第37回東京国際映画祭特別上映部門『不思議の国のシドニ』Q&A (咲)

PXL_20241103_121901773.jpg


不思議の国のシドニ 原題:Sidonie au Japon 英題:Sidonie in Japan
監督:エリーズ・ジラール
出演:イザベル・ユペール 伊原剛志 アウグスト・ディール

フランスの女性作家シドニは、自身のデビュー小説「影」が日本で再販されることになり、出版社に招かれて訪日する。見知らぬ土地への不安を感じながらも日本に到着した彼女は、寡黙な編集者・溝口健三に出迎えられる。シドニは記者会見で、自分が家族を亡くし天涯孤独であること、喪失の闇から救い出してくれた夫のおかげで「影」を執筆できたことなどを語る。溝口に案内され、日本の読者と対話しながら各地を巡るシドニの前に、亡き夫アントワーヌの幽霊が姿を現す……。
シネジャ作品紹介
2023年/フランス・ドイツ・スイス・日本/96分/カラー/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/sidonie/
★2024年12月13日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開



◎Q&A
2024年11月3日(日)19:10からの上映後
丸の内TOEIにて

PXL_20241103_114832527.MP.jpg
登壇ゲスト:イザベル・ユペール、伊原剛志、エリーズ・ジラール(監督/脚本)
通訳:人見 有羽子
司会:市山尚三


監督: 初めまして。お招きいただき、ありがとうございます。

市山:監督は、なぜ、日本で撮影しようと
思われたのですか? また、京都、奈良、直島、東京を選ばれたのは?
PXL_20241103_115103768.jpg
監督: 2013年、長編デビュー作『ベルヴィル・トーキョー』のプロモーションで来日したのがきっかけです。1週間滞在することができました。配給の方があちこちの町に案内してくださって、その時の体験が、この映画の出発点でした。
日本とアーティスティックな出会いをしました。衣装も建築も素晴らしい。日本の持っている伝統とモダン、その二面性に恋をしましたので、京都の伝統と直島の現代アートをこの映画に取り込みました。

市山:ユベールさんはオファーを受けてどのように思いましたか? 日本の撮影はいかがでしたか?
PXL_20241103_114901851.jpg
ユペール:脚本を最初に読んだ時、シンプルにいいなと思いました。文章、セリフ、いずれも素晴らしかった。監督の前作『静かなふたり』に私の娘ロリータ・シャマが出演していますが、音楽もしっくりして素晴らしかったので、これはやるべきと。監督の1作目の『ベルヴィル・トーキョー』も素晴らしかったので、即決しました。『不思議の国のシドニ』は、あちこち巡るだけでなく、見失っていた自分を再発見するという深い物語です。

市山:井原さんは全編フランス語で話されています。
PXL_20241103_121322029.jpg
井原:日本語で話します。フランス語は全くしゃべれませんでした。4か月の準備期間があったのですが、最初、ゆっくりしたスピードのフランス語のセリフを聴いても、さっぱりわかりませんでした。英語にも訳してもらって、日本語で意味を解釈して、フランス語のセリフを覚えました。先生がよかったのですが、私の耳もよかったようです。コロナで一度撮影が中止になって、さらに4ヵ月の準備期間ができました。スカイプで監督とセリフについて充分打ち合わせもできました。でも、フランス語はセリフしか言えません。

市山:通訳の人見有羽子さんも出演しています。(写真:右)
PXL_20241103_115047806.jpg
監督:司会者の市山さんも共同プロデューサー。映画には、市山さんの疲れた姿も映っています。

市山:まさか、あの場面が映画に残ると思わなかったので・・・(照れる市山さん!)

◆会場から
―(男性) 亡くなった旦那さんの姿が出てきますが、旦那の方が明るくて、ユペールさんは暗い。普通は逆かと思いますが・・・

監督:最初から思っていたのですが、シドニは立ち直れないでいるところに、夫が幽霊として出てきて励ますのです。アメリカのジョセフ・L・マンキウィッツ監督の『幽霊と未亡人』も、幽霊がとても愉快な人。あえてシドニより快活なヨーロッパ的な幽霊として描きました。

ユペール:このアイディアを聞いて、とてもいいなと思いました。映画を観て、腑に落ちました。幽霊が快活で生き生きとしていて、生に執着しています。シドニと、もう少し一緒にいたい。シドニも苦しみから解放されます。
PXL_20241103_114901851.jpg

―(フランス女性)シドニと同じような体験をしました。留学で4か月日本にいます。日本で札零されて学んだことや、発見されたことは?

ユペール:学んだというより、エキサイティングな体験をしました。アーティスティックな喜び、新しいものを発見するのは、シドニがあちこち行くことによって変わっていきます。何回も来日している私でも知らないところがあります。直島で撮れたのはラッキーでした。特別な意味のある体験でした。異国で撮るのは、ミステリアスな発見があります。

監督:この作品を撮るのに、5年の歳月がかかりました。監督人生の中でもユニークな体験でした。もう一度戻ってきて撮影したいなと思います。たくさんの日本人と出会いました。これって映画だなと。エモーショルなものが凝縮された経験でした。日本で撮影できて、幸せです。公開を嬉しく思っています。

市山:最後にひと言ずつお願いします。

井原:2019年にオファーを受けて、3年前に撮影しました。役者人生の中で最高の忘れられない経験です。
PXL_20241103_114854199.jpg
ユペール:剛志さんは、フランス語について謙虚過ぎます。唯一無二の仕事をされました。
私が、全て日本語で演じなさいと言われたら、おそらくできません。フランス語をしゃべれない彼がフランス語を学ぶことによって、距離が縮まることを、みごとに体現してくれました。彼の努力がなかったら、この映画は成り立たなかったでしょう。剛志さん、ありがとう。

監督:観てくださった方の口コミで、多くの方に見ていただけますよう願っています。

◆フォトセッション
PXL_20241103_122012668.jpg



この記事へのコメント