★後列左から:川島佑喜(武蔵野美術大学)、火宮遼哉(明治学院大学)、眞島淳之介(東京造形大学)、カトリーヌ・デュサール(映画プロデューサー)、ラ・フランシス・ホイ(キュレーター)、ロウ・イエ(映画監督)
★前列左から:イン・ヨウチャオ(『白衣蒼狗』共同監督)、チャン・ウェイリャン(『白衣蒼狗』監督)、マー・インリー(『未完成の映画』脚本・プロデューサー)、アレックス・ロー(『未完成の映画』共同プロデューサー)、マイ・フエン・チー(タレンツ・トーキョー・アワード2024受賞者)
2024年11月30日(土)18時20分から丸の内TOEI スクリーン1 で授賞式が開かれ、各賞の受賞結果が発表されました。
最優秀作品賞 デア・クルムベガスヴィリ監督『四月』(フランス、イタリア、ジョージア)
審査員特別賞 サンディヤ・スリ監督『サントーシュ』(インド、イギリス、ドイツ、フランス)
スペシャル・メンション チャン・ウェイリャン監督&イン・ヨウチャオ共同監督『白衣蒼狗』(台湾、シンガポール、フランス)
学生審査員賞 サンディヤ・スリ監督『サントーシュ』(インド、イギリス、ドイツ、フランス)
観客賞 ロウ・イエ監督『未完成の映画』
タレンツ・トーキョー・アワード2024:『The Rivers Know Our Names』
以下、発表順にご紹介します。
◆タレンツ・トーキョー・アワード2024
『The Rivers Know Our Names』
【授賞理由】急速に発展している国の中で、社会から疎外されたコミュニティをつぶさに観察したプロジェクトにタレンツ・トーキョー賞を授与できることを審査員一同光栄に思います。この作品は、特に若い女性と年老いた女性の2人に焦点を当て、力強いイメージを通して丁寧に人物を描写し、コミュニティにおける個人の強さと癒しの可能性を描き出しています。タレンツ・トーキョー・アワードをマイ・フエン・チー監督の「The River Knows Our Names」に贈ります。
監督:マイ・フエン・チー、ベトナム
■スペシャル・メンション
「The Vision of Lonely Mountains」(ハグヴドラム・プレヴオチル(Lkhagvadulam PUREV-OCHIR)/モンゴル)
「Dollyamory」(畠山佳奈(HATAKEYAMA Kana)/日本)
「Naked in Glendale」(ヤン・ハオハオ(YAN Haoaho)/中国)
◆観客賞 Audience Award
『未完成の映画』原題:An Unfinished Film(一部未完成的電影)
特別招待作品
監督:ロウ・イエ
本作のプロデューサーで、ロウ・イエとともに脚本も執筆した奥様であるマー・インリーさんが代表して喜びの言葉を述べられました。「たくさんの方に観てくださったことに感謝します。観客賞はロウ・イエにとって初めてです。心からありがとうと申し上げたいです」
共同プロデューサーのアレックス・ローも登壇し、感謝の言葉を述べられましたが、ロウ・イエ監督は笑顔でそばにいらしただけで発言はありませんでした。(この後、大役が待っていますので・・・)
続いて、コンペティション部門の各賞発表。
まず、ラインナップされた10作品が紹介されました。
◆学生審査員賞 Student Jury Prize
『サント―シュ』原題:SANTOSH
監督:サンディヤ・スリ( Sandhya SURI )
インド・イギリス・ドイツ・フランス / 2024 年/ 127分
学生審査員 川島佑喜(武蔵野美術大学)眞島淳之介(東京造形大学)火宮遼哉(明治学院大学)の3名が登壇し、発表。
【授賞理由】サスペンスフルなドラマの面白さとそこから浮かび上がる社会構造の描き方に驚かされました。人物の魅力を引き出すカメラワークからは、映画の持つ繊細で挑戦的な力強さを感じました。
終盤、通り過ぎる電車越しでコマ送りのようになるふたりのショットが、息を飲むほど素晴らしかったです。
サンディヤ・スリ監督はすでに帰国され、ビデオメッセージを寄せられました。
「この受賞は私にとってとても意味があります。26年前、1年間日本に住んで英語教師をしていました。その時に山形国際ドキュメンタリー映画祭に観客として参加して、感銘を受ける映画に出会い、カメラを買って映画を撮り始めました。
26年経ち、日本に戻って、この賞をいただきました。ありがとうございました。京都の秋を満喫して帰国しました。会場で受賞できればよかったのですが・・・。ほんとうにありがとうございました。」
コンペティション部門 審査員
◆スペシャル・メンション Special Mention
『白衣蒼狗』原題:Mongrel 中国語題:白衣蒼狗
台湾・シンガポール・フランス/ 2024年 / 128分
【授賞理由】 この映画は、その説得力のある映画言語によって、闇、汚辱、残酷な現実を力強く描き出し、人間の本性の深さに立ち向かう勇気を示している。
監督:チャン・ウェイリャン 共同監督:イン・ヨウチャオ(左・女性)
「東京フィルメックスにご招待してくださり、賞までいただきまして、ありがとうございました。私たちのことをこのように温かく受け入れてくださって有難うございます。容易な映画ではなかったですが、この映画に付き合ってくださったお客さん、ずっと見てくださった方、その時間にも感謝したいです」
◆審査員特別賞 Special Jury Prize
『サント―シュ』原題:SANTOSH
監督:サンディヤ・スリ( Sandhya SURI )
インド・イギリス・ドイツ・フランス / 2024 年/ 127分
【授賞理由】 容赦ないストーリー展開のダークスリラーで見事に演じられた女性キャラクターを通じて、社会の硬直性と不平等を痛烈に描き出している。舞台は現在のインドではあるが、世界中に蔓延している妥協と呼応している。
サンディヤ・スリ監督、再び、ビデオでメッセージを寄せられました。
「ほんとうにありがとうございます。審査員の皆様に感謝申し上げます。インドに関する多くの問題について語るのと同時に、 サントーシュにとっては個人的で、そしてまた非常に普遍的な映画を作りたかったのです。そして、東京でこのような素晴らしい上映会を開催し、素晴らしい観客がたくさんの興味深い質問に熱心に応えてくれたことは、本当に素晴らしい経験でした」
◆最優秀作品賞 Grand Prize
『四月』原題:April(აპრილი)
フランス・イタリア・ジョージア / 2024年 / 134分
監督:デア・クルムベガスヴィリ( Dea KULUMBEGASHVILI )
【授賞理由】 この大胆で冷徹な長編映画は、保守的な農村地帯で女性が直面する厳しい現実を突きつけている。彼女たちの自由は、それが身体に関わるものであろうと欲望の表現に関わるものであろうと、絶え間ない闘いである。監督は、骨太なリアリズムとシュールレアリズム的なホラーを融合させ、吸い込まれるような挑発的な体験を生み出している。緻密で丹念に作り込まれた撮影は、観客の視線を捉え、私たちの視点や関わりを積極的に考えさせる。この作品は、形式的な勝利であるとともに計り知れない関連性と共鳴性をもつ作品である。
デア・クルムベガスヴィリ監督よりビデオメッセージ。
「授賞式に出られなくて残念です。上映に感謝します。この受賞は、私にとっても、スタッフ全員にとっても大きな意味がある。この映画は制作に参加した全員の努力と献身の結晶だからです。 映画を作ることは決して容易な道のりではありませんし、特にこの映画に関しては多くの制約があり、ジョージアでこの映画の制作を手伝ってくれた人々は非常に勇敢でした。この受賞は私にとって大切です。なぜなら、この映画に寄与してくれて、この映画の存在を可能にしてくれた全ての人と分かち合えるからです」
授賞式の最後には、国際審査員を代表して、ロウ・イエが今年の映画祭を講評しました。
「今回はこのお2方と一緒に審査を担当させていただき、本当に光栄で、とても楽しい時間だった。そして作品を届けてくれた監督の皆さんに心から感謝したいと思う。この監督たちの視線でもって、世界を色々と見ることができた。我々の世界を、夢を、広げてくれた。ありがとうございます」
取材:宮崎暁美、景山咲子
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