イスラーム映画祭5 『銃か、落書きか』西サハラの実情  (咲)

モロッコの侵攻に非暴力で闘う西サハラの人たち
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『銃か、落書きか』
原題:Rifles or Graffiti
2016年/スペイン/52分/ スペイン語・ハサニーヤ語・英語
監督:ジョルディ・オリオラ・フォルク / Jordi Oriola Folch

1975年にスペインからの独立過程でモロッコに侵攻され、領土の大半を占領され続けているアフリカ北西の「西サハラ」。
武力闘争で占領者モロッコに圧力をかけることを望む若者もいる中、活動家アミーナートゥ・ハイダルはあくまで非暴力で闘おうとメディアチームを結成し、「西サハラ」の実態を世界に発信する。現地で命懸けの抵抗運動を続けるサハラーウィたちの焦燥と葛藤を描いたドキュメンタリー。

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「極秘に撮影された映像」とまず掲げられる。

1975年以来、モロッコに支配されている西サハラ。
メディアチームは、隠れて撮影。見つかると捕まる。
ジャーナリストは妨害され、助ける活動家も排除される。

アルジェリア内の難民キャンプの少女。
スペインに行って、家や国があるのがわかった。

民族衣装の女性が壁にスプレーで「国連は西サハラ占領をやめさせろ」と大きく書く。

1884年 スペイン領に
1975年 スペインのフランコ将軍が亡くなり、モロッコが侵攻してくる

イスラエルとフランスの案で壁が作られる
モロッコから50万人が入植。内、20万人が軍人
人口の3割のサハラーウィ。非暴力の文化を維持したい。

メディアグループの「スナイパー」と呼ばれる男
隙を見て撮影するのが上手い

1991年 停戦。住民投票するといいながら、いまだに行われていない。

少女の頃に拷問を受け、活動するきっかけになったと語る女性。
占領反対の落書きをする。

デモ参加者を逮捕。
沙漠に埋められた人も多数。

16年投獄されていた女性。
毎日拷問。一日に5分しか陽の光を見せてもらえなかった。

男性ダーダッシュ。死刑から終身刑に減刑。その後、赤十字に助けられる。

女性活動家アミネトゥ・ハイダル。若い時に空港でハンスト。活動を続けている。

ハサン・ナスーリア。スペインに亡命したメディアチームの男性。

2009年 沙漠の壁の前でデモ。「恥の壁」

恐怖に打ち勝つには、殉教者や闘っている人に思いを寄せる


◆3月19日(木)1時半からの上映後のトーク
《“恥の壁”の両側から――占領地と解放区、難民キャンプに暮らす西サハラの民》
【ゲスト】 岩崎有一さん(ジャーナリスト/アジアプレス)
公式HP: https://iwachon.jp/

西サハラ。何が問題かわからない人が多い。
観光でも入れる。

1995年 初めて訪れる。
実情がよくわからなかった。
この映画は情報量のつまったもの。

*西サハラ 2つの地域
海側:モロッコの占領地
砂の壁で分離。壁の内側のラスット解放区にサハラーウィが住む。
アルジェリアのケンドゥーフの南に難民キャンプ。

★前提1 誰がサハラーウィか?
遊牧の民  移動している。
顔立ち:モロッコ人との間に大きな違いはない。
ヨーロッパ風、アラブ風、サブサハラ風等 見分けられない。
モロッコでは、「南モロッコ」もしくは「サハラ」と呼ぶ。
サハラーウィは、「西サハラ」と呼ぶ。
「西サハラにようこそ」といわれれば、サハラーウィ。

アラビア語の方言 ハッサニアを話す
かつてモロッコの支配下にあった史実はない

★前提2 複雑ではない領土問題
1884年 スペイン領サハラが確定
1973年 ポリサリオ戦線結成
1975年 モロッコ 緑の行進で越境してくる
スペインが西サハラをモロッコとモーリタニアに割譲する密約。
スペインが依然施政国だが、スペインは領有を放棄。
モロッコの西サハラ領有を認める国はない。

地名の表記
アラビア語の表記に従ってスペインは表記。
モロッコはフランス語風に表記を変える。

★前提3  解決策は合意済み
1978年 モーリタニアはポリサリオと停戦
住民投票さえさせてくれれば解決する。

問題点は何か?
西サハラに入るジャーナリストは潜伏しなければならない。
入るのは簡単。モロッコはビザなしで入れて、モロッコから観光客としてバスに乗ればそのまま西サハラに入れる。
町に私服警官がいて監視している

入れない人たち
・人権団体
・弁護士、政治家の視察
・ジャーナリスト
実情を知られたくない

弾圧が続く日常。
声をあげると、直ちに政治犯として捕まる。
逮捕や収監はまだよい。私服警官に連れ去られ沙漠に捨てられる。運がよければ車が通りかかるなどして助かる。

デモ 「独立を!」では捕まるので、「仕事を!」と。
命がけのデモ。周りに外国人の目もあるので、その場で捕まることはない。
自宅に戻るところをつけられて逮捕されたりする。
デモをしたければ難民キャンプに行けと。

サハラーウィの行方不明の人たちの登録者 400名を超える

あおられる憎悪
入植者を利用
学校ではモロッコの地だったと教える。
入植をモロッコが貧困者に対して斡旋している。仕事と住居を与えて、支援金も出している。
占領地では公務員の給与はモロッコの倍。
難民キャンプに暮らすサハラーウィの中からめぼしい人を選んで、お金を使って西サハラに住まわせることもある。

ダハラの町。入植が進む。
西サハラにはインフラも学校もない。
大学はモロッコに行くしかない。
仕事がない。資源もあるがサハラーウィには仕事を与えない。

事情を知らずに滞在すると普通に心地よい。
問題に気づかれてないことが問題。
メディアチーム以外にもグループがあって決死の覚悟で外部に伝える活動をしている。

45年続く難民キャンプ。
テントの中が全世界。キャンプで生まれた第二世代、すでに第三世代も。

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岩崎有一さんは、最後に、「上映してくれた藤本さんに拍手を!」とトークを締め括られました。
西サハラについては、地図の点線の意味するのは何だろうと思っていたものの、全く実情を知りませんでした。命がけで撮った本作を通じて、何が問題なのかがよくわかりました。そして、平和裏に解決することが難しいことも・・・
難民キャンプで暮らす少女がスペインに行ったことにより、普通の暮らしがどういうものかを知り、国家というものが存在することを知ったという言葉が痛かったです。
非暴力のデモに参加しただけで捕まった人たちが、刑務所にぎゅうぎゅう詰めで雑魚寝させられている様子にも涙が出ました。
西サハラの人たちが独自の文化を守りながら平穏に暮らせる環境の実現を願うばかりです。
沙漠の民にとって、もともと国境など無意味なものなのですから。

景山咲子






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