イスラーム映画祭6

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【イスラーム映画祭6】の上映作品が発表されました。
今回は10作品(初公開7作品)+アンコール4作品(名古屋と神戸は2作品)が上映されます。

日程等 2月13日現在

☆渋谷ユーロスペース
 2021年2月20日(土) - 2月26日(金)
  ※当初、3月5日(金)までの予定で、 2週目は1日1回夜上映予定でしたが、緊急事態宣言が延長され、2週目は春以降に延期となりました。

☆名古屋シネマテーク
 2021年3月20日(土) - 3月26日(金)

☆神戸・元町映画館
 2021年5月1日(土) - 7日(金)

<イスラーム映画祭6延長戦>
☆ユーロスペース ※1週間1日1回夜
 4月中旬以降

「劇場が閉じない限りはコロナ対策を徹底したうえで開催する予定です」とのこと。
どうぞお楽しみに♪

【イスラーム映画祭6上映作品】
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(1)『結婚式、10日間』原題・英題:10 Days Before the Wedding
2018年/イエメン/121分/アラビア語
監督:アムルー・ガマール Amr Gamal
★日本初公開
“史上初めてイエメン国内で商業公開された”記念すべき作品。
舞台は南部の港町アデン。内戦の影響で結婚を阻まれてきた、ひと組のカップルの式までの道のりがコメディタッチで描かれます。


(2)『私の娘の香り』
原題:Kizim Gibi Kokuyorsun 英題:Scent of My Daughter
監督:オルグン・オズデミル  Olgun Özdemir
2019年/トルコ=アメリカ=フランス/96分/トルコ語・フランス語・英語・クルド語・アラビア語 字幕:日本語 / 英語 / トルコ語
★日本初公開
2016年7月14日、南仏ニースで起きたテロで家族を亡くし、父の遺言に従って遺体をトルコで埋葬したアルメニア系フランス人女性と、ISISの拘束からトルコ軍に救出されたものの、難民キャンプにいると思しき姉を捜すため逃走したヤズィード教徒のクルド人少女が出会います。2人は言葉や出自を越えて悲しみを共有し、アメリカ帰りのトルコ人青年の協力で少女の姉を捜しに行くのでした…。
トルコ南部ハタイ県にあるワクフルという国内に唯一残るアルメニア人の村が、共生を謳う場所として登場します。テロや紛争で奪われた無数の命に対する哀悼に充ちた作品です。


(3)『汝は二十歳で死ぬ』原題・英題:You Will Die at Twenty
監督:アムジャド・アブー・アラー Amjad Abu Alala
2019年 スーダン=エジプト=フランス=ドイツ=ノルウェー=カタール/102分/アラビア語
映画祭初のスーダン映画  ★日本初公開

2020年に公開されたドキュメンタリー映画『ようこそ、革命シネマ』が描いた通り、2019年まで30年間続いたイスラーム主義政権下で映画産業が衰退したスーダンで、史上7番目に作られたという長篇作品です。
出生時のズィクル(儀式)で「20歳で死ぬ」と予言されたムザンミル。成長した彼はある日、
洋行帰りの男スライマーンと出会い世界の広さを教えられます…。
スーダンに深く根づくスーフィズム(イスラーム神秘主義)の伝統がよくわかる作品で、
同じくイスラーム社会といっても中東とはまるで異なる風情が美しい映像で描かれています。


(4)『ザ・タワー』原題:Borj 英題:The Tower
監督:マッツ・グルードゥ  Mats Grorud
2018年/ノルウェー=フランス=スウェーデン/77分/アラビア語

2019年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で最優秀作品賞を受賞したアニメ映画
北欧ノルウェーの作家が、レバノンの首都ベイルートのパレスチナ難民キャンプに住むある一家を主人公に、パレスチナ難民70年の歴史を描いた傑作です。
ある年の5月15日“ナクバ”の日。11歳の女の子ワルディは、大好きなひいおじいちゃんのシディがずっと大切に身につけていた鍵を託されます…。
作者はNGO職員の母に連れられ、子どもの頃からパレスチナ難民キャンプを訪れていた経験があるそうです。それゆえに安易な理想主義とは異なる、パレスチナ人に心から寄り添って作った「希望」の物語にきっと胸が熱くなります。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 『ザ・タワー』  ~パレスチナの難民キャンプを描いたアニメーション~  (咲)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/468134874.html


(5)『シェヘラザードの日記』原題:Yawmiyat Scheherazade 英題:Scheherazade's Diary
監督:ゼイナ・ダッカーシュ Zeina Daccache
2013年/レバノン/81分/アラビア語

レバノンのドキュメンタリー映画 ★日本初公開

レバノンのバアブダ女性刑務所を舞台に、演劇を通じたドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いた作品です。演劇は所内で2ヵ月にわたり12回上演されました。
監督はセラピストとしても活動しており、映画はセラピーの様子に加え上演の模様や女性たちへのインタビューで構成されています。
カメラを前に初めて自らの壮絶なDV経験などを語る、彼女たちの言葉に胸を打たれます。
なお、レバノンではその後DVから女性とその家族を守るための法律が施行されましたが、あまり効果的には機能していないようです…。


(6)『ラシーダ』原題・英題:Rachida
監督:ヤミーナ・バシール=シューイフ Yamina Bachir - Chouikh
2002年/アルジェリア=フランス/94分/アラビア語・フランス語

政府・軍とイスラーム主義勢力との対立から始まった1990年代の内戦を題材に、アルジェリア映画で初めて女性監督によって製作された作品です。
そう、『パピチャ 未来へのランウェイ』の、これがオリジンです。
学校教師のラシーダは、ある朝、過激派の若者たちから学校に爆弾を仕掛けるよう脅され、それを拒否したために銃で撃たれてしまいます…。
監督は内戦中に脚本を書き始め、5年の歳月をかけて本作を完成させました。内戦下の残酷な日常を生きた庶民たち、中でも女性や子どもたちの顔の一つ一つが丁寧に描かれています。

アラブ映画祭2005で上映
シネマジャーナル No. 65(2005 夏・秋)に掲載


(7)『痕跡 NSUナチ・アンダーグラウンドの犠牲者』原題:Spuren - Die Opfer des NSU
英題:Traces
監督:アイスン・バデムソイ Aysun Bademsoy
2019年/ドイツ/81分/ドイツ語

ドイツのドキュメンタリー映画  ★日本初公開
2000年代に、ドイツのネオナチ・グループが8名のトルコ系移民を殺害した“NSU事件”。
事件から10年を経て、遺族の声に初めて耳を傾けた作品です。
日本ではあまり知られていませんが、NSU事件はファティ・アキン監督のヒット作『女は二度決断する』の元ネタになった事件です。
現在はドルトムントに暮らす、父親を殺されたある女性の「それでもこの街が好き」という言葉が刺さります…。
ヘイトや人種差別、人類社会が共有すべき問題を声高にならず、しかしはっきりと示す作品です。


(8)『ミナは歩いてゆく』原題・英題:Mina Walking
監督:ユセフ・バラキ Yosef Baraki
2015年/アフガニスタン=カナダ/110分/ダリ語
★日本初公開
現在はカナダ在住のアフガニスタン人監督が、祖父や父親を養うため学校に通いながら路上で物売りをしている12歳の少女を主人公に、彼女の視線を通じてアフガニスタンの厳しい現状を描いた作品です。
主人公のミナを演じる彼女をはじめ、登場する少女少年たちはみな演技初経験。
監督は自らカメラを携え19日間で本作を撮り上げたらしく、アザーンが響くカーブルの街並みは臨場感満点です。
アフガニスタンで女性や子どもが置かれる環境は厳しくも、活発で自己主張も強いミナという女の子をきっと応援したくなります。


(9)『青い空、碧の海、真っ赤な大地』原題:Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi
英題:Blue Skies, Green Waters, Red Earth
監督:サミール・ターヒル Sameer Thahir
2013年/インド/137分/マラヤーラム語・英語・ヒンディー語・オリヤー語・アッサム語・ナガ語・タミル語・テルグ語・ベンガル語
★日本初公開
ケーララのムスリム青年が、突然姿を消した愛する女性の出身地ナガランドを目指して友人とともに4800㌔を旅する青春ロードムービーです。
プリーのビーチ、ナクサライトの村、アッサムの暴動、そして回想で語られる恋人アシとの運命の出会い…。
宗教や民族、様々な経験を得ながら成長してゆく若者の姿がインド各地の美しい大自然とともに描かれます。
計9つの言語が出てくる、インドの旅が好きな人は必見の作品です。


(10)『孤島の葬列』原題:Maha Samut Lae Susaan 英題:The Island Funeral
監督:ピムパカー・トーウィラ Pimpaka Towira
2015年/タイ/105分/タイ語

2015年の東京国際映画祭でアジアの未来部門・作品賞を受賞したタイ映画
バンコクに暮らすムスリムの姉弟が、弟の友人と3人で伯母が住むというタイ深南部のパッターニー県を目指して旅をする不思議な雰囲気のロードムービーです。
仏教国タイにおいてマレー系ムスリムが多い“深南部”は、以北のタイ人にしても偏見を抱きがちな地域のようです。主人公姉弟もそれは同じで、しかし彼らは自身のルーツを求めて旅を始めます。
そしてその旅を追体験するうち、やがて観る者もなぜ人は他者に偏見を抱くのか?
という問いを感じるようになります…。


【イスラーム映画祭6アンコール】

『長い旅』原題:Le Grand Voyage 英題:The Great Journey
監督:イスマエル・フェルーキ Ismaël Ferroukhi
2004年/フランス=モロッコ=ブルガリア=トルコ/101分/アラビア語・フランス語・ブルガリア語・セルボ クロアチア語・トルコ・イタリア語・英語

初年のイスラーム映画祭で好評を博したフランス=モロッコの合作映画・
フランス生まれのモロッコ移民二世の若者が、父親に無理矢理駆り出され、イスラーム最大の聖地マッカを目指して7ヵ国を車で旅する長大なロードムービーです。
神戸では初めての上映です。


『マリアの息子』原題 : Pesar-e Mariam 英題 : The Son of Maryam
監督 : ハミド・ジェベリ Hamid Jebeli
1999年/イラン/72分/ ペルシャ語・アラビア語・アルメニア語

2017年のイスラーム映画祭2で上映し、少年の健気な姿に観た人すべて(自分の知る限り)が感銘を受けた珠玉のイラン映画です。
村で唯一の教会の聖マリア像に見知らぬ母の顔を重ねるムスリムの男の子が、怪我をした神父のために奔走するというお話です。
神戸では初上映となります。


★下記2本は権利の関係で東京のみの再映となります。
 2作品とも最後の上映ですのでぜひご覧ください。

『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』
原題:The Guest: Aleppo - Istanbul 英題:The Guest: Aleppo to Istanbul
監督:アンダチュ・ハズネダルオール Andac Haznedaroglu
2017年/トルコ=ヨルダン/ 89分/ アラビア語・トルコ語
予告篇https://youtu.be/r_SX2PpXlq0

イスラーム映画祭5 シリア難民を描いた『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』(咲)


『アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン』
原題:Al-Risâlah英題:The Message
監督:ムスタファ・アッカド Moustapha Akkad
1976-2018年/リビア=モロッコ=エジプト=サウジアラビア/207分/アラビア語・ 英語
予告篇https://youtu.be/bFBedljRGEE
今回の上映にあわせ、日本語字幕をブラッシュアップ!

イスラーム映画祭5 預言者ムハンマドの半生を描いた『アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン』(咲)



イスラーム映画祭6開催のお知らせ (2021年2月)

イスラーム映画祭5 神戸編が9月25日に終了したばかりですが、早くもイスラーム映画祭6の日程が発表されました。皆さま、どうぞご予定ください!

期間:2021.2.20(土) - 3.5(金) ※2週間(2週目は1日1回)
会場:渋谷ユーロスペース
★順次名古屋(シネマテーク)、神戸(元町映画館)GW(各1週間)

次回は、
イエメン
トルコ
スーダン
パレスチナ
レバノン
アルジェリア
ドイツ
イラン
アフガニスタン
インド
タイ
の映画を取り上げる予定です。
アンコールも3~4本上映。

イスラーム映画祭5 神戸編

イスラーム映画祭5 神戸編、いよいよ9月19日(土)より開催です。
スケジュールと共に、参考までにシネジャに掲載した東京でのレポートのリンクをまとめました。
コロナ禍の中ではありますが、ぜひ元町映画館でイスラーム映画祭をお楽しみください。
http://islamicff.com/timetable.html#kobe_timetable

2020年9月19日(土) ~ 25日(金)
会場:神戸・元町映画館
http://www.motoei.com/
・各回入替制、全席自由で整理番号での入場
・整理番号チケットは、開場(10:00 AMを予定)と同時に当日の全回分を販売


★公式ムック『イスラーム映画祭アーカイブ2015-2020』会場で限定販売されます。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/474073981.html
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9/19 (土)
12:30~『アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン』〈デジタル・リマスター〉
※途中15分休憩あり
東京でのトーク

16:50~『銃か、落書きか』
トークセッション : 1
“恥の壁”の両側から―占領地と解放区、難民キャンプに暮らす西サハラの民
ゲスト:岩崎有一(ジャーナリスト/アジアプレス)
東京でのトーク

9/20 (日)
12:30~『神に誓って』

15:45~『ガザ・サーフ・クラブ』
トークセッション : 2
ガザ、それでもなお―完全封鎖14年目の現実
ゲスト:岡真理(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/アラブ文学者)
東京でのトーク

9/21(月)
12:30~『ベイルート - ブエノス・アイレス - ベイルート』
東京でのトーク

14:15~『イクロ2 わたしの宇宙(そら)』
トークセッション : 3
映画からわかるインドネシア社会におけるイスラームの表象
ゲスト:野中葉(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

17:10~『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』
アジアフォーカス2016Q&Aと女優インタビュー


9/22 (火)
12:30~『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』
東京でのトーク

14:30~『花嫁と角砂糖』

16:55~『ラグレットの夏』
東京でのトーク

9/23 (水)
12:30~『銃か、落書きか』
トークセッション : 4
“恥の壁”の両側から―占領地と解放区、難民キャンプに暮らす西サハラの民
ゲスト:岩崎有一(ジャーナリスト/アジアプレス)
東京でのトーク

14:40~『ベイルート - ブエノス・アイレス - ベイルート』 
  ★上映後、主宰者による作品解説
16:55~『私たちはどこに行くの?』

9/24(木)
12:30~『ガザ・サーフ・クラブ』

14:25~『ラグレットの夏』
★上映後、主宰者による作品解説

16:50~『アブ、アダムの息子』

9/25(金)
12:30~『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』
東京でのトーク

14:35~『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』
★上映後、主宰者による作品解説
アジアフォーカス2016Q&Aと女優インタビュー


17:00~『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』
東京でのトーク


イスラーム映画祭5 名古屋編

イスラーム映画祭5 いよいよ名古屋編開催です。
スケジュールと共に、参考までにシネジャに掲載した東京でのレポートのリンクをお届けします。

2020年8月22日(土) ~ 28日(金)
会場:名古屋シネマテーク
公式サイト:http://islamicff.com/timetable.html#nagoya_timetable

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★公式ムック『イスラーム映画祭アーカイブ2015-2020』会場で限定販売されます。
 詳細

8/22(土)
11:50~『アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン』〈デジタル・リマスター〉
※途中10分休憩あり
上映後 トークセッション : 1
『アル・リサーラ』のあらすじから知る、イスラームの成り立ち
ゲスト:藤本高之(イスラーム映画祭主宰)
東京でのトーク

8/23 (日)
11:50~『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』
東京でのトーク

13:50~『ガザ・サーフ・クラブ』
上映後 トークセッション : 2
ガザ、それでもなお―完全封鎖14年目の現実
ゲスト:岡真理(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/アラブ文学者)
東京でのトーク

8/24(月)
11:50~『アブ、アダムの息子』

14:00~『ラグレットの夏』
東京でのトーク

8/25(火)
11:50~『イクロ2 わたしの宇宙(そら)』

14:00~『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』
東京でのトーク


8/26(水)
11:50~『花嫁と角砂糖』

14:15~『銃か、落書きか』
上映後 トークセッション : 3
“恥の壁”の両側から―占領地と解放区、難民キャンプに暮らす西サハラの民
ゲスト:岩崎有一(ジャーナリスト/アジアプレス)
東京でのトーク

8/27(木)
11:50~『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』
アジアフォーカス2016Q&Aと女優インタビュー

14:00~『私たちはどこに行くの?』

8/28 (金)
11:50~『ベイルート - ブエノス・アイレス - ベイルート』
東京でのトーク

13:30~『神に誓って』

イスラーム映画祭5 『ラグレットの夏』 3つの宗教が共存した時代のチュニジア (咲)

アラブ、ユダヤ、キリスト教徒が共に暮らしたチュニジアの最後の夏の青春物語
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『ラグレットの夏』
原題:Un été à La Goulette
英題:A Summer in La Goulette
監督:フェリッド・ブーゲディール / Férid Boughedir
1996年/チュニジア=フランス=ベルギー/89分/ アラビア語・フランス語・イタリア語

1966年夏、チュニジアの首都チュニス近くの海辺の町ラグレット。アラブ人でムスリマのマリヤム、ユダヤ教徒のジジ、そしてクリスチャンのティナ。 同じアパートの同じ階で家族とともに暮らす3人は、この夏、一緒に初体験をしようと画策する・・・

モスクだけでなく、立派なシナゴーグや教会。
ラグレットは、アラブ、ユダヤ、キリスト教徒が共に暮らす町。
宗教の違う3人の年頃の娘たちが、裁縫をしながら、初体験の相手を探そうと算段するおしゃべりに余念がない。
一方、親たちもお隣どうし、宗教が違っても親しくしている。安息日に働くことのできないユダヤ人の父親は、ムスリムの父親に卵を茹でてくれと頼んだりしている。
このアパートの大家でマリヤムの伯父にあたる独身のダブル・ハジは、マリヤムの家でお隣の差し入れのユダヤ料理を出されて、あからさまに嫌な顔をする。
「ユダヤ人は新祖国イスラエルに行け」という言葉に、「この国のユダヤ人は、独立戦争に尽くした者もいるのに」と反論するムスリムの男性。
ユダヤ人のジジは、「もしムスリムと結婚したら、親戚が皆、口をきかない」と言われる。
別の父親は、相手がユダヤとは!と嘆く。宗教の違いを越えての恋は難しい。

娘たち3人、8月15日に宗教に関係のないカルタゴ遺跡で処女を捨てると決める。
よりによって聖母の日だ。教会からマリア像が輿に載せられて町に繰り出すのをよそに、
3人は電車でカルタゴに向かう・・・

マリヤムが同じ年頃の青年に夢中になっているのに、伯父のダブル・ハジはマリヤムによこしまな気持ちを抱いていて、母親に「マリヤムを任せてくれれば、第二の父にもなる。家賃も帳消しにしてやる」と露骨な言葉を投げかける。
今からヴェールの被り方を教えてやってというダブル・ハジの頼みをたてて、マリヤムにヴェールを被らせる母。そして、素肌にヴェールだけをまとってマリヤムがダブル・ハジを訪ねたことが思わぬ幕切れを招く。

この翌年、第三次中東戦争勃発。
ユダヤ人に続き、キリスト教徒も出て行く
彼らは決してラグレットを忘れないだろう・・・という言葉で映画は終わる。


◆上映後トーク
《激震1967――アラブ世界の転換点、第三次中東戦争》
【ゲスト】 佐野光子さん(アラブ映画研究者/写真作家)

宗教の違う人たちが共に暮らしていた最後の年を、ドタバタのコメディで描いた『ラグレットの夏』。上映後、この作品の上映を決めた藤本さんの思いも含めて、佐野光子さんとの対談形式でトークが行われました。(抜粋してお届けします)

藤本:2000年 国際交流基金主催の地中海映画祭で上映されたのと同じ、35mmフィルムで上映。フランスからデジタルリマスターを利用してくれと言われたけれど、フィルムにこだわりました。

佐野:2000年に初めてアラブ映画を観て、それをきっかけに映画の研究を始めました。

藤本:トークの主旨。この映画の舞台になっている年の翌年1967年に第三次中東戦争が起こりました。トランプ大統領がエルサレムに米国大使館を移したことなどの背景もわかると思います。

佐野:日本では、1948年の中東戦争から、第何次と数えますが、アラブでは勃発した年で語ります。
1947年 国連によるパレスチナ分割案。アラブ側は拒絶。内戦状態に。
1948年 イスラエル独立宣言
1956年 エジプトのナセル大統領が、イギリスからスエズ運河を取り戻す。
フランスとエジプトの共同で作ったスエズ運河を、エジプトがイギリスの統治下になった為、イギリスが掌握していた。すっきりした勝利ではないがアメリカの後押しもあってスエズを取り戻す。(第二次中東戦争)
1967年 第三次中東戦争。6日戦争。ナクサ(大破局/大敗北)
1967年 ヨルダン河西岸とガザも占領される
1970年 ナセル死去。葬儀に500万人以上が参列。アラファトやカダフィも参列。
ナセルは辞意を表していたが続けていた。
1967~70年の大きなうねり
1970年 ヨルダン内戦(黒い9月革命)
ヨルダンがPLOを排除。PLOはレバノンへ
1975~90年 レバノン内戦
PLOがレバノンに移ったことにより、レバノンでのパレスチナ難民がさらに増加する。
クリスチャンとムスリムの人口の均衡が破れた。
石油危機  (トイレットペーパー買占め)

1981年 ゴラン高原をイスラエルが併合する。(『シリアの花嫁』の舞台)
チュニジア ユダヤ人が10万人いたのが、今は1500人に。
エジプトも1997年以降 ユダヤ人のコミュニティ喪失。
『ラグレットの夏』 まだユダヤ人、ムスリム、クリスチャンが共存していた時代

アラブ映画の中のユダヤ人
1954年 『ハサンとモルコスとコーエン』
1940年代に舞台で好評だったものの映画化
2008年にリメイクされるが、ユダヤ人は抜けて『ハサンとマルコス』(2009年TIFFで上映。末尾に詳細)
クリスチャンのオマー・シャリフがムスリム役を演じている
逆に、ムスリムのアラブの喜劇王アーデル・イマームがクリスチャンを演じている

今ではエジプト映画でユダヤ人が出てくることがない。
参考:『ラミヤの白い凧』(2003年)ムスリマとユダヤ男性の恋物語

映画の中のアラブの敗北
『遺された時間』2009年 エリア・スレイマン監督
ナセルの死のニュースが流れ、舞台が1970年だとわかる。
時代背景として、よく出てくる。(玉音放送のよう)

『雀』1972年 ユーセフ・シャヒーン監督  
ナセルの敗戦を伝える演説を聞いて、女性が「私たちは闘う!」と叫ぶ。
映画ができたときには検閲に引っかかった。闘う!という部分が受け入れられなかった。

1979年 イラン・イスラーム革命、ソ連のアフガン侵攻が起こり、パレスチナが見捨てられていく。


★『ハサンとマルコス』
東京国際映画祭 アジアの風
<2009日本におけるエジプト観光振興年>記念事業 エジプト映画パノラマ~シャヒーン自伝4部作と新しい波 の中の1本として上映された。

[解説]
『アラビアのロレンス』の名優オマー・シャリフとアラブの喜劇王アーデル・イマームの夢の競演!イスラム教徒とキリスト教徒の緊張をコミカルに描く。エジプトにおける女性の人権を考える社会派ドキュメンタリーを併映。
[あらすじ]
この映画はキリスト教神学者ボロスとイスラム教徒の家長マフムードの物語である。ふたりは、それぞれが相反する宗教の過激派による暗殺から生き残り、逃げ延びていた。そしてエジプト政府による目撃者保護プログラムの下に置かれ、キリスト教徒はイスラム教徒のふりをし、イスラム教徒はキリスト教徒のふりをするという、まったく別のアイデンティティを装っていた。カイロ近郊の下町にある隠れ家に避難した時、見ず知らずのボロスとマフムードの間に友情が花開いていく。この映画は、異なった宗教を持つ人々の間で、愛と友情を育むことはできるのかどうか、その可能性を探っていく。
(東京国際映画祭のサイトより)

景山咲子