東京国際映画祭 アジアの未来 作品賞 『マリア』 記者会見・Q&A報告 (咲) 

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アジアの未来 作品賞受賞したイラン映画『マリア』。
クロージングセレモニーと受賞者記者会見での喜びの言葉と、10月29日(日)上映後のQ&Aの模様をお届けします。


『マリア』 Maria
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監督/脚本:メヘディ・アスガリ・アズガディ
プロデューサー: アリ・ラドニ
撮影監督:ダウード・マレクホセイニ
編集:エルナズ・エバドラヒ
音楽:ハメド・サベット
出演:
ファルハド: カミャブ・ゲランマイェー
ゾーレ: パンテア・パナヒハ
ペイマン :サベル・アバール
パリサ: マーシド・コダディ
ラスル:ホセイン・マージューブ
2023年/イラン/119分/カラー/ペルシャ語
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3602ASF04

*物語*
若い映画監督のファルハド。自分の結婚式の日、映画の撮影用に借りていた車に花をあしらって運転中、陸橋から落ちてきた女性を轢いてしまう。その女性マリアは、2年前にファルハドが娼婦役に起用したが、テスト映像が流出して以来、姿を消していて、行方を探していた。意識不明で重体のマリアの家を訪ねたファルハドは、一家がバローチ族で、バッタに畑をやられ、土地を離れテヘラン南部にやってきたことを知る。界隈には、バルーチ族が多く暮らしている。マリアは突き落とされたのではないかとの疑いが浮上するが、12人もの男が、自分が犯人だと名乗り出てくる・・・




◆第 36 回東京国際映画祭 クロージングセレモニー

アジアの未来 作品賞
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マーク・ノーネスさんより発表。
レイモンド・レッドさんよりトロフィー授与。

来日出来なかったメへディ・アスガリ・アズガディ監督のコメントを奥さまであり編集を担当したエルナズ・エバドラヒさんが暗記したものを披露しました。

「東京国際映画祭、審査員の方々、この映画をセレクトしてくれた方々、心よりお礼を申し上げます。この賞をいただき、私はもう一回映画で人生を歩んでいけるという力を貰いました。編集を担当した妻、主役の俳優さんはじめ映画に関わったすべての人にこの場を借りて感謝を申し上げたいと思います。また、私たちのイラン映画の巨匠であるアミール・ナデリ監督にはお礼を申し上げたいと思います。私たちはいただいたこの賞をアミール・ナデリ監督に差し上げたいと思います」

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◆受賞者記者会見
登壇:エルナズ・エバドラヒ(編集)、カミャブ・ゲランマイェー(俳優)

― 28歳の若い監督の受賞、おめでとうございます。今回は来日が叶わず残念でした。映画の世界の中で進んでいく物語。作る上でのご苦労は? イランの特殊な部族のことも入っていましたが・・・

エルナズ:夫である監督は来られなくてこの場にいられないのはほんとうに残念です。けれども、映画をご覧いただいたこと、また受賞したことを伝えましたら、大変喜んでいました。審査員にも大変感謝しております。次の作品で来日できればと願っています。
この映画は、映画の中の映画という作りです。バルーチ民族を題材に使いましたが、繊細に描かないとイランのほかの民族と間違えられるかもしれないので、言葉の訛りや、衣装など、とても気を使いました。バルーチ人のアドバイザーがいましたので、繊細に撮ることができました。


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― カミャブさんにお伺いします。今回は、イランの人々を描いた映画が偶然にも多く受賞しました。作品を選ぶ時の哲学のようなものはありますか?

カミャブ:私のことを話す前に、『雪豹』のペマ・ツェテン監督が亡くなられたことを聞いて、心を痛めています。これからも皆さんめげずに頑張ってください。 実は、短編も含めて、この映画が初出演でしたので、2年後位に別の作品に出演したら答えられるかもしれません。


◎2023年10月29日(日) 10:25からの上映後の質疑応答
@TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2

ゲスト:カミャブ・ゲランマイェー(俳優)、エルナズ・エバドラヒ(編集)
司会:石坂健治シニア・プログラマー

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カミャブ:サラーム。おはようございます。朝からありがとうございます。初めての映画デビュー作の完成版を、初めて皆さんと観ることができました。

エルナズ:おはようございます。監督は残念ながら来られなかったのですが、メッセージを預かりました。
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「皆さんと一緒に映画を観ることができなくて残念です。国から出られなかったのです。徴兵が終わってなくて、許可が出ませんでした。実は、歳の問題で行けなかったので、書類を揃えて出したのですが、駄目でした。リサーチを進めて、次の作品を作って東京に行けるようにしたいです。映画を愛している私は東京国際映画祭にぜひまた選んでいただいて参加したいです。
28歳で、完成作品を観たいと思っていたのですが残念です。いつかまた!


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メヘディ・アスガリ・アズガディ監督

石坂:今回、最年少の監督でした。お目にかかりたかったです。 
まずは、バローチ族について、説明いただけますか?

カミャブ:東南地区のシースターン・バローチスターン州に主に暮らしているのですが、日照りが厳しくて、水の問題があって、生活に苦労して、仕方なく首都テヘランなどに移住したり、ばらばらに暮らしています。

エルナズ:数年前に砂嵐で多くの村が破壊されてしまいました。マリアの両親も砂嵐で亡くなって、祖父とテヘランに移住したという設定です。

―(女性) 撮影と編集が素晴らしかったです。イランで起きた事実を脚色したのでしょうか? 女の人が高いところから落ちてくる。男性の幻想から、ヒッチコックの『めまい』などを思い起こしました。影響を受けた映画などがありましたら教えてください。

エルナズ:監督にとって初めての映画で、私にとっても初めてのフィーチャー映画の編集でした。監督は『めまい』がとても好きです。緑色は『めまい』の影響です。現実と幻想も『めまい』の影響です。パリサの服装の色も、『めまい』に同じ色のものが出てきます。

―(男性)車の中のシーンが多かったですが、難しかったのでは?

カミャブ:いろんなロケーションで車のシーンがあって、でこぼこの道のところもあって、とても困難な撮影でした。

エルナズ:主役が子ども二人を車のバックシートに入れるシーンは、苦労してとても大変でした。
雨の中で暗かったけれど、監督はチャレンジしたかったのです。


―(女性)実話に基づくとのことですが、どれ位、本当なのでしょうか? 映画としては、どういう風にしようと考えたことなど教えてください。

エルナズ:監督が数年前、一人の若い女性に出会い、売春婦の役を演じたら、家族に殺されそうになったと聞いて、いつか映画にしたいと思っていました。
パナヒ監督の『ある女優の不在( 3 Faces)』のポスターが貼ってあるのは、その映画の中で役者になりたかった少女が家族の反対で自殺しようとしたという話があるからです。


石坂:カミャブさんは、もう少し、こうすればよかったというところはありましたか?

カミャブ:観ながら、ここはこうすればよかったというところはありましたが、最初に観た時には、「あ、私だ!」と。

―(男性)後ろめたさを感じたという絵作りは、役者として、どのように意識されましたか?

カミャブ:この役を演じるのに、9か月、監督とやりとりしました。複雑な役で、ファルハドは、すべてを映画の角度から見ているキャラクターです。例えば、結婚式の日、花嫁に電話して「メイク終わった?」と聞きますが、その「メイク」は映画の現場で使う「メイク」です。生活の中でも、すべてを映画と絡めている人物です。

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石坂:若いチームが作り上げた映画で、日本公開が実現できればと思います。
最後に一言ずつお願いします。

カミャブ:東京国際映画祭が選んでくださったことにお礼申し上げます。楽しんでいただけましたら嬉しいです。

エルナズ:東京国際映画祭にお礼申し上げます。初めて東京に来て、東京にほれ込んでしまいました。モダンでシステマティック。惚れ惚れしました。

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まとめ:景山咲子





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