アジアフォーカス福岡観客賞『シヴァランジャニとふたりの女』 ヴァサント・S・サーイ監督インタビュー

9月18日(水)16:15からの『シヴァランジャニとふたりの女』の上映は、福岡観客賞を受賞した翌日で、平日の午後にもかかわらず、なかなかの入り。
Q&A(こちらをご覧ください)のあとのサイン会にも多くの方が並び、それぞれに感想を述べたり、質問をされたりしていました。
インタビューを7時から予定していましたが、かなり遅れて開始することになりました。
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サインボードの前で、撮影させていただいてから会議室に一緒に移動しました。


『シヴァランジャニとふたりの女』
Sivaranjani and Two Other Women
2018年/インド/123分

*物語*
南インド、タミル・ナードゥ州。3つの時代に生きた女性たちの物語。

1980年、サラスヴァティー

ヒンドゥーのお祭りの帰り、赤ちゃんを抱き、大荷物を持ったサラスヴァティーは必死になって夫の後をついていく。夫は荷物を持とうともせず、グズだと罵倒する。工場勤めの夫はお金を満足に渡してくれず、とうとう米も底をつく。夫の暴力に耐えかね口答えすると、その日から夫は口をきかず、ついに家に帰ってこなくなる・・・

1995年、デーヴァキ
バイクに乗って颯爽と通勤するデーヴァキは、同居する義兄の息子の憧れの的だ。叔母が日記を書いている姿を見かけたことを、少年がつい家族に漏らしたことから大騒動になる。家名を汚すようなことを書いているのではないかと、日記の公開を求められ、プライバシーの侵害と、ついに家を出る・・・

2007年、シヴァランジャニ

有望な陸上選手として、学校を代表して全国大会への出場も決まっていたが、親の意向で結婚。すぐに身籠り、出場権を取り消されてしまう。その後、家庭の主婦として、夫や子供の世話と家事に追われる日々の中で、ふっと学生時代を思い出し、優勝カップを探しに学校に行く・・・


◎ヴァサント・S・サーイ監督インタビュー
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◆自分の経験した年代を描いた
― 女性の生き様を時代を追って描いていて、少しずつ変化も観られて興味深かったです。1980年、1995年、2007年という3つの時代を選んだ理由をお聞かせください。

監督:私自身の記憶のある少年時代の1980年から始めました。少年期で回りを観察していろいろなことを知っていった時代です。1950~70年台のことは聞いたことしか描けません。

― 今、おいくつですか?

監督:
秘密です! およそ40歳です。
(公式カタログにも掲載されていませんでした)
自分の青年期に見たものを映画にしています。
1980年ごろまでは、インドではたとえ貧しくても、まだ女性が働く時代ではありませんでした。1980年代後半は、ようやく夫が亡くなった女性が働き始めた時代です。
Q&Aでスウェーデンの話が出ましたが、男女平等の進んでいるスウェーデンでも、その時代には女性は習慣的に働いてませんでした。今は、皆が働く時代になりましたが。
1995年の物語には日記が登場しますが、まだ手で書いていた時代です。インターネットの出回る前です。

― 思えば、1995年の物語では、ヒロインが働くのをうらやむ女性がいましたね。ヒロインは、女だてらにバイクを運転して仕事に通っていて、並んで走っているバイクは皆、男が運転していて、彼女が進んでいる女性だと見せていました。

監督:インドでは、ようやく働く女性も出て来たという時代です。

◆女性たちの名前はヒンドゥーの神様に由来
― 女性たちの名前はどのように名付けたのでしょう? シヴァランジャニは女神であるシヴァ神から来ている名前かと思います。

監督:最初のアイディアでは、女性に名前をつけないというものでした。皆、同じ問題を抱えているという考えからです。
シヴァランジャニは、ミュージカルの「ラーザ」のヒロインの名前でもあります。皆がシヴァランジャニというつもりでした。
ほかの二人の女性の名前もヒンドゥーの神様の名前に由来しています。
1話目のサラスヴァティーは、芸術・学問などの知を司る女神です。

― 3人の女性とも、虐げられながらも、少しずつ反抗していますね。女性の強い面も描いていると思いました。
一つ目の物語の夫は、暴力を振るうし、重たい荷物も持ってあげないひどい夫でした。でも、結局、家を出てどうなったのでしょう?

監督:あの夫はいつも妻を抑圧していて、妻が抵抗すると思っていませんでした。それが妻が刃向かってきて、「脅かしているのか」と彼自身が傷ついてしまったのです。例えば、可愛がって飼っていた犬が、突然吼えて噛み付いてきたら、抵抗できなくなります。夫にとって妻は飼い犬と同じ。まさか抵抗しないと思っていた妻が反抗してきてショックを受け、心の中で死んでしまったのです。名誉を傷つけられて口をきかなくなりました。

― ショックを受けて、夫はあの家にいられなくなったのですね。

監督:誇りを傷つけられて彼には受け入れられない状況だから家を出ました。家の中に二人男がいる状態になったというメタファーです。あの時点で平等が生まれたともいえます。
1995年の物語では、叔母さんが日記に「ジーンズを穿いて働いている美しい女性を見かけた」と書いています。それ以前の時代は、誰が何を着るべきか決まっていました。まだジーンズが珍しい時代で、男性優位が続いていました。

― 今は、サリーやシャルワールカミーズじゃなくて、ジーンズを穿いている女性が多いですよね。伝統が薄れて寂しい気もします。

◆未亡人は再婚しないのがインドの常
― 今、日本で公開中の『あなたの名前を呼べたなら』のロヘナ・ゲラ監督から、インドでは未亡人は再婚しないと伺いました。

監督:まさに未だにそうです。20年前に、私も映画で未亡人が再婚できないことを描きました。

― インドというと、カーストの問題もありますね。

監督;カースト、宗教、ジェンダーの3つが問題ですね。

◆ヒンドゥー、イスラーム、キリスト教が共存するタミル・ナド
― 監督のご出身のタミル・ナド州が舞台ですが、一つ目ではヒンドゥーが強調され、2番目の物語では、近くからムアッジン(イスラームの祈りを促すアザーンを唱える人)の声が聴こえてきました。3番目の物語では、窓の向こうにキリスト教会が見えました。

監督:近くに違う宗教が共存している地域であることを示したかったのです。

― 一つ目の物語の最初に夫婦が参加したのはヒンドゥーの宗教行事ですか?

監督:そうです。サーイというヒンドゥーの神様を祀る行事です。サーイは、実は父がつけてくれた私の名前です。ミドルネームは父の名前。最初の名前は祖父の名前です。

― ちゃっかりご自身の神様を最初に出していたのですね。

監督:そうなんです。笑
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◆タミル文学に触発されて映画を作った

― インドでのリアクションは?

監督:伝えたいことを、皆、すぐわかってくれました。女性が遠慮せず、どんどん話しかけてくれました。
(ここで、スマホの中に入っている女性たちが語る動画をいくつか見せてくださいました)
「家の中で女性を尊敬できない人は、外でも女性を尊重できない」
「私もシヴァランジャニ。結婚でテニス選手を諦めました」
「母のことを思い出しました」と青年。
映画を観た皆さんが、こうして自分のこととして捉えてくれました。
これが映画を通してやりたいことでもありました。

映画の一番のポイントは、ストーリーです。タミルの文学作品から取りました、
3人の文学者の作品です。彼らは私のヒーローです。
1話目 アショーカ・ミトラム。インドのヘミングウェイ的作家です。
2話目 Jey Moham。存命です。今、とてもポピュラーな作家。1000もの作品を水を飲むように書いています。
3話目 Adervan アーダヴァン。
いずれも30年くらい前に書かれたものです。私が20~30代の時に読んで、衝撃を受け、いつかこれを題材に映画を撮りたいと思いました。彼らの小説に出会ってなければ映画を作ることもありませんでした。

― 監督はジャーナリストでもありましたよね。

監督:そうですね でも、素晴らしい作家がいるので、私は作家にはなれないと思いました。彼らから学んで、ほかのことをしようと思いました。

― 映画に影響を受けて映画を作りたいと思ったのではなく、小説ありきなのですね。
映画監督で影響を受けた方は?

監督:
イングマール・ベルイマン。特に、『Through a Glass Darkly』(1961年)は、私のバイブルです。『ある結婚の風景(Scenes from a Marriage)』(1973年)も強く影響を受けました。
ほかにジョン・フォードやフランシス・コッポラ。一番好きなのは、黒澤明です。

― 日本の監督は?と聞こうと思ったところでした。

監督:今回、黒澤明監督のいた土地に来られて、ほんとに嬉しいです。そして小津監督も大好きです。

― 皆さんにそうおっしゃっていただくと、日本人としてとても嬉しいです。
インドの監督では?

監督:インドでは、サタジット・レイと、タミルの名匠K. バーラチャンダー。たくさんの素晴らしい映画を作っています。

― タミルだけでも年間200本以上が作られていると思いますが、ラジニ・カーントの映画とは、監督の映画は一味違って好きです。

監督:『ムトゥ 踊るマハラジャ』の音楽を担当したA.R.ラフマーンは、私も気に入ってます。2000年に製作した『リズム』では彼に音楽を担当してもらいました。先にお話した未亡人の物語です。

― 次の作品は?

監督:脚本を書き終わったところです。女性の話なのは間違いありません。

― ほんとに女性の見方ですね。

監督:まさしく! 誰しも間違いを犯します。私も。何回も間違いを重ねて、自分が間違いを犯したことに気づきます。自分が正しいと主張するのでなく、間違っていたら、それを自ら正すことも必要です。
最後になりましたが、女優たちの演技こそ、この映画を支えています。
3人の女優への賛辞をぜひ入れてください。
そして、女性の物語を、3人の小説家と私の4人の男性が描いたことも。

注:
サラスヴァティー役:Kalieswari Srinivasan
デーヴァキ役:Parvathy Thiruvothu,
シヴァランジャニ役:Lakshmi Priya Chandramouli,

― 次の作品も日本で観られることを楽しみにお待ちしています。

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最後に、公式カタログにサインをいただきました。
読めないけれど、タミル語でとお願いしました。
そして、タミル語で「ありがとう」は「ナンドリ」と教えていただきました。
東京・荒川区尾久に日本人が料理人の「なんどり」という南インド料理のお店があるとお伝えしたら、とても嬉しそうでした。



アジアフォーカス福岡国際映画祭 福岡観客賞『シヴァランジャニとふたりの女』 9月18日のQ&A

『シヴァランジャニとふたりの女』
Sivaranjani and Two Other Women
2018年/インド/123分

*物語*
南インド、タミル・ナードゥ州。3つの時代に生きた女性たちの物語。

1980年、サラスヴァティー
ヒンドゥーのお祭りの帰り、赤ちゃんを抱き、大荷物を持ったサラスヴァティーは必死になって夫の後をついていく。夫は荷物を持とうともせず、グズだと罵倒する。工場勤めの夫はお金を満足に渡してくれず、とうとう米も底をつく。夫の暴力に耐えかね口答えすると、その日から夫は口をきかず、ついに家に帰ってこなくなる・・・

1995年、デーヴァキ

バイクに乗って颯爽と通勤するデーヴァキは、同居する義兄の息子の憧れの的だ。叔母が日記を書いている姿を見かけたことを、少年がつい家族に漏らしたことから大騒動になる。家名を汚すようなことを書いているのではないかと、日記の公開を求められ、プライバシーの侵害と、ついに家を出る・・・

2007年、シヴァランジャニ
有望な陸上選手として、学校を代表して全国大会への出場も決まっていたが、親の意向で結婚。すぐに身籠り、出場権を取り消されてしまう。その後、家庭の主婦として、夫や子供の世話と家事に追われる日々の中で、ふっと学生時代を思い出し、優勝カップを探しに学校に行く・・・

時代を経て、女性の置かれている立場も少しずつ変化していくが、根本にあるのは男性優位、女性蔑視の世界。それでも前に進もうとする女性たちの姿が眩しい。


9月18日(水)上映後のQ&A

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司会:観客賞を受賞、おめでとうございます。観客の皆さんの心に響いた作品だと思います。国によって反応が違ったのではないかと思います。日本での最初の上映のリアクションはいかがでしたか?

監督:スウェーデンでは4つの劇場で上映されました。ニューヨークでも上映されて、良い反応を得ました。Q&Aの時には、すぐに皆さんの顔を見ます。女性の方が泣いている姿もよく見ました。ニューヨークでは、テニスプレイヤーとして活躍していたけれど、結婚して辞めなければならなかったと女性が話してくれました。男性の方たちからも、自分の母を見ているようだったと聞かされました。
アジアフォーカスのディレクターの方から、女性監督だと思ったと言われました。女性の視点で描いているからだと思います。

― 状況は変わっているのでしょうか?
少しは改善されていると思うのですが、もっと良くなるべきだと思っています。


監督:
福岡で、70代の女性の方から、「私もシヴァランジャニです」とおっしゃってくださいました。

― 素晴らしい映画でした。時代は変わっても、男性の優位性は変わってません。
一人目は家に、二人目は働きに出て、3人目は足を出して走ってました。
3人目は、朝の母親の仕事ぶりをノーカットで見せて、忙しさが伝わってきました。名が回しは、何回でOKになったのでしょう?

監督:この映画は、何テイクも撮りました。この場面は何テイクだったか・・・
音楽がなかったことに気づいていただけたかと思います。音楽がない方がキャラクターになりきれます。長まわしをするのも同じ9理由です。ものごとが、そこで現実に起こっているように感じてもらえます。朝の6時から8時はカオスです。夫や子供の面倒をみて、送り出さなければいけません。皆さんが毎日経験していることだと思います。2~3回撮って、こういう感じかなと。もっとリアルな演技をと伝えて、撮影をしていきました。一番多かったのは、99回です。

― 平均的な家族像と考えていいですか?


監督:
インドに限らず、ニューヨークで上映した時にも、共通に起こることが描かれているといわれました。西洋はもっと自由だと思うかもしれませんが。
1980年、1995年、2007年ト少しずつ変化しています。2007年では、夫が「ありがとう」の言葉を妻にかけています。徐々にですが、男は仕事、女は家事の考えが変わってきていると思います。

― スウェーデンでも上映されたとのこと。スウェーデンは男女平等がかなり進んで、男女同等の地位だと思います。スウェーデンでの反応は?

監督:スウェーデンでも気に入ってくれて感謝しています。2番目の部分では笑っていただきました。映画の中では、ものごとが起こって、そこから何かを感じてもらうのが普通ですが、何かが起こらなくても共有していただけるものがあると思います。

― (40前後の男性)小さい子と妻がいるのですが、負担をかけてないか省みながら映画を観ました。2番目の物語は、日記を巡る揉めごとでした。家の不名誉になるとはどういうことでしょう? 告げ口した少年は日記をつけることが悪いことと思っていたのでしょうか?

監督:ご自身の奥様のことを思っていただきありがとうございます。
日記を書くことが不名誉なことではなく、何が書かれているかわからないので、義理のお姉さんが嫉妬から何か家名を汚すようなことを書いているのではないかと言ったのです。家族の間で嫉妬から揉め事になることを描きたかったのです。
少年は叔母さんが好きで、お母さんからここは大人の場所だからと言われたので、つい叔母さんのことを言って、後から大げさなことになって後悔しています。少年には、次の世代の「わかる男性」になって欲しいと願っています。


会場入口でのサイン会
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皆、それぞれに質問されていました。
19時からインタビューの時間をいただいていましたが、サイン会に並んだ最後の方が終わるまで待って、インタビューの部屋に一緒に移動。
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サインボードの前で写真を撮らせていただきました。

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ヴァサント・S・サーイ監督インタビューは、こちらでどうぞ!


報告:景山咲子






アジアフォーカス 福岡観客賞はインド映画『シヴァランジャニとふたりの女』

9月13日(金)夜、キャナルシティ博多地下のサンプラザステージでのオープニングセレモニーに続き、チャン・リュル監督が福岡で撮った『福岡』で始まった「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2019」。9月17日(火)に福岡観客賞授賞式が行われました。
観客賞は一般上映初日9月14日~16日までの3日間で、観客賞対象作品1回目の上映時の観客投票により決定される賞。私は、17日の朝に福岡入りしたので、ほとんどの作品を観ない状態で授賞式に臨みました。

まずは、観客賞第二位にあたる熊本市賞の発表

★熊本市賞
『アルファ 殺しの権利』Alpha, The Right To Kill(2018年/フィリピン)
ブリランテ・メンドーサ監督

昨年の東京国際映画祭でコンペティション部門審査委員長を務められたメンドーサ監督。アジアフォーカスでは、特別企画としてマスタークラスが開かれ、映画も『アルファ 殺しの権利』『それぞれの道のり』の2本が上映されました。
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*ブリランテ・メンドーサ監督 喜びの言葉*
受賞するとは思ってもみませんでした。マスタークラスのために福岡に来たつもりでした。福岡に10年ぶりに戻ってきました。暖かく迎えていただき、ありがとうございます。

14日から来ていた東京の友人や福岡の友人から、『アルファ 殺しの権利』がよかったと聞かされていたので、まさに評判通りでした。

そうなると、第一位は?
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★福岡観客賞
『シヴァランジャニとふたりの女』Sivaranjani and Two Other Women
(2018年/インド)
ヴァサント・S・サーイ監督
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*ヴァサント・S・サーイ監督 喜びの言葉*
観客賞の受賞、心から嬉しく思います。「福岡の素晴らしい人々から受け取った賞」だと思っています。初めて日本に来て、真心のこもったおもてなしを受けて、ほんとうに感激しています。観客の皆様、特に多くの女性の方々に感謝申し上げます。母のシャンタ、妹のマリーナ、妻、娘たち、そして父と兄、そして友人たちにもこの場を借りてお礼を申し上げます。

映画はまだ観ていなかったのですが、福岡に来る前に、18日の上映後にヴァサント・S・サーイ監督インタビューの時間を頂いていました。まさに先見の明ありでした。作品の詳細とインタビューの模様は後日お届けします。

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最後にゲストの方々全員が壇上にあがり、記念撮影。


引き続き、福岡フィルムコミッション支援作品『電気海月のインシデント』の特別上映が行われました。
福岡を舞台に、ハッカーと探偵とアウトローが頭脳戦を繰り広げる物語。
ハッカーにも、ホワイトハッカーとブラックハッカーという区別があることを知りました。ブラックハッカーにやられたのを、ホワイトハッカーに助けてもらうという図式。萱野孝幸監督はじめ、九州勢のキャスト、スタッフで、オール福岡ロケ。





アジアフォーカス・福岡国際映画祭2019  Focus on Asia Fukuoka International Film Festival 2019

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毎年楽しみにしているアジアフォーカス。
例年、スケジュールが出るのが8月中旬以降だったのですが、今年はもうスケジュールが出ました。

アジアの新作の数々のほか、今年は、
藏原惟繕(くらはらこれよし)監督に焦点をあてた日本映画特集
「福岡」をキーワードにした【福岡パノラマ】
[2019年日本・イラン 外交関係樹立90周年記念上映]
[福岡・イポー姉妹都市締結30周年 ヤスミン監督没後10年記念上映]
[ラグビーワールドカップ2019™日本大会記念上映]
などの企画が立てられています。

会期:9月13日(金)~9月19日(木)


9月13日(金)
 
オープニング・セレモニー + オープニング上映

9月14日(土)~19日(木) 一般上映 

スケジュール http://www.focus-on-asia.com/schedule/

◆アジアの新作・話題作


恋の街、テヘラン  Tehran: City of Love
2019年/イラン、イギリス、オランダ/102分
監督 : アリ・ジャベルアンサリ

ナイト・ゴッド Night God
2018年/カザフスタン/110分
監督: アディルハン・イェルジャノフ

シヴァランジャニとふたりの女 Sivaranjani and Two Other Women
2018年/インド/123分
監督: ヴァサント・S・サーイ

デモンズ Demons
2018年/シンガポール/83分
監督: ダニエル・フイ

夜明けを待ちながら Ten Seconds Before Sunrise
2018年/インドネシア/82分
監督: テディ・スリアアトマジャ

マンタレイ Manta Ray
2018年/タイ、フランス、中国/105分
監督: プッティポン・アルンペン

アルファ 殺しの権利 Alpha, The Right To Kill
2018年/フィリピン/94分
監督: ブリランテ・メンドーサ

それぞれの道のり  Lakbayan (Journey)
2018年/フィリピン/118分
監督: ブリランテ・メンドーサ、ラヴ・ディアス、キドラット・タヒミック

マルカド、月を喰らうもの  Markado: The Moon Devourer
2018年/フィリピン/90分
監督: ジョー・バクス

轢き殺された羊  Jinpa
2018年/中国/87分
監督: ペマツェテン

自由行  A Family Tour
2018年/台湾、香港、シンガポール、マレーシア/107分
監督 : イン・リャン


◆東南アジア・リージョナル特集
「リージョナルであること」


フンバ・ドリーム  Humba Dreams
2019年/インドネシア/75分
監督: リリ・リザ

誰かの妻
 Other Man's Wife
2018年/インドネシア/99分
監督: ディルマワン・ハッタ

カンペーン The Wall
2018年/タイ/95分
監督: ブンソン・ナークプー


◆特別上映 映画『福岡』記念
チャン・リュル監督特集.「越境するポエジー」


福岡  Fukuoka
2019年/韓国/86分
監督: チャン・リュル

群山:鵞鳥を咏う Ode to the Goose
2018年/韓国/121分
監督: チャン・リュル

★福岡市総合図書館での上映作品
豆満江 Dooman River
2010年/中国、韓国、フランス/92分
監督: チャン・リュル

風と砂の女 Desert Dream
2006年/モンゴル、韓国、フランス/125分
監督: チャン・リュル


◆日本映画特集
「モダニズムヘの愛と憎しみと 監督・藏原 惟繕」


憎いあンちくしょう Ⅰ Hate But Love
1962年/日本/105分
監督 : 藏原惟繕

黒い太陽
 Black Sun
1964年/日本/95分
監督 : 藏原惟繕

夜明けのうた
  The Song of Awakening
1965年/日本/93分
監督 : 藏原惟繕


◆特別上映◆

2019年日・イラン 外交関係樹立90周年記念上映
セールスマン  The Salesman
2016年/フランス、イラン/124分
監督 : アスガー・ファルハディ


福岡・イポー姉妹都市締結30周年 ヤスミン監督没後10年記念上映

細い目 Sepet
2004年/マレーシア/107分
監督 : ヤスミン・アフマド


ラグビーワールドカップ2019™ 日本大会記念上映
インビクタス/負けざる者たち Invictus
2009年/アメリカ/133分
監督 : クリント・イーストウッド

◆バリアフリー上映
めんたいぴりり Mentaipiriri
2019年/日本/115分
監督 : 江口カン


◆福岡フィルムコミッション支援作品
電気海月のインシデント Electric Jellyfish Incident
2019年/日本/98分
監督 : 萱野孝幸

◆アジアフォーカス・福岡国際映画祭 Presents 福岡パノラマ

アオハルフラッグ AOHARU-FLAG
2019年/日本/38分
監督 : 小田憲和

私刑執行日 guilty day
2019年/日本/48分
監督 : 小田憲和

博多明太! ぴりからこちゃん
 HAKATAMENTAI!PIRIKARAKOCHAN
2019年/日本
製作社 : ぴりからこちゃん製作委員会


アジアフォーカス2018 『仕立て屋 サイゴンを生きる』9/16 Q&A

9月16日 10:05 福岡空港着。ホテルに荷物を預けて、櫛田神社にお参りして、キャナルシティの会場へ。今年のアジアフォーカス最初の映画は、ベトナム映画 『仕立て屋 サイゴンを生きる』。といっても、最後の20分だけ拝見。伝統的なアオザイをモダンな布地で現代に蘇らせた華麗なファッションショーのエンディング。上映後のグエン・ケイ監督が登壇するQ&Aだけでも聴ければと思っていた次第。 引篭もりだったヒロインの物語は、11月の東京でのベトナム映画祭で観ることに。

10月には大阪でのベトナム映画祭で上映されます。
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/vietnam2018/vietnam2018.html#top
大阪 シネ・ヌーヴォでの上映日程:
10月13日(土)18:50~、10月19日(金)16:50~


『仕立て屋 サイゴンを生きる』

2017年/ベトナム/100分 
監督 : チャン・ビュー・ロック、グエン・ケイ
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1969年のサイゴン。9代続いた仕立て屋の娘ニュイはアオザイ作りには興味を示さず、伝統を継承する母親の方針に反発。突然、2017年のホーチミンにタイムスリップした彼女は、首を吊ろうとしていた年老いた自分自身に対面する。服飾業界を舞台に展開するポップなファッション・ファンタジー。

◆9月16日(日)上映後のQ&A
ゲスト:グエン・ケイ監督 司会:高橋 哲也氏

司会:監督は脚本も担当されました。アオザイをテーマに映画を作ろうとしたきっかけは?
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監督:まずは、福岡の皆様、ありがとうございます。
アオザイをテーマに選んだのは、プロデューサーから若い人が伝統的なものを好まない傾向があって、アオザイも着なくなっているので、アオザイを着たくなるような映画を作ろうと言われたのが発端です。アオザイはクールだと思えるようなものをと。

司会:ヒロインのニュイのお母さん役を演じたのが、プロデューサーのゴー・タイン・ヴァンさんですね。2016年のアジアフォーカスのベトナム大特集で上映した『ロスト・ドラゴン』(ゴー・クオン監督、2015年)の女優さんで、有名な方です。

*会場より*
― 60~70年代の実写の映像が使われていて、CGより良いアイディアでした。布地を切るハサミの音にもこだわりを感じました。ベトナムで公開されたときには反響があってアオザイがブームになったのではないでしょうか?

監督:そうなんです。嬉しいことに、若い人たちが注目してくれました。110万枚チケットが売れました。(注:2017年興行収入第3位) テト(旧正月)の時には、大勢の若い人たちがアオザイを着て町を歩いてくれて嬉しかったです。今や、アオザイ大好きとも言ってくれました。
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― この物語にはモデルがあるのでしょうか?

監督:モデルのお店があったわけではありません。映画を撮り始めた時、私自身も女優さんと一緒にアオザイの作り方を学びました。この42年間のベトナムの変化で、昔ながらのアオザイを作っているお店は、もう1~2軒しかありません。今のお店は昔の作り方ではないのです。かつて作っていた人たちを訪ねて、当時の話を聞きました。戦争もあって、昔のものはなくなったり、消されたりしているので、当時の姿を皆で再現しようと頑張りました。

― 伝統を巡る親子の対立で、普遍的なテーマでした。ヒロインの現代的なファッションも含めて、とても気を使われたと思います。

監督:好運だったのは、ファッションの専門家も手助けしてくださいました。トイ・グエンさんはスポンサーにもなってくれて、アオザイをすべて提供してくださいました。ニュイの服もすべてトイ・グエン製です。一方、有名デザイナーのヘレンの服は、イッセイミヤケ、バレンシアガーなどすべて外国製です。ヘレンは新しいものを象徴しています。

― 現代と比べるのが、1960年代なのはなぜですか? ベトナムの人にとって、60年代はどういう意味を持つのでしょうか?

監督:韓国と同様、ベトナムも南北に分かれていた時代がありました。南はアメリカの文化の影響を受けていました。南の中心サイゴンでは、60年代は戦争中にもかかわらずタイムラグなくアメリカ文化に追いついていました。1975年に南北統一し、南部の人は外国に移住する人が多くて、私の家族も私と母だけがベトナムに残りました。60年代は、懐かしく輝かしい時代です。映画で善意で60年代を描くということで、サポートしてもらえました。政治的なメッセージは、あまり盛り込んでいませんが、女性監督ですので、ファッションに注目しました。

司会:2015年の福岡アジア文化賞で、ベトナムの女性ファッションデザイナーのミン・ハンさんが芸術・文化賞を受賞されました。

監督:ミン・ハンさんからは、どれだけアオザイを愛しているかを学びました。福岡が彼女にアジア文化賞を差し上げてくださって嬉しいです。

― ベトナム語がとても美しかったです。時代が変わっても、何が大事かを教えてくれる映画でした。次回作は?

監督:ベトナム語が美しいとおっしゃってくださって嬉しいです。昔と今の価値は違ってきています。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」をバイブルにしているのですが、芸術家は感じたものを作品にするのに文化や時代のボーダーはありません。
次回作は、ベトナムのショウビズの暗闇を覗くというテーマで作っています。「スキャンダル」のシリーズです。次の次のテーマは、ベトナムのご飯「タムタム」についてです。また、3部作の一つとして、建築をテーマにホイアンやフエの建物を描く予定です。

司会:最後にひとこと!

監督:福岡には初めてまいりましたが、とても住みやすそうで素晴らしい町ですね。

司会:本日は、ありがとうございました。

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終了後、会場の外でサイン会が開かれました。