フランス映画祭2019横浜  『シノニムズ』

『シノニムズ』 原題:Synonymes
監督・脚本:ナダヴ・ラピド
出演:トム・メルシエール、カンタン・ドルメール、ルイーズ・シュヴィヨット
2018年/フランス・イスラエル・ドイツ/フランス語/スコープ/123分/R15+
★第69回ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞

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© 2018 SBS FILMS - PIE FILMS - KOMPLIZEN FILMS - ARTE FRANCE CINEMA

*ストーリー*

イスラエルからパリにやってきたヨアヴ。イスラエルの国籍を捨て、フランス国籍を取得しようと奮闘している。
広々とした空き部屋のバスタブで凍死しそうになっているところを、エミールとキャロリーヌのカップルに助けられる。
やがてイスラエル大使館の警備員の仕事に就くが、大雨の日、列を作る人々のために「国境を越えろ」と柵をあけ、皆を中に入れたことからクビになる。
「ヘブライ語の講師もしているしモデルの仕事もある」というが、カメラマンに裸になり自慰するのを強要される。「ヘブライ語で何か言って!」と指示され、「俺はここで何をしている?」とヘブライ語で叫ぶ。
国籍を取るために市民講座に通うヨアヴ。はたしてフランスは彼を救ってくれるのか?


国を捨てて、フランスに受け入れてもらいたいという思いが、ヨアヴの息づかいや吐き出すようなフランス語の単語の練習から、伝わってきました。
フランスが自国の狂気から自分を救ってくれると信じるヨアヴの姿を通じて、国籍とは? 母国語を捨てるということとは? と、様々なことを考えさせられる作品。

ナダヴ・ラピド監督にインタビューの時間をいただいていたのですが、上海で予定の飛行機に乗り損ねたとのことで、取材を断念。お聞きしたいことがいっぱいあったのに、ほんとに残念でした。

用意していた質問の一部をここに挙げておきます。

母国語を拒否するのは自分の一部を殺すのと同じという言葉がでてきました。 監督ご自身、パリに移住したのち、イスラエルに戻っていらっしゃいます。 この言葉は監督ご自身の経験からきているのでしょうか?

主人公ヨアヴの祖父がリトアニアから英領パレスチナに来た人物という設定でした。先に行った兄は自殺。家族はホロコーストで皆死んだとありました。
祖父は宗教学校の秀才だったけれど、国を出て、イディッシュ語を拒否し、もう一言も話さないと宣言。 これは、監督のお祖父さんの話でしょうか?

市民講座で、1905年は 国家と教会の分離の年と教えられます。
人の宗教も自分の宗教も話さない。教会、モスク、シナゴーグには税金を使わない。
宗教、神様はいない。税金は教育に使われる。 という説明があり興味深かったです。
メトロに乗り、イスラエルの歌を口ずさみながらメトロの中の乗客一人一人を覗き込む場面がありました。キッパを被りましたが、それ自体、フランスでは禁止行為なのではないでしょうか? (メトロが公共の場とすればですが)

ほかにもお聞きしたいことがたくさんある作品でした。


監督・脚本:ナダヴ・ラピド  プロフィール
1975年イスラエル、テルアビブ生まれ。テルアビブ大学で哲学を学び、卒業後に自国の徴兵に参加した後にパリに移住。イスラエルに戻り、サム・スピーゲル映画テレビ学校を卒業。初監督作品「Policeman」は2011年のロカルノ国際映画祭にて審査委員特別賞を受賞。「The Kindergarten Teacher」(14)は、カンヌ・批評家週間をはじめ、数多くの映画祭に出品された。2016年にはカンヌ・批評家週間の審査員も務めた。(公式サイトより)


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