第15回大阪アジアン映画祭(OAFF2020)1(暁)

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第15回大阪アジアン映画祭(OAFF2020)が3月6日(金曜日)に始まりました。シネ・リーブル梅田、梅田ブルク7、ABCホール等の会場で15日(日曜日)まで開催予定。
大阪アジアン映画祭は「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに、アジア映画最新作のコンペティション部門をはじめ、インディ・フォーラム部門、特集企画など、多彩なプログラムでアジア映画の魅力を発信してきました。
今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、全ての舞台挨拶やサイン会の中止という過去にない状況の中、上映は予定通り開催されています。
シネマジャーナルからいつも参加するメンバーSさんは参加を断念。私も5日まで迷ったけど、ここで観ないと観ることができない作品の多さを考え行くことを決めました。

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オープニングでビデオ出演のトム・リン監督

オープニング作品は、林書宇(トム・リン)監督作、李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)主演、阿部寛出演のマレーシア映画『夕霧花園(原題)』。クロージング作品は、中川龍太郎監督、穐山茉由監督、安川有果監督、渡辺紘文監督作、松林うらら出演・企画の日本映画『蒲田前奏曲』。

最初に観たののは韓国映画の『君の誕生日』。金曜日の16時からということで、やはり観客はいつもよりだいぶ少なくて、新型コロナウイルスのは影響大きいと思いました。でもオープニングの『夕霧花園(原題)』は開始時間が18:45ということもあり、満席に近かったのでホッとしました。


●特集企画《祝・韓国映画101周年:社会史の光と陰を記憶する》
『君の誕生日』 Birthday 
3/6金 16:00 シネ・リーブル梅田
監督:イ・ジョンオン 出演:ソル・ギョング、チョン・ドヨン
2019年/韓国
2020年6月5日 ロードショー
公式HP

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2014年4月16日に起こったセウォル号の沈没事故。修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲となった。この沈没事故で犠牲になった遺族の思いを描いた作品。
この事故で息子スホを亡くし、息子への思いを胸に収め、日々の暮らしに追われる母スンナム(チョン・ドヨン)。謎の男のように登場する父親のジョンイル(ソル・ギョング)。長く家を留守にしていて、どこからか帰ってくるが居留守を使われ、家に入れてもらえない。娘のイェソルは父の姿を見ても始めは誰だかわからない。しかたなく妹の家に滞在し、そこから自分の家に通う。少しづつ娘のイェソルに寄りそいながら、妻の心を癒してゆく。長らく家に帰っていなかったらしい。どうも刑務所にいたよう。そして海外にもいて、息子が死んだ時に不在だったらしい。「必要な時にいなかった」と、いきなり離婚届けを突きつけられてしまう。息子が亡くなった日に父親としての役目を果たせなかったジョンイルは、家族に対して罪悪感を抱えている。
最初は拒絶していた妻も、父親の不在で家の電球の取替えやドアの不具合などがそのままになっていたところを直したりしてゆくうちに、妻も夫を受け入れてゆく。
被害者の会の人たちの誘いがあっても、息子の死を受け入れられなくて、そこに出向いていなかったスンナム。遺族の会が主催する息子の誕生会の開催にOKするジョンイル。しかたなく一緒に出かけるスンナム。息子の子供の頃しか知らないジョンイルにとって、成長した息子の姿が想像できず、すべてが見慣れない現実の中、家族と一緒にスホの誕生日を迎える。誕生会の話の中から息子の思い出が浮かび上がってきた。スンナムも受け入れられなかった息子の死と向き合う。家族だけでなく、故人を知る人々が共に記憶し、悲しみを分かち合うことが、それぞれの遺族にとってどれだけ生きていく上での励みになるかが描かれる。

『私にも妻がいたらいいのに』以来、18年ぶりに共演したソル・ギョングとチョン・ドヨン。息子を亡くした遺族の喪失感を満身の演技で熱演。イ・チャンドン監督のもとで経験を積んだイ・ジョンオン監督の長編デビュー作。監督自身がボランティア活動を通じて長い期間、遺族と接する中で生まれたそう。

あらためて、あの信じられないような事故のことが思いだされ、若い犠牲者たちに思いを馳せ、遺族の方たちは、その後いろいろな活動をしているのだと知った。誕生会をすることで、1年、また1年と、自分たちの子供は今も人々の心に生きていると確認し、それによって残った家族も少し救われた思いになるということが描かれていたけど、そこに至るまでのスンナムの苦悩ははかなり深いものがあった。

●オープニング作品 
夕霧花園(原題)
The Garden of Evening Mists
3/6金 18:45 梅田ブルク7
監督:林書宇(トム・リン)
出演:李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)、阿部寛、張艾嘉
2019年/マレーシア
提供:マクザム、太秦  配給:太秦

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マレーシア出身の作家、陳團英(TAN Twan Eng)の英文小説で、英ブッカー賞最終候補作にもなった「The Garden of Evening Mists」が原作で、旧日本軍に捕えられた経験のある女性と戦後出会った日本人庭師男性との恋物語でもある。
第二次世界大戦後、再びイギリスの植民地になったマラヤ(現マレーシア)では独立をめぐり動きが続いていた。ユンリン(李心潔)は、今は亡き妹の夢だった日本庭園を造るため、日本人庭師の中村有朋(阿部寛)を訪れ庭作りを依頼するが、有朋に断られてしまう。しかし現在造っている庭園“夕霧花園”で自分の見習いをしながら庭造りを学ぶのならと提案する。仕方なく見習いをすることにしたユンリンだったが、深い信念を持って庭造りに打ち込む有朋に惹かれてゆく。それから約30年たち、ユンリン(張艾嘉)は、必要にかられ、有朋の真実を知るために再び「夕霧花園」を訪れる。
監督は台湾人の林書宇。ユンリンの若い頃を演じるのはマレーシア出身で
香港・台湾映画界をメインに活動する李心潔(リー・シンジエ/アンジェリカ・リー)。30年後を演じるのは台湾出身で香港映画界で活躍してきて、最近は監督でも活躍している張艾嘉(シルヴィア・チャン)。ミステリアスで孤独な中村有朋を演じるのは阿部寛。
2019年11月に開催された台湾の第56回金馬奨では、作品賞、監督賞、主演女優賞をはじめとする9部門にノミネートされ、最佳造型設計賞を受賞した。

監督は台湾人だし、飛び交うのは広東語、英語、日本語とかなりグローバル。太平洋戦争中の日本軍の蛮行も描かれ、海外、特にアジアの当事国の視点から旧日本軍についての思いも描かれ、日本人としてはやはり直視しなくてはという場面もある。しかし、繊細で質素な日本の芸術や文化についても描かれている。

初日のオープニング、ゲストはビデオ挨拶だけで終り。やっぱりゲストなしというのはとても寂しい。東京からの映画仲間たちもこの日は誰も来ていなかったので帰ろうと思ったら、関西在住の友人がいたので、映画が終わってから梅田の地下街に。まだ21時前なのに、シャッターが閉まっているところが多く、開いているところを探す。やっと焼き鳥屋をみつけ、さっそく乾杯。再会を喜ぶ。今度の映画祭のこと。これからの作品への期待など話しながら焼き鳥を楽しむ。でも1時間もしないうちに閉店といわれ、そそくさと店を出た。それにしても金曜日の夜というのに、人もまばら。彼女と別れ、十三(じゅうそう)のホテルへ。

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