イスラーム映画祭8 (2023年開催)早くもラインナップ発表!

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早くも日程が決まり、ラインナップも発表されました。
私にとって、一番楽しみな映画祭です。
藤本高之さん、ありがとうございます!
継続は力なり

渋谷ユーロスペース 2023年2年18日(土)~24日(金)
名古屋シネマテーク 2023年春
神戸・元町映画館 2023年4月29日(土)~5月5日(金)

http://islamicff.com/index.html

上映作品:
劇場初公開 1本
日本初公開 3本
イスラーム映画祭的名画座セレクト 6本
映画祭アンコール 4本
の計14作品。

☆イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんの言葉☆
今回は、2023年で1948年のイスラエル建国による“ナクバ(大災厄)”から75年を迎えるにあたり、あらためて「パレスチナ」を取り上げます。

また今年はフランス映画の特集上映が続いている流れを受け(便乗して)、イスラーム映画祭でもフランスの「マグリブ移民とその第二世代」をテーマにした小特集を組みます。

そして今回は“イスラーム映画祭的名画座セレクト”として、過去に国内で一般公開されながらも未ソフト化の作品をリバイバルする他、ソフト化はされていても劇場での上映権が切れている作品や、国内の他の映画祭で上映されたきり埋もれたままになっているレアものを権利を再取得したうえでお目にかけます。 

【イスラーム映画祭8上映作品①】
《ガッサーン・カナファーニー没後50年特別上映》

『太陽の男たち』原題:Al-Makhdu'un 英題:The Dupes
監督:タウフィーク・サーレフ / Tewfik Saleh
1972年 シリア 107分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
★劇場初公開

1972年にベイルートで爆殺されたパレスチナ難民の作家、ガッサーン・カナファーニー(1936-72)の代表作映画化にして、“アラブ映画史における最重要作”の1本。

ヨルダンからイラクのバスラにやって来た3人のパレスチナ難民。彼らは金を稼ぐため、同じ難民の男が運転する給水車の空のタンクに潜み、クウェートへの密入国に挑む。しかし、
太陽に熱されたタンク内にいられるのはほんの数分…。

原作との違いにパレスチナをめぐる70年代の状況も垣間見える歴史的名作。

これまでにアラブ文化協会の上映会などで、3回観ていますが、いずれもスクリーンが小さかったので、大きな画面で観られるのは嬉しいです。
金満クウェートの役人たちと、密入国するしかないパレスチナの人たちとの対比が強烈です。忘れられない一作。(咲)


【イスラーム映画祭8上映作品②】
『マリアムと犬ども』原題:Aala Kaf Ifrit 英題:Beauty and the Dogs
監督:カウサル・ビン・ハニーヤ / Kaouther Ben Hania
2017年 チュニジア=仏=スウェーデン=ノルウェー=レバノン他 100分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
★日本初公開

予告篇
https://youtu.be/LoWiB6Bj-v8

2021年に『皮膚を売った男』で日本に初めて紹介されたカウサル・ビン・ハニーヤ監督作。
“アラブの春”と呼ばれたチュニジア革命後の2012年に実際に起きた警察官による性暴行事件をモチーフにした作品。
元となった事件は、イスラム主義政党はじめ様々な政治勢力が乱立する民衆革命後の混乱期に起き、社会を揺るがせました。
しかし監督は本作を日本を含む世界に共通の問題として描いています。
※本作には性暴力を間接的に描いたシーンがあり、被害者が二次加害を受けるシーンも頻出いたします。 ご注意ください。


【イスラーム映画祭8上映作品③】
『陽の届かない場所で』原題:Au-Delà De L'ombre 英題:Upon the Shadow
監督:ナダー・マズニー・ハファイヤズ / Nada Mezni Hafaiedh
2017年 チュニジア=フランス 80分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://youtu.be/qDZFvq1sYK0
★日本初公開

サウジアラビア生まれのチュニジア人、日本では初めて紹介されるナダー・マズニー・ハファイヤズ監督作。
人権活動家アミーナ・サブウィと、チュニジアの性的少数者コミュニティを描いたドキュメンタリー映画。
アミーナ・サブウィはウクライナ発祥のフェミニズム団体フェメンの元メンバー。
映画は、彼女が家族や地域から追い出されたゲイやトランスの人々と一つ屋根の下に暮らす様子を捉え、チュニジアのムスリム社会における性的マイノリティの苦悩を描きます。

*イスラーム映画祭7で上映した『ジハード・フォー・ラブ』の流れでラインアップした作品。


フランスのマグリブ移民とその第二世代をテーマにフランス映画の小特集

【イスラーム映画祭8上映作品④】
『ファーティマの詩(うた)』原題・英題:Fatima
2015年 フランス=カナダ 78分
監督:フィリップ・フォコン / Philippe Faucon
言語:フランス語、アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=eHM9rSskaqw
★日本初公開

パリ同時多発テロから3ヵ月後の2016年セザール賞で最優秀作品賞を受賞した、フィリップ・フォコン監督作。
清掃の仕事をしながら2人の娘を育てるアルジェリア移民の女性とその娘たちの日常を通じ、フランス社会における移民の置かれた状況と希望を浮かび上がらせます。
欧州にイスラム過激主義の暴力が吹き荒れる中で、ムスリム移民の実直さと困難を描く本作が高く評価された事には大きな意義がありました。


【イスラーム映画祭8上映作品⑤】
『エグザイル 愛より強い旅』原題:Exils 英題:Exiles
監督:トニー・ガトリフ / Tony Gatlif
2005年 フランス103分
言語:フランス語、アラビア語、スペイン語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)

予告篇
https://youtu.be/PULCeco2lRQ

*2005年 劇場公開
シネジャ作品紹介『愛より強い旅』
ロマン・デュリス(フランス映画祭2022 オープニング作品『EIFFEL(原題)』主演)
ルブナ・アザバル(『ビバ!アルジェリア』)

フランス移民映画小特集2本目
*イスラーム映画祭的名画座セレクト①

日本でも人気のあるアルジェリア出身でロマのルーツも持つトニー・ガトリフ監督作。
ガトリフ監督の自伝的要素も強い本作は、ともにアルジェリアルーツのカップルがアイデンティティを求めてパリからアルジェを目指す物語。
フランス→スペイン→モロッコ→アルジェリアと続く旅をスーフィー音楽等を基にした、督自身による楽曲の数々が彩ります。
*国内未ソフト化です。

ビートのきいた刺激的なテクノ音楽、哀愁漂う中に力強さのあるフラメンコ、民族楽器とテクノを融合させて移民の心情を歌い上げるライ、そして、神との一体をはかるためのスーフィー(イスラーム神秘主義)音楽と、本作は音楽を巡る旅でもあります。 アルジェの町で、素肌を隠せと強要されて被っていたスカーフとコートを脱ぎ放ったナイマが、スーフィー音楽にあわせてトランス状態に陥っていくラストは圧巻。 ただし、本来のスーフィーの儀式に使用する三拍子系ではなく二拍子系リズムに変えてあり、監督のオリジナル。  (咲)


【イスラーム映画祭8上映作品⑥】
『キャラメル』原題:Sukkar Banat 英題:Caramel
監督:ナディーン・ラバキー / Nadine Labaki
2007年 フランス=レバノン96分
言語:アラビア語、フランス語
字幕:日本語のみ
予告篇
https://youtu.be/PvbHOhzJarU

*イスラーム映画祭的名画座セレクト② 
*2009年 劇場公開

2019年に『存在のない子供たち』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/467923288.htmlがヒットしたナディーン・ラバキー監督の長篇デビュー作、ムスリムとキリスト教徒がともに暮らすベイルートのヘアサロンに集う、様々な愛の悩みやセクシュアリティを抱えた女性たちのドラマを美しい映像と音楽が彩ります。
レバノン内戦(1975〜91)をあえて題材から外し、中東映画は元よりアラブ女性のイメージを覆した本作はその登場自体が革命的なものでした。

なお、今回のリバイバルのため上映素材を新規作成するにあたり、公開当時に日本語翻訳をされた故・太田直子さんのご遺族の許諾を得て字幕を二次流用させていただきました。
お酒とタバコが大好きだったという太田さんの軽みとユーモアのある字幕も併せてお楽しみください。

アラビア語の原題『Sukkar Banatスッカル・バナート』は、女の子たちの砂糖の意味。スッカル・ナバート(氷砂糖)をもじったそうです。中東では砂糖と水とレモン汁を煮詰めてキャラメル状にしたもので無駄毛を処理する伝統があります。美容院を舞台にした物語で、この「キャラメル」が、重要な場面で使われています。詳細はこちらでどうぞ!(咲)
シネジャ作品紹介『キャラメル』 



【イスラーム映画祭8上映作品⑦】
『そこにとどまる人々』原題:Mayyel Ya Ghzayyel 英題:Those Who Remain
監督:エリアーン・ラヘブ / Eliane Raheb
2016年 レバノン=UAE 95分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://vimeo.com/193056744

*イスラーム映画祭的名画座セレクト③

山形国際ドキュメンタリー映画祭の常連でもあるレバノンのエリアーン・ラヘブ監督作。
『キャラメル』など、“宗教のモザイク国家”と呼ばれるレバノンで作られた映画の背景を紐解くテクストとしても有益な作品です。
キリスト教徒のハイカルは、かつてはムスリムと隣同士で暮らしていた村でりんごや羊を育て、昔ながらの日常を送っている…。
シリア国境に近いレバノン北部の村に住む主人公が、長びく宗派間の諍いや、シリア危機によって村が変容しながらも、昔と変わらない生活を黙々と続ける姿に多くを考えさせられます。

*『ミゲルの戦争』(YIDFF2021)監督作品。


【イスラーム映画祭8上映作品⑧】
『キャプテン アブ・ラエド』原題・英題:Captain Abu Raed
監督:アミン・マルタカ / Amin Matalqa
2007年 ヨルダン=アメリカ 102分
言語:アラビア語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://youtu.be/sNMNp8-VhMg

*イスラーム映画祭的名画座セレクト④

日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭とNHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された他、BSでわずかながら放送されただけの知る人ぞ知るアラブ映画の良作。
イスラーム映画祭初のヨルダン映画。

妻を亡くして国際空港の清掃員をしながら孤独に生きていた主人公が、ひょんなきっかけで近所の子どもたちにパイロットと間違われる事から始まる物語。
少量で足るを知り、誰とも等しく接し、弱い者には手を差し伸べる。
実直な主人公の生き様と首都アンマンの風情が胸に沁み入る珠玉のドラマです。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008で鑑賞し、印象深い1作。
老人と子供たちの触れ合いを軸に、家庭内暴力問題も折り込んだ普遍的な物語。アミン・マタルカ監督が、テロや戦争のイメージを払拭したいと語られたのですが、アンマンの町の魅力もたっぷりと描かれていました。(咲)

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アミン・マルタカ監督 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008の折に来日(撮影:景山咲子)


【イスラーム映画祭8上映作品⑨】
『午後の五時』原題:Panj É Asr 英題:At Five in the Afternoon
監督:サミラ・マフマルバフ / Samira Makhmalbaf
2003年 イラン=フランス101分
言語:ダリ語、英語
字幕:日本語、英語(with English Subtitles)
予告篇
https://vimeo.com/140703409

*イスラーム映画祭的名画座セレクト⑤

今年のイスラーム映画祭7で上映した『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督の姉、サミラ・マフマルバフ監督2003年の作品。
第一次タリバン政権崩壊後のアフガニスタンで撮影され、日本では2004年に劇場公開された。
映画は、将来アフガニスタンの大統領になりたいと思っている女性を主人公に、タリバン政権崩壊後の現地の混乱と人々の様子を描きます。
20年前の作品にもかかわらず、まるで今のアフガニスタン情勢を予見していたかのような内容に驚くばかり。本作も国内未ソフト化です。
再びアフガン音楽ライブも行います。

2004年に姉妹そろって来日した時の懐かしいレポートです。
『午後の5時』についても詳しく書いています。
今、サミラとハナは、どうしているのでしょう・・・(咲)

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サミラ・マフマルバフ監督&ハナ・マフマルバフ監督来日記者会見
サミラ・マフマルバフ監督トークショー&『午後の五時』上映会

http://www.cinemajournal.net/special/2004/samira_hana/index.html



【イスラーム映画祭8上映作品⑩】
『わたしのバンドゥビ』原題:Bandhobi
監督:シン・ドンイル / Dong-il Shin
2009年 韓国 107分
言語:韓国語、ベンガル語
字幕:日本語のみ(without English Subtitles)

予告篇
https://youtu.be/PcL2n1n6mgw

*イスラーム映画祭的名画座セレクト⑥

かつて『ソウルのバングラデシュ人』の邦題で映画祭上映され、その後『僕たちはバンドゥビ』の題でソフト化されたものの現在は廃盤。それを新訳・再改題してリバイバルいたします。
バンドゥビとは、ベンガル語で“(女性の)友だち”。
一人の女子高生とバングラデシュからのムスリム移民の交流のドラマが、日本にも通じる格差や移民をめぐる問題を描きます。
深刻なテーマを扱いつつも「広い世界に目を向けよう」という若者へのメッセージも込められた、こちらも知る人ぞ知る韓国映画の良作です。

【真!韓国映画祭2011】で上映された折の紹介文(咲)
17歳の女子高生ミンソ。シングルマザーの母親はカラオケ店の経営と恋人の世話で忙しくミンソのことをかまってくれない。夏休み、ミンソは英語塾に通おうとアルバイトを始めるが、なかなか資金が貯まらない。そんなある日、バスで隣の席に座ったバングラデシュから出稼ぎに来ているカリムのポケットからこぼれ落ちた財布を持ち逃げする。気づいて追いかけてきた彼が警察に突き出すというが、ミンソは願いを一つ聞くからチャラにしてくれと提案する。カリムは、前職場の社長宅に1年分の未払い給料を請求しに一緒に行ってくれと頼む・・・・

【韓国映画ショーケース2009】で『バンドゥビ』という原題で上映されましたが、バンドゥビとはベンガル語で友達のこと。ミンソとカリムはこんな風に出会ったけれど、だんだんと打ち解けていきます。ミンソとカリムの人種、性別、宗教の違いを超えての友情が爽やか。カリムと同じバングラデシュから出稼ぎに来ている人たちがお互い支えあって暮らしている姿も微笑ましい。一方、ミンソが英語塾の白人教師にカリムを紹介したときのカリムを見下げたような態度に、ミンソはふっと疑問を持ちます。母親の恋人も、「あの男と付き合うのは危険では?」と偏見丸出し。また、日本でもよく問題になる不法滞在の外国人に対する経営者の不当な扱いや出入国管理局の容赦ない態度は、韓国でも同じだなと思いました。カリムの語る「友達を笑わせることのできる者は天国へ行ける」というイスラームの教えに、共生のヒントがありそうです。(咲)




【イスラーム映画祭8アンコール①】
『私たちはどこに行くの?』 原題:Maintenant On Va Où? 英題:Where Do We Go Now?
監督:ナディーン・ラバキー
2011年 フランス=レバノン他 102分
言語:アラビア語、ロシア語、英語
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=-Te9c2jReOg

『キャラメル』のリバイバルに合わせ、日本では劇場一般公開されなかったナディーン・ラバキー監督の長篇第2作、『私たちはどこに行くの?』を再び上映します。
本作もまた、『キャラメル』とはひと味違ったパワフルで魅力的な女性たちのドラマです。
ラバキー監督のこの2本を一度に観られるまたとない機会をぜひ。
★イスラーム映画祭2&5で上映


【イスラーム映画祭8アンコール②】
『長い旅』 原題:Le Grand Voyage 英題:The Great Journey
監督:イスマエル・フェルーキ / Ismaël Ferroukhi
2004年 フランス=モロッコ他108分
言語:フランス語、アラビア語他
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇 https://youtu.be/3-22cObhUgQ
★イスラーム映画祭2015&6で上映

『ファーティマの詩(うた)』『エグザイル 愛より強い旅』に続くフランス“移民”映画小特集のもう1本として、『長い旅』を再び上映します。
フランスからサウジアラビアまで7ヵ国をまたぐ長大なロードムービーにして、本作はイスラーム最大の聖地マッカでの撮影が許された史上初めての長篇劇映画です。 お観逃しなく。


【イスラーム映画祭8アンコール③】
『ソフィアの願い』 原題・英題:Sofia
監督:マルヤム・ビンムバーラク / Meryem Benm'Barek
2018年 フランス=カタール=ベルギー=モロッコ 85分
言語:フランス語、アラビア語
字幕:日本語、英語(with English subtitles)
予告篇 https://youtu.be/BBdWdhyg0RE
★イスラーム映画祭7で上映
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485878168.html

前回の7で最も物議を醸した、カウサル・ビン・ハニーヤ監督と並び今にマグリブを代表する監督となるに違いない、マルヤム・ビンムバーラク監督の『ソフィアの願い』を再び上映します。
ひねりの利いた脚本によって、ジェンダーや家父長制に覆い隠されたモロッコの社会格差を炙り出す意欲作です。


【イスラーム映画祭8アンコール④】
『ガザを飛ぶブタ』 原題:Le Cochon De Gaza 英題:When Pigs Have Wings
監督:シルヴァン・エスティバル / Sylvain Estibal
2010年 フランス=ドイツ=ベルギー 99分
言語:アラビア語、ヘブライ語、英語
字幕:日本語のみ
予告篇
https://youtu.be/vkzjPGKqEY0
★イスラーム映画祭2015で上映

『太陽の男たち』の劇場初公開に合わせ、2015年の映画祭初回に上映した『ガザを飛ぶブタ』を再び上映します。 (名古屋と神戸では初公開)
パレスチナ難民をテーマに重く描いた50年前のモノクロの名画と、ポップに描いた現代のファンタジーコメディの競演はかなりレアです。

2011年の第24回東京国際映画祭で観客賞を受賞した作品。
『ガザを飛ぶブタ』のタイトルだけで惹かれ、観てさらに気に入った作品でした。
パレスチナ人の猟師がイスラーム教徒にとって不浄なブタを釣り上げてしまい困惑していたら、入植地にいるユダヤ人がブタを有効利用していると聞きつけて売り込みにいくという物語。ユダヤでもブタは不浄なもの。どう利用しているの?と、その発想だけで可笑しい。『迷子の警察音楽隊』で実直な音楽隊長が印象的だったサッソン・ガーベイが、ブタに羊の毛皮をかぶせて歩く姿がなんとも可愛いです。パレスチナ人の家の屋上は、イスラエル兵の見張り台に貸していて、居間でテレビドラマを観ているパレスチナ人の奥さんの脇にイスラエル兵が立って一緒に楽しむ場面もあって微笑ましいです。
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シルヴァン・エスティバル監督と主演女優ミリアム・テカイアさん。 (撮影:景山咲子)
ミリアムさんはチュニジア出身。ユダヤ人役ですが、実はムスリマ。監督とはプライベートでもパートナー。とてもラブリーなカップルでした。




イスラーム映画祭7神戸篇 (4/30~5/6) ★上映&トーク日程

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期間:2022年4月30日(土)~5月6日(金)
会場:神戸・元町映画館

アクセス:
https://www.motoei.com/#access

◆タイムテーブル◆
https://www.motoei.com/wp/wp-content/uploads/ISFF7.pdf

4月30日(土)マグリブの女性の監督による3作品
12:50 『ある歌い女の思い出』(チュニジア)
*日本初公開時の貴重な35mmフィルムでの上映
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485775022.html

15:25 ヌーラは光を追う(チュニジア)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485775728.html

17:20 ソフィアの願い(モロッコ)
★上映後トーク
「映画から読み解くイスラームとジェンダー」
立命館大学・鳥山純子さん(『「私らしさ」の民族誌』(春風社刊)著者)
(モロッコからのオンライントークです!)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485878168.html


5月1日(日)
12:50 二つのロザリオ(トルコ)
*今回神戸で上映するためにデジタル化した作品

14:45 泣けない男たち(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
★上映後トーク
「ボスニア紛争の背景と旧ユーゴスラヴィアの音楽文化
上畑史さん(国立民族学博物館研究員)

17:45 時の終わりまで(アルジェリア)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485877029.html


5月2日(月) *各回上映後に短く解説
12:50 ジハード・フォー・ラブ(南アフリカ、フランスetc.)

15:00 アジムの母、ロナ(イラン)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485990069.html

17:20 ヌーラは光を追う(チュニジア)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485775728.html


5月3日(火)
12:50 時の終わりまで(アルジェリア)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485877029.html

14:45 ミナは歩いてゆく(アフガニスタン)

16:55 天国と大地の間で(パレスチナ)
★上映後トーク
「ハジャルを探して -分断された「きょうだい」たちの物語
岡真理さん(京都大学大学院教授)
おそらく今までで“最も濃厚な解説”になるはずです。
パレスチナ問題の知られざる事実がこれでもかと詰め込まれた複雑な内容ながら、
東京でも名古屋でも大入りだった『天国と大地の間で』には、現代アラブポップスが満載のほか『ルート181』『D.I.』『シリアの花嫁』など様々な関連映画へのオマージュが散りばめられています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/486072055.html


5月4日(水)
12:50~ 泣けない男たち(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

14:55~ ジハード・フォー・ラブ(南アフリカ、フランスetc.)
★上映後トーク
「愛のために「たたかう」こと ――イスラームと同性愛の交差点を探って
辻大地さん(九州大学大学院博士後期課程)

17:25~ 花嫁と角砂糖(イラン)


5月5日(木)
12:50~ 子供の情景(イラン・フランス)
http://www.cinemajournal.net/special/2009/kodomo/index.html

14:35~ アジムの母、ロナ(イラン)
★上映後トーク
「難民受け入れ大国イランに暮らすアフガン難民 -日本も無縁ではない話」
鵜塚健さん(毎日新聞元テヘラン支局長)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485990069.html

17:05~ 青い空、碧の海、真っ赤な大地(インド)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/480493464.html


5月6日(金)*各回上映後に短く解説
12:50~ ソフィアの願い(モロッコ)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/485878168.html

15:00~ 天国と大地の間で(パレスチナ)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/486072055.html

17:20~ 泣けない男たち(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)


★上映作品のさらに詳細は下記もご参照ください。
イスラーム映画祭7(2022年2月開催)上映作品が発表されました (咲)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/484504597.html



イスラーム映画祭7 『天国と大地の間で』(パレスチナ)

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『天国と大地の間で』★日本初公開
原題:Between Heaven and Earth 英題:Between Heaven and Earth
監督:ナジュワー・ナッジャール / Najwa Najjal
2019年/ルクセンブルク=パレスチナ=アイスランド/アラビア語、ヘブライ語、フランス語、英語/92分
字幕:日本語、英語
予告篇
https://youtu.be/ku9y-Y9xUZs

ドキュメンタリーとフィクションの双方で実績を持つパレスチナ人監督、ナジュワー・ナッジャール監督の長篇第3作。
イスラーム映画祭では、これまでにも毎年のようにパレスチナにまつわる映画が上映されてきましたが、著作権元は欧州の国かレバノンでした。 本作は、初めてヨルダン川西岸の街ラマッラーにある映画会社と取引した作品。 

*物語*
ヨルダン川西岸ラマッラーの瀟洒な邸宅で暮らすパレスチナ人夫婦。5年の結婚生活を経て別れることになり、離婚手続きのためイスラエルのナザレにある裁判所に向かう。妻サルマはナザレの生まれでイスラエルの市民権を持つが、レバノン生まれの夫ターメルは許可を貰っての入国で滞在期限は72時間。裁判所でターメルの父の履歴に不明な点があり、それをクリアしないと手続きはできないといわれる。ジャーナリストだった父はベイルートで亡くなったと聞かされていたが、死亡場所はイスラエル北部のガリラヤだという。しかも、ターメルの母親と出会う前に、ハジャルというユダヤ女性と暮らしていたことがわかり、謎を解くために、二人はガリラヤにハジャルを探しにいく・・・


まずは、二人の暮らしているのが、プールもある邸宅であることに驚かされます。妻サルマはスカーフをしてなくて、割と大胆な服装。監督は、固定化されたアラブやパレスチナのイメージを覆す意図があったようです。それにしても、人間関係が複雑でした。上映後に、イスラーム映画祭主宰の藤本さんがミニ解説してくださって、物語の背景や、人間関係を飲み込むことができました。

ターメル:レバノンで生まれたパレスチナ人。親世代が1948年にパレスチナから難民としてレバノンに逃れて、オスロ合意後にヨルダン川西岸に戻った。

サルマ:イスラエルの領土になったところ(ナザレ)に留まったパレスチナ人の子ども。彼女の父親は共産主義者で、宗教色のない家で育っています。

ハジャル:イラクで生まれ育ったアラブ系のユダヤ人でイスラエルに移住してきた。ヘブライ語では、ハダル。旧約聖書に出てくる女性の名前。
(2005年のアラブ映画祭で上映された『忘却のバグダード』で、サッダーム・フセインが、イラクで暮らすユダヤ人約12万人を、財産没収の上、イスラエルに追放したことが描かれていたのを思い出しました。映画に登場したのは、イラクの共産党員だったユダヤ人たちでした。ハジャルも共産党員だったとすれば、ガッサンとの出会いも、そんな繋がりだったのでしょう)

ガッサン:ターメルの父。パレスチナ人のジャーナリスト。パレスチナ人の作家で1972年に暗殺されたガッサーン・カナハーニーがモデル。 ターメルの母親と出会う前に、ユダヤ人のハジャルと暮らしていて、タミールという息子をもうけている。

タミール:ターメルとは異母兄弟。母親がユダヤ人なので、タミールはユダヤ人。赤ちゃんの時に誘拐されて、アシュケナージのユダヤ人に育てられた。

ハジャルは誘拐されたタミールを探し続け、タミールを取り戻すためにガッサンの情報を売り、そのためにガッサンは命を落としたのでした。

★詳しい解説を、岡真理さんが、イスラーム映画祭7 アーカイブに寄稿されています。


サルマとターメルは、ガリラヤやゴラン高原を巡って、再び、ナザレの裁判所に戻ってきます。番号札の48番が呼ばれるのですが、さて、二人は・・・・というところで映画は終わりました。もしかしたら、呼ばれたのをスルーして、手続きをしなかったのかも。
この48番は、1948年のナクバ、最初に裁判所を訪れた時の番号札は、67番で、こちらは1967年の第三次中東戦争の年。

1991年にイスラエルを旅したとき、ナザレやガリラヤにゴラン高原も訪れました。5月の連休で、花が咲き乱れ、のどかな光景でした。その時にはなかった分離壁が映画には映っていて、イスラエルとパレスチナの関係が悪化の一途を辿っているのを感じさせられました。

景山咲子



イスラーム映画祭7 『アジムの母、ロナ』 (アフガニスタン=イラン)

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『アジムの母、ロナ』★日本初公開
原題:Rona, Madar-e Azim 英題:Rona, Azim's Mother
監督:ジャムシド・マームディ / Jamshid Mahmoudi
2018年/アフガニスタン=イラン/ペルシャ語、ダリ語/89分
字幕:日本語、英語
予告篇
https://youtu.be/wW7ptD1gB8Q

長年イランで暮らすアフガニスタン難民の家族の物語。
ジャムシド・マームディ監督は1983年にアフガニスタンで生まれ、幼い頃、家族とともにパキスタン経由イランに逃れてきて、イランで育ち、イランの大学で映画を学んだアフガニスタン難民です。
長篇デビュー作『数立方メートルの愛』(2014年)が、東京フィルメックスで上映されています。 イランで暮らすアフガニスタン難民の娘と、イラン人の労働者の青年の淡く切ない恋を描いたものでした。背景には、異国で難民として暮らす人たちの悲哀がずっしり。 監督にインタビューしています。(シネマジャーナル 93号 2015年春発行に掲載)
東京フィルメックス 『数立方メートルの愛』ジャムシド・マームディ監督、ナウィド・マームディ プロデューサーQ&Aは、こちらで!

『アジムの母、ロナ』も、 デビュー作『数立方メートルの愛』と同じく、兄ナウィド・マームディがプロデューサーを務めています。ロナは、兄弟の実際のお母様の名前。 母なる故国を重ね合わせています。

*物語*
テヘランで暮らすアフガニスタン難民のアジム。弟ファルークの一家がドイツに密航することになり、母ロナも一緒に行けるよう手配していたのに、出発前になり弟から母は連れていけないといわれる。アジムが母を引き取るが、ほどなく母が重度の糖尿病だと判明する。子どものいないアジム夫妻は、アジムが夜勤をしていて、アジムの腎臓を移植するとなると、重労働ができなくなり経済的になりゆかなくなる。仕事仲間の伝手で臓器を提供してくれるイラン人を見つけるが、外国人であるアフガニスタン人には移植できないと言われる・・・


アフガニスタンの人たちが、長年暮らしていても、イランではあくまで外国人(よそ者)で、賃金もイラン人より低く、差別されている実態が描かれています。弟ファルーク一家が、よりよい暮らしを夢見て、密航してまでドイツに行くことからも、満足のいく暮らしを送っていないことが思い図られます。

アジムを演じているモフセン・タナバンデは、イラン人で、コメディーが定評の俳優ですが、本作では、母親思いで、重労働の合間にもお祈りを欠かさない敬虔なムスリムのアフガン難民を体現しています。 監督としても活躍していて、2019年の東京国際映画祭 アジアの未来部門で監督作『50人の宣誓』が上映され、来日しています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/471578092.html
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モーセン・タナバンデ(左)とトルコのレイス・チェリッキ監督(右)

4月1日(金)公開のアスガル・ファルハディ監督作『英雄の証明』にも出演しています。どうぞご注目を!

母ロナを演じているファーテメ・ホセイニは、本作が映画初出演。 日本人にも似た風貌で、アフガニスタンでは少数派のハザラ族。 
アフガニスタンのタジク族やハザラ族の話すダリ語は、イランのペルシア語と単語や発音に多少の違いはありますが、文法は同じなので、言葉の不自由がないことからイランに逃れる人が多いようです。アフガニスタンの半数を占めるパシュトゥン族は、国境を隔てて同じ民族の住むパキスタンに逃れる傾向があるのと対照的です。

2/21(月)13:20からの上映後に、ちゃるぱーささん(アフガニスタン音楽ユニット)と寺原太郎さん(インド音楽バーンスリー奏者)による演奏とミニトーク。
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映画の内容にも呼応する選曲でした。11世紀のバーバー・ターヘル、14世紀のハーフェズなど、ペルシアの詩人の詩に曲をつけたもので、歌詞の意味も歌う前に説明してくださいました。

昨年8月にターリバーンが再びアフガニスタンを制圧し、音楽も禁止。国立音楽学校の楽器が破壊され、音楽学校の人たちも世界各地に亡命した状況だそうです。
世界中に難民として散らばったアフガニスタンの人たちが、故郷に帰れる日が早くくることを祈るばかりです。
(景山咲子)





イスラーム映画祭7 『ジハード・フォー・ラブ』

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『ジハード・フォー・ラブ』
原題:A Jihad for Love
監督:パーヴェズ・シャルマ / Parvez Sharma
2007年/米=英=仏=独=豪州/アラビア語、トルコ語、英語、ペルシャ語、ウルドゥー語、パンジャービー語、ヒンディー語、フランス語/81分
字幕:日本語、英語
予告篇
https://youtu.be/78jUBRio3So

インド出身のムスリムで、ゲイでもあるパーヴェズ・シャルマ監督が、信仰とセクシュアリティの間で葛藤するムスリムたちの声を集めたドキュメンタリー映画。
本作は過去に『愛のジハード』の邦題で公開されています。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件後に本作を作る必要性を強く感じたというシャルマ監督は、6年がかりで世界各地で暮らすムスリムを取材しました。南アフリカ、フランス、エジプト、イラン、トルコ、パキスタン、インドなど、劇中で話される言語は9つ。
神の存在を意識しながら他者に理解されない葛藤を抱き続ける(しかしそれこそが“ジハード”では)彼らの姿を監督のカメラは真摯に捉えています。

(詳細 のちほど)