山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年 『燃え上がる記者たち』(インド) Q&A (咲)

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年のアジア千波万波部門で、『燃え上がる記者たち』のタイトルで上映され、市民賞を受賞した作品。
この度、2023年9月16日より、『燃え上がる女性記者たち』のタイトルで公開されることになりました。 2年前の上映後のオンラインQ&Aをお届けします。


『燃え上がる女性記者たち』
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監督、編集、製作:リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ
2021年/インド/ドキュメンタリー/ヒンディー語/DCP/93分
日本語字幕:福永 詩乃
配給:きろくびと
公式サイト:https://writingwithfire.jp/
★2023年9月16日(土)より渋谷ユーロ・スペースほか全国順次公開.



アジア千波万波 市民賞受賞

燃え上がる記者たち    英題:Writing With Fire
インド/2021/93分
監督:スシュミト・ゴーシュ、リントゥ・トーマス Sushmit Ghosh, Rintu Thomas

2002年にウッタル・プラデーシュ州チトラクート地区にて、カースト外の不可触民である「ダリト」の女性たちによって週刊の地方新聞として創刊された「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波)。2016年、独自のビデオチャンネルを立ち上げ、デジタル配信へと移行する。
主要メディアが扱わない事件も取り上げ、スマホを駆使して取材に奮闘する女性記者たちの姿を追う。


◆『燃え上がる記者たち』Q&A

スシュミト・ゴーシュ(S)(男性)、リントゥ・トーマス(R)(女性)

R:「カバル・ラハリヤ」主任記者のミーラさんから、デジタルに移行することについてチームミーティングを開くとの連絡をいただき、カメラを持っていって歴史的な会議を撮ることができました。
女性たちのエネルギーを感じました。 大きな困難に立ち向かおうとしているダリトの女性たちの姿を捉えることができました。

S: 24人の中のどの人をとっても成立する物語。リーダーのミーナさんには人生における成功、野心家のスニータさんには若い力、技術的に不安を持っていたシャラエカマさんの成長していく姿を見ることができました。

R:この新聞の前にもミーナさんは14年の蓄積がありました。庶民からは信頼されていました。印刷からデジタルに移行し、顔と名前が出て、さらに存在を知られるようになりました。 一方で、チェックされることにもなりました。目に見える形でインパクトがあります。

― 資金は?

S:: 長い間、インドの公的機関から支援を受けてきました。知られるようになって、主流のメディアとのタイアップもするようになりました。デジタルに移行して、5~6年。爆発的に飛躍しました。隣のビハール州にも活動を拡大したところです。

― 現場と家庭内のバランスをどう描こうと思いましたか?

R: 様々な要素をどう組み合わせるかという編集作業が撮影より大変でした。
女性たちの内面から外をみる形で編集しようと最初から決めていました。
4年分のフッテージがあります。撮影するたびに少しずつ編集をしました。2019年には、45時間のラフカットがあり、再編集を繰り返しました。
需要なポイントは、彼女たちの取材する内容が、彼女たちの生活や人生に密着したものでなければいけないことでした。

― タイトルの「燃やす」には、インドのサティの習慣も意識したのでしょうか?

R: 2017年に資金繰りするときから、このタイトルでした。自分たちの運命を書き換えようとしている姿、壊すことで未来の世代に大きな希望を与えること、男性たちの女性蔑視をひっくり返す力も描きました。完成した時にも、このタイトルでいいと思いました。

― 女性たちを取り巻く男性たちの姿も描かれていました。お二人はご夫婦ですが、それぞれの思いは?

R: 11年間、映画作家としてコラボレーションしてきました。性格は全く違うけれど、愛するものは共通しています。夫は大きなところ、私は細かいところを見ています。6年前に結婚しました。この映画は私たちの初めての子どもとも言えます。
撮影と別に、彼女たちと食事したり、クリケットを観たりすることができたのも、私たちがカップルだったからかもしれません。 現場では、喧嘩ばかりしていました。

― インド国内での言論の自由は厳しいのではないかと思います。製作に当たって、困難に直面されたことは?

S: インドではドキュメンタリーに対する支援は欠落しています。国外で資金集めをしないといけない状況です。
映画の中で描かれているのは、正義の為の闘いは、思いもかけないところで起こっていることです。困難の中で女性たちが立ち上がっている姿を見て、自分たちの未来を想像し直すことができるのではないかと思います。
良いジャーナリズムのメディアを見つけて応援してほしいです。

― 女性記者たちへの誹謗中傷に対抗するには、何が重要でしょうか?

R: 女性が声をあげようとすると伝統的勢力が抑えようとします。無視するのではなく、あえて反応し、対話のきっかけにし、異なる意見の人とどう対峙するかを考えてみるのがいいと思います。



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