東京国際映画祭 アジアの未来『ノアの娘』Q&A報告 (咲) 

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ノアの娘  原題:dokhtare nooh  英題:Noah's Daughter
監督 : アミルレザ・ジャラライアン
出演:カティ・サレキ エブラヒム・アジジ アリ・モサッファ ナズ・シャデマン マータブ・アミン
2025年/イラン/ペルシア語/80分/カラー

若い女性がイラン南部の静かな島にキャンプを張り、周囲の静寂に浸っている。彼女は海辺で年配の女性と穏やかで親密な会話を交わし、過去、未来、そして指先ひとつで人間の脈を聴く静かな技術について語り合う。また、若い男性と生と死について短くも興味深い対話交わす。やがて彼女は荷物をまとめてテヘランへと帰っていく。
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海辺のテントで寝泊まりするひとりの女性というシンプルな設定のもと、大きな出来事は何も起こらず、静寂が支配する美しい海辺の風景に女性の心象を託して進行する新感覚イラン映画。エンジニアの道から映画界に進んだ ジャラライアン監督は、南部の海岸と大都市テヘランをめぐる本作について、「沈黙、触覚、不在によって形づくられた物語」であると語っている。 (公式サイトより)

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アミルレザ・ジャラライア
1986年、イラン・カズヴィン生まれ。経験の詩的 側面を探求する作風の映画監督、脚本家。アミール・ キャビール工科大学で材料工学の修士号を取得したが、映画と文学への情熱によって映画制作の道に転身した。


11月4日(火)
(16:30-17:50 映画上映)@TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1 
上映後 Q&A
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登壇:アミルレザ・ジャラライアン(監督/脚本/プロデューサー)、カティ・サレキ(俳優)
司会: 石坂健治氏  通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

監督:2回目の上映。ありがとうございます。

カティ・サレキ:皆さんとご一緒に映画を観ることができて嬉しかったです。

石坂:タイトルについて、お伺いします。ノアは、旧約聖書のノアですね?

監督:そうですね。旧約聖書のノアをイメージしました。寓話の中でも、ノアには3人の息子がいたと書かれています。もし、ノアに娘がいて、預言者になっていたら、とても静かで、人の話を聞く人だろうとイメージしました。

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*会場から*
ー 洞くつが出てきましたが… また、彼女が脈をとる意味は?

監督:預言者が洞くつの中で祈りを捧げたという話がありますので、ファンタジー的に使いました。脈をとるのは、生から死にいくような意味合いです。

石坂:主人公の女性をどういう人物だとして、役を演じたのですか?

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カティ・サレキ:普通の人たちに対して何か力を持っていて、人とコミュニケーションを取る人物ですので、人間対自然を描かないといけないと心がけました。

石坂:監督はキャラクターについて、どのように考えていましたか?

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監督:特別なものでなく、普通の人物。死後の世界にいるともいえるのですが、歩いたり、ご飯を食べたり、普通のことをします。
人が亡くなると、墓石には、
〇〇〇〇来ました・・・・
〇〇〇〇逝きました・・・・
と書いてあります。
人はこの世に来て、この世から去るのです。

― 説明なしで、手掛かりは、年配の女性と、キャンプをしている男性。最後、テヘランに戻りますが、主人公の女性は現状で終わろうとしています。監督が訴えたいメッセージがあったのか、それとも、観客にゆだねているのか?

監督:解釈の通りです。

― 哲学的な映画で、疑問だらけです。何かを感じ取る映画かなと思いました。観客にどのように感じ取ってほしいのか、何を学び取ってほしいのか・・・

監督:映画は、普通情報があるものですが、この映画では、一つの空間の中で彷徨えばいい。何か起こるのを待っていても、何も起こらない。観終わって、今は何も思わなくても、明日以降に何か思い出していただければ嬉しいです。

― 謎めいた映画でした。最後、女性の前で男性がパフォーマンスをして、女性のアップで終わります。

監督:このキャラクターについてですが、男性は浜辺に二人で行くと、「吸う?」と女性に言いますが、彼女は断ります。音楽が鳴って踊りだした彼は、もう現れることがありません。

― 主人公の女性は、普通の女性とおっしゃいましたが、奇数の話など印象的でした。あの母親らしき人と主人公は、ずっと何かを探している風に感じました。

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石坂:残念ながら時間が来ました。お二人から最後に一言ずつお願いします。

監督:日本で上映されて嬉しいです。日本の観客は素晴らしいです。

カティ・サレキ:彼女は混乱している都会の町から、静かな島にやってきました。自分の内面の声を聞くために。鳥の声や島の音を聴くと、内面の声が聞こえてくるのではないかと思います。私たちの人生は、こうして流れていくのではないでしょうか。今のこの一瞬を大事にしたいと思います。

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この映画、2度観たのですが、彼女は何者なのか? 時折会う年配女性は母親なのか? という疑問は結局解けませんでした。上映後のQ&Aで、会場からも、私の頭の中にあるような疑問についての質問が続出しました。
監督や女優さんの言葉を聞いて、フィーリングで味わっていいのだと、なんとなく納得しました。
主人公の女性は、ラジオの詩の朗読の時間を毎日楽しみにしていて、そこはやはりイラン人らしいと思いました。
あ~ 哲学的な映画でした。
報告:景山咲子



◆公式サイトに掲載されている下記の記事もご参考に!
11/1(土)Q&A『ノアの娘』
「映画が一つの国だとしたら、その国にはたくさんの浜辺があると思っています。」
https://2025.tiff-jp.net/news/ja/?p=68384

公式インタビュー『ノアの娘』
「僕にとって映画はテーマではなく、状況や空間が大事なのです」
https://2025.tiff-jp.net/news/ja/?p=68162

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