2000年12月、作家主義を掲げ、アジアの新たな才能の発掘を目指して、第1回の東京フィルメックスが開催されました。メイン会場は、今は無き、銀座1丁目のル・テアトル銀座でした。2回目よりメイン会場を有楽町朝日ホールに移し、昨年の24回まで、フィルメックスといえば、朝日ホールでした。今年から、メイン会場が映画館である丸の内TOEIに変わりました。
11月23日(土)18:10~ 開会式
プログラム・ディレクター神谷直希さんが、まず、「サポーター会員や観客の皆さん、そしてスポンサーの方の支えがなければ開催することができませんでした」と感謝を伝えました。「ぜひ1作品でも多くご覧いただき、今年の映画祭を楽しんでいただきたいと思います」と述べられました。
続いて、コンペティション部門の審査員紹介。
ロウ・イエ監督とラ・フランシス・ホイさん(アメリカ/キュレーター)のお二人が登壇。
もう一人の審査員カトリーヌ・デュサールさん(フランス/映画プロデューサー)は、まだご到着されていないとのこと。
ロウ・イエ監督:またフィルメックスに戻ってくることができました。皆さんにお会いできて嬉しいです。
ラ・フランシス・ホイ:ご招待いただき、光栄に思っています。とてもいい映画が観られますから、皆さんはラッキーです。
25周年の節目を迎えた東京フィルメックスですが、そのことについては特に触れず、あっさり10分ほどで開会式は終わり、引き続き、オープニング作品 ジャ・ジャンクー監督の『新世紀ロマンティクス』が始まりました。
『新世紀ロマンティクス』
原題:Caught by the Tides(風流一代)
★特別招待作品
監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhang-Ke)
中国 / 2024 / 111分
配給:ビターズ・エンド
ジャ・ジャンクー監督の長年のミューズであるチャオ・タオ演じる一人の女性の人生の約20年間を、彼女の元を去った一人の男性との関係を軸に描いた作品。
2001年、大同。国際女性デー。女性たちが交代しながら歌う。5年後、そして、16年後へと時代が移ろい、場所も長江の三峡、南端の珠海、中国の東北部や南西部へとチャオ・タオたちを追って移動する。2022年、再び大同に戻る。コロナによるロックダウン中の町。ロボットと向き合うチャオ・タオ。すっかり近未来風に変わった大同の町で、人々は踊る・・・
上映後Q&A
登壇:ジャ・ジャンクー監督
ジャ・ジャンクー:こんばんは。ジャ・ジャンクーです。(ここまで日本語で)
神谷:第1章、第2章、第3章という作りにしたのは?
ジャ・ジャンクー:タイトルは、最初、2001年に撮った時には、『デジタルカメラを持つ人』でした。新しい世紀を迎えたときに、人々が可能性を感じていて、皆が歌って踊って元気な時期でした。オリンピックの開催が決まったり、エネルギーを感じた時代です。色っぽい時代だなと思いました。当初は、2~3年撮ったら終わると思っていたら、終わらなくて、ほかの作品を撮って、思い出したら撮ってました。2015~16年頃には忘れてました。そこへコロナがやってきました。一つの時代が終わるような気がしました。フライトもなくなるし、国境も閉ざされる。北京にいて思ったのは、閉じこもっていた時にも、AIや生体に関する進化が早かった。コロナが終わったら、新しい時代が来ると思って、この映画を完成させなければいけないと思いました。20年が過ぎて、今の状態があるのだろうかと。2022年に脚本を書きました。コロナで撮影は出来なかったのですが。
神谷:音楽がふんだんに使われていました。
ジャ・ジャンクー:19曲使ってます。本来の中国の人はシャイなのに、あの時代は陽気に歌ってました。2000年を迎えた時代は狂乱状態でした。
全体的に考えて撮ったのではなく、その時、その時に歌っていたものを撮っていた中から選んでいます。その他は、監督として自分の意に合うもの、好きな曲を選びました。
セリフは、編集して繋いでみたら面白くないなと気づいて、男女の愛情を描くのに20年も必要かなと。はたと気づいたのは、前の作品は再現したもの。今回は、そこで起こったもの、偶然出会ったものを撮ってきたということでした。その時代の様子をヒロインと一緒に見ていく感じです。
編集しているときに、男女の話をいれたあとに抜いてみたら、ヒロインがあまりしゃべらない方が、敏感にその時代を感じることができると気が付きました。
結果として仕上がりがセリフを取ったことによって、世界が広がりました。彼女が沈黙したことで、いろいろなことに出会える。ひとことでは言えないものが感じられます。
★会場から
― チャン・タオさんがロボットと向き合っている図を見て、2022年の中国は監督にとって近未来的に思われているのでしょうか?
ジャ・ジャンクー:今の中国は、AIやロボットなどが発展しているけれど、近未来というより「今」を撮っています。
時間が来てしまって、会場から拍手を贈ったのですが、最後に一言とジャ・ジャンクー。
話されている最中に大きな笑いが起こって、会場の半分くらいは中国語のわかる方だったようでした。通訳の方が、「サングラスをかけていますが、目を悪くしているためで、ウォン・カーウァイじゃないです」と訳され、やっと笑えました。
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東京フィルメックス 25周年! 井上正幸さんを偲ぶ会の前に、チケット予約の顛末。(咲)に書きましたが、開会式のチケット予約に失敗! スマホで字が小さかったために、前から4列目のD席を取ったつもりが、後ろのほうの、O席でした。 2階席の最前列がまだ空いていたので、あわててO席をキャンセルし、2階席を取り直しました。
見晴らしがよくて、映画の画面は少し遠いながら、邪魔なく、観ることができました。
でも、舞台に登壇した人たちは、ほんとに小さくしか見えなくて、スマホのカメラでは、これが精一杯でした。しかもボケてるし。
今年からメイン会場となった丸の内TOEI スクリーン1については、ロビーが狭い、入場前は寒い通りで待たなければいけない、1階におトイレがなく、地下もしくは2階に行かなければならない、しかも和式が3割ほど! と、いろいろ気にいらないことはありますが、スクリーンは大きくて、見上げる形なので、比較的どの席からも観やすいという利点もあります。席数が800席弱から500席ほどに減少しましたが、朝日ホール時代、開会式と授賞式や、夜の人気作品は満席近くの集客ができても、平日の昼間は空席が目立ったので、ちょうどいいのではないかと思います。
ただ、丸の内TOEIも老朽化で近々閉館との噂も聞きます。来年以降の東京フィルメックスの会場はどうなるのでしょう・・・
報告:景山咲子
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