例年、11月下旬に開催されていた東京フィルメックスですが、今年は東京国際映画祭と連携し、いつもより早い10月30日(金)~11月7日(土)の日程で開催されました。
コロナ禍で、東京国際映画祭ではコンペティションをやめて、観客賞のみとなりましたが、東京フィルメックスでは、例年通り、12作品のコンペティション作品の中から受賞作を選定し、7日に授賞式が行われました。
司会:レイチェル・チャンさん(J-WAVE)
◆第21回東京フィルメックス受賞結果◆
最優秀作品賞:『死ぬ間際』ヒラル・バイダロフ
審査員特別賞:『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』池田暁
スペシャル・メンション:『Pierce』ネリシア・ロー、『KANAKO』北川未来
観客賞:『七人楽隊』アン・ホイ、ジョニー・トー、ツイ・ハーク、サモ・ハン、ユエン・ウーピン、リンゴ・ラム、パトリック・タム
学生審査員賞:『由宇子の天秤』春本雄二郎
New Director Award:『熱のあとに』(日本/山本英監督)
New Director Award 審査員特別賞:『まどろむ土(仮)』(日本/金子由里奈監督)
タレンツ・トーキョー・アワード 2020:『Oasis of Now』(マレーシア/チア・チーサム)
タレンツ・トーキョー・アワード 2020 スペシャル・メンション:『Pierce』(シンガポール/ネリシア・ロー)
タレンツ・トーキョー・アワード 2020 スペシャル・メンション:『KANAKO』(日本/北川未来)
◎授賞式
発表された順に報告します。
◆New Director Award
東京フィルメックス 特別協賛のシマフィルムによって設けられた、若い映画製作者を対象とした新しい部門。シマフィルム 田中誠一さんより発表が行われました。
New Director Award最終選考選出者11名の中から、New Director Awardには、『熱のあとに』の山本英監督が選ばれました。
山本英監督:誰かの側にいること、いれないことを描いた脚本です。イナウォンさんと二人で紡いだ企画です。(左がイナウォンさん)
New Director Award 審査員特別賞
『まどろむ土(仮)』
金子由里奈監督
◆タレンツ・トーキョー
今年のタレンツ・トーキョーは、11月2日~7日の6日間、オンラインで実施され、アジア各国の15名が参加。パク・キヨン監督をはじめとする4人のメイン講師のほか、黒沢清監督や是枝裕和監督のマスタークラスが開催されました。
タレンツ・トーキョー・アワード 2020:『Oasis of Now』
マレーシア チア・チーサム監督
「困難な時期にオンラインで開催を可能にしてくださり、ありがとうございます。多様な仲間から多くを学びました」
◆観客賞
『七人楽隊』香港、2020年
監督:アン・ホイ、ジョニー・トー、ツイ・ハーク、サモ・ハン、ユエン・ウーピン、リンゴ・ラム、パトリック・タム
市山さんが7人の監督の名前を思い出しながらあげたのですが、「誰か忘れてますね」との言葉に、会場から「サモ・ハン!」と声があがりました。10月17日のチケット売り出しの時にも、真っ先に売り切れた人気作です。
ジョニー・トー監督が代表してビデオコメントを寄せられました。
◎コンペティション 各賞発表
各賞発表の前に、プログラムディレクターの市山尚三氏より挨拶。
「コロナ禍の中、連日会場に足を運んでいただいた皆様に感謝申しあげます。今年の4月の時点では開催できるかどうかが微妙でしたが、リアルな開催にこぎつけることができたのは、サポートしてくださった皆さまのお陰です。東京国際映画祭との共催も手探り状態でした。上映が重なってしまったとの声もありますが、日本映画界を盛りあげていく為に今後も続けていきたいと思っています」
また、一部の作品をオンライン上映することが発表されました。
11月21日~30日の期間限定で、上映作品等詳細は公式サイトで確認ください。
東京フィルメックス 公式サイト
★オンライン特設サイト 11月21日よりアクセス可能
◆学生審査員賞:『由宇子の天秤』
学生審査員:常間地裕(多摩美術大学)、千阪拓也(日本大学芸術学部)、田伏夏基(明治大学)の3人が登壇し、学生審査員賞を発表しました。
春本雄二郎監督「釜山国際映画祭でも受賞(ニューカレンツ部門 最高賞ニューカレンツアワード)しましたが、オンラインでも授賞式をしていません。 Winerには、違和感があります。勝者というけれど、負者が存在するのか? 世の中、敵か味方か、白か黒かと単純に二極化することが加速化し、良い未来が築けるのか? 『由宇子の天秤』は、正しさについて問う内容です。今、私たちに必要なのは、見えている世界が都合の良いものに最適化されていることに気づくこと。その外に手を伸ばせる力が映画にあると信じています。学生審査員賞は、これからを担う人たちからいただいたもの。若い世代に映画作りの指針になるよう頑張っていきたい」
【コンペティション審査員】
万田邦敏(審査委員長:日本/映画監督)
クリス・フジワラ(米国/映画評論家)
坂本安美(日本/アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
エリック・二アリ(米国/プロデューサー)
トム・メス(オランダ/映画評論家)
◆審査員特別賞『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
池田暁監督 「最優秀作品は何かな、もう1回呼ばれるといいなと思っています。期間中、ずっと映画を観ていました。いい作品がたくさんあったので、また日本で上映されるきといいと思います。このような中で開催してくださったことに感謝します」
◆最優秀作品賞『死ぬ間際』
審査委員長 万田邦敏監督:「一人ぼっちの人間がこの世界とつながるには何が必要か?神話的で重層的、中央アジアのとんでもない大自然。映画監督だったら誰でも撮ってみたい風景、そしてユーモアが描かれていました。人と人がつながるには愛が必要という単純なことに行きつくのですが、そこに行きつくまでをみごとに描いていました」
ヒラル・バイダロフ監督からのビデオメッセージ:
「選んでくださって嬉しいです。アゼルバイジャンの映画を初めて観た方もいらっしゃると思います。映画祭の皆さま、ありがとうございました」
★『死ぬ間際』ヒラル・バイダロフ監督とのリモートQ&Aの模様は後日お届けします。
最後に行われた受賞者記念写真も、ソーシャルディスタンスを保って行われました。
☆こちらに掲載しきれなかった写真も含めて、下記のアルバムを作成しています。
facebookアルバム「第21回東京フィルメックス 授賞式」
https://www.facebook.com/cinemajournal/photos/?tab=album&album_id=1340432292989793
☆東京フィルメックスを終えて☆
コロナ禍の中、例年同様の作品を揃えてリアルな上映を行い、外国からのゲストの来日が叶わない中、上映後にリモートでQ&Aを行うなど、最大限の努力をしてくださったことに感謝です。
日程を早めた為か、会期中、平日の半分以上の会場は、朝日ホールではなくTOHOシネマズ シャンテとなり、定員が朝日ホールより少ないため、作品によっては満席になって入れない方もいたようです。
今後も東京国際映画祭との連携を続けるとの市山さんの言葉がありましたが、同時期開催で、鑑賞作品を絞らざるをえなくて、究極の選択を迫られました。できれば、これまで同様、違う時期に開催してほしいと切に願います。(景山咲子)
報告:景山咲子 写真:宮崎暁美、景山咲子
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