東京フィルメックス イラン映画『アミールの胸の内』Q&A報告

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『アミールの胸の内』  原題:daroon-e amir  英題:Inside Amir  
イラン / 2025 年/ 103分
監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)
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テヘランに住む青年アミールは、イタリアへの移住を目前に控えている。彼より先に移住した恋人タラと再会し、新しい人生を始めるためだ。彼は愛用の自転車に乗り、配達の仕事をこなしつつ、友人たちとサイクリングを楽しむ。気の置けない仲間たちとかけがえのない時間を共有し、タラと過ごした過去を回想しながら、「去るか留まるか」という心の中の問いに彼は静かに向き合う。(公式サイトより)
*さらに詳しい内容を末尾に掲載しています。


◆アミール・アジジ監督Q&A
2025年11月22日(土)12時半からの上映後 
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司会:神谷直希プログラム・ディレクター
通訳:ショーレ・ゴルパリアンさん

監督:観ていただきありがとうございます。日本にずっと来たいと思っていたので、自分の作品がここで上映されて嬉しいです。

神谷:主人公の名前がアミール。監督もアミール。その意図は?

監督:タイトルは後から付けたのですが、主人公アミールと、自分の内面の気持ちは確かに似ています。映画の最後に妹エルナズに捧ぐと入れたのですが、妹はアメリカにいて、主人公と私の気持ちが一緒になりました。 実は、ドバイからのフライトで来たのですが、スーツケースが行方不明で、機内で着ていたTシャツのままで失礼します。

★会場より
― テヘランに住む人たちの日常が描かれていてよかった。小津安二郎の映画のようでした。ピアノの弾き語りの歌がとてもよかった。あの歌を入れた理由は?

監督:アミールのキャラクターは、絶望的になっているところがあるのですが、あの歌でどこかで望みをもらったよう。経済的に裕福じゃない。いつも配達している女性が朗報のお礼にと大金をくれます。あの歌は小さな灯りです。

― フランス映画のようでした。恋人のタラ以外、女性があまり出てこなくて、男同士の親密な繋がりが描かれていてよかった。皆いい人のようでした。彼らのキャラクターをあのように設定したのは?

監督:アミールは、50%自分。ご覧になった出来事や、友人たちの姿は現実に基づいています。彼らの寂しさや悩みも自分の周りの人たちからヒントを得ました。それは自分たちの現実とあまり変わらないものです。私たちは大変な状況の中で生活をしているかもしれません。作られている最近の映画は、そのような大変な状況を描いているものが多いです。でも、私の映画ではほんとの私たちの普段の姿を描きました。一人一人はいい人。叔父さんも素晴らしい心をもっているのですが、昔の過ちを抱えています。

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― テヘランの街のあちこちが出てきて、タラが街を折りたたんで持っていければいいのにという言葉もあって、私自身も懐かしい思いにかられました。テヘランの街がもう一つの主人のように感じました。監督としてのお気持ちは?
(私の質問でした。折りたたんで持っていきたいほど大好きな街なのに、この40年、数多くのイランの人たちが国を離れたことに思いが至ったことを、ほんとは伝えたかったのでした)

監督:まずお答えする前に、心の底から有難いのは、この映画祭では私の映画について質問してくださることです。ほかの映画祭では、全然違う質問がでます。(イランに関する政治的質問が多かったのだと察します)
おっしゃる通り、テヘランは、とても大事なキャラクターです。テヘランはとても美しい街です。醜いところを知りません。人生の大きな一部で、仕事をしている場所でもあります。古い町で、たくさんの物語があります。映画の中でドラマチックなことは起こりませんが、美しいテヘランは大きなキャラクターです。

― 自転車で街を駆けるのが、とても自由な感じがしました。猫が2匹出てきましたが、片目がない感じでした。狙ってあのような猫を集めてきたのでしょうか?

監督:私の友人シャヒーンの飼っている猫で、クビとフランという名前で、いずれも目が見えないの意味があります。片方の猫は片目がなくて、もう1匹も片目がよくみえません。シンボル的に出しました。地図を見れば、イランは猫の形をしています。猫を置いていくというのは、イランを置いていくということなのです。

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― フランス映画の香りがしました。会話の中で自然な形で人生の重要な出来事が語られていました。ブラジル帰りの友人など、どういうところから内容を?

監督:映画を愛している人たちや、映画を学ぶ我々にとって、小津や黒澤は偉大で尊敬する方です。お墓参りに行く予定です。 彼らから映画作りを学びました。映画の中に、友人たちの会話を自然に入れようと思いました。 映画の中の会話は、ほぼ脚本通りです。ナリマンは耳が聴こえないので、撮影時には、脚本はあるけれど、その場の雰囲気で自由に話していいと伝えましたが、ほかの役者は脚本に沿って自然な感じで演じてくれました。
直訳すれば「肌はとても厚くなっている」という言葉があります。我慢しているけれど、望みは捨ててない。美しさを見出せば、絶対、街にさよならとはいえないです。


監督 最後の一言
8~9人のスタッフで作った映画です。最後までいらしてくださってありがとうございます。スーツケースが早く届くことを願っています。寒くてしょうがないです。



監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)
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1984年イラン、アフヴァーズ生まれ。2003年に映画界に入り、ラクシャン・バニエテマドら著名監督の助手に。『The Idiot』(2007年)、『Two Cold Meals for One Person』(2009年)、『Family Portrait』(2010年)などの短編が国内外の映画祭で上映。初長編『Temporary』(2015年)がMedFilm Festivalで審査員賞。長編第2作『Two Dogs』(2020)はワルシャワ映画祭などで上映された。(公式サイトより)




★翌日の23日、『サボテン』上映前に監督にばったり。
スーツケースが届いて、ちゃんと上着をお持ちでした。
監督は、イラン南部のアフワーズのご出身。アバダーンにも住んでいたことがあるそうです。そういえば、映画の中で、アバダーン訛りの話が出てきました。

会場から政治的質問が出なくて、私もほっとしたのですが、映画を観て、まず、おぉ~っと思ったのが、女性たちが髪の毛を出していることでした。そして、女性が自転車に乗ることも、かつては禁止されていました。お酒を酌み交わすことも、日常ながら、映画で堂々と描くことはなかったように思います。 そんなことからも、確かにイラン社会が動いているのを感じました。 別の時に、また監督にお会いしたので、そのことをお伝えしました。「まさにそう! 今のイランそのままだよ」と。
それは、いつも接しているイランの方たちからも聞いていることではあるのですが、さて、どんな風にイランは動くのでしょう・・・ 
革命後、世界の各地に多くのイランの人たちが移住して、外国で生まれた世代もいます。 世界のどこにいても、ノウルーズ(イランの新年・春分の日)や、シャベヤルダー(冬至の夜)を伝統的な形で家族や友人たちと祝い、詩を愛でるイランの人たち。 故郷をいつまでも忘れない・・・ そんなイランの人たちの心情をずっしり感じた作品でした。(咲)


★映画の中で印象に残った場面や言葉

まず冒頭、人生を語る詩。
(著作者の名前はなく、監督の自作?)

自転車で街を行く
テヘランタワー
美しい並木道・・・・

友人のナリマンとナデルが暮らす家へ
ナデル:ブラジルに4年いた。息苦しかった。テヘランのことばかり考えていた。タフな男が、帰りたいと泣いてた。貧しさじゃなくて、孤独がつらかった。
(ナデルは恋人と別れてブラジルに行った。うまくいかなくて、寂しさもあってテヘランに戻り、ナリマンのところに転がりこんだことが後で明かされる)

アミール:こうして冗談言いながら、食事を作ってると、行きたくなくなる。

ピンポンしながら語る友人のピールーズ。
保護観察中で、脚にGPSを付けられている。ヴァリアスル通りを越えられない。越えたら電話がかかってくると笑う。

(回想) 
恋人タラと一緒に自転車で街をいく。
並木道、モスクの見えるロータリー、ヘジャーブをしてない女性たち。
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タラ: もうテヘランには誰もいない。両親も向こう。こっちにいるのは、あなただけ。皆、向こうで慣れて暮らしてる。私は、慣れるのは嫌だけど。

アーブグーシュト(壺に入った肉・ジャガイモ・豆の料理)を食べながらの会話。
エスファハーン訛りの話。
バンダリダンスの女性たちの言葉、アバダン訛り。
僕が行く南イタリアの言葉、アバダン訛りに近い。
アモーレ、ポルファボーレ

タラ:街を持ち運べたら、折りたたんで好きなところに持っていくのに

タラ:こちらに来て、8ヶ月経った。あなたがいればいいのに。囚われの身みたい。ママは勉強するには、こっちがいいと言うけど。そっちにいれば、あなたもいたから上手くやれたのに。流されなければよかった。

ピールーズが遊びにくる。
越境して遊びにきたのか?  
監視から解放された。

詩を詠む。
その意味は、人生は、はかない。くよくよするな。命は、ロウソクのように短い。

ロウソクの灯のもとで酒を酌み交わし、絨毯の上で雑魚寝する。

いつも配達にいく女性から呼び止められる。朗報を運んでくれたお礼と、100ドル渡される。
彼女の家の中へ招かれる。
森の中に住む指揮者に手紙でしか連絡が取れず、何度も曲を手紙を送ったら、やっと引き受けるという返事を貰った。『アモール(愛)』という恋の歌。ピアノの弾き語りで聴かせてくれる。女性はパシュトゥーン風の帽子を被っている。

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叔父はバツイチ。
モジデと結婚したばかりの頃、ニューヨークに着いて、楽しいことが手招き。モジデは妊娠2ヶ月だった。話しにくいけど、快楽に走って恋をした。モジデのことをほぼ忘れて。モジデはすぐに悟った。後悔でいっぱい。人に話したのは初めて。お前の教訓になるかと。

アミール:タラと一緒にいたい。タラとの出会いを思い出す。コンビニでプロテインを探していたら声をかけられた。「あなたを見かけたのは、2回目。話したい」と言われる。
ある通りに連れていかれる。「この通りで、自転車に立ち乗りしているのを見かけた」
「この近くに友達がいる。こんなふうに話しかけられたのは初めて」
「自転車に乗ってる姿が、あまりに自由に見えたから」

ピールーズ、監視は外されたけど、境界は自分の中にあるかも。

ナデルとナリマンと3人で山へ。
ついに大使館からビザが下りたとのメール!
荷造りするアミール。
2匹の猫は連れていけない・・・

アーモンドを刻むアミル。
サブジの処理をする叔父。
花を飾り、ご馳走を並べる。
酒を酌み交わす。
叔父:自分の一部もアミールと一緒に外国に行ってしまうよう。

タラとのビデオ通話
タラ:こっちに来ること、どんな気持ち?
アミール:やっと会える。明後日、空港にいるなんて!
タラ:街の一部をもってきてくれるみたい。 
アミール:ラーレ公園をもっていくね

ナリマンの誕生日を祝う。 一緒にケーキのろうそくを消す。

空港へ・・・

妹エルナズへ 

報告:景山咲子



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