イエメン人監督による、初のイエメン国内で商業公開された映画!
2/20(土)12:30からの上映前に、イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんより、本作は映画産業のないイエメンで、テレビ局の若い人たちによって作られた映画との紹介がありました。映画館もないイエメン。2017年から2018年にかけて、結婚式場で公開され、イエメン中の人が観てロングラン。アラブ諸国やヨーロッパ諸国でも上映されています。
昨年、イスラーム映画祭5で上映された『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』もイエメン人監督による作品ですが、イエメン国内では上映されていないので、『結婚式、10日前』がイエメン国内で初めて商業公開されたイエメン人監督による映画となりました。
昨年のイスラーム映画祭で上映したかったのですが、先方がのんびりしていて間に合わなかったとのことです。
『結婚式、10日前』原題・英題:10 Days Before the Wedding
監督:アムルー・ガマール Amr Gamal
2018年/イエメン/121分/アラビア語
イエメン南部の港町アデン。
マァムーンとラシャーは3年前に結婚する予定が内戦で延期になり、ようやく10日後に控えた結婚式の準備に大忙し。そんな最中、マァムーンの叔母が離婚して出戻り、新婚生活をおくる予定だった実家の部屋を明け渡す羽目に。家財道具を家が見つかるまで預けるものの、がめつい老女にしっかり保管料を取られる。ラシャーには内緒にするつもりが、ばれてしまう。
一方、ラシャーも内戦で家が壊され、父の従兄弟サリームの世話する家に仮住まいしている。内戦に翻弄され働けなくなった父にかわって、ラシャーが一家の大黒柱だが、稼ぎの半分は父のカート(嗜好品)代で消えてしまう。
二人で新居を探しに行くが、階段をかなりあがった安い家賃の家で妥協するしかない。結婚式の費用も切り詰めようと、あれこれ算段する・・・
踏んだり蹴ったりの状況が、コメディー仕立てで描かれているのですが、イエメン社会の大変な状況もずっしり伝わってきました。
結婚式場のキャンセルも成立して、ほっとしたところで久しぶりの外食。二人の幸せそうな食べっぷりに、思わず「よかったね」と言いたくなりました。
なんだか情けないマァムーンと違って、ラシャーは機転を利かして物事を解決していきます。逆境の中では、女性のほうがたくましく生き抜くことができそうです。
父の従兄弟のサリームは二人目の妻にラシャーを迎えたいという下心があって、何かと差し入れを持ってやってきます。その眼付のいやらしいこと!(名役者です!) そんなサリームのことも、上手に交わすラシャー。あっぱれです。
内戦で疲弊し、「世界最悪の人道危機」が続くイエメン社会ですが、そんな中でもユーモアを忘れず、タフに生きている人たちに監督がエールをおくった映画です。
挿入歌でエンドロールでも流れた切ない曲が胸に響きました。映画では、しっかり歌詞の訳も付けてくださっていました。
「Mother of the Poor/Umm-ul masakin」という作曲・歌:サーレム・ファダーク Salem Fadaq)の曲だと、先輩の麻田豊氏がyoutubeを見つけてくださいました。
https://youtu.be/rRIvUrKUiT4
映画の場面も楽しめます。ぜひお聴きください。
この記事へのコメント