第 36 回東京国際映画祭 コンペティション部門
『ゴンドラ』Gondola
監督:ファイト・ヘルマー
出演:マチルデ・イルマン、ニニ・ソセリア
2023年/ドイツ・ジョージア/82分/カラー/セリフなし字幕なし
*物語*
ゴンドラに棺が乗せられ、山の下に運ばれる。黒い喪服の女性が見送る。ゴンドラの車掌の男性が亡くなったのだ。村の人たちが皆、棺を見守る。
若い女性の車掌が着任する。すれ違うゴンドラのもう一人の女性の車掌との間に淡い恋心が芽生える・・・
◎10月25日 (水)10:20からの上映後のQ&A @TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1
登壇ゲスト:ファイト・ヘルマー(監督/脚本/プロデューサー)、ニニ・ソセリア (俳優)ケイティ・カパナゼ(アシスタント・ディレクター)
司会:安田祐子
安田:午前中からとてもいい気持になれる映画でしたね。皆さんいかがでしたでしょうか?
監督:ようこそおいでくださいました。2~3年で作った映画で、どんな反応をされるか、観客にみせて初めて意義あるものかどうかがわかります。これまで1回上映しまして、とてもポジティブなリアクションがあって、東京国際映画祭でワールドプレミア出来て嬉しいです。
安田:やっとニニさんの声が聞けますね。
ニニ:ハロー。出来上がった映画をここで初めて観ました。大きな機会をありがとうございました。 すぐにでも東京に戻ってきたいほど東京が気に入りました。
ケイティ:東京に来られてほんとに嬉しいです。初めての東京です。3日になりますが、素晴らしい町で、観客も素晴らしい。食事も美味しくて、早くまた戻ってきたいです。
安田:事前に台詞がない映画とわかっていた方もいると思いますが、途中から台詞がないことに気づいた方も、台詞がないことが全く気にならなくなったのではないでしょうか?
監督は最初から台詞のない映画にしようと思っていたのでしょうか?
監督:できるだけ映画に言葉を使わない方針です。映画のエッセンスは、イメージ、音、映像です。会話があったとたん壁が出きてしまいます。字幕やアフレコが必要になります。イメージだけにすると、感じ取れます。観客の皆さんの気持ちがオープンでないとできないことです。受け入れられないという方もいると思います。OKな方とはお友達です。
安田:ニニさんに。オファーが来たときに、台詞がないという映画はいかがでしたか?
ニニ:脚本を渡された時に、台詞がないのは初めてでしたので、不思議だなと戸惑いました。撮影が開始されますと、指示がはっきりしていて難しさはなかったです。
安田:ケイテイさんはジョージアの方で、ロケーションもジョージア。ケイティさんはジョージアで撮影することで大変だったことは?
ケイティ:女性どうしの愛が描かれていますが、ジョージアでもほかの国でも受け入れてくれない人たちがいます。これからジョージアで公開される時に受け入れられるかどうか、受け入れてもらうために闘わないといけないと思っています。(大きな拍手)
◆会場から
―(女性)ロマンティックで素敵な映画で感動しました。日本ではジョージア映画祭がおこなれる位、人気です。ジョージアの映画で影響を受けたものやお気に入りの映画は?
監督:最初の長編映画『ツバルTUVALU』(1999)がジョージアで上映された時に、何人もの監督にお会いできました。オタル・イオセリアニと、ナナ・エクチミシヴィリには特に影響を受けました。大勢のジョージアのスタッフとも仕事をしています。
『ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を』(2018)もジョージアとアゼルバイジャンで撮影しました。アゼルバイジャンで撮影していた時に、ジョージアの有名な俳優さんがレストランに入ってきて、皆が立ち上がってレスペクトしていました。ジョージアには映画を愛する人が多いと思いました。
ニニ:ジョージアの映画をたくさん観ています。数か月前に観た『Room of Mine』がとても気に入っています。
ケイティ:私もたくさん観ています。古い映画が特に好きです。ナナ・エクチミシヴィリ監督の『My happy family』も好きです。
―(女性)ファンタスティックな映画をありがとうございます。ゴンドラから見える風景、主に建物ですが、羊が移動していくときに3人の女性が手を振っていたそばの小さな造形物がたくさん並んでいました。木を切っている家など、実際のジョージアの風景でしょうか?
監督:すべて実在するものです。少し変えたところもあります。ゴンドラの内部、家はフーロの町の伝統的なものです。大きな問題は、この村にはゴンドラが一つしかないことでした。
クタイシには二つのゴンドラがあるのですが、黄色だったので、赤に塗り替えて、すごいロウアングルで2台のゴンドラを撮りました。(椅子に座ったまま、下から撮った時のポーズをしてくださいました)
家が遠くにあるのが問題でした。すぐそばに家があるマウリポリに撮りにいったのですが。そこのゴンドラは青だったので赤に塗りましたが、雨ではげて塗り直しました。
そこの住民には、すごく協力してもらいました。予算が少なかったので、ほんとに助かりました。
もう一つストーリーがあって、ロケ地に行ったら、トラックが来て、ゴンドラの駅を新しいものに変えると言われました。ヴィム・ベンダース監督も「とにかく早く撮らないと」とおっしゃっています。古いままの駅を撮りたかったので、とても急いで撮る必要がありました。
― ニニさんは多才ですね。鍵を開けることができるし、楽器は吹けるし、いろんなことができますね。どのエンターテイメントが大変でしたか?
ニニ:実は高所恐怖症でしたので、ゴンドラでの演技が大きなチャレンジでした。慣れたらゴンドラが自分の家のようになりました。
フォトセッション
「映画は気に入りましたか?」の監督の質問に大きな拍手が贈られました。
監督が皆さんの写真も撮りたいと、5秒だけマスクを外して立ち上がってくださいと声をかけました。
安田:皆さんも観客の作品の出演者になってしまいました。
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