SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『宴の日』

国際コンペティション
宴の日 英題:Festival 原題:잔칫날

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©2020 Storyteller Pictures & Kyeom Film All rights reserved

監督:キム・ロッキョン
出演:ハジュン、ソ・ジュヨン
2020年 / 韓国 / 108分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl03.html

*物語*
イベント司会などで日銭を稼いでいるギョンマン。入院中の父を妹ギョンミと交代で看ていたが、亡くなってしまう。悲しむ暇もなく、通夜の食事から祭壇や棺など、葬儀社に選択を迫られる。蓄えはないから節約するしかない。そんな折、売れっ子の先輩から、自分の代わりに翌日港町で開かれる老婦人の傘寿の誕生日会の司会に行ってほしいと頼まれる。ギャラは200万ウォン。父が亡くなったとは言えず、葬儀を抜け出して港町に行く。依頼主から、両親は陽気な夫婦だったけど、父が亡くなってから母が落ち込んでいるので、笑わせてほしいと頼まれる。踊りの時に着てほしいと、父親が愛用していた韓服を渡される。亡き夫の服を着たギョンマンを見て、「ヨボ~(あなた)」とにっこり笑って倒れる老婦人。救急車で運ばれるが、亡くなってしまう。ギョンマンが手を取ったことから倒れたと疑われ、警察に取り調べられ、なかなか帰してくれない。葬儀社からは、まだ決めてなかった棺のことで電話がかかってくる。妹ギョンミも、喪主がいないことを親戚に責められ、途方に暮れてしまう・・・

傘寿のお祝いで亡くなった老婦人の葬儀は、息子が有力者らしく盛大。ギョンマンならずとも、格差に溜息が出ます。肉親が亡くなり、呆然としている時に、葬儀の段取りをしなくてはいけないのは、ほんとにつらいものです。葬儀社に言われるままになってしまいがちですし、せっかくならお金をかけてあげたいとも思うものです。そんな悲喜こもごもを、ユーモアも交えて描いた作品でした。韓国の葬儀や誕生祝の様子を垣間見れたのも興味深かったです。


◆キム・ロッキョン監督インタビューより
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公式サイト動画はこちら

撮影は、父の葬儀をした場所で
9年前に父を亡くしてから、いろいろ考えるようになりました。
葬儀場は大切な人を見送る場所。3日間の間に、お金を重要視する人がいたり、内輪で喧嘩が起こったりするのを子どもの頃にも見たことがありました。愛する人を思い、悲しみに浸る3日間でありたいと思いました。
「後悔しないで生きていきたい」という自身の思いからお葬式をテーマにしました。

父の葬儀で出せなかった感情を主演二人に託した
兄ギョンマンは、痛みを抱えているのに表に出せないという人物です、
ハジュンは「バッドパパ」(18)などテレビドラマで活躍していますが、オーディションの時に明るい姿しか見せないのに、あとから映像を見てみたら、それだけでないのを感じました。もう一度会ってみたら、私と似ていて、ギョンマンにも似ていて、お願いしました。二人でギョンマンを作っていきました。いい目をしていて、それも決め手でした。
妹ギョンミは、兄妹二人が一人の人物に見えるようにしたいと、ハジュンさんに決めた後に、ソ・ジュヨンさんにお願いしました。二人一緒のシーンは多くないのですが、撮影が終わってから、むしろ親しくなってました。
私は父の納棺の時に、我慢して感情を出せませんでした。私が当時出来なかったことを主演の二人に託しました。
映画を観て、人生で大切なことは何か、そして、大切な人のことを思っていただければと思います。

監督と俳優の両方を続けていきたい
本作は、初監督作品ですが、自分の俳優経験が役に立ったと思います。でも、俳優経験に基づいて、出演する俳優たちにお話しするので、しつこいと思われたかもしれません。心を使って演じないといけないので、心が傷つかないように心がけました。
これからも監督と俳優の両方をやっていきたいです。
監督としては、2本目の長編を撮り終えました。このインタビューの背景は、その映画のセットです。

(景山咲子)




SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『ケンザの瞳』

国際コンペティション
ケンザの瞳 Buladó
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©Gregg Telussa

監督:エチェ・ジャンガ
出演:ティアラ・リチャーズ、エベロン・ジャクソン・ホーイ、フェリックス・デ・ローイ
2020年 / オランダ、キュラソー / 86分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl01.html

イグアナを射止め、バイクの青年たちをかわし、颯爽と自転車で家路に着く11歳の少女ケンザ。パトカーにはばまれる。警官の父が降りてきて、「おじいちゃんの迎えを待てと言っただろう」と叱る。
夕食。パピアメント語で話す祖父に、「この子の為にオランダ語で話してくれ」と父。
向こうっ気の強いケンザだが、学校では「警官の娘だからと生意気。変なじいちゃんもいる」といじめられている。祖父は木にいろいろぶらさげて精霊の木として崇めている。
ある日、校門から中に入らず墓地に行き、母の墓の上で寝るケンザ。
家では、母のものには触らないように言われているが、死んだ犬に母のドレスを羽織らせてみる。「汚すな」と怒る父。ケンザの記憶にない母。とても勇敢だったと聞かされる。「どんどんママに似てきた」と言われる。
3人で出かけた日、精霊の恰好をして馬に乗った祖父はそのままいってしまう・・・

死はいつもそこにある
共に生きることを学べば自由になれる

カリブ海にあるキュラソー島を舞台に描いたスピリチャルな物語。
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エチェ・ジャンガ監督は、キュラソー出身の父とオランダ生まれの母の間に生まれた方。何世代にもわたり自身の一族に伝わる古い奴隷たちの話を基に、物語を綴られました。
ケンザを演じたティアラ・リチャーズは演技未経験。祖父役のフェリックス・デ・ローイは詩人、作家、劇作家、映画監督、芸術家、キュレーターとマルチに活躍する、キュラソーを代表する文化人。

初めて聞くキュラソーという地名。
ベネズエラの北約60kmのカリブ海にある島。
17世紀からオランダ植民地だったキュラソー。2010年10月10日、オランダ領アンティルが解体され、キュラソーは単独のオランダ王国構成国の一つとなる。
アフリカ系黒人とオランダ系白人を始めとして、さまざまな民族で構成される。
宗教はカトリックとプロテスタントが中心。
と、ウィキペディアに書かれています。

ここで気になったのが、映画の中に出てきたダビデの星と、ケンザが母のお墓の上に石を置いたこと。もしかしてユダヤ?
「1651年、12人のユダヤ人が島に住み、1732年に西半球で最も古いシナゴーグを建てた」とありました。映画の中に出てきたのはキリスト教会でシナゴーグではなかったような気がします。要確認!

さらに、「キュラソー・ビザ」なるものが・・・
第二次世界大戦前、ナチス・ドイツに迫害されたユダヤ人たちが出国するために用いられたのが、オランダ亡命政府の非常勤領事ヤン・ズヴァルテンディクによって発行されたキュラソー島へのビザであった。当時のオランダは、ユダヤ人への偏見が比較的少なかったため、他の欧米諸国が発行していなかったユダヤ人向けビザを発行していた(もっとも、本国はナチス・ドイツに占領されたため、植民地であるキュラソー島向けビザを変則的に発行した)。

『ケンザの瞳』を通じて知ったキュラソー。もっと知りたくなりました。


(景山咲子)


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『ライバル』

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021
国際コンペティション

ライバル 英題:Rival 原題:Rivale

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©Mila Teshaieva


監督:マークス・レンツ
出演:エリツァー・ナザレンコ、マリア・ブルーニ、ウド・ザメル
2020年 / ドイツ、ウクライナ / 96分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl08.html

ウクライナで暮らす9歳のロマンは、祖母が亡くなり、ドイツにいる母の元に赴く。業者にお金を払っての密入国だ。母は、糖尿病を患う太った男ゲルトの看護師として不法で働いている。母はゲルトの妻を3年にわたり看護していたが5か月前に亡くなり、その後も雇ってもらっているとロマンに語る。ある夜、ロマンは母がゲルトとベッドで戯れているのをみてしまう。ゲルトが大事にしている亡き妻の人形の髪の毛を切るロマン。
ある日、母が倒れる。不法滞在なので、ゲルトは病院の入口に母を放置して、森の中の別荘にロマンを連れて潜む。言葉は通じないが、少しずつ打ち解ける二人。かくれんぼをしていた時に、ゲルトが倒れる。救急車を呼びたいが、携帯が通じない・・・

母を取られたような気がして、ゲルトに敵対心をみなぎらせるロマン。そんなロマンに、ママが大好きで、ロマンとも仲良くしたいと、ロマンが理解しないドイツ語で一生懸命語るゲルト。そのゲルトも倒れてしまって、ロマンは銃を構えて敵と対峙するしかない状態に。とても印象的な場面で幕切れ。


◆マークス・レンツ監督インタビューより
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公式サイト動画はこちら

ウクライナからドイツへという発想は?
ドキュメンタリーを撮っていた時に、子連れで不法滞在して働く女性に出会いました。老齢者の介護、雇い主と24時間一緒にいて、共に依存関係にありました。息子とそれぞれの力関係に興味を持ちました。ドイツ人の雇い主を悪人にしないように脚本を書きました。システムに問題があるのです。

少年には脚本を見せずに撮影
9歳の少年には、脚本を見せないで、各シーンごとに説明しました。順撮りして、少年の目線で描きたいと思いました。脚本は細部まで書いていました。

奇跡的にエリツァーを見つける
少年が映画を背負います。キエフで何百人にも会いました。なかなか見つからなくて、途中で女の子にしようかなとも思ったのですが、エリツァー君の動画が届いて、質問の途中で泣き出したのが目に留まりました。キエフで実際に会って、ハードな状況を演じられると確信しました。

(景山咲子)




SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『シネマ・オブ・スリープ』

国際コンペティション  審査員特別賞
シネマ・オブ・スリープ Cinema of Sleep

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©Inferno Pictures


監督:ジェフリー・セント・ジュールズ
出演:デイヨ・エイド、ゲテネシュ・ベルへ、ジョナス・チャーニック、オルニケ・アデリイ、デイヴィッド・ローレンス・ブラウン、リック・ドブラン、ジョン・B・ロウ
2021年 / カナダ / 105分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl02.html

*物語*
誰かを殺してしまったアンソニー。実は、映画館にいて、アンソニーはスクリーンに映る自分自身のモーテルでの出来事を観ていたのだった。周りの観客は、皆、寝ている。
アンソニーは難民申請中で、ナイジェリアに暮らす家族をアメリカに呼び寄せようとしている。ある晩、泊まっているモーテルの部屋に、「追われてるの」と下着姿で女性が助けを求めて飛び込んでくる。自分のシャツを貸し、サンドイッチを買ってきて一緒に食べる。
アンソニーは、ナイジェリアでは図書館の司書をしていて、アメリカの昔の映画が好きで、映画史の教授になりたいと語る。アブリヘッドと名乗る女性はエリトリアの出身で、エリトリアの映画は戦争ばかり、ナイジェリア映画がロマンチックで現実から逃避できて好きと語る。
妻を探していると、男がチラシを置いていく。今、部屋にいる彼女の写真だ。隣室のフランクが飲みに誘いに来たり、刑事が来たりするたびにアブリヘッドを隠す・・・

『チャップリンの移民』の移民船に乗っている人たちが自由の女神が見えてどよめく場面、『カサブランカ』は難民を描いた傑作だと語るアンソニー、『マルタの鷹』のサム・スペードに憧れて育ったと語る刑事など、クラシック映画が語られ、映画愛に溢れた本作。どこまでが現実で、何が夢なのか、くらくら。最後に明かされる現実に、あっと驚かされました。
危険をおかしてまで新天地を求めて故国を出なければならない人たちが、今もあとを絶ちません。やむを得ず難民となった人たちが安住の地を見つけられることを祈るばかりです。



◆ジェフリー・セント・ジュールズ監督インタビューより
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公式サイト動画はこちら

脚本について
夢の中にいて愛する人のところに戻りたいけれど、はばまれてパニックになるという初稿を書いて、しばらくして、異文化の世界の人たちをテーマに書き直しました。色々なことが腑に落ちて、収まりました。時間軸が行ったり来たりします。ネタバレしないで説明するのは難しいですね。

クラシック映画へのオマージュ
箱に入ったイメージを持たせたいと、画角はスタンダードサイズにしました。映画『カサブランカ』などと同じ画角です。テレビも同じ画角です。携帯を使っているので、現代の話。

観てきた映画が作る国のイメージ
モーテルの部屋が主な舞台ですが、外は闇。スタジオに作った部屋で、アメリカのどこなのか判断できない工夫をしました。刑事もありがちな制服。ハリウッド映画を観てきたアンソニーの記憶にあるアメリカです。一方、アブリヘッドはナイジェリア映画を観て育ちました。

役者の文化的背景を取り入れた
アンソニーを演じたデイヨ・エイドさんは、ナイジェリア系カナダ人で、名の知れた俳優です。アブリヘッド役は、象牙海岸出身で考えていました。プロデューサーの一人がエリトリア人で、ゲテネシュ・ベルへさんを紹介してくれて、オーディションしたらいいなと起用しました。エリトリア人の背景を生かすことにしました。
カナダのウィニペグで撮影したのですが、ウィニペグには西アフリカ系のコミュニティがあって、そこで子役を紹介してもらいました。

(景山咲子)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『国境を越えてキスをして!』

国際コンペティション 観客賞
国境を越えてキスをして! 原題:KISS ME KOSHER  英題:Kiss Me Before It Blows Up

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©Fireglory Pictures GmbH

監督:シレル・ぺレグ
出演:モラン・ローゼンブラット、ルイーゼ・ヴォルフラム、リヴカ・ミカエリ、イリット・カプラン、ジョン・キャロル・リンチ
2020年/ドイツ/105分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl04.html

*物語*
恋多きユダヤ女性シーラ。ついに出会った理想の恋人ドイツ人のマリアが、赤いハートの風船を持ってテルアビブにやってくる。道の真ん中でキスする女性二人をみて、正統派ユダヤの男が罵倒しながら通り過ぎる。シーラの弟リアムは、学校でユダヤやパレスチナなどをテーマに映画を撮る課題を与えられ、ユダヤ人とドイツ人のカップルは格好の題材だと喜び勇んでカメラを向ける。シーラはマリアと結婚するつもりだが、両親に話す前に、ホロコーストを生き抜いた祖母にまずマリアのことを認めてもらいたい。エルサレムで暮らす祖母に会いにいく。その祖母の恋人は実はパレスチナ人だ。やがて、マリアの両親がドイツからやってくる。マリアの母は、祖父と両親がナチの信奉者だったことを打ち明ける・・・

ユダヤ人とドイツ人、ユダヤ人とパレスチナ人という歴史的に確執のある民族のカップル、それに加えて同性愛という、恋を実らせるには大きな壁。これをコメディタッチで描いて、壁を吹き飛ばさんばかりの物語になっています。恋多きシーラの元カノが何人かマリアの前に現れたり、弟リアムのおふざけが過ぎたり、ちょっとドタバタの感も。パレスチナ人の恋人がいる大ママのキャラも凄味があります。
本作は、制限視聴回数500回に達して、映画祭会期内に配信終了するという人気でした。
そして、観客賞受賞! (実は、私はちょっと引きました・・・)



◆シレル・ぺレグ監督インタビューより
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公式サイト動画はこちら

タイトルについて
原題は、『KISS ME KOSHER』ですが、「コーシャ(ユダヤの戒律・慣習に従った、清浄な食べ物等)」を日本語にするのは難しいので、邦題は別に考えたことを映画祭事務局から伝えられた監督。「いいタイトルね!」とまず一言。
「売れるタイトルを配給会社が考えます。本作は古典的なラブコメではないので、タイトルによってはミスリードしてしまいます。
私自身レスビアンなので、私にとって、LGBTQの要素は大事です。一般的でないと思われる私の人生を、普通であることとして描きたいと思いました。ジェンダー、宗教などいろいろなことが混ざっているのが、この映画です。笑いによって人間は救われます。」

本作を作った思い
「ホロコーストは過去のことではなくて、現在も直面することです。イスラエルでも、ドイツでも。いかに現代を生きる人が影響を受けているのか。過去のことに敬意を表しつつ、未来に向かって避けずに問いかけることも必要です。やさしさとユーモアを持って接すれば、問題を解決できるのではと思います。」


◆イスラエルでのLGBTに対する状況
シーラを演じたモラン・ローゼンブラットは、2018年の東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」で上映された『赤い子牛』で、明るく行動的な少女ヤエルを演じていて、やはり女性どうしで淡い恋心を抱く役柄でした。
『赤い子牛』の上映後のQ&Aで、ツィビア・バルカイ・ヤコブ監督がイスラエルでのLGBTに対する状況について下記のように語っています。

「テルアビブでは、非常にオープンです。その他の地域は、まだまだ古い習慣が根強く残っていて、宗教家の影響も強く、タブーがあります。宗教的なコミュニティの中でも、同性愛者の方たちが認めてもらおうと活動を始めているケースもあります。まだまだ始まったばかりです」

『国境を越えてキスをして!』の中でも、シーラの母が「レスビアンは病気扱いね」というと父が「最近までは病気扱いだった」という会話がありました。少しずつ社会が変わってきているのを感じます。

東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」『赤い子牛』10/27 Q&A (咲)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/463395891.html

(景山咲子)