★ウィメンズ・エンパワーメント部門
『10セカンズ』英題:In Ten Seconds 原題:On Saniye
© Sky Films
監督:ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ
出演:ベルギュザル・コレル、ビゲ・オナル
2024年/トルコ/74分/カラー/トルコ語
イスタンブルのボスポラス海峡を見下ろす名門ウィリアム高校。
娘が退学処分を言い渡された裕福な母親が、進学カウンセラーの女性に娘を復学させろと詰め寄ります。
半端じゃない迫力! 休憩時間になり、カウンセラーを慕う生徒たちが次々にドアをノックするので、場所を広いホールに移して、さらに二人は言い争う・・・ さて、軍配はどちらに? 驚きの結末でした。
◆11月2日(土)10:15からの上映後Q&A
登壇:ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ(監督)、ゼイネップ・セジル(撮影監督)
聞き手:ウィメンズ・エンパワーメント シニア・プログラマー アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさん
監督:お招きいただき、二人ともハッピーな気持ちです。 観客の皆さんと一緒に映画を観ながら、観客の皆さんを見ていました。とても素晴らしかったです。(立ち上がって)ご覧いただきまして、ほんとにありがとうございました。初めて日本に二人で来ることができて、幸せです。
撮影: お招きいただき、ほんとにありがとうございます。わくわくしています。楽しんでくださったことと願っています。
MC: ここからは、司会をアンドリヤナさんにお願いします。
アンドリヤナ: 遠いトルコからいらしていただき、ありがとうございます。私の故国マケドニアからは近い国です。この夏にまさにトルコの上を飛んでマケドニアに行く飛行機の中で、この映画を観て、サイコスリラーで、とても面白かったです。このシナリオをなぜ選んだのですか? もとは舞台劇ですね。監督はテレビで長く仕事されてきました。サイコスリラーや心理的なものをよく撮られています。本作には、女性、母親、教育システム、社会的格差の問題など、いろいろな話が詰まっています。
監督: 脚本を自分でも書き、監督もして、共同プロデューサーもして、フィクション、ドキュメンタリーなどいろいろ作っているのですが、すべてに共通するのは、私の作る作品の中には「記憶」という要素があります。観客の気持ちに、主役の心をいかに取り込めるかが共通しています。本作は、もともと舞台劇だったのですが、コロナで5~6回で打ち切りになり、脚本を書いた男性から映画化してほしいと依頼がありました。舞台劇は、1部屋で物語が展開するものでしたが、映画では途中で部屋が移ります。演技の上手い女優を選ばないといけないと思いました。主役の女性二人と4ヶ月、脚本家も交えて話し合いました。
アンドリヤナ: 4ヶ月のリハーサルは、舞台と同じアプローチですね。
監督: 3人で4ヶ月リハーサルを重ねたのですが、その間に、どんどん脚本が変わって、最後には6人が関わって脚本を作り上げました。自分自身母親なので、その気持ちも含めて作り上げました。
アンドリヤナ: ゼイネップさん、撮影のオファーが入った時のお気持ちは? 女性メインの現場でしたが、男性メインの現場との違いは? もっと自由に表現できたでしょうか?
撮影: 初めての映画なので、男性監督の現場を知らないのです。ジェイラン監督は、ほんとに仕事が出来て、欲しいものがはっきりしていて、イマジネーションも素晴らしいです。彼女の見ている領域を一緒に見ようと思いました。女性どうしで気持ちもシェアできて、友情も芽生えました。私にとって特別な経験でした。
監督: 彼女は10年間、アシスタントカメラマンをしてきました。男性なら、5年で撮影監督になれるのに、それが映画業界の欠陥ですね。
★会場から
ー(女性) スリリングな物語でした。高校教師をしていましたので、監督のおっしゃっていた記憶が呼び戻されました。あのような母親が来たら怖いと思いました。キャストの2人が素晴らしかったです。日本でも起こり得る普遍的な物語。ホラー的な要素もあります。お二人を選ばれた理由と、演技する上で。お願いしたことは?
監督:脚本家の方の映画化してほしいという夢を尊重して、まず聞きました。リストを出してくれました。その中から、母親役に、テレビや舞台で活躍しているスターで映画は初めての方に打診したら、やってみますと受けてくださいました。
© Sky Films
主役二人とも素晴らしい方たちでした。
リハは、4カ月。最初の1カ月、心理学者にも入っていただいて、母親役をサポートしてもらいました。母親は、子供に対して危険な存在。実際、高校のカウンセラーに会って、話を聞きました。いろいろなエピソードを教えてくださったのですが、映画に出てくるような母親や暴言を吐く母親には、何も言わず、ドアのそばに立ってお帰りになるのを待つとおっしゃってました。その話を聞いて、脚本に入れました。
ー (男性)撮影監督に。上下逆さになる映像は、撮影の方のアイディアですか? そこにメタファーが込められているのでしたら、ヒントを!
© Sky Films
撮影:もちろん監督のアイディアです。中盤、部屋が移って、白黒のチェスゲームのような床が広がっているのを、ポストプロダクションで、監督から逆さにして見せようと提案されました。
監督:あそこがターニングポイントです。カウンセラーは「この母親、やばい」と思い始めます。母親にとっても、自分の娘が悪いのかもしれないと気付いていくのです。
報告:景山咲子
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