今年の東京国際映画祭では、イラン4本、トルコ2本、アフガニスタン、パレスチナ・イスラエル関連、カザフスタン 各1本 計9本の私の興味のある地域の映画があって、その上映とQ&Aのほか、来日ゲスト3組に個別取材の時間もいただき、それだけで、会期二日目の10月29日から、11月5日まで、休みなしになってしまいました。合間に、中華圏を中心に7本の映画を観たり、交流ラウンジや舞台挨拶の取材を入れて、大満足のTIFFとなりました。
私の初日10月29日に観た映画や取材については、その日の夜のうちに報告したのですが、その後、連日、帰りが遅くなって、報告を書けないまま会期が終わり、さらに明日からは東京フィルメックス。 舞台挨拶や個別取材のまとめが終わっていないものが多いのですが、行動記録を書いておきます。 景山咲子
10/30(水)
●12:12 12:57 コンペティション部門『雨の中の慾情』舞台挨拶・Q&A
登壇:成田凌、中村映里子、李杏
成田凌さんの「朝早くから観る映画じゃないですね」「台湾での撮影が大変というより、片山監督の現場だから大変」「肘を曲げない走り方を監督から指示されました」という言葉が印象に残りました。李杏さんは、「目を瞬く時のスピードをゆっくりしてください」と言われたとのこと。人物の見せ方にこだわりを感じました。 報告は、こちらで!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/505752323.html
トロ政で海鮮丼
★14:20 15:44 『赦されぬ罪』
香港 監督:ジェフリー・ラム
アンソニー・ウォンが教会の牧師さまで、罪と罰をめぐって葛藤する物語。
秋生ちゃん主演なので、とても楽しみにしていたのに、お腹がいっぱいで、肝心の後半場面、寝落ち・・・ 映画を観る前にお腹を満たしてはいけないのでした。
★16:40 18:00 『三匹の去勢された山羊』 アメリカ 監督・脚本・編集:イエ・シンユー
製作国はアメリカですが、監督の生まれ故郷である中国・陕西省が舞台。主人公の男が3匹の山羊を仕入れるため、都会から砂塵の舞う荒野の村に帰省するのですが、コロナ蔓延で足止めを食らいます。あのコロナ禍の異常な数年も今や過去のものとなったので、その記録といえる作品として将来貴重なものになるのでは。 そこかしこで笑わせてくれましたが、それも現実だったと思い出しました。
★19:35 20:49 『マイデゴル』 ウィメンズ・エンパワーメント
イラン/ドイツ/フランス
監督/プロデューサー/脚本:サルヴェナズ・アラムベイギ
イランで暮らすアフガニスタン難民の10代の女性。夢はボクシングのアフガニスタン代表チームに入ること。林檎やマッシュルームの収穫で日銭を稼いでいる。 父が暴力をふるい母は家出。8人家族の面倒もみなくてはいけなくなる。アメリカで生まれた子は楽して生きているのにと嘆く。それでも帰り道の土漠でも素振りの練習。代表選手となったら「マイデゴル(散った花)」の名前で出る! 少女の夢は叶うのか・・・
イラン人の友人が、マイデゴルの意味がわからないと言っていたのですが、映画をみて、アフガニスタンのダリ語の語彙とわかりました。ペルシア語とは文法も同じで共通点が多いですが、違いもいろいろありますね。
10/31(木)
映画祭は夕方からにして、イラン大使館で開かれているアートフェスへ。
大阪で日本語を学んだという大使館の女性と、小一時間、紅茶とお菓子をいただきながらおしゃべり。その間、誰も来ず、せっかくの催し、もったいないなぁ〜と。
★16:10 17:42 『大丈夫と約束して』 コンペティション
スロバキア/チェコ
監督:カタリナ・グラマトヴァ
スロバキアの田舎の村の祖母の家で夏休みを過ごしている15歳のエニョ。不動産の仕事のため離れて暮らす母親が、低所得者層を狙って道徳的ではない稼ぎ方をしていると知って葛藤する・・・
ちょっと話に入り込めませんでした。 (お腹はいっぱいじゃなかったので寝なかったのですが)
●17:00 18:00 交流ラウンジ ジョニー・トー×入江 悠
ジョニー・トーのお顔が見たくて、17時から始まっていた交流ラウンジの最後の10分を覗きました!
なんと、会場の一番後ろに、ロヤ・エシュラギさんの姿を見つけました。 タル・ベーラのマスタークラスで福島で短編を作ったコスタリカ在住のイランの女性監督。 9年前に山形国際ドキュメンタリー映画祭で『木』が上映された折に、東京で一日お相手をしたことがあって、今回、来日ゲストの名前の中に見つけて、いつ会えるかなと思っていたのでした。思わぬところで、9年ぶりの再会!
「roya jan!」と声をかけたら、すぐにはわからなかったようで、プレスパスの名前を見て、思い出してくれました。ハグして再会を喜びました。
ジョニー・トーお目当てで駆け付けたのに、思わぬ出会いでした。
★19:20 20:57 『私の好きなケーキ』 ウィメンズ・エンパワーメント
イラン/フランス/スウェーデン/ドイツ
監督:マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハ(『白い牛のバラッド』)
テヘランに住む70歳のマヒン。軍人だった夫は30年前に亡くなり、娘はヨーロッパに移住し、1軒家で一人暮らし。退役軍人の配給チケットで食事をしにいったレストランで見かけたタクシー運転手が独身と知り、指名して家に送ってもらう。道中で、彼を家に誘う・・・
数か月前に、日本在住のイラン人の友人が、「映画祭で上映されないかな」と期待していた作品。
驚きの展開で、唖然! もしかしたら公開されるかもしれないので、結末は明かせませんが、別途、もう少し詳しく紹介します。 これは是非公開してほしいです。
11/1(金)
★13:00 14:42 『春が来るまで』 アジアの未来
イラン
監督:アシュカン・アシュカニ
夫が遺書をのこし自室で首吊り自殺。 サマンは、職場にも、友人にも、実家にも、その事実を言えず、通りをうつろな顔で彷徨う・・・
ペルシャ湾岸の酷暑の中で石油会社で働く夫。賃金未払いで、労働争議を起こすも労働者をあおる行為は困ると会社から戒められたことを苦に自死したらしいことが明かされます。
どこの社会でも起こりえる普遍的な物語。
★15:35 17:12 『シマの唄』 アジアの未来
スペイン/オランダ/フランス/台湾/ギリシャ/アフガニスタン
監督:ロヤ・サダト
1978年のアフガニスタン。共和制から社会主義に移行する時期を舞台に、裕福な共産主義者の家庭の娘と、貧しい家庭の娘という対照的な境遇ながら親友のふたりの女子大学生。その後のソ連による侵攻と反ソ武装勢力の決起による紛争の時代に移行するなかで翻弄されていく・・・。
今のターリバン政権復権と重ね合わせ、この半世紀、アフガニスタンの辿った悲しい歴史を背景にした女性たちの友情を描いた物語。 よくぞ作ったと、ただただ涙。
●18:39ー19:24 サモ・ハン マスタークラス 丸の内ピカデリー スクリーン2
『おじいちゃんはデブゴン』上映後、Q&Aの取材。
聞き手は、江戸木純さん(映画評論家/プロデューサー)
まずはサモ・ハンの映画人生を振り返る映像。子役時代のサモ・ハン、可愛い!
『燃えよデブゴン』で、アクションに笑いがミックスした作風に。言葉も北京語でなく広東語で作ったら評判がよくて、その後は広東語で作るように。さらにホラー要素を加えた作品。小さいときからお化けや怪談が好きだったと明かします。80年代、90年代は黄金時代。次々作る映画がすべてヒット。休みはなかったけど楽しかったとサモ・ハン。そうして、『イップ・マン』シリーズ。「ドニー・イェンも自分も上手いから、あっという間にワンカット撮れる」とにっこり。
最後に、型をいろいろ見せてくれました。
終わって、ロビーで、かつてコミケでいつもシネジャをお買い求めくださった香港映画迷のご夫妻に久しぶりにお会いしました。
暁さんと、アンディ迷友達のTさんと銀座インズの中華料理「吉祥」へ。青椒肉絲、豚の角煮ブロッコリー添え、五目焼きそば、鉄鍋餃子、マンゴージュース。 私が寝落ちしてしまった『赦されぬ罪』の顛末をTさんから教えていただきました。 そんな話だったのか・・・ 公開されますように!
●22:25 22:55 『冷たい風』 イラン Q&A取材 シャンテ2
Q&A:モハッマド・エスマイリ(監督/脚本)、モハマドマフディ・ヘイダリ(俳優)
イスラエルとのことでイランからのフライトがほとんど飛ばない状態で、やっとのことで来日された二人。TIFFでの上映とQ&Aに感無量のご様子でした。
主任捜査官が、関係者に次々に聴取するのを、捜査官から観た証言者をどれも同じローアングルで撮っていることについて質問がありました。監督はもともと撮影監督で、ローアングルで撮ると人物が大きく見えること、また低予算で短期間に撮る必要もあったのでカメラの位置を同じ高さに決めて撮影したとのこと。
遅い時間にもかかわらず、ほぼ満席。友人知人数人に会いました。
11/2(土)
★10:00 12:06 『娘の娘』 コンペティション
台湾
監督:ホアン・シー
台北に暮らすジン・アイシャ。若い頃にニューヨークで生み、里子に出した娘エマと数十年ぶりに対面する。その後の結婚で産んだ娘ズーアルは、突然現れた姉に戸惑う。そのズーアルが同性のパートナーと体外受精のためにアメリカに渡るが、交通事故で亡くなったとの報に、アイシャはアメリカに飛ぶ。アイシャは受精卵の保護者となり、それを引き受けて代理母を探すのか、放棄するかの選択を迫られる・・・
始まる前に、審査員席に向かうトニーレオンをお見かけすることができました。
映画祭も中盤。ちょっとお疲れのように見えました。 後にも先にも、生のトニーを拝めたのは、この時だけでした。
映画の結末が気になったのですが、Q&Q取材のため、途中で退席。
●11:29-11:59『10セカンズ』 QA取材
トルコ
ジェイラン・オズギュン・オズチェリキ(監督)、ゼイネップ・セジル(撮影監督)
プレスは、公式以外、私一人でした。 Q&Aは英語で。
聞き手: ウィメンズ・エンパワーメント シニア・プログラマー アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさん
もともとドラマだったものが、コロナで打ち切りになり、脚本を書いた男性から映画化してほしいと依頼があり、1部屋での物語を構築。娘が退学処分を言い渡された裕福な母親が、進学カウンセラーの女性に娘を復学させろと詰め寄り、丁々発止の会話が展開します。撮影監督には、大胆な撮影方法についての質問が投げかけられました。
Q&Aが終わって、トルコ語通訳の野中恵子さんが客席にいらして、「すごかったね〜」と。
この後、交流ラウンジで4時半からの『シマの唄』の監督取材の準備。
昨夜の『シマの唄』のQ&Aを取材できなかったので、この日の『シマの唄』が終わる頃にシャンテに行き、観ていた友人たちにQ&Aで出た話を聞きまいした。
●16:30-17:00『シマの唄』 個別取材
ロヤ・サダト(監督/脚本)、アジズ・ディルダール(脚本/俳優)
ご主人のアジズさんも、インタビューに同席いただけることになりました。
最初に、1978年末にソ連がアフガニスタンに侵攻する前の、古き良き時代のアフガニスタンのことを、駐在していた人たちや、旅した人たちから聞いていたことをお伝えしたら、平和な時代を知っている人に映画を観ていただけて嬉しいと監督たち。 ソ連侵攻以降のアフガニスタンは、戦争やターリバンの強権政治のイメージしか皆さん持っていないのでと。
「旅の指さし会話帳」をお見せして、かつてアフガニスタンへの旅にあこがれた人たちがいたことをお伝えしました。
●17:57-18:27 『昼のアポロン 夜のアテネ』 アジアの未来
トルコ
Q&A取材。
エミネ・ユルドゥルム(監督/脚本)、エズギ・チェリキ(俳優)、バルシュ・ギョネネン(俳優)
トルコ語通訳:野中恵子さん
映画をまだ観てなかったので、質問の内容から物語を想像するしかありませんでした。
古いシデの遺跡を舞台に繰り広げられる幽霊と交流する話らしい・・・
映画を観ていた友人たちとシャンテ地下のお蕎麦屋さんで天丼セット
友人たち、この映画についてあまり語らず・・・でした。私が観る前だからの遠慮でもなかったようです。
11/3(日)
★ 10:30 12:22 『昼のアポロン 夜のアテネ』
トルコのエーゲ海沿い、シデの遺跡に向かうバス。女性の後ろから話しかけてくる青年は、どうやら幽霊。昨日のQ6Aを聞いていたので、ぴんときましたが、生きている人間と変わらない姿で、主人公の女性からは見えるという設定なのでした。
ヒロインの母の名はイブ。父はアダム。孤児院で育った子は、そう書かれるのと。
シデの遺跡でガイドをしてくれた女性が、実は母親。そして、母親にも幽霊が見えるのです。遺伝したのねと。 ちょっと不思議な物語でした。
この後、ミッドタウン日比谷で取材なので、シネスイッチ銀座から移動したら、ものすごい人! ゴジラのイベントがあるとわかりました。 シャンテあたりで食事と思いましたが、とても無理そう。
交流ラウンジに入ることができたので、豚角煮塩麴ランチをいただきました。 お蔭様で静かな場所でインタビューの準備ができました。
●14:10~14:40 『冷たい風』 個別取材 @6FSTUDIO
モハッマド・エスマイリ(監督/脚本)、モハマドマフディ・ヘイダリ(俳優)
監督の素敵な奥様もいらしてました。
証言者が次々に出てきて、その話の中に出てくる人物の整理が大変だったとお伝えしたら、「最初の15分に出てくる大勢の人たちのことは忘れていい。次の15分も忘れていい」とのこと。え~ 一生懸命、覚えたのに・・・ つまりは、肝心なことは後半にあるということ?
イランの西部にもあるノアの箱舟伝説も織り込んだ物語。
インタビューをしたミッドタウン日比谷6階のSTUDIOのすぐそばで、引き続きトークイベント。
始まる前に、ロヤ・エシュラギさんに、またお会いすることができました。
★15:30 17:30 福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト× 東京国際映画祭 連動企画 スペシャルトークイベント BASEQ
来日予定だったタル・ベーラは、直前に対象を崩したからと来日中止。
小田香監督によるタル・ベーラ マスタークラス記録映像のダイジェスト版(10分)が流されました。(3時間版が、この日の午前中に上映されたのですが、残念ながら観られず)
「人間を撮れ」とタル・ベーラ。今生きている人の生活、話を聞くことも大事と。「人を見ろ」がポリシー。
指導を受けていろいろな国の受講者が作った短編は、それぞれのアプローチが違うけど、ぞれぞれが正しいと。
受講生の一人としてロヤ・エシュラギさんも発言。
この後、スペシャルトーク。
登壇者:小田香(フィルムメーカー/アーティスト)、小川真司(プロデューサー)、西ヶ谷寿一(プロ
デューサー)、根本李安奈(相双フィルムコミッション代表)
タル・ベーラ監督との製作過程を知ることのできる話の数々でした。
小田香監督の「タル・ベーラはモノの言い方が直接的。誤解されるといやだなと思ってました」という言葉に、かつて来日された時のタル・ベーラ監督の話ぶりを思い出しました。確かに・・・
●18:07-18:37『春が来るまで』 Q&A取材 シャンテ2
アシュカン・アシュカニ(監督/プロデューサー/脚本)、サハル・ソテュデー(俳優)
ワールドプレミアを観客と一緒に観ることができて嬉しかったと二人。
物語は、夫が自殺してから24時間ですが、撮影には3年かかったとのこと。妻サマン役のサハルさんは、時間を置いての撮影で、前との繋がりを考えなければいけなかったと語りました。
イランでも自殺が増えていて、パートナーが自殺すると、残った人は「いいパートナーじゃなかったから自殺した」という捉え方をされるとサハルさん。「家族は自殺したことを隠しますが、お葬式は亡くなった人への敬意を持って行います」と監督。
Q&Aが終わって、日本在住のイラン人の友人アリさんたちに会い、あまり時間はなかったのですが、トロ政でお刺身などをいただきました。
●19:40 20:10『対外秘』 舞台挨拶 角川シネマ
イ・ウォンテ(監督)、チョ・ジヌン (俳優)、キム・ムヨル(俳優)
開始5分前に到着したら、公式カメラマンの後ろの席しかもう空いてなくて、お蔭で2列目ながら正面!
国会議員選挙を巡る権力闘争という、どろどろした内容ながら、舞台挨拶は実に楽しいものでした。 党の公認を選挙直線に取り消された役を演じたチョ・ジヌンさんは、日本での初の舞台挨拶。テンションあがってました。
『対外秘』舞台挨拶報告
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/505705353.html
●20:45 21:15 『不思議の国のシドニ』 Q&A取材 丸の内TOEI
12月13日よりの公開を前に、特別上映。
登壇:イザベル・ユペール(俳優)、伊原剛志(俳優)、エリーズ・ジラール(監督/脚本)
夫を亡くし、喪失感を抱えるフランスの女性作家シドニが、日本人編集者の溝口とともに日本各地を旅する中で、新たな人生の一歩を踏み出す物語。(未見)
『ベルヴィル・トーキョー』のプロモーションで初来日したエリーズ・ジラールが、日本に恋をして出来上がった映画。
イザベル・ユペールさんは、脚本を読んで、文章が素晴らしく、シンプルでいいなと即決。伊原剛志さんは全編フランス語。「まったく出来ないので、日本語で」と、フランス語のセリフをZOOMなどで指導してもらいながら4か月かけて覚えたとのこと。さらにコロナ禍で4か月撮影が延びたので、十分準備することができたそうです。
11/4(月)
★13:05 15:16 『小さな私』 コンペティション
中国 監督:ヤン・リーナー
脳性麻痺を患う青年リウ・チュンフー。大学受験を控えているが、祖母が力を注いでいる舞台を手伝っている。祖母はチュンフーを積極的に社会に関わらせようとするが、チュンフーの母は不安を隠せない…。
『少年の君』でスターとなったイー・ヤンチェンシーがチュンフー役。最初に映る歩く足元も、ほんとうに障がいのある人のようで、びっくりでした。脳性麻痺という障がいを持っていても、健常者と変わらない心を持っていることを教えてくれました。
どこかに遅いランチを食べに走ろうと思っていたのですが、名古屋のミッキーさんからかんぴょう巻きをいただき、人心地。
★16:10 18:13 『士官候補生』 コンペティション
カザフスタン 監督: アディルハン・イェルジャノフ
士官学校の歴史教師として赴任してきたシングルマザーのアリーナ。息子のセリックを士官学校に入学させるが、女の子のようだと生徒たちにいじめられ、校長からも異質だと退学を言い渡される。アリーナがセリックの父親が軍隊の高官だと伝えると、復学を許される。我が子がこの学校で自殺したという女性から、セリックも自分の息子と同じ道をたどるから逃げてと言われる…
ホラー仕立てで、士官学校や軍隊の腐敗を描いた物語。期待が大きかったので、ちょっとがっかり。
松屋で焼き鳥弁当を3割引きでゲット! 全部食べたら、また寝てしまうので、半分だけいただきました。
★19:05 21:01 『彼のイメージ』 コンペティション
フランス 監督:ティエリー・ド・ペレッティ
コルシカ島の地方紙で働く写真家のアントニアが交通事故で死亡し、葬儀に家族や友人たちが集まる。写真を撮るのが好きなアントニアは、18歳だった1980年に、コルシカ独立運動に身を投じているパスカルと恋に落ちる。彼が所属する「コルシカ民族解放戦線」の活動は過激化し、パスカルは投獄と釈放を繰り返す・・・。
アントニアの18歳からの20年を、コルシカの社会状況を背景に描いた物語。
コルシカで、こんなに激しい独立運動が行われていたとは知りませんでした。
ただ、映画としてはちょっと物狩りないものを感じました。
11/5(火)
★11:10 14:36 『スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989』 ワールド・フォーカス
スウェーデン/フィンランド/デンマーク
監督:ヨーラン・ヒューゴ・オルソン
スウェーデンの国営テレビ局SVTが所蔵する膨大な映像素材。その中から、イスラエル=パレスチナ問題に関わる映像を、イスラエル建国直後から、年を追ってイスラエルとパレスチナ解放戦線の間でつかの間の和解が成立しかけた1989年までを編集したドキュメンタリー。
公共放送がどのように伝えたか、「公正に伝える」というスタンスから、イスラエル、パレスチナ、双方のことが語られています。 そこから見えてくるものを、ちゃんと捉えれば、今の事態がなぜ起こっているのかもおのずから見えてくると思いました。 206分の長尺ですが、ぜひ多くの方に観てほしい映画です。
★15:45 16:56 『ファイヤ―・オブ・ウィンド』 ワールド・フォーカス
ポルトガル/スイス/フランス
監督:マルタ・マテウス
ポルトガル南部、アレンテージョ地方の収穫期のブドウ園で働く農民たち。ある日、暴走した黒い牛が現れたため、農民たちは高い樫の木に上って枝に身を隠す・・・。
用事があって途中で出る予定ではあったのですが、あまりにずっと木の上にいる場面が続くので、予定より早く退出。後で、最後まで観た友人に顛末を聞いたら、ずっと木の上で、最後の最後の方で、農民たちの記憶が20世紀半ばのサラザールによる独裁政権の時代に遡っていったのだそうです。 シュール過ぎ?
●17:20-17:50 『春が来るまで』 個別取材 @6FSTUDIO
アシュカン・アシュカニ(監督/プロデューサー/脚本)、サハル・ソテュデー(俳優)
数多くの映画の撮影監督を経て、初めての長編映画デビュー。モハンマド・ラスロフ監督に、完成した映画を見せたところ、20分くらいの沈黙のあと、「誰の影響も受けていない映画だね」と言われ、これからも自分の気持ちに従って撮ろうと思ったと嬉しそうに語っていました。
サハルさんも、短編をすでに数本作っているのですが、今後、長編映画のアイディアが2本あるとのこと。女優と両立で監督を目指しているようです。
●19:00~19:45 黒澤賞 授賞式 帝国ホテルにて
受賞者: 三宅 唱監督、フー・ティエンユー監督
開始前に、選考委員である山田洋次監督に、『本日公休』のフー・ティエンユー監督や、ウィメンズ・エンパワーメント シニア・プログラマー アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさんが挨拶されていました。
安藤チェアマンより: 「黒澤明の名前をご存知ない方が世界で増えていることから、3年前に黒澤賞を復活させました」との言葉があって、時は流れているのだなぁ~と思いました。
また、かつては世界の映画界に貢献した方に贈られてきたものが、最近は、未来を託す方に移ってきているとのこと。
山田洋次監督の大ファンと語るフー・ティエンユー監督、ほんとうに嬉しそうでした。
授賞式が終わって退出する時に、アンドリヤナさんと、インドネシアの女優で監督のクリスティン・ハキムさんがいらしたのでお声をかけました。「東京国際女性映画祭でクリスティン・ハキムさんにお会いしたことを懐かしく思い出します」とお伝えしたら、ハキムさんもとても嬉しそうでした。
11/6(水)
★10:40 12:41『マルチェロ・ミオ』 クロージング作品
フランス/イタリア 監督:クリストフ・オノレ
今年のコンペティション部門審査員の一人である女優のキアラ・マストロヤンニが主人公。
ある夏の日、鏡を見ると、そこには父マルチェロ・マストロヤンニの顔が映っていた。その日からキアラは、父の人生を生きるべきと自分に言い聞かせ、父のような服を着て街を歩く・・・。
キアラの実の母親であるカトリーヌ・ドヌーヴや、ファブリス・ルキーニ、メルヴィル・プポーなど、多くの俳優たちが自分自身を演じています。
冒頭、トレビの泉に飛び込むキアラは、カトリーヌ・ドヌーヴそっくりでした。 その後の、男装のキアラ、さて、父に似ているか? なんとも、あっぱれな映画でした。
●18:50~ 受賞者記者会見 LEXUS MEETS...
「審査委員+受賞者記者会見」に取材申し込みし、やっとトニー・レオンに会えると楽しみにしていたら、前日、「※審査委員記者会見はキャンセルとなりました」のお知らせ。がっかりでした。
でも、受賞者のお話を聴けるのは貴重な機会。 この記者会見は写真を撮ってはいけないのですが、撮っている取材者が何人もいました。日本語が通じない人たちだったかも。
まだ観ていない『敵』が、東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞の3冠。
パリ大学ソルボンヌ在学中に、フランス映画『パリの中国人』(74)で俳優デビューした長塚京三さん。『敵』では、かつて大学でフランス文学を教えていた元教授という役どころ。ひょんなことからパリで映画に出演したのが、いつのまにか俳優人生の始まりだったと語りました。
吉田大八監督は、「映画は俳優を観にいくもの。だから僕の映画も俳優を観に来てほしい。ですので、男優勝が取れたのは嬉しい。監督賞は自信がない。作品賞は関わった皆のもの」と謙虚でした。
アジアの未来作品賞は、トルコの『昼のアポロン 夜のアテネ』。 私的には、もう一つしっくりこなかったのですが、トルコの作品が賞を取ったのは嬉しいので、良しとしましょう。
エミネ・ユルドゥルム監督に、「今回出品されているもう一本のトルコ映画も女性監督ですが、トルコでは以前に比べて女性監督や映画人は増えているのでしょうか?」とお伺いしました。「トルコでは家父長制が強くて、少しずつ女性の活躍も増えていますが、女性監督には予算がなかなかつかないとか、まだまだの状況です」とのお答えでした。
第37回 東京国際映画祭の最後の取材も終えて、ミッドタウン日比谷の地下2階に下りたら、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の特設コーナー。衣装が素敵でした。
★サイズの大きな写真や、ここに載せきれなかった写真はこちらで!
Facebook写真集 第37回 東京国際映画祭 取材記録 景山咲子
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