イスラーム映画祭9 (2024年開催) 上映日程&作品が発表されました!

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イスラーム映画祭9
東京・渋谷ユーロライブ:2024年3月16日(土)~17日(日)、23日(土)~24日(日)*4日間 1日5回上映
  東京のチケット発売:3/13(水)深夜0時から会期中の4日分を一斉に販売

名古屋・ナゴヤキネマ・ノイ  期間未定

神戸・元町映画館:4月27日(土)~5月.3日(金) 1日2回上映

主催:イスラーム映画祭
公式サイト:http://islamicff.com/
X(旧:Twitter):http://twitter.com/islamicff
Facebook:http://www.facebook.com/islamicff

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藤本高之さん一人の手弁当で開催されているイスラーム映画祭。
来年は開けないかもしれないとの話もあったのですが、昨今の世界情勢も鑑みて、開催を決断されました。上映作品と、東京での上映やトークの詳細も決まりました。
ぜひ、皆さまご予定ください。

ここに、藤本さんの開催に向けての言葉をお届けします。

☆イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんの言葉☆
2015年12月にスタートし、中東や北アフリカに広がる「イスラーム文化圏」の映画を紹介してまいりました本企画。
昨今の円安で次回の開催が危ぶまれておりましたが、継続を望む多くの声に支えられ、規模を縮小することにより第9回を開催することとなりました。

名古屋では、先日発表されました、本年7月に閉館した名古屋シネマテーク跡地に新たに誕生する、「ナゴヤキネマ・ノイ」にて開催する予定です。

今回は、10月7日に発生したパレスチナ・ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの越境攻撃と、その「報復」や「自衛」と呼ぶにはあまりに苛烈なイスラエルのガザ侵攻が続いている現状を鑑みまして、パレスチナ問題の原点である1948年のイスラエルによる民族浄化、“ナクバ”(アラビア語で“大災厄”)を少女の視点から描いた劇場未公開の傑作『ファルハ』を緊急上映いたします。(東京・神戸のみ)

また、緊迫するパレスチナ情勢の影で今なお民衆革命への弾圧が続いている隣国のシリア。
その独裁政権下で長年行われている人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追ったドキュメンタリー映画、『アユニ/私の目、愛しい人』を日本初公開。

他にも、イスラーム映画祭7から続く北アフリカ・マグリブ諸国の女性監督を紹介するシリーズの決定打として、アルジェリア内戦中フランスへ亡命した俳優兼舞台演出家が、公衆浴場「ハマム」を舞台に抑圧下の女性たちを描いた戯曲を、自ら映画化したワンシチュエーション・ドラマ、『私は今も、密かに煙草を吸っている』も初公開いたします。

さらに今回は、フランスの都市郊外(バンリュー)に暮らす移民ルーツの若者たちの実態を、モノクロのシャープな映像で描いて本国公開時(1995年)に一大センセーションを巻き起こし、日本でも1996年に公開され話題となったフランス映画のエポックメイキング、『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバル。(東京・神戸のみ)

歴史大作からヘビーな社会派ドラマ、移民をテーマにした子ども映画やコメディまで、9年続く企画としての連続性と、“今、世界で起きているのに忘れられている事”も意識しつつ、多彩な12作品を揃えました。

気鋭の研究者やジャーナリストを迎えて毎回好評を博している上映後のトークセッションも、東京では過去最多の11回を予定しております。


◆イスラーム映画祭9上映作品◆

【イスラーム映画祭9上映作品①】
『炎のアンダルシア』 ★26年ぶりの劇場リバイバル
原題:Al-Massir 英題:Destiny
監督:ユースフ・シャヒーン / Youssef Chahine
1997年/エジプト=フランス/135分/アラビア語・フランス語
知る人ぞ知る巨匠、故ユースフ・シャヒーン監督(1926-2008)作。中世に実在した大哲学者イブン・ルシュド(ラテン名:アヴェロエス)が主人公の歴史大作。
時は12世紀末、ムワッヒド朝カリフ・マンスール治世下のアンダルス(スペイン南部)。世には権力を背に偏狭なイスラム主義が蔓延し始め、信仰と理性の両立を説くアヴェロエスの哲学書にも焚書の危機が迫ります…。
20世紀末のエジプト社会を反映しつつ現代にも通じる普遍的なテーマを謳った、エンターテインメント要素も満載の壮大な作品。
予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=lusJxBk8ha4

☆東京上映日
3/17(日) 12:00 

3/24(日)15:05
上映後トーク
【テーマ】《思想には翼がある ―12世紀アンダルスより21世紀への伝言》
【ゲスト】金子冬実さん(東京外国語大学非常勤講師)


【イスラーム映画祭9上映作品②】
『私は今も、密かに煙草を吸っている』★日本初公開
原題:À mon âge je me cache encore pour fumer
英題:I Still Hide to Smoke
監督:ライハーナ / Rayhana
2016年/フランス=ギリシャ=アルジェリア/90分/アラビア語・仏語
予告篇 https://youtu.be/DWdFgxJHTjQ
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全編ほぼ“ハマム”を舞台にした、抑圧下の女性たちを描く人間ドラマです。
アルジェリア軍とイスラム過激主義勢力による内戦が激化していた1995年。
ハマムは女性たちにとって、唯一自由に話せる場所でした…。
監督のライハーナはアルジェリアの俳優兼演出家で、90年代末にフランスへ亡命。
2009年に本作の元となる戯曲をフランス語で上演しています。
ハマムのシーンはギリシャにて、女性のスタッフのみで撮影されました。

☆東京上映日
3/16土 12:35 
3/24日 20:40



【イスラーム映画祭9上映作品③】
『アユニ/私の目、愛しい人』
原題・英題:Ayouni
監督:ヤスミーン・フッダ / Yasmin Fedda
2020年/シリア=イギリス/74分/アラビア語・英語・イタリア語
予告篇 https://youtu.be/mS7aS_5YNp8
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シリアのアサド政権下で続く人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追った深淵なるドキュメンタリー映画。
2013年にラッカで強制失踪したイタリア人神父の妹と、2015年にダマスカスで強制失踪したシリア人男性のパートナーが、それぞれに最愛の人の消息を求めて活動する様子を6年にわたり撮影しています。
失踪者の数は10万人以上…。 その数の一人ひとりに掛け替えのない愛と人生がある事を教えてくれる作品です。

☆東京上映日
3/16土 10:00 
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命①― 震災後のシリア北西部と革命の現在地》
【ゲスト】山崎やよいさん(アラビア語通訳/「イブラ・ワ・ハイト」発起人/ NPO法人Stand with Syria Japan監事)

3/23土 17:50
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命②― 「革命前のシリアは平和だった」言説のまやかし》
【ゲスト】黒井文太郎さん(軍事ジャーナリスト)


【イスラーム映画祭9上映作品④】
『ファルハ』
原題・英題:Farha
監督:ダリン・J・サラム / Darin J. Sallam
2021年/ヨルダン=スウェーデン=サウジアラビア/92分/アラビア語・ヘブライ語・英語
予告篇https://youtu.be/2UT6Zw4-Yg0
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パレスチナにルーツを持つヨルダン出身のダリン・J・サラム監督作。
1948年、イスラエルによるパレスチナの民族浄化、“ナクバ(アラビア語で“大災厄”)”を目撃する少女の物語です。
映画は、ナクバでシリアに逃れ、サラム監督の母親に自身の経験を語ったというパレスチナ女性の物語に基づいており、主人公ファルハの体験は、イスラエル建国の1ヵ月前に起きた
“デイル・ヤーシーン村の虐殺”を彷彿とさせます。
本作はNetflixで配信された際、イスラエル政府の大きな反発を招きました。(つまり、イスラエルによるパレスチナの民族浄化はホロコーストと同じく歴史的な事実だからです)


★SKIPシティ国際Dシネマ映画祭『ファルハ』 1948年のパレスチナ 少女が隙間から覗いた惨劇 (咲)  
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ダリン・J・サラム監督 Q&Aも掲載しています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/489961622.html


☆東京上映日
3/17日 14:45

上映後トーク
【テーマ】《ホロコーストとナクバ―起源の暴力と暴力の起源》
【ゲスト】岡真理さん(京都大学名誉教授、早稲田大学大学院文学研究科教授/アラブ文学者)


【イスラーム映画祭9上映作品⑤】
『戦禍の下で』
原題:Sous les Bombes 英題:Under the Bombs
監督:フィリップ・アラクティンジ / Philippe Aractingi
2007年 フランス=レバノン=イギリス/93分/アラビア語・英語・フランス語
予告篇https://youtu.be/jwtEWdsVgZc

2006年に起きたイスラエルによる第二次レバノン戦争後、1年足らずのうちに撮影された、まるでドキュメンタリーと見紛う戦禍の傷痕をたどるドラマです。
この戦争は現地では7月戦争と呼ばれます。 妹と息子の消息を探すシーア派ムスリム女性と、彼女に雇われたタクシー運転手のレバノン南部をたどるフィクションが、やがて実際の被災地や被災者の声をたどるドキュメンタリーの役割をなしてゆくのです。
瓦礫の山と化した現地の様子は現在のガザとも重なります。

☆東京上映日
3/17日 17:50 

上映後トーク
【テーマ】《我々は映像で闘う ―2006年第二次レバノン戦争とレバノン映画人》
【ゲスト】佐野光子さん(アラブ映画研究者)

3/23土 20:30

ヨーロッパの移民映画小特集1
【イスラーム映画祭9上映作品⑥】
『憎しみ』
原題:La Haine  英題:Hate
監督:マチュー・カソヴィッツ / Mathieu Kassovitz
1995年/フランス/98分/フランス語
予告篇https://youtu.be/MjEVNWNhA1o?si=PaaZzGX5cvZseuYl

<郊外(バンリュー)映画>の隆盛はここから始まった!
フランス映画のエポックメイキング、マチュー・カソヴィッツ監督作『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバルします。
かったるい日々を生きるユダヤ系のヴィンス、アラブ系のサイード、サブサハラ・アフリカ系のユベール。 暴動が起きたカオスな街で、警官が紛失した拳銃を拾った3人の24時間…。
都市郊外(バンリュー)に住む移民ルーツの若者たちの実態を描いた本作は、公開当時本国で賛否両論の一大センセーションを巻き起こしました。

★東京上映日
3/23土 12:00

上映後トーク
【テーマ】《「郊外(バンリュー)」から声をあげる ―フランスの移民事情とラップ・フランセ》
【ゲスト】陣野俊史さん(ライター/『魂の声をあげる 現代史としてのラップ・フランセ』『ジダン研究』著者)

ヨーロッパ移民映画小特集2
【イスラーム映画祭9上映作品⑦】
『ハンズ・アップ!』
原題:Les Mains en L'Air  英題:Hands Up
監督:ロマン・グーピル / Romain Goupil
2010年/フランス/92分/フランス語
予告篇https://youtu.be/Ji7ZlzNXpzI

強制送還されそうな非正規滞在のチェチェン人少女を、同級生たちが体を張って守ろうとする子どもたちのレジスタンス映画です。
映画は、主人公ミラナが2067年の未来から2009年の記憶を回想するという形で語られます。本国で公開された2010年はブルカ禁止法が施行された年でもあり、移民社会に対し強硬的だったサルコジ政権下の雰囲気もうかがえます。
しかし、いつの世も子どもたちの世界に、大人が引いた境界線は関係ないのです。

★東京上映日
3/16土 17:45 


3/23土 15:00
上映後トーク
【テーマ】《2023年「暴動」をふり返る― 映画から読み解くフランスの移民事情【復習編】》
【ゲスト】森千香子さん(同志社大学社会学部教授/『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』著者)


ヨーロッパ移民映画小特集3
【イスラーム映画祭9上映作品⑧】
『辛口ソースのハンス一丁』
原題:Einmal Hans mit scharfer Soße 英題:A Spicy Kraut
監督:ブケット・アラクシュ / Buket Alakus
2013年/ドイツ/92分/ドイツ語・トルコ語
予告篇https://youtu.be/SklT3XcHt10

親の祖国と生まれ育った国の価値観に挟まれながら、自身の幸せを探す移民二世の姿を描くコメディ映画です。
妊娠した妹の結婚を、姉が先に結婚すべきという伝統的価値観の親に認めさせるため、主人公ハティジェは偽りの婚約者探しを始めます…。
移民二世に共通するアイデンティティの揺らぎを賑やかかつポジティブに描いて印象は軽快。
『おじいちゃんの里帰り』と同じく、トルコ系の女性監督による作品です。

★東京上映日
3/16土 19:40 

上映後トーク
【テーマ】《「ドイツのアリはいないのか?」 ―トルコ系移民二世の恋愛と家族関係》
【ゲスト】渋谷哲也さん(ドイツ映画研究者/日本大学文理学部教授)

3/23土 10:00


【イスラーム映画祭9上映作品⑨】
『私が女になった日』
原題:Rouzi Ke Zan Shodam  英題:The Day I Became A Woman
監督:マルズィエ・メシュキニ / Marziyeh Meshkiny
2000年/イラン/74分/ペルシャ語
予告篇 https://youtu.be/194rTpQhQF0?si=wjKGO5DPADSNFmzd

『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督、『午後の五時』のサミラ・マフマルバフ監督に続いてマフマルバフ・ファミリーから、マルズィエ・メシュキニ監督作。
チャードルを初めてまとう日を迎えたハッワ。 離婚を望みながら自転車レースに挑むアフー。 かつて華やかな結婚式を夢見ていたフーラ…。
3人の女性を通じて、イランのイスラム社会における女性の置かれた状況が寓話的に描かれます。 女性たちを中心とする政権抗議デモが起きた今こそ観るべき作品を、22年ぶりにリバイバルです。

★2000年 第1回東京フィルメックスで上映された折にマルジェ・メシキニ監督にインタビューした懐かしい作品です。インタビューは、シネマジャーナル52号に掲載。(咲) 

☆東京上映日
3/17日 20:45 


3/24日 10:00
上映後トーク
【テーマ】《それは本当に“反スカーフ”なのか? ―起ちあがったイラン女性たち》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


【イスラーム映画祭9上映作品⑩】
『メークアップ・アーティスト』
原題・英題:Makeup Artist
監督:ジャファール・ナジャフィ / Jafar Najafi
2021年/イラン/76分/ペルシャ語
予告篇https://youtu.be/tfJB_Uis16M?si=MPwH5HYbommpFXHH

メークアップを勉強する大学に通うため、強固な家父長制的価値観を持つ夫や義母と丁々発止の日々を繰り広げる女性を追った、ドキュメンタリー映画です。
本作のポイントの一つは、主人公のミーナたちが少数民族のバフティヤーリー族である事で、イランにおける女性の置かれた状況がわかるとともに彼の国の多民族国家ぶりもうかがえます。 『私が女になった日』から状況は何も変わらずとも、イランの女性たちが確実に前進している事を実感できる作品です。

★山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 上映時の感想とジャファール・ナジャフィ監督Q&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/483935250.html

☆東京上映日
3/24日 12:35

上映後トーク
【テーマ】《多民族国家イランの魅力と、イランを知るための映画・文学》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


【イスラーム映画祭9上映作品⑪】
『スターリンへの贈り物』
原題:Podarok Stalinu 英題:The Gift to Stalin
監督:ルスタム・アブドゥラシェフ / Rustem Abdrashev
2008年/カザフスタン=ロシア=ポーランド=イスラエル/95分/ロシア語・カザフ語・ヘブライ語
予告篇 https://youtu.be/dTI52pQ-fkY

1949年。スターリンの強制移住策によって中央アジアに送られたユダヤ人少年を、ムスリムの老人やキリスト教徒女性が匿うという物語です。
ユダヤ人、ムスリム、キリスト教徒。 カザフ人、ロシア人、ポーランド人や朝鮮人。
ソ連の圧政下で宗教や民族を超えて身を寄せ合う人々の姿が叙情味豊かに描かれます。
でも、彼らが暮らす土地の近くには、ある実験場があるのでした…。
イスラーム映画祭では久々となる、中央アジア映画の埋もれた逸品です。

★上映日
3/17日 10:00 
3/24日 18:40



【イスラーム映画祭9上映作品⑫】
『ハーミド〜カシミールの少年』
原題・英題:Hamid
監督:エージャーズ・ハーン / Aijaz Khan
2019年/インド/108分/ウルドゥー語・ヒンディー語
予告篇 https://youtu.be/vusgEUBUOE8

その帰属をめぐって1947年の分離独立以降、インドとパキスタンの対立の原因となっているカシミールを舞台にした、無垢なムスリム少年の物語です。
父親が失踪した7歳のハーミドはある日、父を返してもらえるよう神様の数字“786”に電話をかけます。 でも、つながったのは意外な人物でした…。
美しい自然を背景にした物語と少年の純粋さに心打たれる一方で、インド映画がカシミールを描く事、そしてそれを“読み解く”事の難しさも含まれている作品です。

2023年2月18日 東京外国語大学TUFS Cinema上映時の解説はこちらで
http://cineja4bestfilm.seesaa.net/article/494950599.html

★上映日
3/16土 14:40

上映後トーク
【テーマ】《カシミールをめぐるインド映画― 『ロージャー』から『PATHAAN/パターン』まで》
【ゲスト】安宅直子さん(南インド映画研究者)

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リーフレットのダウンロードは、こちらからどうぞ
http://islamicff.com/pdf/iff9_tokyo.pdf


イスラーム映画祭8 神戸篇 上映&トーク 日程

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2023年4月29日(土)~5月5日(金)

神戸・元町映画館 http://www.motoei.com/

神戸篇チラシ
http://islamicff.com/pdf/iff8_kobe.pdf

神戸篇 トーク日程
http://islamicff.com/timetable_talksession.html#kobe_timetable

イスラーム映画祭8 公式サイト
http://islamicff.com/index.html

シネジャ イスラーム映画祭8 作品紹介
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/493656889.html


★上映&トーク スケジュール★

4/29(土)
12:50~『わたしはバンドゥビ』
 ☆2011年 元町映画館で『ソウルのバングラデシュ人』のタイトルで上映された作品。

15:05~『ファーティマの詩(うた)』
★上映後トーク
《郊外(バンリュー)と移民 ―映画から読み解くフランスの移民事情》
【ゲスト】森千香子さん(同志社大学社会学部教授/『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』著者)

  東京でのトーク http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/498632600.html

17:40~『午後の五時』


4/30(日)
12:50~『ソフィアの願い』

14:40~『マリアムと犬ども』
 ★上映後トーク
 《「家父長制ホラー」が照らすシステムからの脱却》
【ゲスト】鳥山純子さん(立命館大学)
「ジェンダー」や「家父長制」をめぐる単純な一元的解釈だけでは読み解けない作品の背景について

17:40~『キャプテン アブ・ラエド』


5/1(月) 
★各回 藤本高之さんによるミニ解説

12:50~『太陽の男たち』
★パレスチナ難民の作家ガッサーン・カナファーニーによる原作小説(1962発表)と
映画(1972製作)との重要な違いについて、パレスチナの1960〜70年代の政治的状況を絡めて

15:15~『わたしはバンドゥビ』
 ★今や「移民大国」である韓国の移民事情や韓国とイスラムとの歴史的接点について

17:35~『エグザイル 愛より強い旅』
 ★「移民」と簡単にひと口では括れない、フランスの複雑な移民事情と劇中の重要な要素である「スーフィズム」について


5/2(火)
★各回 藤本高之さんによるミニ解説
12:50~『キャプテン アブ・ラエド』

15:15~『陽の届かない場所で』

17:20~『マリアムと犬ども』


5/3(水)
12:50~『キャラメル』

14:50~『そこにとどまる人々』
★上映後トーク(オンライン)
《エリアーン・ラヘブとナディーン・ラバキー ―“アラブ”にこだわる監督たち》
【ゲスト】佐野光子さん(アラブ映画研究者)

17:40~『私たちはどこに行くの?』


5/4(木)
12:50~『陽の届かない場所で』

14:35~『太陽の男たち』
★上映後トーク
《「壁を叩け!」―イスラエルが恐れたペンの力》
【ゲスト】岡真理さん(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/アラブ文学者/『アラブ、祈りとしての文学』『ガザに地下鉄が走る日』著者)
東京でのトーク http://www.cinemajournal.net/eigasai/2023.html

17:45~『ガザを飛ぶブタ』


5/5(金)
12:50~『ファーティマの詩(うた)』

14:30~『エグザイル 愛より強い旅』
★上映後トーク
《ヨーロッパを知るための“移民映画”大講義(レクチャー)》
【ゲスト】渋谷哲也さん(ドイツ映画研究者/日本大学文理学部教授)

17:35~『長い旅』



イスラーム映画祭8 『ファーティマの詩(うた)』 フランス、アルジェリア移民の母の悲哀 (咲)

イスラーム映画祭8では、フランスのマグリブ移民とその第二世代をテーマにフランス映画の小特集が組まれ、下記2本が上映されました。
『ファーティマの詩(うた)』
『エグザイル 愛より強い旅』

ここでは、パリ同時多発テロから3ヵ月後の2016年セザール賞で最優秀作品賞を受賞した、フィリップ・フォコン監督作『ファーティマの詩(うた)』と、上映後のトークをご紹介します。

『ファーティマの詩(うた)』 原題・英題:Fatima
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監督:フィリップ・フォコン / Philippe Faucon
2015年/フランス=カナダ/フランス語・アラビア語/78分
予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=eHM9rSskaqw
★日本初公開

リヨンの郊外(バンリュー)の団地で暮らすアルジェリア移民のファーティマ。夫と離婚し、二人の娘たちに教育を受けさせるため、朝から晩まで清掃や家政婦の仕事をしている。大学生のネスリーンは医学部で母親の期待にこたえようと勉学に励むも、試験の重圧からストレスを抱えている。次女のスアードは母親の仕事を軽蔑して真面目に勉強しようとしない。ファーティマは、日々の思いを詩にして綴る・・・
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ファーティマはフランス語が流暢に話せず、仕事場ではがゆい思いをしていて、娘たちにはアラビア語で話しかけます。でも、娘たちから返ってくるのはフランス語。アルジェリアから一緒に移民してきた夫は、離婚後、新たな妻と暮らしていて、ファーティマには複雑な思いがよぎります。 
フランス語ができないために、仕事も限られてしまいます。長女と一緒にアパートを見に行った時には、スカーフを被っていたからか、不動産屋から、「この部屋はすでに決まった」と言われてしまいます。移民のムスリムが、何かと差別されている社会を本作は映し出しています。
美しいアラビア文字で綴るファーティマの姿からは、詩の文化を大切にする心を感じて救われました。


《郊外(バンリュー)と移民 ―映画から読み解くフランスの移民事情》
【ゲスト】森千香子さん(同志社大学社会学部教授/『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』著者)
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2/23(木)12:50からの『ファーティマの詩(うた)』上映後、フランスのムスリム移民に詳しい森千香子さんの解説。
トーク開始の前に、藤本さんより、「移民2世、移民3世という表現はあえて使わず、移民の子ども世代、第二世代としました」と、まず説明がありました。
フランスでは移民してきた親が外国籍でも、フランスで生まれればフランス国籍。 アメリカでは、例えば中国2世、3世、メキシコ2世となるが、フランスでは親の国籍や出自は問わず、フランスで生まれればフランス国籍なのが当然。移民2世とは言わないとのこと。

フィリップ・フォコン監督は、モロッコ出身。1983年に夫とともにモロッコから移民してきたファーティマ・アル・アイユービーによる著書2冊をモチーフに、主人公をアルジェリア移民に置き換えて描いた作品。ファーティマ役を演じたファーティマ・スライヤー・ゼルーアルさんは、実際にアルジェリア移民で清掃の仕事をしていました。
本作は、2016年セザール賞で最優秀作品賞を受賞する前から、注目されていて、普通のフランス人が観て感動していた。

◆ムスリム大国フランス

フランスのムスリム移民  約500万人 (人口の7%)
(フランス生まれの第2、3世代も含む)
*移民の統計を取っていないので推測

アルジェリア 256万人
モロッコ 182万人
チュニジア 76万人

◆植民地支配の歴史

フランス領アルジェリア (1830年~1962年)
・19世紀 フランスからアルジェリアに入植
・20世紀 アルジェリア→フランス 戦争・労働への動員
・1950~1970年代 戦後の復興期をマグリブ移民が支えた

映画の中で、父親が娘に窓の外の高層ビルを指して 「すごい高さだろ? 俺たちが建てた。何時間も働いたよ」という場面がある。
一方、娘は母親の清掃の仕事には誇りが持てない。


◆郊外(バンリュー)
Banlieue : Ban 締め出された lieue 地域 
郊外の意味でも使われる。
日本ではベッドタウンのイメージ。
イギリスでは郊外に金持ちが移り住んだ。
フランスの郊外は、工業地帯として発展。貧しい人たちの住む町に。
旧植民地にルーツを持つ低所得者層が多い。
空間的な“郊外”と、チタンの悪い地域としての“郊外”

◆なぜ、移民とその家族は「団地(シテ)」住まいが多いのか?
第二次世界大戦でフランスは大きな被害を受け、住宅事情がよくなく、郊外に団地がたくさん建てられた。元々、フランス人が住んだが、徐々に持ち家を買って出ていって、そこに移民の家族が住むようになった。
1973年、オイルショックで新規労働移民の受け入れを1974年に停止。 フランスに単身でいた労働者が家族を呼び寄せた。


◆フランス 「郊外(バンリュー)」映画への誘い

『彼女について私が知っている二、三の事柄』 1967年
ジャン=リュック・ゴダール監督
当時、最大規模だったパリ郊外ラ・クールヌーヴ4000戸団地が舞台
実話を参考にしながら、一見豊かに見える団地生活と消費社会の実態を鋭く批判

『憎しみ』 1995年
マチュー・カソビッツ監督 (ユダヤ人)
郊外の若者の一日を白黒でスタイリッシュに描いて、世界的に大ヒット。
主役はユダヤ系、アラブ系、アフリカ系の3人の若者。
2020年にリバイバル。舞台にもなっている。

『ウエッシュ、ウェッシュ、何が起こっているの?』 2001年
ラバ・アメール・ザイメッシュ監督 (アルジェリア生まれ)
パリ郊外モンフェルメイユの団地が舞台。
監督自身が育った団地が舞台で、出演者のほとんどが団地住民や監督の家族。
アンチ『憎しみ』として作られた。

『身をかわして』 2003年
アブデラティフ・ケシシュ監督(チュニジア出身)
青春ドラマ。コメディー。

『レ・ミゼラブル』 2019年
ラジ・リ監督(マリからフランスに移住した両親のもとに生まれる)
パリ郊外モンフェルメイユ団地が舞台。
タイトル『レ・ミゼラブル=悲惨な人たち』は、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの著作と同じ
郊外の移民の経験がより広いフランス人に共通するというメッセージ
シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/473711950.html

「郊外(バンリュー)」映画の多くが男性中心に描かれている中で、『ファーティマの詩(うた)』 は女性中心に描かれている珍しい映画。


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『エグザイル 愛より強い旅』原題:Exils 英題:Exiles
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監督:トニー・ガトリフ / Tony Gatlif
2005年/フランス/フランス語、アラビア語、スペイン語/103分
*2005年 劇場公開
シネジャ作品紹介『愛より強い旅』
http://www.cinemajournal.net/review/2005/index.html#ai-tabi

★本作の冒頭、ロマン・デュリス演じる主人公が窓辺に佇むの背中が映し出され、窓の外に団地が広がっていました。

日本でも人気のあるアルジェリア出身でロマのルーツも持つトニー・ガトリフ監督作。
ガトリフ監督の自伝的要素も強い本作は、ともにアルジェリアルーツのカップルがアイデンティティを求めてパリからアルジェを目指す物語。
フランス→スペイン→モロッコ→アルジェリアと続く旅をスーフィー音楽等を基にした、督自身による楽曲の数々が彩ります。
*国内未ソフト化です。

ビートのきいた刺激的なテクノ音楽、哀愁漂う中に力強さのあるフラメンコ、民族楽器とテクノを融合させて移民の心情を歌い上げるライ、そして、神との一体をはかるためのスーフィー(イスラーム神秘主義)音楽と、本作は音楽を巡る旅でもあります。 アルジェの町で、素肌を隠せと強要されて被っていたスカーフとコートを脱ぎ放ったナイマが、スーフィー音楽にあわせてトランス状態に陥っていくラストは圧巻。 ただし、本来のスーフィーの儀式に使用する三拍子系ではなく二拍子系リズムに変えてあり、監督のオリジナル。(咲)


報告:景山咲子

イスラーム映画祭8 『太陽の男たち』  岡真理さんから学ぶ いまだに叶わないパレスチナの人々の願い (咲)

2023年で1948年のイスラエル建国による“ナクバ(大災厄)”から75年を迎えるにあたり、イスラーム映画祭8で、あらためて「パレスチナ」が取り上げられました。

『太陽の男たち』は、1972年にベイルートで爆殺されたパレスチナ難民の作家、ガッサーン・カナファーニー(1936-72)の代表作の映画化にして、“アラブ映画史における最重要作”の1本。
難民として生きるパレスチナの人たちの悲哀をずっしり感じさせてくれる一作。
それは今も変わらない現実であることを突き付けられます。


《ガッサーン・カナファーニー没後50年特別上映》

『太陽の男たち』 原題:Al-Makhdu'un 英題:The Dupes
監督:タウフィーク・サーレフ Tewfik Saleh
1972年/シリア/アラビア語/107分
★劇場初公開

*物語*
イラク南部の港町バスラ。ティグリス河とユーフラテス河の合流するシャット・エル・アラブの河畔で、それぞれにクウェイトを目指す4人のパレスチナ難民の男たちが出会う。知人からクウェイトで一儲けできると聞いた一家の長アブー・カイス、失踪した兄に代わって親兄弟を養わなければならない10代半ばのマルワーン、政治活動をして指名手配されているアスアド。3人は、難民として暮らすヨルダンから、なんとかクウェイトに密入国して稼ごうとバスラまでやってきたのだ。その3人に、クウェイトの金持ちが所有する給水トラックの運転手を務めるアブー・ハイズラーンが、空っぽになった帰り路の給水トラックでの密入国を持ちかける。4人の乗るトラックは、灼熱の沙漠をクウェイトに向けてひた走る。イラク側の国境でアブー・ハイズラーンが出国手続きする間、3人は給水タンクの中に身を潜める。我慢の限度6分程で手続きを終え、今度はクウェイト側の国境を目指す。もう一度、給水タンクに潜む3人。入国手続きを急ぎたいアブー・ハイズラーンを、顔馴染みのクウェイトの役人たちはバスラで遊んできたのかなどとからかい、なかなかスタンプを押してくれない・・・


30年以上前に、アラブ文化協会の上映会などで、3回観ているのですが、いずれもスクリーンが小さかったので、今回大きな画面で観ることができたのは大きな喜びでした。
かつて日本で上映された時の事情をよく知っている方から、当時のフィルムは行方不明になっていたので、どこかからか見つかったのでしょうか?との問い合わせがありました。主宰の藤本さんに伺ったところ、アメリカのアラブ系映画会社がかつてのフィルムをデジタル修正したものをDCP化して上映するので、かつて日本で上映されたものとは別物。字幕も新しく付けたものとのこと。

私の記憶には、灼熱の太陽のもと、ひたすら沙漠を走るトラックと、金満クウェイトの役人たちがネチネチと運転手をいびる場面と、衝撃のラストシーンしか残っていませんでした。久しぶりに観て、映画の前半で、4人のパレスチナ難民の男たちのそれぞれの事情が丁寧に描かれていたことに驚きました。(まったく記憶が飛んでました!) 土壁の家が並ぶバスラの町らしい町並みや、ナツメヤシのたなびく風情も楽しめました。後半の太陽が照り付ける煉獄のような場面との対比が強烈でした。



《「壁を叩け!」―イスラエルが恐れたペンの力》
【ゲスト】岡真理さん(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/アラブ文学者/『アラブ、祈りとしての文学』『ガザに地下鉄が走る日』著者)

2/23(木)15:30からの『太陽の男たち』上映後,アラブ文学研究者の岡真理さんによる詳しい解説が1時間にわたって行われました。 
冒頭、岡真理さんより、「藤本さんから『太陽の男たち』を昨年のイスラーム映画祭7で上映予定と聞かされ、新訳を光文社より2023年に出版予定なので、1年待ってもらえませんかとお願いしたのですが、まだ新訳ができていません」と明かされました。
藤本さんから、「出来上がっていれば、この会場で販売することができたのですが」と補足ありました。 近い将来、新訳が出版されるのを楽しみに待ちたいと思います。
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黒田寿郎氏による旧訳:1978年 河出書房から現代アラブ小説全集として出版された中に収められていたが、絶版に。その後、河出文庫として復活。

ガッサーン・カナファーニー(1936-1972)
1936年 アッカで生まれる。当時、歴史的パレスチナは、国連委託統治領という名のイギリス領だった。
1948年 12歳の時、ナクバ。難民となってシリアへ。

*補足説明*
1947年11月29日 国連総会でパレスチナ分割。
ホロコーストで生き延びたものの、25万人が行き場のない難民に。
ヨーロッパの反ユダヤ主義のツケを、ホロコーストに関係のないパレスチナに。
できるだけパレスチナ人を排除するという「パレスチナの民族浄化」が計画的になされ、パレスチナ人の集団虐殺が各地で起こった。

難民キャンプのテントが、だんだんブロックの家になっていったが、パレスチナ人からは、ブロックの家だと定住することになるからと反対する気持ちが強かった

1952年 UNRWAの学校で美術を教える(16歳)
      ダマスカス大学 アラブ文学科入学
      ジョージ・ハバシュ(PFLP創設者)と出会う
      MAN(アラブナショナリズム運動)に参加
      マルクス・レーニン主義に傾倒

1955年 MAN活動を理由に退学処分(19歳)
1956年 クウェイトへ  教師、ヨルダンのMAN系新聞ラアユ紙の記者(20歳)
1960年 ベイルート(レバノン)へ  MANの機関紙ホッリーヤ(自由)紙の記者に
1961年 デンマーク人のアニ・フーバーと結婚(25歳)
1967年 第三次中東戦争 PFLP創設、これに参加(31歳)
1969年 PHLPの機関紙ハダフ(目標)の編集 (33歳)
1972年 ベイルートで暗殺


◆カナファーニーが追及したテーマ:
・人が《難民》と「なる」、とはいかなることなのか。
 「悲しいオレンジの実る土地」

・人が《難民》で「ある」、《難民》として生きる、とはいかなることなのか。
 「戦闘のとき」「路傍の菓子パン」「イードの贈り物」

・人が《難民》ではなくなる、とはいかなることか。
祖国を持てればいいのか?
 「ハイファに戻って」

 
映画『太陽の男たち』
小説(1962~63年 26歳の時に執筆)のアラビア語の原題は、「欺かれし者ども」だったが、同名の映画が以前にあった為に使用できず、映画のタイトルは『太陽の男たち』となった。
太陽は、日本的にはポジティブなものだが、現地では違う。

作中、繰り返される「10年」
ナクバから10年経った1958年頃が舞台。

クウェイトを目指す3人の難民の男たち
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アブー・カイス(初老)
アスアド(青年): ヨルダンで政治活動をして指名手配
マルワーン (10代半ば):失踪した兄に代わって家族を養わなければならない

給水トラックの運転手: アブー・ハイズラーン
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ナクバの時の戦闘で男としての機能を失っていて、パレスチナ人が民族的に去勢されたことを表している。

なお、アブーは、「父」「親父」の意。
 アブー + 長男の名前
 アブー + ニックネーム 
  ハイズラーン(竹竿)は、背が高いのでつけられたあだ名。

「国境」など存在しないがごとくに、国境を超えられる者たちと、「国境」が立ちはだかり、それを超えることができない、あるいは、それを超えようとして、国境と国境のはざまで息絶える者たち・・・

クウェイトの金持ち
鷹狩に客人を引き連れ、クウェイトとイラクの間を、国境など存在しないかのように行き来し、豪遊する。

パレスチナ難民
国境を超えるために、トラックのタンクの屋根の上で砂漠の暑熱に耐え、結局、灼熱地獄と化したタンクの中で死ぬ。
砂漠に放置され、灼熱地獄と化した給水タンクで絶命し、ゴミ捨て場に打ち捨てられる難民たち = 当時のパレスチナ人(=難民)が置かれた状況のメタファー

クウェイトを目指す3人の難民の男たち
 それぞれに理由は異なるが、なぜクウェイトに行くのか?
 今のこの苦境を脱したい
  = 自分の家族の経済的な生き延びや、自分自身の(=個人の)生を生きたい(エゴイズム)
 クウェイトに行けばなんとかなる、ましになるだろう
いずれも、自分や家族の個人的、私的な「生き延び」のため

◆原作と映画の決定的な違い
原作ラストのアブー・ハイズラーンの叫び
「なぜ、お前たちはタンクの壁を叩かなかったのだ!? なぜ、なぜ、なぜ」
作者がもっとも訴えたかったこと この叫びに凝縮
自分たちの存在を世界に訴えない限り、難民キャンプで難民として朽ちていくしかない

個人的な、あるいは私的な生き延びだけを目的にしている限り、お前たちは、難民キャンプという、国境と国境のはざまのノーマンズランドにも等しい空間で、世界から忘れ去られ、死んでいくしかないというメッセージ。

イラクとクウェイト国境のはざまのノーマンズランドと、そこに放置され、焦熱地獄と化したトラック
 = 難民キャンプと、そこに難民として生きていることのメタファー

作者のメッセージ: 壁を叩け!
難民たち個々が、その個人的境遇の困難から脱出することしか考えないなら、待っているのは、民族としての「窒息死」だ。
世界に向かって、ここに、世界から忘れられ、焦熱地獄の中に打ち捨てられている、パレスチナ難民が存在する、ということを、訴えろ!
一人ひとりが、パレスチナ人という民族の歴史を切り開く政治的主体となれ!

映画では、給水タンクの中にいる3人がタンクを叩くが、外の音にかき消されて、訴えが届かない。
原作が書かれたのは、1963年。
映画が作られた1973年までの10年の間に変化したパレスチナ人の状況が反映され、「アラブ人」に対して、パレスチナ人の声に応答することを求める作品となった。

作品の宛先の違い:
原作:著者がパレスチナ人同胞に政治的主体化を求める
映画:アラブ人に対して、パレスチナ人があげている声に応答することを求める。
     タウフィーク・サーレフ監督(エジプト人) 制作:シリア

◆原作から60年、映画から50年後の現在
イスラエル: 主権をもったパレスチナ国家の樹立を一貫して否定
・政治的主体たるパレスチナ人を再度《難民》に鋳直す (Politicide)
・ガザの完全封鎖(2007~) 人為的に人道危機を創り出すことで、パレスチナ問題(政治問題)を《人道問題》に還元

報告:景山咲子





イスラーム映画祭8名古屋篇 上映&トーク 日程



2023年3月25日(土)~ 31日(金)

名古屋シネマテーク

シネマテーク イスラーム映画祭8
http://cineaste.jp/m/3400/3447.htm


★上映&トーク スケジュール★

3/25 (土)
17:00 マリアムと犬ども & ミニトーク
19:30 陽の届かない場所で

3/26(日)
17:00 エグザイル 愛より強い旅 
上映後 トーク①
ゲスト:大嶋えり子さん(金城学院大学講師)
「なぜ2人は旅に出たのか?
  ─── 映画から読み解くアルジェリアの記憶」

19:45 ファーティマの詩(うた)

 ★東京でのトークの模様はこちらで!
  http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/498632600.html


3/27(月)
17:00 そこにとどまる人々
上映後 トーク②(オンライン)
 ゲスト:佐野光子さん(アラブ映画研究者)
「エリアーン・ラヘブとナディーン・ラバキー
 ─── “アラブ”にこだわる監督たち ─── 

19:45 キャラメル

3/28(火)
17:00 午後の五時 & ミニトーク
19:30 私たちはどこに行くの?

3/29(水)
17:00 わたしはバンドゥビ
19:30 キャプテン アブ・ラエド

3/30(木)
17:00 ソフィアの願い & ミニトーク

19:10 太陽の男たち & ミニトーク
  ★東京でのトークの模様はこちらで!
   http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/498630776.html
 
3/31(金)
17:00 長い旅 & ミニトーク
19:30 ガザを飛ぶブタ

ミニトーク: 藤本高之さん(イスラーム映画祭主宰)

※トーク、ミニトークを設定していない上映回も、全て藤本高之さんの簡単な作品説明を予定しています。

各映画の内容は、下記をご覧ください。
☆イスラーム映画祭8 公式サイト
http://islamicff.com/index.html

☆イスラーム映画祭8 (2023年開催)早くもラインナップ発表!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/493656889.html