東京フィルメックス 鑑賞作品短評です (咲)

東京フィルメックスの行動記録を書くのがすっかり遅くなりました。
東京国際映画祭と重複・連続しての開催、やっぱりしんどかったです・・・
実際、集客率にも響いたと感じました。


10月29日(土)
☆14:50 - 16:55 東京フィルメックス 開会式+ 『ノー・ベアーズ』(パナヒ監督/イラン)
トルコ・イスタンブルを舞台に、ヨーロッパに出国を試みるイラン人夫婦を描いた作品を、トルコ国境に近い村に滞在して、リモートで指示を出すパナヒ監督。自由を求める人たちの姿が、この7月に収監されてしまったパナヒ監督の思いに重なりました。
(本作については、公開が決まっていますので、公開前に詳しく紹介したいと思います。)


11月2日(水)
フィルメックスを優先して、東京国際映画祭クロージングの取材は暁さんにお任せ。
イラン映画が2本とも受賞したので、クロージングの取材に行きたかったです・・・
(同時期開催がうらめしい・・・と、しつこい?)

★12:15 - 14:07『地中海熱』 ☆学生審査員賞
監督:マハ・ハジ
パレスチナ、ドイツ、フランス、キプロス、カタール / 2022 / 108分

上映前にマハ・ハジ監督のビデオメッセージ。(女性監督でした!)

イスラエルのハイファで暮らすパレスチナ人のワリード。小説家を目指して、銀行を辞め家にいる。娘ヌールと息子シャムスの学校への送り迎えはワリードの役目。ある日、学校からシャムスが腹痛を訴えていると呼び出される。病院の女医から「地中海熱」だと診断される。隣に越してきた男ジャラールと出会いは悪かったが、いつしか親しい関係になる・・・
シャムスが毎週火曜日に具合が悪くなると娘から聞かされ、ワリードが息子に問うと、火曜日の地理の先生が、エルサレムはイスラエルの首都だというので、パレスチナの首都だと言い返したところ笑われたというのです。「地理も歴史もパパが先生に教えてやる」といきまくワリード・・・

カンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミア上映。最優秀脚本賞受賞。


★15:10 - 16:55『ダム』 ☆スペシャル・メンション
監督:アリ・チェリ
フランス、スーダン、レバノン、ドイツ、セルビア、カタール / 2022 / 80分/
ナイル川のダムのほとりの村で、泥と水でレンガを作る男。夜になると、沙漠で不思議な泥の建造物を作っている・・・。
30年近く独裁体制を敷いてきたオマル・アル=バシール大統領に対する国民の抗議運動が盛んになった2019年頃が舞台。
主人公の眼力が鋭く、ちょっと不思議な物語でした。
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アリ・チェリ監督

★18:00 - 20:42『Next Sohee(英題)』 ☆審査員特別賞
監督:チョン・ジュリ
韓国 / 2022 / 138分 / 配給:株式会社ライツキューブ

女子高生のソヒは、学校の推薦でコールセンターの実習生として働き始めるが、自殺してしまう。労働環境や、推薦した学校にも問題があったのではと刑事が調べ始める・・・
少女が自殺した後、ペ・ドゥナ演じる刑事が登場。ちょっとぶっきらぼうだけど、少女の気持ちに寄り添おうとする姿がよかったです。
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上映後のQ&Aにチョン・ジュリ監督が登壇。ペ・ドゥナに演じてほしいと願いながら脚本を書いたと明かしました。
カンヌ映画祭批評家週間クロージング上映作品。


11月3日(木・祝)
★10:15 - 13:07『石門』
監督:ホアン・ジー&大塚竜治
日本 / 2022 / 148分/

20歳のリンは、彼から学費を出してもらってフライトアテンダントの学校に通っていたが、予期せず妊娠してしまう。子供を持つことも中絶も望まなかったリンは、診療所で死産の医療訴訟に巻き込まれている両親を助けるために、自分の赤ん坊を提供することにする・・・
ヴェネチア映画祭ヴェニス・デイズ部門でワールドプレミア上映。
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ホアン・ジー監督&大塚竜治監督

両親役は、ホワン・ジーさんのほんとのご両親。家族ぐるみで作られた映画です。今回は、都会が舞台で、前作とはまた違った雰囲気の中で女性の思いが語られていて、とても心に沁みました。

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『フーリッシュ・バード』(2017年)がアジア・フォーカス福岡映画祭で上映された折に、サイン会のテーブルの端っこでお絵かきしていた小さなお嬢ちゃんが、かなり成長されました。Q&Aで、ホアン・ジーさんが、娘になぜ産んだかと聞かれ、その答えを映画にしたと語り、舞台の裾に娘の千尋さんが一瞬登場しました。カメラが間に合わず、その姿を撮ることができなかったのですが、上映後、ロビーで大塚さんと千尋さんのツーショットを撮ることができました。5年ぶりの再会でした。



★14:10 - 17:09『同じ下着を着るふたりの女(原題)』
監督:キム・セイン ( KIM Se-in )
韓国 / 2021 / 140分 / 配給:Foggy
2021年10月に初上映された釜山映画祭でニューカレンツ賞を受賞。

シングルマザーの母親スギョンは、娘イジョンにいつも高圧的な態度だ。温和なイジョンは口では反発しないが、恨みが溜まっている・・・
母スギョンは、これでもかという位、暴力的な言葉を娘に浴びせます。演じた女優さん、凄い!
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キム・セイン監督の長編デビュー作。
上映後、キム・セイン監督、イジョンの友人役チョン・ボラムさん、撮影監督のムン・ミョンファンさんが登壇し、Q&Aが行われました。


11月4日(金)
★10:10 - 12:00『自叙伝』 ☆最優秀作品賞
監督:マクバル・ムバラク
インドネシア、フランス、シンガポール、ポーランド、フィリピン、ドイツ、カタール / 2022 / 116分
ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。国際映画批評家連盟賞受賞。

1990年代の軍事独裁体制化のインドネシア。
18歳の青年ラキブは、刑務所に入っている父に代わって、邸宅の管理をしている。主の元将軍プルナが突然帰ってくる。プルナは地元の首長選挙に立候補し、ラキブは選挙運動を手伝うことになる・・・
独裁体制化の張りつめた空気感にぞくぞくしました。


★13:00 - 14:56『ホテル』
監督:ワン・シャオシュアイ
香港 / 2022 / 112分
コロナの感染が始まった2020年の春。タイ、チェンマイのホテルに足止めされた宿泊客たち。ソヴァは20歳の誕生日をこのホテルで迎えるべく母と共に来ていた。外出を禁じられ、中庭のプールで泳いでいたソヴァは、中年男性と言葉を交わすようになる・・・

『在りし日の歌』のワン・シャオシュアイ監督が実際に2020年の旧正月を過ごしたホテルを舞台に描いた人間模様。
トロント映画祭でワールドプレミア上映。


★15:50 - 17:50『ソウルに帰る』☆審査員特別賞
監督:ダヴィ・シュー
ドイツ、フランス、ベルギー、カタール / 2022 / 116分 /
韓国で生まれ、フランスで養父母に育てられた25歳のフレディ。彼女は初めて韓国に降り立ち、実の両親を探し始める・・・
カンヌ映画祭「ある視点」部門で上映


★18:50 - 20:43『アーノルドは模範生』
監督:ソラヨス・プラパパン
タイ、シンガポール、フランス、オランダ、フィリピン / 2022
国際数学オリンピックでメダルを獲得し、学校より「模範生」の表彰を受けたアーノルド。ある日、彼は大学入試で学生のカンニングを助ける地下ビジネスに加担してしまう。
ソラヨス・プラパパンの長編デビュー作。
ロカルノ映画祭新進監督コンペティション部門でワールドプレミア上映
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上映後にソラヨス・プラパパン監督が登壇。Q&Aが行われました。
主人公アーノルド役は、タイ語と英語を流暢に話せることが条件で、キャスティングは難航。やっと見つけたのは演技経験のない青年。ヌーボーとした雰囲気が面白いアーノルドだったのですが、演技の勉強はするなと指示して撮影に臨んだそうです。

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コンペティション9作品のうち、観客賞を受賞した日本映画『遠いところ』を除く8作品を観ることができました。ほぼ納得の受賞結果でした。『石門』にも賞が欲しかったです。


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