SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018『スポットライト』 主演女優ヴィクトリア・イサコヴァQ&A (7/21)

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スポットライト  英題:Light Up   
2017年/ロシア/97分
監督:キリル・プレトニョフ
出演:インガ・オゴルディナ、ヴィクトリア・イサコヴァ、ウラジミール・イリン、アンナ・ウコロワ、アレクセイ・シェフチェンコフ、エカテリーナ・アギーヴァ

*ストーリー*
女性刑務所の看守アレフチナはいつも厳しい態度だが、ふっと口ずさむ歌声はオペラ歌手も顔負け。同僚が隠し撮りしてインターネットに投稿した動画を見て、テレビ局がやって来る。美人アナウンサーからオーディション番組への出演を勧められるが、アレフチナは少女の頃の出来事がトラウマになっていて人前で歌うのが怖い。やっと、オーディションに挑む決意をして、夫殺しで収監されている音楽学校出身の囚人スターから指導を受ける。そして、いよいよモスクワのテレビ局に向かうが・・・

アレフチナが看守の制服を脱いで、赤いドレスに身を包んだ姿が眩い。でも、とんとん拍子には進まなくて、笑わせてくれる場面も。歌のレッスンを通じて、囚人と心を通わせていく様や、いつも素っ気無い夫が、妻の歌う姿に、にやりとするのにも和ませられました。


◆7.21(土) 14:30~映像ホールでの上映後のQ&A
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囚人を演じた女優ヴィクトリア・イサコヴァさんをお迎えして、Q&Aが行われました。
司会は、長編コンペ作品第一次審査委員の国弘よう子さん。

3度目の来日となるヴィクトリア・イサコヴァさん。
「また、モスクワから日本に来ることができて嬉しいです」と第一声。

*会場より
― スパシーバ! ロシアの人たちの演技に感激しました。日本の刑務所ではありえない話でしたが、ロシアではありえるのでしょうか? また、実際に刑務所に行ってみましたか?

ヴィクトリア:女性の刑務所が舞台の映画は、2作目でした。前回の映画は刑務所を借りて撮影しましたので、どういうところなのかは知っています。
ただ、今回の物語はロシアで実際にこのようなことがあるというのではなく、芸術作品として捉えてください。監督は、イギリスの刑務所で実際にあった話を聞いて、ロシアの現実にみあったものとして脚本を書きました。ほんとにある話と思えないのですが、テーマはリアリスティックで、大事なことが描かれていると思います。映画のジャンルはリアリスティックなおとぎ話でしょうか。

― 殺人罪で3年の懲役は短いと思いました。

ヴィクトリア:監督から、刑務所に入る前のことを聞きました。意図的な殺人なら刑期は長いのですが、私が演じた女性の場合は夫から虐げられて困難な状況にある中で殺してしまったので情状酌量で刑期が短いのです。役者としての私は、彼女の行った行為を正当化するような役目でした。監督と話して、どういう人生を歩んできたかを踏まえて演じました。

― 看守役のインガさんの歌は吹き替えだったのでしょうか?

ヴィクトリア:簡単な部分は、素晴らしい相手役のインガさんがご自身で歌っていました。難しいアリアは吹き替えです。

司会:ラストのミュージカルの部分は、ロシアで有名な女優さん二人の実際の声ですね。
(エンディングロールの左脇に、出演者によるミュージカルが繰り広げられていました)
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― 看守の女性が小さい時に舞台で皆の前で歌っていた「おじいさんの時計」は、ロシアでよく歌われているものですか?

ヴィクトリア:親しみが持てて、今でも歌われている古典的な人気の曲です。

― 先日、サッカーを観戦しにロシアに行った折に、ボランティアで小中学校を訪ねました。映画に出てきたような、ステージのある場所があって、衣装もいろいろ置いてありました。また、駅には第二次世界大戦の記録が展示されていました。

ヴィクトリア:ロシアでは古典的な芸術を大事にしています。演劇や映画を観ると、自由な気持ちになれると思います。戦争の記憶は強く人の心に残っています。第二次世界大戦はソ連時代ですが、当時のソ連の家庭では誰かしら戦争の犠牲になっています。個々人に係わってくる記憶です。ファシズムに勝利したけれど、国民にとっては犠牲を伴った悲劇でした。戦争が繰り返されることを願っていません。

この後も、質問が続いたのですが、『横道世之介』の上映時間が迫ったので、後ろ髪を引かれる思いで退席しました。 (景山咲子)


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 デイリーニュース 7月21日のQ&A
http://skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180721_dairy24.html





SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018『招かれざる者』エドン・リズヴァノリ監督Q&A(7/19) 

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招かれざる者  英題:Unwanted
2017年/コソボ、オランダ/85分
監督:エドン・リズヴァノリ
出演:アドリアナ・マトシェ、ジェイソン・デ・リダー、ニキ・フェルカール、エドン・リズヴァノリ

*ストーリー*
アムステルダムで暮らすコソボ難民の母と息子。
花屋に勤めるザナは、校長から、息子のアルバンがまた喧嘩をしたと呼び出される。もう転校させられないと息子に言い渡すザナ。一方、アルバンはバイト先の自転車屋で、アナという少女と知り合い付き合い始める。家にも遊びに行くが、アナは父から「アルバニア人のアルバンとは付き合うな」と言われる。アナの父はセルビア人。実はザナと同じコソボ出身だ。コソボを訪れたことがないというアルバンに、「バルカンの人間は家族の絆が強いのに、一度も行ったことがないのか」とアナの父は言う。
祖母が亡くなり、アルバンは母ザナに連れられて初めてコソボを訪れる。だが、母の家族も友人も、「なぜ来た?」と二人につれない。徐々に明かされる紛争の記憶・・・

<コソボ紛争>
1998年から1999年にかけて激化したコソボ紛争。もともと、1990年にセルビアのコソボ・メトヒヤ自治州で9割以上の人口を占めていたアルバニア人が独立を宣言し、コソボ共和国という新しい国を建てたことが発端で、セルビアが、セルビア人優先の政策を行使したことに対し、アルバニア人が反発。1997年頃、一部のアルバニア人によるコソボ解放軍が、武力攻撃を開始する。しかし、セルビアが徹底的に弾圧したことで、多くのアルバニア人難民が生まれる結果となった。(公式サイトより引用)

◆7月19日(木)2時半~多目的ホールでの上映後 
 エドン・リズヴァノリ監督Q&A

司会:木村さん 通訳:松下さん

監督:ご覧いただきありがとうございます。前回の上映のときに、コソボについて知らないのでわかりにくかったという声がありましたので、少し説明します。
なぜ、コソボ生まれのアルバニア人の私が、10代のときに外国に出たのか。それは、クロアチアと戦うために、セルビアに徴兵されることに反抗してのことだったのです。アメリカにも住んだことがあります。この私の移民として外国に出ざるをえなかったことが、ヒロインのザナに反映されています。

司会:監督ご自身はザナに近い立場ですが、映画の中ではセルビア人の父親役で出ていますね。ご自信をキャスティングするにあたって、どんな思いでしたか?

監督:オランダ人の俳優で考えていた人がスケジュールが合いませんでした。時間もなかったので自分で出ることにしました。苦労したのは、監督しながら演技もしなくてはならなかったことです。スタッフが40人もいて、自分自身の役柄にあまり裂く時間がありませんでした。

司会:デビュー作で、監督と俳優の二役は大変でしたね。

監督:デビュー作で、予算も5万ユーロという少ない製作費で、2カ国で撮影しました。短い時間で仕事をしなくてはならなくて、多くのことを学びました。

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★会場とのQ&A
― 最後がよくわかりませんでした。サッカーで喧嘩した相手に、最後にまた挑んだのは?

監督:脚本段階で、アナの父に向かっていくことを考えましたが、ボコボコに打ちのめされるのも覚悟でサッカーに向かう最後にしました。

― 重たい内容でした。ラストでアナとアルバンを新しいカップルとして希望を見せようとしたのですか? それとも?

監督:白黒はっきりせず、グレイゾーンにしています。ザナが戦争でどんな経験をしたのか、アルバンがレイプの結果として存在している子。それをわかって、前進するのは簡単なことではありません。第二次世界大戦やその他の戦争でも起きていること。コソボだけで2万人がレイプの被害者です。家族を目の前で殺された人もいます。簡単に前を向いて行こうよとはいえない。希望だけでなく、勇気を持って前に進もうと。

― ザナやアルバンを演じたのは、どういう人たちですか?

監督:アルバンはオランダ人。ザナはコソボ出身。親子として違和感のない二人を選びました。アルバンは歴史も知らなくて、何も背負ってない人物です。彼は短編でも起用したことがあります。ザナはサンダンス映画祭に出品された映画にも出演している女優です。

― 一作目にこの内容を選んだのは?
戦争は終わっても、後を引きずっていることを伝えてくれて、素晴らしい作品でした。


監督:人に押し付けることはしたくないので、個々人で感じてほしい。反戦映画か?とも言われますが、どれほど映画で説明できるのかと思います。

司会:次の企画は?

監督:脚本の助成金を受けました。コソボで撮影します。4つのエピソードが繋がる内容です。『腐敗』をテーマにしたブラックコメディです。

*****
会場の外で、観客の皆さんが監督を待ち構えていました。
中には、アルバニア語で話しかけた方も!
最後に私も立ち話。映画に出てきたコソボの町は、監督の故郷の町。風情のある町にいつか行ってみたいと申しあげたら、これから観光誘致に力を入れるので、行くなら早いほうがいいとのことでした。(景山咲子)


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 デイリーニュース 7月15日のQ&A

http://skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180715_dairy11.html





SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018  『横道世之介』沖田修一監督&高良健吾Q&A ~6年経っても誰かの心にあるのが幸せ~(7/21)

15周年を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」として、埼玉出身の4人の監督作品が上映されました。
そのうちの1本『横道世之介』を拝見。主演の高良健吾さんに惹かれて観にいったのですが、これがもう、愛おしい作品でした。
上映後、沖田修一監督と、主演の高良健吾さんが登壇。6年前に公開され、今も愛され続けている『横道世之介』について、大いに語ってくださいました。

『横道世之介』 A Story of Yonosuke
監督:沖田修一
出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛
2012年/日本/160分
配給:ショウゲート
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*ストーリー*
1987年春、横道世之介は大学生となり、長崎から上京してくる。入学式で隣にいた倉持一平や、教室で最初に言葉を交わした阿久津唯と、成り行きでラテンアメリカ研究会に入部し、サンバの練習をする日々。バイト先の高級ホテルでは、謎の年上の美女と知り合い憧れるが、思いをなかなか告げられない。一方、同級生の加藤に誘われて行ったダブルデートで、相手となった筋金入りのお嬢様・与謝野祥子からは気に入られ、積極的にアプローチされる。夏休み、帰郷する世之介を追って、祥子は長崎の漁村にやってくる・・・
映画は、16年後に、それぞれの登場人物が世之介とのエピソードを思い出す場面を差し込みながら進んでいく。そして、さりげなく知らされる写真家となった世之介の16年後の運命・・・

☆大学に入った頃のこと、サークルの仲間たちのこと、付き合った男の子たちのこと・・・ いろいろなことを懐かしく思い出しながら観ていたら、思わぬ世之介の人生の最期。それからは、語られるエピソードの一つ一つが、さらに愛おしく感じました。
160分の間に、横道世之介という人物は、観ている者ひとりひとりの心の中に入り込んでいったのではないでしょうか。
そんな私たちの前に、吉田修一の同名小説を映画化した沖田修一監督と、横道世之介を体現した高良健吾さんを迎えて、Q&Aが繰り広げられました。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 公式サイトのデイリーニュース
http://www.skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180721_dairy25.html

◆上映後のQ&Aに向日葵姿で登壇
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サンバを踊った時の向日葵の花の縁取りをつけて、沖田修一監督と高良健吾さんが登壇。
まだ映画館に残されていたのだそうです。

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沖田監督:埼玉の映画祭に参加できて嬉しいです。川口駅にも映画祭ののぼりがあって、町ぐるみでやってる感じがいいですね。
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高良健吾:初めての映画出演作『ハリヨの夏』(2006年)で参加したのが、SKIPシティの映画祭でした。当時は駆け出しで、お迎えもなくて、電車とバスでここまで来ました。映画祭といえば祭りなので、甚平がいいかなと思って着てきたら、その姿でQ&Aはダメだよと言われました。

●会場とのQ&A
― 人物が皆チャーミング。演出はどのようにされたのですか?

監督:2012年に撮ったもので、当時どんな風に撮ったか全然思い出せません。あまり何も言わなかったと思います。原作は読んだ? (と高良さんに振る監督)

高良:どうだったか・・・ なんで自分はこういう風にやったのか思い出せない。何も考えないでやってたような。景色は思い出すのですが・・・

監督:カメラの向こうに向かってお芝居するんじゃなくて、世之介として生きてる感じでと。

― 初めて観たのは中学生の時。今、19歳で専門学校生です。世之介も青春してていいなと。お二人は20歳の頃、何をしていましたか? また、何を大事にしていましたか?

監督:大学2年生で、映画の仕事をしたくてコースを選んだはずなのに、間違ってカメラマンのコース。でも映画を作りたいなと思ってた。

高良:16歳から俳優を始めて、20歳の時に『蛇にピアス』に吉高(由里子)と一緒に出演。吉高は19歳。ほかにも、『ひゃくはち』『フィッシュストーリー』など仕事は順調だったけど、吉高と「やめたい!」と言ってたこともあります。明日、吉高は30歳。僕は、31歳がもう近いです。早いっすね.変わってますよ。変わりたくて、変わってる。

ーこの作品が大好きで、出会えてよかった。作ってくださってありがとうございます。お二人の、この作品で好きなところは?


高良:この作品が好きでといわれることが多くて、自分の体験の思い出と共に観てくれているのだろうなと。そこが好きなところです。人が出会って、別れて、過去に会ったことで得したような気がするというのがとてもいい。これ以降の仕事も変わっていったので、特別の作品です。今日、30の歳で観れてよかった。

監督:世之介体験をしてしまって、ついついまた同じようなことを求めてしまいます。何年ぶりかに観て、いろんなことを思い出しながら観ました。漁師のおじいちゃんのアップも忘れてた。(笑)

― 世之介はいろんな人の心に残っているんだろうなと。お二人の心に残っている人は?

監督:いっぱいいますね。自分のことも誰かが覚えてくれているのだろうなと。
疎遠になった人のこともいろいろ思い出しました。木村くんって、全然仲良くなかったのに、なぜか思い出していたら、偶然喫茶店で会いました。

高良:たくさんいますね。30になった時にも思い出す人がたくさんいますね。

― 原作の吉田修一さんが、続編の小説の連載を始められましたが、続編の映画化の予定は? ぜひ高良さんと吉高さんの主演でお願いしたいです。

高良:このチームじゃないといやですよね。比べられてしまうから。

監督:まわりからも、たくさん続編の希望を聞いてるので考えます。
(会場から大きな拍手)

― 公開当時も台詞を覚えるほど観ていて、いつも笑ってしまいます。撮影中、これは大笑いしたという場面は?

監督:後半になって、吉高さんが監督に怒られたことがないというので、台詞を3回かんだので、4回目もかんだら怒ろうと。で、怒ったのですが、本人も誰も聞いてなくて・・・

高良:役作りで太ろうと思って一生懸命食べてたら、吉高も合わせて食べたらしくて太っちゃって、水着姿もふっくら!
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― 上京して部屋に行ってみたり、サークルを回ったり、誰しも共感できた映画でした。お二人は?

高良:僕も上京組。いつしか「東京に帰る」という気持ちになりましたね。

監督:あった、あった! 昔の地方組って、そうだったなと。あと、大学に入って一人で部屋にいたこととか、サークルに誘われるときのこととか。

◆最後に
監督:僕自身、数年ぶりに観て、むしろ楽しんで、いろんなことを思い出しました。この作品を好きという声を聴けたので、これからの励みにします。幸せな時間でした。

高良:僕も幸せな一日でした。6年前に撮った映画で、まだ声をかけてもらえて幸せです。インドネシアでも最近上映されました。誰かの心の中にある映画というのが幸せです。今、ここにいるこの時間がとても贅沢に感じます。

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フォトセッションは、会場のファンの皆さんにも開放されました。笑顔を振りまく2人でした。

*****

別の会場で上映されていたロシア映画『スポットライト』のQ&Aを脱け出して、『横道世之介』の会場に走って、最前列の取材席に案内していただきました。最前列の両脇は、すでに埋まっていたのですが、実は熱心な高良健吾さんのファンの女性たちでした。横道世之介の団扇を持っての参戦。夕方5時からの上映に、午前中から並んでいたファンもいるとか。(わかる、わかる!) 真っ先に質問の手を挙げたのも、私の隣に座っていたファンの方でした。
私は公開当時に観てなくて、今回初めて観たのですが、「皆の心に残る映画」と実感しました。実は、このところ、日本の青春映画で何とはいいませんが、観た時間がもったいなかったと思う作品が続きました。160分という長い『横道世之介』を観た時間は、とても貴重なものとなりました。映画って、やっぱりいいな。(景山咲子)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018『ザ・ラスト・ス―ツ (仮題)』監督Q&A(7/16) ★邦題『家(うち)に帰ろう』(2018/12/22公開)

★国際コンペティション 観客賞受賞!

『ザ・ラスト・ス―ツ (仮題)』
2017年/スペイン、アルゼンチン
監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、アンヘラ・モリーナ、ナタリア・ベルベケ、フリア・ベールホルド、オルガ・ボラス

*ストーリー*
ブエノスアイレスで仕立て屋を営んできたアブラム。88歳となり右足は不自由だ。娘たちは彼を老人ホームに入れることを決め、家も売ってしまった。明日は老人ホームに入るという夜、アブラムはそっと抜け出し、故郷ポーランドを目指す。戦争中、ユダヤである自分を匿ってくれた親友に、彼のために仕立てたスーツを届けるという約束を果たしにいくのだ。
知人に切符の手配を頼むが、すぐに飛べるのはスペインのマドリード行き。そこからはフランス、ドイツを経由してポーランドに列車で行けるという。ドイツの地は踏みたくないアブラム。行く先々で手助けしてもらいながら、ついにポーランドに着く・・・

◆パブロ・ソラルス監督Q&A

7月16日(月・祝)11時からの上映が終わり、感動覚めやらぬ観客の前にパブロ・ソラルス監督が登壇し、Q&Aが行われました。
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司会(長谷川さん):1日以上かけて、いらっしゃった監督、どうぞ!

監督: ブエノ! 多くの方に初回のラストス―ツをご覧いただきまして、ありがとうございます。この映画は、私の長い間の夢が実現したものです。最初の脚本を書いたのは、2004年です。私の祖父へのオマージュです。地球の反対側から、素晴らしい文化の国にやってきて、私の映画を観ていただけるのは、感動です。

司会:ホロコ―ストを扱った映画は多いですが、ユーモアに包まれ、ロードムービーの形をとって、エンタメの要素もあります。このようなスタイルをとったのは?

監督:私の父方の祖父へのオマージュでもありますが、ロードムービーは愛されているスタイル。私の一作目もそうでした。ホロコ―ストの過去のことでなく、今の世界に生きる人々の話。地球を半周して、友人にス―ツを届けます。当時は私が今生きているのと真逆の時代。今は破壊の時代ではなく、再構築の時代です。軽いタッチでユーモアを交えるスタイルがいいと思いました。

*会場との質疑応答
― 最初の飛行機で会ったミュージシャンの男性が個人的には好きです。もっと出番があればと思いました。手助けする3人の女性のキャラクタ―が、それぞれ魅力的でした。(と、若い女性が涙ぐみながら語りました)

監督:感動していただき、ありがとうございます。ミュージシャンのレオは私も大好きな人物です。3人の女性の設定は、私自身が脚本を書いていながら、あとから観客として映画を観て、なぜあのような設定にしたのかと驚きました。3人の女性に助けられるわけですが、恐らく個人的な思いが3人の女性のキャラクターに反映したのだと思います。

―(男性)年間150本位映画を観ていますが、本作はほんとうに感動しました。もしこの場に配給の方がいましたら、ぜひ公開してほしいです。ホロコーストを扱っているけれど、現代のこととして考えてほしいとおっしゃっていました。でも、過去にユダヤ人にどんなことがあったかを考えてほしいと思います。過去の知識として持つのでなく、感情として受け止めてほしいと思います。ドイツ人だけでなく、人類皆が認識すべきだと思います。

監督:はい! もちろん! 
実は日本で配給が決まっていて、この場に配給の方もいらっしゃいます。繊細な目で観て、映画の配給を決めてくださったことに感謝申しあげます。
(★彩プロ配給で、2018年12月22日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。邦題『家(うち)に帰ろう』公式サイト:http://uchi-kaero.ayapro.ne.jp/
今、お話くださったビジョンに同意します。現在もホロコーストと同様のことが繰り返されています。生き延びた子孫の一人として語り継ぐ必要があると思っています。ほかの人々の文化や国を下に見る傾向も続いています。再び起きる可能性があります。

ここで、どうしても話しておきたいことがあります。
主人公アブラムを演じた役者ミゲル・アンヘル・ソラさんは、私が11歳の時からファンの方です。主人公の設定より、25歳くらい若いのですが、撮影に臨むときには2時間くらいかけてメイクアップをほどこして老けて見えるようにしていました。歩き方なども研究してくださいました。彼の素晴らしい演技で、この作品が出来たことを皆さんにぜひお伝えしたいです。

― (男性)主人公がユダヤ人で、ドイツの地を踏みたくないと言っていたのが、踏むことができるようになります。73年経ちますが、ユダヤ人のドイツ人に対する感情は良い方向にいっているのでしょうか?

監督:一つ言えることは、国全体や、ある文化を一括りに言えないということです。
祖父は今96歳。1969年にドイツに行かなければならなくなったとき、絶対、ドイツの土は踏みたくないと言ったのを、この映画に入れ込みました。祖父は、この1月に映画を観てくれて、劇場から出てきて私を抱きしめてくれました。ドイツの地を踏ませたくないというシーンがよかったと褒めてくれました。そして、もしドイツで上映されることになれば、一緒にドイツに行くとも言ってくれました。

司会:残念ですが、最後の質問になってしまいました。
(大勢から手があがり、監督も嬉しそう。でも、指名せずに、ご自身で語り始めました)

監督:1975年、私が5歳の時に祖父に「ポーランド人なの?」と聞いたら、黙ってしまいました。父から、絶対、ポーランドの名前を出しちゃいけないと言われました。それが、この映画の原点です。
映画は文化の懸け橋の役割もあると思います。

名残りを惜しみながらQ&Aは終了しました。

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会場のロビーでフォトセッション。
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オフィシャルの撮影が終わったあと、熱心な観客とのふれあいが続きました。

7月17日、都内でパブロ・ソラルス監督にインタビューの時間をいただきました。
ポーランドのことを一切口にしなかったお祖父さまのことや、作品に込めた思いを、たっぷりとお伺いしました。 景山咲子

『家(うち)に帰ろう』 パブロ・ソラルス監督インタビュー 
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463240293.html

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★『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』は、7月19日(木)17時から多目的ホール、7月21日(土)21時からMOVIX川口で上映されます。19日の回には上映後にQ&Aも行われ、パブロ・ソラルス監督が再登壇する予定です。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 デイリーニュース 
http://skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180716_dairy14.html


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018

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期間:2018年7月13日(金)~7月22日(日) 10日間
会場:SKIPシティ 映像ホール/多目的ホールほか〔埼玉県川口市上青木3-12-63〕
MOVIX川口〔埼玉県川口市並木元町1-79 アリオ川口3F〕
主 催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
共 催:MOVIX川口

公式サイト:http://www.skipcity-dcf.jp/index.html

デジタルシネマの新しい才能を発掘する目的で2004年にスタートした「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」も15回目を迎えました。思えば、発足当時は、まだフィルムが主流の時代でした。あっという間にデジタルの時代になりましたが、この映画祭が若手クリエーター育成の場として益々発展することを願っています。

15周年の節目の年、様々な特集が組まれています。
会期中にはSKIPシティ夏祭りも開催されて、お子様も一緒に楽しめる映画祭です。
臨時保育サービスもあります。(事前予約制)

SKIPシティへのアクセス:http://www.skipcity-dcf.jp/access.html
映画祭期間中は、JR川口駅東口より無料直行バスがあって、楽々会場に行けます。(所要約12分)
今年は、川口駅からのほか、SR鳩ヶ谷駅からも期間中の土日祝のみですが無料シャトルバスが運行されます。

◆オープニング上映
『君がまた走り出すとき』
川口に住む、ある市民ランナーの実話が導く再生ストーリー。
監督:中泉裕矢
出演:寛一郎 山下リオ 菜葉菜 辻本祐樹 綱島恵里香 安居剣一郎・長谷川初範 浅田美代子・松原智恵子

◆国際コンペティション
『ダーリンの憂い』(デンマーク・スウェーデン)
監督:ビアギッテ・スターモス

『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』(フィリピン・韓国)
監督:ナウルズ・パギドポン

『最後の息子』(韓国)
監督:シン・ドンソク

『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』(スペイン・アルゼンチン)
監督:パブロ・ソラルス

『スポットライト』(ロシア)
監督:キリル・プレトニョフ

『ナンシー』(アメリカ)
監督:クリスティーナ・チョウ

『彼女はひとり』(日本)
監督:中川奈月

『ザ・スワン』(アイスランド・ドイツ・エストニア)
監督:アウサ・ベルガ・ヒョールレーフズドッテル

『あの木が邪魔で』(アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ)
監督:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン

『招かれざる者』(コソボ・オランダ)
監督:エドン・リズヴァノリ


◆国内コンペティション 長編部門
『あの群青の向こうへ』
監督:廣賢一郎

『キュクロプス』
監督:大庭功睦

『情操家族』
監督:竹林宏之

『岬の兄妹』
監督:片山慎三

◆国内コンペティション 短編部門 

◆15周年特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」
埼玉出身の監督の中から石井裕也、入江悠、沖田修一、𠮷田恵輔の4人にスポットを当て、彼らの話題作を特集上映。

◆15周年特別企画「名匠たちの軌跡」 入場無料(当日各回先着順)
『A.K. ドキュメント黒澤明』(フランス・日本)
監督:クリス・マルケル

『映画が時代を写す時-侯孝賢とエドワード・ヤン』(日本)
監督:是枝裕和

『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』(オーストリア・フランス)
監督:イブ・モンマユール

◆15周年特別企画「怪盗グルーシリーズ一挙上映」 (日本語吹替版)
『怪盗グルーの月泥棒』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー

『怪盗グルーのミニオン危機一発』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー

『怪盗グルーのミニオン大脱走』(アメリカ)
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ

◆バリアフリー上映 (日本語字幕+音声ガイド/UDCast方式上映)
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
監督:瀬々敬久
配給:松竹