イスラーム映画祭6 ★インド映画『青い空、碧の海、真っ赤な大地』

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南インド・マラヤーラム語映画
『青い空、碧の海、真っ赤な大地』★日本初公開
原題:Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi
英題:Blue Skies, Green Waters, Red Earth
監督:サミール・ターヒル Sameer Thahir
2013年/インド/137分
言語:マラヤーラム語 / 英語 / ヒンディー語 / オリヤー語 / アッサム語 / ナガ語 / タミル語 / テルグ語 / ベンガル語

上映前に「チケットが10分で売り切れました」とイスラーム映画祭主宰の藤本さん。インド映画人気、根強いです。
インド南西のケーララから北東のナガランドまで4800キロを旅する物語で、多言語国家インドらしく、これだけの距離を移動するので、9つの言語が出てきます。藤井美佳さんにお願いして、すべて違うカッコにしてもらったとのこと。足りなくなって、ベンガル語の歌はカッコなし。

*物語*
ケーララ州北部カリカットに住むムスリムの青年カシ。愛する女性アシが突然姿を消し、バイクで彼女の故郷ナガランドまで探しにいく旅に出る。一人で行くはずが、親友スニがついてくる。4800キロ離れたナガランドまでの長い旅。まずはカルナータカ州のIT産業の町バンガロールへ。インド東海岸へ出て北上中の夜道で強盗に襲われ、バイカー集団に助けられた二人は誘われるままにプリーの海辺に行く。カシはそこでサーファーの女性イシタと出会い惹かれあうが、アシのことを打ち明け、再び旅立つ。途中、道に迷い、山中の先住民の集落で泊めてもらうことになる。村の長ビマルから、この地で地下資源が見つかり、大企業が土地を搾取しようとしていることを聞かされる。村を出て大都市コルカタで数日滞在し、さらに北上。アッサム州から北東7州に越えるあたりでムスリムを標的にした暴動に遭遇する。カシはスニと別れ、いよいよ一人でナガランドを目指す。教会で祖母と一緒に暮らすアシとついに再会するが、祖母からアシの追手が迫っているので逃げろと言われる・・・


「青春ロードムービー」と紹介されていたので軽いノリを想像していたら、多様なインド社会を背景にした重厚な作品でした。政治的要素もあって、上映後の安宅直子さん(編集者/インド映画研究)のお話を聞いて、この映画の複雑な背景をようやく少し理解することができました。

2/21(日)10:00からの上映後トーク
《多宗教、他民族、多言語を体感するインドの旅》
【ゲスト】安宅直子さん(編集者/インド映画研究)

今は有名になったサミール・ターヒル監督のデビュー作。
おしゃれを追求した人なので、ケーララならTシャツで済むところ、ジージャンを着せたりしている。
カシとスニの乗るロイヤルエンフィールドのバイクは、若者たち憧れのインド産バイク(元の英国会社はつぶれている)。入手できるのは、IT系の人などある程度裕福な層。

二人が世話になる山奥の先住民。
インド北部:アーリア人、南部:ドラヴィダ人 それよりも前からいるのが先住民で、インドでは指定部族。
文明の及ばない僻地で、文明の利器と縁のない暮らしをしている人たちが多い。
不可触民(ダリト)と共にインドの最底辺。
住んでいる地域に鉱物資源が発見されると追い立てられる。

この先住民の村の長ビマルは、ベンガル人のインテリ階級出身。かつては共産主義者で、今はひっそりと山奥の先住民の村で暮らしている。
インドで毛沢東主義派の共産党(マオイスト)ができたのは、2004年。

インド北東部8州の人たちは、ほかのインドを「本土」と呼ぶ。
かなり多くの人たちが、本土に学生や出稼ぎとして出ている。
ケーララ州にも、北東部の人が多く出稼ぎに来ている。
一方、ケーララの人たちはドバイなどに出ている。
主役のカシもドバイ生まれ。

インド北東部8州のうち、シッキムはほかと違い、シッキムを除く7州を「セブンシスターズ」と呼ぶ。
北東部の丘陵地帯の部族社会は、ほとんどがシナやチベット族。
宗教はアニミズムかキリスト教。
ナガランドは首狩りで有名で、落ち着いていない証拠。
ナガランドは、85%がキリスト教。
(この地域にキリスト教徒が多いことは、2018年に公開された『あまねき旋律(しらべ)』を参照ください。
シネジャ作品紹介 
監督インタビュー 

ナガランドでは、長年、独立運動をしている。(1947年のインド独立以前から)
鎮圧のためのアッサムのライフル部隊は、アッサムの人たちではなく、本土から集められた人たちで構成されている。
アシの父親は、ムンバイ出身のマラーター人で、ライフル部隊に所属していた為、その血を引くアシは狙われている。

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もっともっと詳しい解説をしてくださったのですが、この程度の報告でどうぞお許しください。この映画の複雑な背景がやっとわかったので、機会があれば、ぜひもう一度観たいです。

景山咲子



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