebook写真集: 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.824748419652745&type=3


山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 表彰式

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10月5日に開幕した山形国際ドキュメンタリー映画祭2023。
10月11日、山形市中央公民館ホールで表彰式が行われました。

受賞作品一覧 http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/501071418.html

受賞作品の発表順に、表彰式の模様をお届けします。

●日本監督協会賞
審査員:足立正生(審査員長)、竹林紀雄、水谷俊之

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足立正生審査員長

今年のYIDFFは例年にましてドキュメンタリーの新たなあり方を追及し実験した作品が数多く見られました。そんな中、私たちが日本映画監督協会賞として選んだのは、台湾のシャオ・メイリン監督の『平行世界』です。独創と普通、自立と庇護という答えの出ない葛藤と12年に渡り格闘し続けた母子の姿や様々な表現へのトライは、ドキュメンタリー映画に新たな可能性をもたらしたと思います。(公式サイトより)

『平行世界』台湾/2022/177分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t14
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監督:蕭美玲(シャオ・メイリン)
受賞の言葉:2001年に初めて山形に来て、また戻ってくると願ったことが成就した上に受賞。何も言葉を準備していませんでした。2001年に山形での観客の皆さんからいただいた励ましが、12年かけてのこの作品の原動力になりました。


◎各賞発表の前に、こけしのトロフィーを作られた山形のこけし工人 梅木直美さんの紹介がありました。

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手にされている大きなこけしトロフィーは、市民賞のもの。
アジア千波万波の各賞のこけしは、少し小さなサイズです。

●市民賞
『我が理想の国』
インド/2023/74分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t8

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監督:ノウシーン・ハーン
受賞の言葉:このこけしが欲しかったので、ほんとに嬉しいです。山形には、いつか来たいと思っていました。ほんとに意義深い時間を過ごすことができました。

●アジア千波万波
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審査員:陳凱欣(タン・カイシン)、リム・カーワイ(映画監督)


*奨励賞 2作品

『列車が消えた日』
中国、シンガポール/2022/73分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t18

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監督:沈蕊蘭(シェン・ルイラン)
受賞の言葉:賞をいただけるとは全く思ってもいませんでした。会期中、多くの優れた作品を観て、ドキュメンタリーの力を感じました。さらに頑張っていきたいと思います。


『ベイルートの失われた心と夢』
フランス/2023/36分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t10

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監督:マーヤ・アブドゥル=マラク
受賞の言葉:大変光栄です。遠い縁のない世界の話に感動していただきありがとうございます。パレスチナのガザの皆さんに思いを寄せたいと思います。私の映画は故郷ベイルートだけでなく、パレスチナの人々にも向けたものです。何十年にもわたって従属的な支配を受けてきた人たち、亡き人たちに囲まれながら闘い続けている人たちです。


*小川紳介賞
『負け戦でも』監督:匿名/ミャンマー/2023/23分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t9

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来日出来なかった監督からのメッセージが読み上げられました。
「上映する機会をいただいた上に賞をいただき感謝しています。危険を承知で協力してくれた人たちにも感謝します。今でも、日に日に状況は悪化しています。若者の声、心の痛みに共感していただきありがとうございます」
匿名監督の皆さんに大きな拍手が贈られました。

総評;リム・カーワイ(映画監督)、陳凱欣(タン・カイシン)
昨夜は結果を決めるまで、コーヒーを飲みながら、8時間以上語り合いました。私たちの責任は軽くないですし、監督たちにとって賞を得ることがどれほど彼らのキャリアや人生を左右するものであるかがよくわかるからです。
さまざまなイデオロギーが対立し、AIの襲来やフェイクニュースなどがあふれるこの時代、私たちが映画の作り手に求めたいのはさらに先へと進むこと、ドキュメンタリーという形式のもつ可能性を本当の意味で押し広げることです。映画の作り手がよりいっそう大胆になって形式上の、また創作上のリスクをとることを求めたい。私たちはわずかな賞を与えることしかできませんが、誰もが戦士であり勝者であることに変わりはありません。(公式サイトより抜粋して引用)


●インターナショナル・コンペティション

*審査員特別賞
『ニッツ・アイランド』
フランス/2023/98分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t7
監督:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク

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受賞の言葉:(ギレム・コース監督)共同監督のほかの二人の心も、ここに一緒にいます。とてもいい時間を過ごし、美味しいものを食べることができました。スタッフ、ボランティアの皆さんに感謝します。僕がビデオゲームの世界に入ったのは、日本文化のお陰です。初めて日本に来られて、心が大きく震えています。ありがとうございました。


*優秀賞 2作品
『ある映画のための覚書』
チリ、フランス/2022/104分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t9

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提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

監督:イグナシオ・アグエロ
監督はすでに帰国しメッセージが読み上げられました。
「私の映画を選んでいただき、ありがとうございます。これを励みに作り続けて、必ず山形に戻ってきます。観客の皆さんにも「観る」という大切な役割を果たしていただきまして、ありがとうございます。この場にいられたら、どんなに楽しいことでしょう」


『自画像:47KM 2020』
中国/2023/190分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t10

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監督:章梦奇(ジャン・モンチー)
受賞の言葉:今日は水曜日で、共同体の集まりのある日です。与えられた栄誉は共同体皆に与えられたものだと思います。故郷の村に帰って、こけしを飾って、村の人たちに映画監督であることを示したいと思います。


*山形市長賞(最優秀賞)
『訪問、秘密の庭』
スペイン、ポルトガル/2022/65分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t14

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監督:イレーネ・M・ボレゴ
受賞の言葉:言葉がありません。山ドキのことは長年聞き及んでいました。ヒーローともいえる監督たちが上映する場です。1週間体験して、終わりが近づいているのが悲しいです。素晴らしい映画をたくさん観られた上に、私の上映の時の観客とのやりとりは心に残るものでした。作品のために心を注いでてくれたイザベルに感謝します。審査員と市長さんにも感謝します。

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山形市長 佐藤孝弘氏とイレーネ・M・ボレゴ監督


*ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
『何も知らない夜』
インド、フランス/2021/100分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t8

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提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

監督:パヤル・カパーリヤー
監督は来日できずメッセージが読み上げられました。
「受賞の知らせに感謝しています。2016年に撮影を始めた時、何が起こるかわかりませんでした。自分たちが経験した時間を記録することだと思い、カメラを向けました」

審査員:
写真左からエリカ・バルサム、オスカー・アレグリア、ヤンヨンヒ(審査員長)、張律(チャン・リュル)、陳界仁(チェン・ジエレン)
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総評  
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審査員長:ヤンヨンヒ
「ドキュメンタリーとはなにか? インターナショナル・コンペティションの15本の映画の一本一本が、この不可能な問いにそれぞれの答えを提案している。私たちが見た映画群は広大な幅を持ったスタイルとアプローチの道を切り開き、今日の非フィクション映画の多様性と生命力の幅広いサンプルを見せてくれた。コンピューター生成アニメーションの人工性や再現映像から忍耐強い観察に生々しい身体装着カメラの映像まで、親密で個人的な一人称映画からアーカイヴ映像と共謀したエッセイ的試みまで、これらの映画群は対象の要求に対して様々なフォルムを発明している。そのそれぞれに独自の大胆さと創造性が明らかであり、不確実性と危機だけでなく、美しさと友愛によっても特徴付けられるべき現代の世界と格闘するために、しばしば表象し表現することの行為そのものをも問う。私たち審査員はそこに感嘆し議論すべき多くのことを見出したが、そこでは私たちの素晴らしい通訳のみなさんのかけがえのない援助を忘れてはならないだろう。このように力強く多様な作品群にどっぷり浸かった数日を過ごすことができたのは私たちの特権であった。今日、「現実(リアリティ)」という概念そのものは危機にあるのかも知れないが、このインターナショナル・コンペティションが示しているように、ドキュメンタリーも同じだということはまったくない。(公式サイトより)

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受賞者の皆さん 圧倒的に女性が多かったです。

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「4年ぶりの対面の映画祭、楽しめましたか? 我々スタッフも頑張りました。2025年、またここで会いましょう。香味庵で会いましょう」と閉会宣言。


写真:宮崎暁美  文:景山咲子



★山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 表彰式写真集
ここに掲載できなかった写真も含めてfacebookのアルバムに収めています。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.824763569651230&type=3


山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 受賞作品

10月5日に開幕した山形国際ドキュメンタリー映画祭2023。
10月11日.表彰式が行われ、 受賞作品が発表されました。
1
0月12日には、受賞作品の上映が行われます。
上映スケジュールは、こちらで!
https://www.yidff.jp/2023/schedule/23s12.html



●インターナショナル・コンペティション

審査員:
ヤンヨンヒ(審査員長)、オスカー・アレグリア、エリカ・バルサム、陳界仁(チェン・ジエレン)、張律(チャン・リュル)

・ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
『何も知らない夜』監督:パヤル・カパーリヤー/インド、フランス/2021/100分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t8

・山形市長賞(最優秀賞)
『訪問、秘密の庭』監督:イレーネ・M・ボレゴ/スペイン、ポルトガル/2022/65分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t14

・優秀賞
『自画像:47KM 2020』監督:章梦奇(ジャン・モンチー)/中国/2023/190分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t10

『ある映画のための覚書』監督:イグナシオ・アグエロ/チリ、フランス/2022/104分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t9


‥審査員特別賞
『ニッツ・アイランド』監督:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク/フランス/2023/98分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p1.html#t7


●アジア千波万波

審査員:
リム・カーワイ(映画監督)、陳凱欣(タン・カイシン)

・小川紳介賞
『負け戦でも』監督:匿名/ミャンマー/2023/23分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t9

・奨励賞
『ベイルートの失われた心と夢』監督:マーヤ・アブドゥル=マラク/フランス/2023/36分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t10

『列車が消えた日』監督:沈蕊蘭(シェン・ルイラン)/中国、シンガポール/2022/73分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t18

●市民賞
『我が理想の国』監督:ノウシーン・ハーン/インド/2023/74分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t8

●日本監督協会賞
『平行世界』監督:蕭美玲(シャオ・メイリン)/台湾/2022/177分
https://www.yidff.jp/2023/program/23p2.html#t14

山形国際ドキュメンタリー映画祭2023  中東・インドの映画 (咲)

いよいよ10月5日から開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭2023。
中東、アフリカ、インドに関連する映画を私の備忘録として集めました。

公式サイト:https://www.yidff.jp/2023/2023.html

★印 監督登壇予定

◆インターナショナル・コンペティション

交差する声  Crossing Voices
監督:ラファエル・グリゼー、ブーバ・トゥーレ
フランス、ドイツ、マリ/2022/123分
西アフリカ・マリの人々と大地が経験してきた近現代史を見つめる、一当事者による力強い記録。
10月7日(土)10:10-12:18 中央公民館
10月8日(日)15:40-17:48 市民会館大ホール

何も知らない夜  A Night of Knowing Nothing
監督:パヤル・カパーリヤー
インド、フランス/2021/100分
恋愛の破局の背後にあるカースト制、2016年の政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件。
10月6日(金)19:10-20:50 市民会館大ホール
10月10日(火)14:45-16:25 中央公民館

紫の家の物語  Tales of the Purple House
監督:アッバース・ファーディル
レバノン、イラク、フランス/2022/184分
映画作家と、画家であるその妻が、コロナ禍の二年間をレバノン南部にある紫の家で暮らした記録。
10月6日(金)10:15-13:19 市民会館大ホール ★
10月10日(火)10:10-13:19 中央公民館 ★


不安定な対象 2  The Unstable Object II
監督:ダニエル・アイゼンバーグ
アメリカ/2022/204分
ドイツにあるオットーボック社の義肢製造工場、南フランスにある高級革手袋縫製アトリエ、トルコにあるレアルコム社のジーンズ工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。
10月6日(金)10:10-13:39 中央公民館 ★
10月7日(土)16:30-19:59 市民会館大ホール ★


◆アジア千波万波

壊された囁き Broken Whispers
監督:アミール・マスウード・ソヘイリー、アミール・アーサール・ソヘイリー 
シリア、イラン/2023/63分
創作に疲れた画家の老人は瓦礫から壊れた楽器を見つけ修理する。
10月8日(日)10:109-11:13 フォーラム山形3★
10月7日(土)16:40-17:43 フォーラム山形5 ★


確かめたい春の出会い Encounters on an Uncertain Spring
監督:タイムール・ブーロス
レバノン、ポルトガル、ハンガリー/2022/25分
リスボンで父の薬を探すレバノン人の監督が、中古のビデオカメラを手に入れ、徒然なる旅路で出会う人々、言葉、 哲学。

ベイルートの失われた心と夢 A Lost Heart and Other Dreams of Beirut
監督:マーヤ・アブドゥル=マラク
フランス/2023/36分
平穏な街、海岸、廃墟、通りのあちらこちらに、死者の思念が宿る、ベイルートの日常。

『確かめたい春の出会い』『ベイルートの失われた心と夢』2本同時上映
10月7日(土)10:10-11:31 フォーラム山形3 ★
10月9日(月)14:30-15:51 フォーラム山形5 ★


ホーム・ストーリー Homemade Stories
監督:ニダール・アル・ディブス
シリア、エジプト/2021/69分
住人の帰りを待つダマスカスの我が家、そして、カイロの廃墟となった映画館の物語。
10月6日(金)13:30-14:39 フォーラム山形5 ★
10月7日(土)20:00-21:09 フォーラム山形3 ★


またたく光 Flickering Lights
監督:アヌパマ・スリーニヴァサン、アニルバン・ダッタ
インド/2023/90分
10月8日(日)17:30-19:00 フォーラム山形5 ★
10月9日(月)15:10-18:40 フォーラム山形3 ★

我が理想の国 Land of My Dreams
監督::ノウシーン・ハーン
インド/2023/74分
イスラム教徒を迫害するインド市民権改正法(CAA)への抗議デモ。監督はムスリム女性としての自身のアイデンティティを見つめる。
10月7日(土)17:40-18:54 フォーラム山形3 ★
10月9日(月)10:00-11:14 フォーラム山形5 ★


◆二重の影 3:映画を運ぶ人々

快楽機械の設計図ブルー プリント
監督:アミット・ダッタ/インド/2023/10分
10月6日(金)17:10-18:38 市民会館 小ホール

イーストウッド
監督:アリーレザー・ラスーリーネジャード/イラン/2021/71分
10月7日(土)19:10-20:32
*『これからご覧になる映画は』監督:マキシム・マルティノ/フランス/2023/11分と同時上映


◆特別招待作品
リスト *クロージング上映作品
監督:ハナ・マフマルバフ/イギリス/2023/65分
10月11日(水)17:00~ 表彰式 山形市中央公民館ホール(6F)
*入場無料





山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年 『燃え上がる記者たち』(インド) Q&A (咲)

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年のアジア千波万波部門で、『燃え上がる記者たち』のタイトルで上映され、市民賞を受賞した作品。
この度、2023年9月16日より、『燃え上がる女性記者たち』のタイトルで公開されることになりました。 2年前の上映後のオンラインQ&Aをお届けします。


『燃え上がる女性記者たち』
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(C)BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

監督、編集、製作:リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ
2021年/インド/ドキュメンタリー/ヒンディー語/DCP/93分
日本語字幕:福永 詩乃
配給:きろくびと
公式サイト:https://writingwithfire.jp/
★2023年9月16日(土)より渋谷ユーロ・スペースほか全国順次公開.



アジア千波万波 市民賞受賞

燃え上がる記者たち    英題:Writing With Fire
インド/2021/93分
監督:スシュミト・ゴーシュ、リントゥ・トーマス Sushmit Ghosh, Rintu Thomas

2002年にウッタル・プラデーシュ州チトラクート地区にて、カースト外の不可触民である「ダリト」の女性たちによって週刊の地方新聞として創刊された「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波)。2016年、独自のビデオチャンネルを立ち上げ、デジタル配信へと移行する。
主要メディアが扱わない事件も取り上げ、スマホを駆使して取材に奮闘する女性記者たちの姿を追う。


◆『燃え上がる記者たち』Q&A

スシュミト・ゴーシュ(S)(男性)、リントゥ・トーマス(R)(女性)

R:「カバル・ラハリヤ」主任記者のミーラさんから、デジタルに移行することについてチームミーティングを開くとの連絡をいただき、カメラを持っていって歴史的な会議を撮ることができました。
女性たちのエネルギーを感じました。 大きな困難に立ち向かおうとしているダリトの女性たちの姿を捉えることができました。

S: 24人の中のどの人をとっても成立する物語。リーダーのミーナさんには人生における成功、野心家のスニータさんには若い力、技術的に不安を持っていたシャラエカマさんの成長していく姿を見ることができました。

R:この新聞の前にもミーナさんは14年の蓄積がありました。庶民からは信頼されていました。印刷からデジタルに移行し、顔と名前が出て、さらに存在を知られるようになりました。 一方で、チェックされることにもなりました。目に見える形でインパクトがあります。

― 資金は?

S:: 長い間、インドの公的機関から支援を受けてきました。知られるようになって、主流のメディアとのタイアップもするようになりました。デジタルに移行して、5~6年。爆発的に飛躍しました。隣のビハール州にも活動を拡大したところです。

― 現場と家庭内のバランスをどう描こうと思いましたか?

R: 様々な要素をどう組み合わせるかという編集作業が撮影より大変でした。
女性たちの内面から外をみる形で編集しようと最初から決めていました。
4年分のフッテージがあります。撮影するたびに少しずつ編集をしました。2019年には、45時間のラフカットがあり、再編集を繰り返しました。
需要なポイントは、彼女たちの取材する内容が、彼女たちの生活や人生に密着したものでなければいけないことでした。

― タイトルの「燃やす」には、インドのサティの習慣も意識したのでしょうか?

R: 2017年に資金繰りするときから、このタイトルでした。自分たちの運命を書き換えようとしている姿、壊すことで未来の世代に大きな希望を与えること、男性たちの女性蔑視をひっくり返す力も描きました。完成した時にも、このタイトルでいいと思いました。

― 女性たちを取り巻く男性たちの姿も描かれていました。お二人はご夫婦ですが、それぞれの思いは?

R: 11年間、映画作家としてコラボレーションしてきました。性格は全く違うけれど、愛するものは共通しています。夫は大きなところ、私は細かいところを見ています。6年前に結婚しました。この映画は私たちの初めての子どもとも言えます。
撮影と別に、彼女たちと食事したり、クリケットを観たりすることができたのも、私たちがカップルだったからかもしれません。 現場では、喧嘩ばかりしていました。

― インド国内での言論の自由は厳しいのではないかと思います。製作に当たって、困難に直面されたことは?

S: インドではドキュメンタリーに対する支援は欠落しています。国外で資金集めをしないといけない状況です。
映画の中で描かれているのは、正義の為の闘いは、思いもかけないところで起こっていることです。困難の中で女性たちが立ち上がっている姿を見て、自分たちの未来を想像し直すことができるのではないかと思います。
良いジャーナリズムのメディアを見つけて応援してほしいです。

― 女性記者たちへの誹謗中傷に対抗するには、何が重要でしょうか?

R: 女性が声をあげようとすると伝統的勢力が抑えようとします。無視するのではなく、あえて反応し、対話のきっかけにし、異なる意見の人とどう対峙するかを考えてみるのがいいと思います。