監督:マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハ(『白い牛のバラッド』)
出演:リリ・ファルハドプール、エスマイル・メーラビ
2023年/イラン・フランス・スウェーデン・ドイツ/97分/カラー/ペルシャ語
監督:マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハ
イランのテヘラン生まれのマリヤム・モガッダムとシーラーズ生まれのベタシュ・サナイハは、“Risk of Acid Rain”(15)の脚本の共同執筆からコンビを組み活動している。2020年の共同監督作『白い牛のバラッド』はベルリン映画祭コンペティション部門でプレミア上映された。(TIFF公式サイトより)
*あらすじ*
テヘランに住む70歳のマヒン。軍人だった夫は30年前に亡くなり、娘はヨーロッパに移住し、1軒家で一人暮らし。
ご馳走を作り、同世代の女性たちを招く。 出てくる話は病気の話や老いの話。それでも、「マヒンに恋人を探せとずっと言ってるのに」という友もいる。
アイシャドーを塗り、頬紅をさし、マニュキュアもつけて買い物に出かける、
帰り、タクシーに乗り、「ハイヤットホテルにお願い」というと、「今は、アーザーディに名前が変わった」と運転手。
「昔は、ハイヒールの靴と、胸の開いたドレスを着て、コンサートに行ったわ。ヘジャーブもなしでね」と話しかけるマヒン。
ホテルのコーヒーショップでお茶をする。メニューは、QRコードだ。
階段をあがって高台の公園に行く。
そこにいた男性に、「体操している人はいる?」と聞くと、「朝早く来ないと」と言われる。
スカーフの被り方が悪いと、道徳警察に捕まっている若い女性に声をかけると、警察官に「あなたも髪の毛が出ている。一緒に車に乗れと言われる。
「少し髪の毛が出てるからって罪に?」
「抵抗しないと言いなりになるわよ」と若い女性に言って、一緒に無罪放免になる。
その若い女性、デートしていて、1回目は従兄と言って逃れたけど、2回目は一晩牢屋に入れられたという。
「あなたは革命前の自由を知っているでしょう」と言われる。
恋人が来て、抱き合う二人。
夫が退役軍人だったために配給されるチケットが使えるレストランへいく。
初老の男たちが、「ここのキャバーブは味が落ちた」「恩給が少ないから抗議に行こう」「お上は若い人の話を聞こうとしない」「僕たちは、もうすぐ墓の中」「この不況の中、墓があるだけいい」などと話している。
男たちの隣のテーブルで一人で食事をしているファルマズ。
「いつも外食。君たちは奥さんがいるからいいけど」と言って急いで車に戻る。
マヒンは、アジャンス(タクシー事務所)に行って、ファルマズを指名する。 今、出ていると言われるが待つ。
「アズマエシュにある家までお願い」と、助手席に乗り込むマヒン。
「独身と聞いたから、運命だと思ったの」と、身の上話を始める。
「元看護士で、夫とは陸軍病院で知り合ったの。前線に送られて負傷して、3か月入院して退役したの」
「戦争は無意味だ」とファルマズ。
「家に来ない? 私も独り身だから」
「薬屋に寄ってもいいか?」とファルマズ。 車を降りて雷雨の中、薬屋に走る。
「タクシー運転手は、20年。その前は、結婚式でタールを弾いていた。道徳警察に捕まって、1か月拘留された」
家に着く。
「家の前で降ろして、車は反対側に止めてから来て」とマヒン。
口紅をつけて彼を待つ。
「綺麗だ」とファルマズ。
「男性を招くのは初めて。やっと吹っ切れたの」
「娘は20年前にイランを出た。前はビザを取って会いに行ってたけど、歳をとってビザがおりないの」
「女性用のプールは午前中。昼まで寝てるからいけない」
ワインを出す。
「友達からもらったもの。前は毎晩飲んでた」
「70歳。同い年ね。 若々しいわ」
「もう老いぼれだよ。独りで死ぬのは怖い。孤独死は避けたい」
桃を切る。
ワインで乾杯。
「禁酒になって、200キロ葡萄を買ってワインを作ったら、妻に禁止された。母に薦められて結婚したけど、相手から離婚したいといわれた」
「一緒にワインを作りましょう」
玄関のチャイムが鳴る。
裏の家のハーシェムさんが訪ねてくる。
「男の声がしたけど」
「配管工事の人よ」とマヒン。
「彼女は夫が役人だから、偉いと思ってるの」
消えている中庭の街灯をファルマズが直してくれるという。
「その間にケーキを焼くわ」
中庭にワインを注ぐファルマズ。
「死者のために、一口飲んだら、一口捨てる」
「人生で最高の夜に乾杯!」
「30年前、何も庭に生えてなかったの。お金がなくて買えなくて、公園から盗んできた」
「アルコールがまわってきた。運転して帰れない」
革命前の音楽をかけて、二人で踊る。
壁の写真。1969年。ラムサール(カスピ海沿いの町)。 新婚旅行。
「主人は30年前、自動車事故で亡くなった。再婚の機会もなくて」
「結婚は1回で十分」
「ガールフレンドは?」
「一人いた。金持ちと結婚してオーストラリアに行ってしまった。彼女とは寝てない」
「ほんとに泊まってほしい? 一緒にシャワーを浴びよう」
「恥ずかしいわ」と、服を着たまま、一緒にシャワーをあびる。
「オレンジブロッサムケーキを焼いたわ。好きな人が来ると焼くの」
香水をつけて彼を待つが、なかなか来ない・・・
このあとが、驚きの展開なのですが、もしかしたら公開されるかもしれないので、結末は明かせません。 これは是非公開してほしいです。
この記事へのコメント