中国映画祭「電影2019」 に行ってきました(暁)

『失踪、発見』『選ばれざる路』『アラ・チャンソ』

日中国交正常化45周年を記念して昨年開催され、今年で2回目の開催となった中国映画祭「電影2019」。今年の春節に中国で公開され大ヒットを記録している『ペガサス/飛馳人生』(初夏日本公開予定)や、日本公開された『草原の河』(15)のソンタルジャ監督の最新作『アラ・チャンソ(原題)』、中国版『101回目のプロポーズ SAY YES』で人気のホアン・ボー(黄渤)が監督・主演を務め、屋久島で撮影された『アイランド/一出好戯』など6作品が東京(3月6、7日)と大阪(3月9,10日)上映され、その中から3本観ることができたので紹介します。また、中国から俳優、監督など作品ゲストを招き、オープニングイベントやトークも行われた。

主催:文化庁、公益財団法人ユニジャパン、上海国際影視節有限公司
共催:国際交流基金

3月6日(水)角川シネマ有楽町
オープニングセレモニー+『失踪、発見』

オープニングセレモニー
中国映画祭「電影2019」のオープニングセレモニーが6日、角川シネマ有楽町で執り行われ、主催者の文化庁長官・宮田亮平氏や上海国際副総経理・王曄(ワン・イエ)氏、中国大使館中日大使・程永華氏、内閣官房副長官・西村康稔氏が登壇し、それぞれ日中国際共同制作の重要性、日中映画文化交流や新人監督の発掘の取り組みについてなどを語った。

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その後、『アラ・チャンソ』のソンタルジャ監督、『駐在巡査 宝音(ボヤン)』の柳島克己撮影監督とプロデューサーのフフバートルさんの3名がゲストとして登壇。舞台挨拶を行った。

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左から
柳島克己撮影監督、ソンタルジャ監督、フフバートルプロデューサー


日本でも公開された『草原の河』(15)のソンタルジャ(松太加/Songtaijia)監督は、『アラ・チャンソ』をもってきた..「これは私の3本目の作品ですが、デビュー作から新作まで3作がいずれも上海国際映画祭に出品することができ、それを通して東京国際映画祭(2015)にも参加することができました。とても光栄に思います」とコメント。

ソンタルジャ(松太加/Songtaijia)監督 HPより
1973年5月29日生まれ。「草原のチベット」ともいわれるアムド地方、行政区では青海省海南チベット族自治州の同徳県に生まれ、牧畜民の中で育つ。父に教えられた伝統的な仏教画"タンカ"を学ぶとともに、少年の頃に移動映画で見て以来、映画に憧れる。青海師範大 学の美術科で学んだ後、小学校の美術教師や美術館のキュレーターとして働き、その後、北京電影学院で学べる奨学金を受け、幼い頃から夢見た映画の世界に踏み出す。
2011年、初監督作『陽に灼けた道』を発表。自身の起こした事故で母を死なせてしまった青年の魂の道程を描いたこの作品は、世界中で高く評価され、バンクーバー国際映画祭、ロンドン映画祭、香港国際映画祭などで多数の映画賞を受賞した。長編第二作の『草原の河』を経て、今回の『アラ・チャンソ(原題)』を撮りあげた。
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『駐在巡査 宝音(ボヤン)』のフフバートルプロデューサーは、第26回東京国際映画祭(2013)で最優秀主演男優賞を獲得したプロデュース作『オルドス警察日記』(ニン・イン監督)に続き、2作連続で日本の映画祭に参加できる喜びを語り「今後両国の合作の機会は多くなってくるのではないかと思っています。私たち現場の人間は、現場で一生懸命映画を作り、日中合作の可能性が無限にあることを証明したいと思っています」と語った。
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また、同作の柳島克己撮影監督(北野武監督作品など数多くの日本映画に携わってきた)は、撮影に参加された経緯や撮影現場でのことを語り、僕は東京藝術大学で教えていますが、留学生の3分の1は中国から来た学生。学生レベルではもっと交流が盛んに行われています。日本映画界はますますグローバル化されている。むしろそういう方向に行くしかないのだと思っていますと語り、ますます支援と交流が進むことを期待しています」とまとめた。
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柳島克己(やなぎじまかつみ/YANAGIJIMA Katsumi) HPより
写真学校を卒業後、72年に三船プロダクションに契約社員として入る。82年からフリーの助手となり、87年に初めて映画の撮影を担当する。 『3-4x10月』『あの頃、いちばん静かな海。』『ソナチネ』ほか、北野武監督作品を16本担当。
その他に深作欣二監督『バトル・ロワイアル』、行定勲監督『GO』、滝田洋二郎監督『阿修羅城の瞳』、西川美和監督『ディア・ドクター』、『夢見るふたり』、西谷弘監督『真夏の方程式』、森義隆監督『聖の青春』などがある

『失踪、発見』 原題《找到你》
監督:ルー・ユエ(吕楽)
出演:ヤオ・チェン(姚晨)、マー・イーリー(馬伊琍)
ジャパンプレミア

作品内容
仕事に追われる弁護士のリー・ジエ(ヤオ・チェン)は娘のためにスン・ファン(マー・イーリー)というベビーシッターを雇った。 ある日家に戻ると、スン・ファンと娘が姿を消していた。二人を必死に探すリー・ジエだが、元夫の母親からは、元夫と娘の親権をめぐって争っていたので「偽装だろう」と非難の声を浴びせられ、警察からも疑いをかられ、心身ともに崩壊寸前まで追い込まれてしまった。 自力で二人を探し出す決意をするリー・ジエ。
スン・ファンが自身の身元を偽っていたことが発覚したことをきっかけに、驚愕の真実が次々と明らかになっていく。スン・ファンもまた、自身の子供のために必死に働いていたが、何をやってもうまくいかず、不運な生活を送っていた。
また、リー・ジエが現在扱っている裁判では、父親の側にたって親権を主張し、元妻から「なぜ?」と恨まれていた。そして彼女は自殺未遂を起こしてしまう。
3人の母親と子供をめぐる光景が交差し、それぞれの夫や周りとの関係などを巻き込んでゆく。はたして真相は? そして、リー・ジエの子供はどこに。それぞれの女性の立場を対比して、子供を思う母親のことを描く。そして子供にとっての幸せとは何かを問いかける。
フォン・シャオガン(馮 小剛)監督の作品で撮影監督として知られるルー・ユエ(吕楽)がメガホンを取ったサスペンス映画。
【中国公開:2018年10月5日/第21回上海国際映画祭コンペティション部門ノミネート

この作品は、親権について、そして夫婦の関係、親子の関係、貧困と格差、家族の中の女性の立場について描いた作品だった。子供のために必死になる女性たちが描かれていたけど、それにしても、子供は女性が育てるべきという視点にたった作品のようにも思った。

上映後、この作品でリー・ジエの子供を連れ出してしまうスン・ファン役を演じたマー・イーリーさんがゲストで登場。スン・ファンはすべての不幸、深い悲しみを背負ったような女性だったが、現れたマー・イーリーさんは、映画の時と全然違う溌剌とした女性だった。あまりの違いにびっくり。
こういう役をやったことについて聞かれると、「これまではこういう役とは反対に元気溌剌とした女性、自立した女性の役ばかり20年近く演じてきたので、こういう役もやってみようと思い引き受けた」と語り、役作りについては、「まわりにいる女性たちを観察し、彼女の心に沿って演じた。社会の片隅に生きる不運な女性の立場にたって、彼女と一緒に旅をするように演じた」と語った。
そして、次の日に上映される『選ばれざる路/未択之路』にも出演していますが、こちらでは大きなトをラックを運転する女性の役で出ていますので、こちらもぜひ観てくださいと結んだ。

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マー・イーリー(馬伊琍/MA Yili)紹介 中国映画祭HPより
1976年6月29日上海生まれ。上海戯劇学院演技科で演技を学ぶ。
在学中にTVドラマに出演し女優デビューする。卒業後本格的に活動を始め、主にTVドラマに出演する。2003年には中国で大ヒットした古装劇ドラマ「還珠格格」シリーズの第三弾で主演のひとりを務め一躍人気俳優となる。
その後もドラマや映画に出演するが、2007年に出演した映画『江北好人』(日本未公開)では長春映画祭で最優秀主演女優賞を受賞し、人気女優から演技派女優としての道を歩み始める。
「電影2019」では『失踪、発見』『選ばれざる路/未択之路』の2作で主演し、共に地味メイクで心に影を持つ女性を演じている。
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6日の19:00の回では、中国で大ヒットしたという『ペガサス/飛馳人生』が上映されたが、「カーレース」を扱った作品とのことで、私的にはあまり興味がなかったのと、日本公開が決まっているというので、今回は観なかった。
【中国公開:2019年2月5日】
【日本公開 配給:シネメディア 2019年公開予定】


7日(木)

『選ばれざる路』 
(原題《未択之路》)
監督:タン・ガオポン(唐高鵬)
出演:ワン・シュエビン(王学兵)、マー・イーリー(馬伊琍)
ジャパンプレミア

作品内容
妻と離婚したのに妻を忘れられず、「離婚していないと言い張る」砂漠でラクダ飼いをしている男(ワン・シュエビン)が、借金の返済を待ってもらうため、借金取りの男?から少年の面倒を託される。別れた妻の家を借金のかたにしていたため心配になり、少年とトラックで元妻の元に向うが、いろいろとアクシデントが起こり、何もかもうまくいかない。トラックのタイヤが銃でわざとパンクさせられるが、修理もできず襲われ、修理所を逃げ出す。ヒッチハイクで二人は旅を続け、途中でトラック運転手の女性(マー・イーリー)と出会い、 三人は旅を続ける。トラック運転手の女性は夫が突然いなくなってしまい、一人で配送の仕事をしながら、いなくなってしまった夫を探している。周りの配送業の男たちは、そんな彼女を気にかけたり、狙ったりで、そんな中で彼女は仕事をしていた。
借金取りの男は、他の子供も別の借金を抱えた男に託しているのだが、親分や、自分の周りに子分もいる。これは誘拐業の男なのか、そこはよくわからない。
やっと、元妻の元にたどりついた男は、元妻がすでに別の男と結婚し、子供を宿していることを知りあきらめるが、自分の借金のため彼女の家が狙われていることを知った男は、借金取りの男に挑む。
こっけいで馬鹿な男を演じるのはワン・シュエビン。そしてトラックの女を演じているのは、『失踪、発見』にも出演しているマー・イーリー。ノーメイクに近い姿で心に傷を負う女性を熱演している。

第21回上海国際映画祭 アジア新人賞部門「最優秀作品賞」受賞作品。
【中国公開:2018年9月14日】

まるで西部劇のような作品。主人公の男に見覚えがあると思ったら、『スパイシー・ラブスープ』(1999)や、ベルリン映画祭金熊賞を受賞した『薄氷の殺人』(2014)などに出演していた王学兵だった。砂漠と無法者。そして現在の砂漠での移動は馬ではなく車。ほとんど人の姿を見ないような砂漠だけど、ところどころに給油所や車の修理を扱う店、食事ができる店が点在する。こういう作品を、最近いくつか観るけど、実際、そういう状況があるのか、現代版西部劇のような作品に人気があるのか、興味深いところ。それにしても大型トラックを運転している女性が出てくるところが中国かなと思った。日本では、やはりこういう物語はなりたたないかな。

『アラ・チャンソ』 原題《阿拉姜色》
監督:ソンタルジャ(松太加)
出演:ヨンジョンジャ(容中尔甲)、ニマソンソン(尼玛颂宋)
ジャパンプレミア

作品内容
夫と義父と暮らすウォマは、病院であることを告げられ、ラサへの五体投地巡礼の旅に出ることを決意する。 夫のロルジェは自分が一緒に行ける時に行けばいいと反対するが、すぐに出ないと間に合わないと判断したウォマは決心を翻さない。旅の前に実家に帰ったウォマ。 そこには前夫との間にできた息子ノルウがいる。久しぶりに訪れた母に心を開かないノルウ。母への思いは募っているのに一緒に暮らせない母に、なかなか思いを伝えられないのだ。
前夫の願いでもあったラサへの巡礼を遂げなければと思うウォマは、義父の世話を夫に頼み、女友達を伴いラサへの旅に出た。ラサまでどのくらいかかるのかはわからない。妻の病気が心配は夫は、時々バイクで様子を見にくるが、ウォマの弟もノウルウを連れて様子を見に来た。何ヶ月も旅を続けるうち、とうとうウォマの病状が悪化し、旅を続けられなくなり亡くなってしまった。亡くなった妻の思いを知った夫はラサへの旅を続けることにした。この夫が自分を嫌って、母と一緒に暮らせないとロルジェを恨んでいたノルウだったが、母の思いを遂げるため、ソリの会わない二人はラサへの旅を続けることになった。
最初はうまくいかない二人だったが、旅を続けるうち同士のようになっていく。

『草原の河』で知られるソンタルジャ監督の最新作。 圧倒的なチベットの山々の風景と、義理の父子の心の変遷が丁寧に描かれる。
五体投地を描いた作品は、チャン・ヤン(張楊)監督の『ラサへの歩き方 〜祈りの2400km』が日本でも公開され好評だったが、チベットの人たちの死生観は、日本人の心にも響く。この作品は来年日本で公開されるそうだが、配給は『ラサへの歩き方 〜祈りの2400km』と同じムヴィオラ。

【中国公開:2018年10月26日/2018年上海国際映画祭 審査員大賞・最優秀脚本賞(タシダワ&ソンタルジャ)受賞】
【日本公開 配給:ムヴィオラ 2020年岩波ホールほかにて公開】





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