『アトロピア』 原題:Atropia
監督・脚本:ヘイリー・ゲイツ
出演:アリア・ショウカット、カラム・ターナー、クロエ・セヴィニー
2025年/アメリカ/英語/カラー/103分
中東での戦争に派遣される米軍の兵士の訓練のために、中東の街並みを映画セットのように再現した砂漠の中の架空都市「アトロピア」。この架空都市で働くイラク系アメリカ人の女優、若い兵士、そして潜入したジャーナリストを主人公に、現実と訓練、仮想空間、そして隠された陰謀が入り混じるユニークな物語が展開する風刺ドラマ。
ヘイリー・ゲイツが2019年に監督した短編映画“Shako Mako”で扱った題材を、長編劇映画として発展させた監督デビュー作。軍と映画産業のつながりが示唆される点も 興味深い。“Shako Mako”に主演したアリア・ ショウカットが本作でも主演を演じる。『君の名前で僕を呼んで』(17)のルカ・グァダニーノがプロデューサーを務めている。 (公式サイトより)
★映画の流れを末尾に掲載しています。
◆11月4日(火) 11:43~12:13
『アトロピア』Q&A
ヘイリー・ゲイツ監督登壇
MC:いろいろな人に取材して映画が出来たそうですね。
監督:もともとドキュメンタリーを作るつもりでした。基地で働く人たちや、訓練している兵士たちにインタビューを始めました。それをカメラで撮ってというのでなく、実際ジャーナリストとして基地で働けないかとアプローチしましたが、うまくいきませんでした。
MC:フェイクの村に実際に行ったことがあるのですよね。どんな感情を持ちましたか?
監督:びっくりする光景でした。かなりの距離を沙漠の中を走って行ったのですが、犬の吠える声や、町の匂いなども本格的でした。途中で、どけと言われたのですが、下水のすごい臭いをよけるためでした。ほんとうにすごい臭いでした。
*会場から*
― いろんな要素を楽しめました。冒頭にアメリカの作家アンブローズ・ビアスの「神は戦争を用いてアメリカ人に地理を教える」という言葉がありましたが、限られた空間の中で誰かを探すことに結び付けたのでしょうか?
監督:確かに、この話は皮肉に満ちたものです。冒頭の言葉は、アメリカとメキシコの戦争の時のものです。訴えたかったのは、あの頃から繰り返されて変わらないということです。今は中東、次はロシアかほかの地域と、アメリカの戦争が常態化していることを描きたかったのです。アメリカは世界の地理に関係ないのに、ここを取れば得と思うと手を出します。
― 今日、二度目の鑑賞です。反戦とコメディのバランスがよかったです。これまで、モデル、俳優、ジャーナリストと横断的に活動されてきましたが、それがどのようにこの映画に反映されていますか?
監督:映画を作る時、トロイの木馬のように、あるテーマを描くなら、戦略的に賢い方法で入っていきたいと思いました。描いていく中で、難しいテーマなら、時にユーモアも必要だと思いました。ドキュメンタリー作家としてリサーチを重ねたことが反映されています。感謝祭の場面では、実際にあのような服装をしていたことを取り入れています。
MC:エキストラを演じていて見せ場を作りたいというエピソードは?
監督:実情を話すと、軍隊とハリウッドは、がっつり繋がっています。役作りのために俳優が来ることもあります。主演のアリア・ショウカットは、前の作品でカラム・ターナーと共演していたので聞いてみました。テレビ用映画と劇場用映画では格が違うので、やはり劇場用映画に出たいのです。
― 面白かったです。下世話な質問です。戦場で自慰をトイレでしていた為に、臭いがないと立たないという話は実際に聞いた話ですか? それとも作り上げたものでしょうか?
監督:very interesting! (と笑う) 取材して実際にわかったことです。簡易トイレは、戦場で唯一一人で過ごせるところ。教会のような神聖な場所でもあるのです。落書きがあるのもリアルです。
MC:アメリカ国内には、200ヶ所ほども、このような戦争地域の街を模した訓練の為の街があるそうですが、そのことをアメリカ人の多くが知らないのはどうしてなのか説明いただけますか。
監督:軍部で働いている人や、近くに住んでいる住人が知ることはあっても、ほとんどのアメリカ人は血税を使われているのに知らないのです。
― 最後のシーンは、生と死の対比でしょうか? カルフォルニアという娯楽のイメージの地から、戦いの場に行くという皮肉も感じました。
監督:彼女がその後どうなるのかは皆さんの解釈にゆだねたいと思います。
兵士たちは、準備が整わないまま、どうして戦場にいくのか?という思いがあります。
今日は、色々な質問をくださり、ありがとうございました。我々が生きている奇妙な世界について考えていただければ嬉しいです。
★公式サイトのインタビュー
米軍兵士が映画セットで軍事訓練!ウソのような事実を描いたコンペティション作品『アトロピア』インタビュー
https://2025.tiff-jp.net/news/ja/?p=67896
ヘイリー・ゲイツ 1990年3月28日、ロサンゼルス生まれ。ニューヨーク市を拠点とする映画監督、ジャーナリスト。 ニューヨーク大学で実験演劇と戯曲創作の学士 号を取得。アリア・ショウカット主演の短編“Shako Mako”の脚本と監督を務め、2019年ヴェネチア映画祭でプレミア上映された。
*映画の流れ*
アメリカの作家アンブローズ・ビアス
「神は戦争を用いてアメリカ人に地理を教える」
中東の町
銃を持った兵たち
アラビア語で、おまえたちはテロリストだ
The Boxと呼ばれる訓練用の町
ハリウッドが近い。特殊効果が施された町
イラク行き前の訓練
ジャーナリスト役の女性もいる
兵士の半分は、高校を出ていない
役作りするアラブ女性
ブロークンアラビア語で語る白人女性
役作り、最高ね
博士号を持ってるけど、永住権が欲しくて、ここで働いている
夫がいる役の女性は、10歩下がって歩くように
見学者がいる時、アラビア語が話せない者は、黙っているように
ペルシャ語を話す女性。売り物用のDVDが小道具
大物俳優が見学にくる (演じているのは、チャニング・テイタム)
アトロピアで働くのは何のため?
自由のため
イラク人風の挨拶 男同士で頬を寄せて
アザーン
兵士、♪row row row your boat♪
バース党員で、イラクに大邸宅を持っている。夫は、イラクに帰ったという女性
アラビア語 難しいけど、詩的な言葉と、白人女性
911の犯人はイラク人じゃないのに、なぜイラク?
フェイルーズ、怒っている
息子のこと、話したくなかった。19歳の時の子
妻とは住む世界が違う、イラクで数人の友達を失ったと語る男性
フェイルーズ: 私はイラクを知らない
心を寄せる兵士の彼が今晩の花婿役と知り、花嫁役のスリアに代わってくれと交渉する
結婚式の場面
トラックの上で幸せそうな二人
フェイルーズ、自爆テロの場面を撮る
彼が明日イラクに戻ることになる。あと6時間! ラスベガスへ!
兵士たちに、なぜイラクに行くかを教えないまま派兵する
準備不足の兵士を送るべきじゃない
ちゃんと説明すること。それが兵士の命を守ることになる
アトロピア、今はロシアの村に・・・
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アメリカがイラクに侵攻していた当時、CNNのニュースだったと思うのですが、アメリカの兵士が派兵前の訓練で、「イラクでは、こんな風に土足で家にあがったり、土足の足を机に乗せたりしてはいけないと教わった」と語っているのを見たのを思い出しました。
中東に多いイスラーム教徒にとって、家の床は祈りを捧げる神聖な場でもあるので、土足であがるなどとんでもないことなのです。
まさにアメリカは、いちゃもんつけてイラクに土足であがりこんで、国をめちゃくちゃにしてしまいました。『アトロピア』は、そんなアメリカ政府に突き付けたヘイリー・ゲイツ監督なりの皮肉だと感じます。
ぜひ日本で公開してほしい好戦的なアメリカを知る1作です。
報告:景山咲子
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