難民映画祭『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』(咲)

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11月6日から始まった今年の難民映画祭も、オンライン開催はいよいよ11月30日まで。
やっと1本、観ることができました。

『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』 
原題:va hanuz ham mikhanam 英題:And Still I Sing
監督:Fazila Amiri
2022年 / 90分 / ダリ語 /ドキュメンタリー

歌いながらおしゃべりするゼフラ・エルハムとサディカ・マダドガル。二人は、アフガニスタンの大ヒット番組「アフガン・スター」で勝ち抜き、トップ7に残った女性歌手。これまでの13シーズンで、女性の優勝者が出たことはなかった。アフガニスタンの国民的歌手でアフガン・スターの審査員も務めるアリアナ・サイードが、ゼフラとサディカを指導し、初の女性の優勝を目指して後押ししている。ゼフラとサディカは難民として暮らしていたパキスタンの学校で知り合い、アフガン・スターで再会した。どちらも家族は今もパキスタンにいる。サディカは、残念ながらトップ2に残れなかったが、ゼフラは男性歌手ワシームを抜いて、初めての女性優勝者となる。ワシームの父親が、「いかさまだ、爆破してやる」と脅す。

アリアナ・サイードは、女性の権利を求める活動もしているが、2017年、パリのコンサートでは、肌色の衣装がヌードに見えるとタリバンなどあちこちから脅迫された。アフガニスタンには、児童婚、女性の耳と鼻を切る習慣、性暴力など多くの問題があると語る。アリアナには、かつて婚約者がいたが、歌か結婚かと婚約者の家族に迫られ、歌を選んだ。今は、アリアナのマネージャーであるハシブが婚約者でもある。ハシブは、アフガニスタン独立百周年の行事を任される。メインは、アリアナのコンサートだ。単なる娯楽でなく、文化的にも歴史的にも意義のある催しのすべてを宮殿の周りで行うことを決め、テロ対策もきめ細かく考える。死と隣り合わせの行事だ。
2019年8月、100周年の独立を祝う3日前、ハザラ人が多数を占める結婚式で自爆テロが起こり、63名が亡くなる。アリアナは歌うのを禁じられる。祝典は延期される。

2021年、アメリカ大統領がバイデンに代わり、アフガニスタンからの米軍撤退を決める。
そして、ついに2021年8月15日、タリバンがカーブルを制圧し政権を取り戻す。ガニ大統領はいち早く出国していた。アリアナは空港を目指す。途中の道でタリバンが発砲していたが、空港にはタリバンはいなかった。米軍の兵士と目が合い助けを求める。ヘジャーブで顔を隠していたが、アリアナと気づいた男性が、「彼女は有名な歌手。助けてやってくれ」と言ってくれて、無事飛行機に乗れる。
イスタンブルで、婚約者ハシブと動画を見るアリアナ。アフガニスタンで、音楽を聴いていたというだけで、引きずられている男性の姿に声も出ない。「タリバンは女性の存在を認めない。彼らに政権を持たせてはいけない」と語る・・・
陸路でパキスタンになんとか逃れたゼフラは、クエッタの町で家族といる。
「タリバンの復権は、芸術や文化の終わり。祖国を離れても、命ある限り歌い、女性の代弁者になりたい」

2001年にタリバンが実権を失って以来、少しずつ築いてきた女性の権利も、タリバンの復権ですべて失ってしまいました。 彼女たちが生き生きと歌いながらも、「タリバンが復権したら・・・」と不安を口にしていたのが、現実になってしまいました。
自分の利益にならないとなると、後のことを考えずに撤退してしまったアメリカも恨めしく思います。それはアフタにスタンだけのことではないけれど!
今、アリアナやゼフラは、どんな思いでいるでしょう・・・ いつかまた、彼女たちが晴れやかに歌える日が来ることを願ってやみません。
景山咲子



第18回難民映画祭2023
オンライン開催:11月6日(月)10:00~11月30日(木)23:59
劇場開催(東京):
11月6日(月)TOHOシネマズ六本木ヒルズ
11月23日(木・祝)カナダ大使館・オスカー・ピーターソン シアター
11月25日(土)シダックスカルチャーホール
https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff


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