SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 『国境を越えてキスをして!』

国際コンペティション 観客賞
国境を越えてキスをして! 原題:KISS ME KOSHER  英題:Kiss Me Before It Blows Up

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©Fireglory Pictures GmbH

監督:シレル・ぺレグ
出演:モラン・ローゼンブラット、ルイーゼ・ヴォルフラム、リヴカ・ミカエリ、イリット・カプラン、ジョン・キャロル・リンチ
2020年/ドイツ/105分
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl04.html

*物語*
恋多きユダヤ女性シーラ。ついに出会った理想の恋人ドイツ人のマリアが、赤いハートの風船を持ってテルアビブにやってくる。道の真ん中でキスする女性二人をみて、正統派ユダヤの男が罵倒しながら通り過ぎる。シーラの弟リアムは、学校でユダヤやパレスチナなどをテーマに映画を撮る課題を与えられ、ユダヤ人とドイツ人のカップルは格好の題材だと喜び勇んでカメラを向ける。シーラはマリアと結婚するつもりだが、両親に話す前に、ホロコーストを生き抜いた祖母にまずマリアのことを認めてもらいたい。エルサレムで暮らす祖母に会いにいく。その祖母の恋人は実はパレスチナ人だ。やがて、マリアの両親がドイツからやってくる。マリアの母は、祖父と両親がナチの信奉者だったことを打ち明ける・・・

ユダヤ人とドイツ人、ユダヤ人とパレスチナ人という歴史的に確執のある民族のカップル、それに加えて同性愛という、恋を実らせるには大きな壁。これをコメディタッチで描いて、壁を吹き飛ばさんばかりの物語になっています。恋多きシーラの元カノが何人かマリアの前に現れたり、弟リアムのおふざけが過ぎたり、ちょっとドタバタの感も。パレスチナ人の恋人がいる大ママのキャラも凄味があります。
本作は、制限視聴回数500回に達して、映画祭会期内に配信終了するという人気でした。
そして、観客賞受賞! (実は、私はちょっと引きました・・・)



◆シレル・ぺレグ監督インタビューより
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公式サイト動画はこちら

タイトルについて
原題は、『KISS ME KOSHER』ですが、「コーシャ(ユダヤの戒律・慣習に従った、清浄な食べ物等)」を日本語にするのは難しいので、邦題は別に考えたことを映画祭事務局から伝えられた監督。「いいタイトルね!」とまず一言。
「売れるタイトルを配給会社が考えます。本作は古典的なラブコメではないので、タイトルによってはミスリードしてしまいます。
私自身レスビアンなので、私にとって、LGBTQの要素は大事です。一般的でないと思われる私の人生を、普通であることとして描きたいと思いました。ジェンダー、宗教などいろいろなことが混ざっているのが、この映画です。笑いによって人間は救われます。」

本作を作った思い
「ホロコーストは過去のことではなくて、現在も直面することです。イスラエルでも、ドイツでも。いかに現代を生きる人が影響を受けているのか。過去のことに敬意を表しつつ、未来に向かって避けずに問いかけることも必要です。やさしさとユーモアを持って接すれば、問題を解決できるのではと思います。」


◆イスラエルでのLGBTに対する状況
シーラを演じたモラン・ローゼンブラットは、2018年の東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」で上映された『赤い子牛』で、明るく行動的な少女ヤエルを演じていて、やはり女性どうしで淡い恋心を抱く役柄でした。
『赤い子牛』の上映後のQ&Aで、ツィビア・バルカイ・ヤコブ監督がイスラエルでのLGBTに対する状況について下記のように語っています。

「テルアビブでは、非常にオープンです。その他の地域は、まだまだ古い習慣が根強く残っていて、宗教家の影響も強く、タブーがあります。宗教的なコミュニティの中でも、同性愛者の方たちが認めてもらおうと活動を始めているケースもあります。まだまだ始まったばかりです」

『国境を越えてキスをして!』の中でも、シーラの母が「レスビアンは病気扱いね」というと父が「最近までは病気扱いだった」という会話がありました。少しずつ社会が変わってきているのを感じます。

東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」『赤い子牛』10/27 Q&A (咲)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/463395891.html

(景山咲子)

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