東京国際映画祭 『クローブとカーネーション』 Q&A報告 (咲) 

アジアの未来
『クローブとカーネーション』
原題:bir tutam karanfil  英題:Cloves & Carnations
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『葬送のカーネーション』のタイトルで公開されます!
2024年1月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBIS GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
公式サイト:https://cloves-carnations.com/


監督:ベキル・ビュルビュル Bekir Bülbül
出演:シャム・ゼイダンŞam Zeydan (少女ハリメ)
   デミル・パルスジャンDemir Parscan (おじいさんムサ) 

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©FilmCode

冬の南東アナトリア。
太鼓の音と銃の音。小雪の舞う中、白い馬に赤いベールの花嫁が乗っている。
踊る人たち。料理が振舞われる。
ラジオからは、「今朝、難民が国境を越えようとして亡くなった」というニュースが流れている。
年老いた難民の老人ムサは孫娘ハリメを連れ、亡き妻の遺体の入った質素な棺桶を引きながら国境をめざしている。
質素な棺を荷台からおろすムサ。手伝ってくれた人に「シュクラン」とアラビア語でお礼をいう。
孫娘ハリメはトルコ語が出来て、肝心な話の時には通訳してくれる。
孫娘と二人で棺を引いて荒れた大地を行く。
なかなか乗せてくれる車はない・・・  言葉の通じない地で、手助けしてくれる人もいる。
トラクターに乗せてもらう。
棺はまずいといわれ、ハリメはモスクから段ボールを貰ってきておばあさんを入れる。
国境近くまでいくというトラックに乗せてもらう。
ハヴァという老婆。「人生は短いの。死は別世界に行くこと」とハリメに語る
グローブの絵が描かれた箱に入ったキャンディをもらう。
ムサ キャンディを嬉しそうに口にする。
グローブは歯の痛みを和らげるのよといわれる。
国境近くのチェックポイントで捕まり、牢屋に入れられてしまう。
「死体は国境を越えられない」と言われ、ムサはここで死体を埋葬すると断念する。
アラビア語の書かれた緑の布に覆われた棺に入れた遺体を埋葬する。
ハリメ、おばあさんの墓に赤いカーネーションを添える。
故郷に埋めてあげたいと鉄条網の向こうを眺めるムサ・・・・

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『クローブとカーネーション』Q&A
2022年10月28日(金)15:00からの上映後

登壇ゲスト:ベキル・ビュルビュル(監督/脚本/編集)、ハリル・カルダス(プロデューサー)
司会:石坂健治(東京国際映画祭「アジアの風」部門ディレクター/日本映画大学教授).
通訳:野中恵子さん

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石坂:初上映を観客席でご覧になりました。

監督(ベキル・ビュルビュル):メルハバ。とてもワクワクして興奮しています。世界の一つの端からやってきて、映画を共有することができ、とても嬉しいです。4年前に祖父を亡くしたことや、新聞で読んだことをもとに、妻と一緒に発展させて映画にしました。私の祖父もいつも生まれ故郷に行って死にたいと思っていました。私の最初に作ったドキュメンタリー『ブルグルの水車』も、老人と死に関するものでした。私の父も自分の土地に行って死にたいと言っていました。そうした老人たちの心の中の不安や心配を取り上げて、ストーリーを作り上げました。

プロデューサー(ハリル・カルダス):今日はワールドプレミアの私たちの映画をご覧いただきありがとうございました。

石坂:文化的背景、政治的背景、言葉がトルコ語と地元の言葉が出てきますので、そのあたりを簡単に教えてください。

監督:私たちの国には難民が多くいます。私たちの地区にも大勢いて、難民から見た物語を考えました。新聞で読んだニュースももとにしています。亡くなった親族を故郷に連れ帰りたいと行く途中で捕まってしまった方もいました。なぜ人々は自分の国や土地に戻りたいのか、その努力をなぜするのだろうか。元々のところに戻るために私たちはあるのだろうかと考えて、難民をベースにした物語を考えました。

石坂:シリア難民でしょうか?

監督:そうですが、シリア難民だけでなく、今、私たちの国には、アフガニスタン、ウクライナ、ロシアなどたくさんの難民の方がいます。それを明らかに示そうとしたわけではありません。政治的な材料にしようとは思っていませんでした。世界中の難民について、他の国でも同じことがいえるということをテーマにしたいと思ったのです。

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*会場から*
―(男性)ラストに近いシーンで、警察に捕まっている時、少女がミルクをもらいますが、飲まずに落としてしまいました。印象的だったのですが、あのシーンの意味は?

監督:ミルクと子供は、二つとも純粋さの象徴です。世界中どこでも同じです。難民になって警察に捕まってしまうという状況では、純粋さが失われてしまいます。

―(女性)お棺を見続ける映画を初めて観ました。ロードムービーというとキラキラして未来があるのに、どうなるのだろうとドキドキしました。監督として、これだけは持って帰ってほしいというメッセージがありましたら教えてください。

監督:内面のことを問いただすことを考えて作り上げた映画でした。旅というのは自分の精神と一つになっているものです。私たちは母体から生まれ子どもになり、成長して老人となり、やがて亡くなります。その旅路でもあります。自分たちが持っている身体というのは、運ばなければならない義務があります。これをロードムービーに結び付けました。

―(男性)とても役者の表現が素晴らしかったです。キャスティングと現場でどのような演出を心がけていたのか教えてください。

プロデューサー:キャスティングには長い時間をかけました。とても大変でした。撮影前に撮影地区に行き、シリア人の難民を見つけました。他にも、いろいろな人物を見つけました。少女役のシャム・ゼイダンは、あの地区に住んでいるシリア人です。小学校でトルコ語を学んでいます。長い間、接してみて、彼女の俳優性も見出しました。おじいさん役は、マイナス20度のところで演じることのできる人を探すのが大変でした。デミル・パルスジャンさんは70代で、彼の手振りや、ちょっとした表情が素晴らしかったので、彼なら出来ると信じて採用しました。

石坂:本作は出来上がったばかりですが、彼らは完成作品をまだ観ていないのでしょうか?

監督:はい、まだです。

石坂:観る機会があるといいですね。

監督:トルコでのプレミアの時に観ることができると思っています。

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報告:景山咲子



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