イスラーム映画祭4
今回で4回目となるイスラーム映画祭。主宰の藤本高之さんが一人で手弁当で運営しています。多様なイスラーム世界を、映画を通じて知ることのできる貴重な機会です。今回もイエメンを描いた珍しい映画をはじめ、素敵な作品が勢ぞろいしました。ぜひ会場に足をお運びください。
会期:
2019年3月16日(土)~22日(金) 於:渋谷ユーロスペース
2019年3月30日(土)~4月5日(金) 於:名古屋シネマテーク
2019年4月27日(土)~5月3日(金) 於:神戸・元町映画館
主催:イスラーム映画祭実行委員会
★東京での上映日程とトークセッション: こちらで確認ください。
◆東京でのチケットは、3日前からこちらで予約できます。
渋谷ユーロスペース オンラインチケットサービス
http://www.euro-ticket.jp/eurospace/schedule/
イスラーム映画祭第4弾
~開催趣旨~
「映画を通じて、世界中に広がる“イスラーム”の文化を体験する、もしくはそこに暮らす人々の日常を知る」をテーマに、2015年12月にスタートした「イスラーム映画祭」も、今回で早くも4回目を迎えます。
もとは“イスラームとはなんぞや?”という地点からスタートした本映画祭ですが、イベントとして認知されてきた今、単に宗教や文化としてのイスラームだけではなく、広くイスラーム圏で起こっている、あまり我が国には知られていない事実を観客に伝える使命も担ってきているのではないかと考えています。
そこで「イスラーム映画祭」第4弾では、先の見えないシリア内戦や長年つづくパレスチナ問題など、さらに混迷が深まる中東において、シリア内戦同様、2011年の“アラブの春”を発端に始まり、現在500万人以上の子どもが飢餓の脅威にさらされるという惨状にありながら、その状況がほとんど日本には伝えられない“イエメン”にフォーカスを当てます。なぜ、イエメン内戦が始まったのか? そして、かつて「幸福のアラビア」と呼ばれたイエメンとはどんな風景、風習、文化を持つ国なのか?といったテーマを、映画を通じて掘り下げます。
(いただいた資料より抜粋)
【メイン・プログラム~フォーカス・オン・イエメン~】
製作本数そのものが少なく、紹介されることがめったにない稀少なイエメンにフォーカスをあて、3本の映画を上映。
下記4つのテーマで、4回のトークセッションも行われます。
☆イエメンだけではない世界的イシューである“児童婚”
☆“世界最悪の人道危機”~イエメン内戦とそこに生きる人々~
☆医療支援の現場から見たイエメンの窮状
☆“幸福のアラビア”~イエメン・旅の魅力~
◆『わたしはヌジューム、10歳で離婚した/I Am Nojoom, Age 10 and Divorced』 ☆日本初公開
監督:ハディージャ・アル=サラーミー/2014年・イエメン/99分
【物語】 幼くして結婚したヌジュームは、ある朝家を飛び出して裁判所へ駆け込み、離婚したいと訴える。驚く判事を前に彼女は、歳のかけ離れた夫の暴力に耐える日々と、自分が嫁に出されるまでの経緯を語り始めるのだった…。
【解説】 実話を元に、作者が自身の経験も反映させた、“児童婚”に抵抗する少女の物語です。イエメンの美しい風景も描きながら、児童婚が宗教や因習が原因とは限らない、普遍的な女性の権利の問題であることを教えてくれます。
上映:3/16 (土)13:10★トーク 3/19(火)13:30★トーク 3/22(金)19:00
◆『イエメン:子どもたちと戦争/Yemen : Kids and War』 ☆劇場初公開
監督:ハディージャ・アル=サラーミー/2018年・フランス/52分
『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』の監督によるドキュメンタリー映画。
BS世界のドキュメンタリーで「イエメン内戦 少年記者団の伝言」のタイトルで放送された作品の新訳版。
【物語】 11歳のアフメド、8歳のリマ、9歳のユースフは、内戦下のイエメンに生きる人々の声を集め始める。彼らは負傷したり、親を失った子どもたちの他、画家やラッパー、SNSの人気モデルにもインタビューしてゆく…。
【解説】 “世界最悪の人道危機”が続くイエメン。メディアの取材が困難な中、現地の人々の声を収めた貴重なドキュメンタリーです。子どもたちの視線が、戦争の不条理と、それを止められない国際社会の無策を浮き彫りにします。
映画スタッフは子どもたちに、携帯のカメラで自分たちの声を世界に発信する方法を教えます。彼らのストレートな質問が戦争の不条理を浮き彫りにし、胸が詰まる事必至です。
上映: 3/16 (土)16:05★トーク、3/18(月)13:30★トーク、3/20(水)18:40
◆『気乗りのしない革命家/The Reluctant Revolutionary』
監督:ショーン・マカリスター/2012年・イギリス/70分
2013年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された作品。
『イエメン:子どもたちと戦争』と2本立で上映。
【物語】 “アラブの春”を取材すべくイエメンに入った作者は、現地の観光ガイド、カイスと出会う。ビジネスに支障をきたし、反政府デモに懐疑的なカイスだったが、デモ隊に発砲する政府の姿や死傷者を見て考えを変えてゆく…。
【解説】 その後の泥沼の内戦など想像もできなかった、“アラブの春”当初のイエメンを描いたドキュメンタリーです。革命に翻弄される主人公に寄り添いながら、作者もまた、うねりを上げて激変する世界に巻き込まれてゆきます。
ビジネスに支障をきたし、初めのうちは反政府デモに対し懐疑的だった主人公が、政府によるデモ隊への発砲や死傷者を見て態度を変えてゆく様は まさにイエメン版『タクシー運転手』。
上映: 3/16 (土)16:05★トーク、3/18(月)13:30★トーク、3/20(水)18:40
【その他の作品】
◆『その手を離さないで/Never Leave Me, Bırakma Beni』 ☆日本初公開
監督:アイダ・ベギッチ/2017年・ボスニア・ヘルツェゴビナ=トルコ/96分
【物語】 内戦下のシリアからトルコに逃れたものの、最愛の母も失い、シャンルウルファの孤児施設に引き取られたイーサ。彼はそこで同じ境遇のアフマドとモアタズに出会う。3人は各自の目的のため、街でティッシュ配りを始めるが…。
【解説】 実際のシリア難民の子どもたちが演じています。内戦によって大切な時代を奪われた彼らの悲しみに胸を打たれずにはいられません。自身も10代の頃に ユーゴスラビア内戦を経験したムスリマの監督が描く、痛ましくも、
包み込むような優しさを感じる物語です。
上映:3/16 (土)11:00、3/18(月)19:00、3/20(水)16:30、3/22(金)13:15★トーク
◆『ナイジェリアのスーダンさん/Sudani from Nigeria』 ☆日本初公開
監督:ザカリーヤ/2018年・インド/122分
南インド・マラヤーラム語映画。翻訳はインド映画ファンにはもうおなじみの藤井美佳さんにお願いしました。
【物語】 地元サッカーチームのマネジャーを務めるマジード。ナイジェリアから招聘した選手サミュエルの活躍で彼のチームは快勝するが、ある日サミュエルは怪我を負ってしまい、マジードは自宅で彼の世話をすることになる…。
【解説】 ナイジェリア出身なのにスーダン人と思われるサッカー選手と、所属チームのマネジャーとの友情を描くヒューマンコメディです。ある事情からサッカーを始めたクリスチャンのアフリカの若者と、ケーララのムスリムコミュニティの交流が温かな笑いと涙を誘い、ホロリとさせられます。
これがデビュー作のザカリヤ監督は本作の成功によってマラヤーラム語映画の超新星と目される逸材。
上映:3/17 (日)13:15★トーク、3/20(水)11:00、3/22(金)16:30
◆『イクロ クルアーンと星空』
続編となる『イクロ2 わたしの宇宙(そら)/Iqro My Universe』を上映予定でしたが、完成が間に合わず、昨年イスラーム映画祭3で上映した
『イクロ クルアーンと星空』を再上映することになりました。
監督:イクバル・アルファジリ インドネシア、2017年
上映:3/19(火)19:00、3/21(木)11:00
昨年の『イクロ クルアーンと星空』上映後のトークの模様はこちらでどうぞ!
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/458670508.html
◆『西ベイルート/West Beirut, West Beyrouth』
監督:ジアド・ドゥエイリ/1998年・フランス=ノルウェー=レバノン=ベルギー/105分
『判決、ふたつの希望』のジアド・ドゥエイリ監督のデビュー作。
リベラルなムスリム家庭で育ったというドゥエイリ監督の自伝的要素も込められた作品。
【物語】 1975年。西ベイルート(ムスリム地区)に住むターレクは、東ベイルート(キリスト教徒地区)のフランス学校に通っていた。しかし内戦が始まり、両地区が遮断される。初めは戦争に昂揚感を覚えるターレクだったが…。
【解説】 15年間も続いたレバノン内戦を背景とする、作者の自伝的要素も強い戦争青春ドラマです。宗教が混在する、レバノン社会の文化的多様性が映し出されるとともに、主人公の目を通じて戦争の生々しい恐怖が語られます。
上映:3/17 (日)16:30、3/19(火)11:00、3/21(木)13:10★トーク
◆『判決、ふたつの希望/The Insult, Qadiyya raqm 23』 ※特別参考上映
監督:ジアド・ドゥエイリ/2017年・レバノン=フランス/113分
【物語】 ある日パレスチナ人のヤーセルとレバノン人のトニーが、住宅の補修をめぐって諍いを起こす。トニーの放った“侮蔑”は2人の対立を決定的にし、法廷に持ち込まれた決着はやがて国を巻き込む大騒乱へと発展してゆく…。
【解説】 昨年日本でも大ヒットした作品です。レバノンが抱える社会問題が中東のみならず、分断が進む世界のあらゆる場所を照射してゆきます。民族や宗教を越えた人間の尊厳について考えさせられる、重厚な社会派ドラマです。
上映:3/21(木)16:00★トーク
*特別参考上映として、各会場1回限り『西ベイルート』と連続で上映。
シネマジャーナル 作品紹介:http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/461294441.html
◆『乳牛たちのインティファーダ/The Wanted 18』 ☆劇場初公開
監督:アメール・ショマリ、ポール・コーワン/2014年・カナダ=パレスチナ=フランス/75分
BS世界のドキュメンタリーで放送され作品を75分の全長版で上映。
【物語】 パレスチナのベイト・サフールに住む人々が、それまでイスラエルから買うしかなかった牛乳を独自に生産しようと、18頭の乳牛を“合法的”に手に入れる。しかし、イスラエル当局は牛を“国家の脅威”と見なし、その摘発に乗り出す…。
【解説】 第1次インティファーダの契機となった逸話を、関係者の証言のみならずクレイアニメや再現ドラマも交えて描いた独創的なドキュメンタリーです。複雑なパレスチナ問題を身近に感じさせる斬新な語り口に驚かされます。
上映:3/18 (月)17:00、3/21(木)18:50★トーク
◆『僕たちのキックオフ/Kick Off』
監督:シャウキャット・アミン・コルキ/2008年・イラク:クルディスタン=日本/81分
【物語】 イラク北部の都市キルクーク。家を失ったクルド人たちは、スタジアムの中で暮らしていた。ヒリンに淡い恋心を抱くクルド人青年のアスーは、地雷で片足を失った弟のため、民族対抗の少年サッカー大会を計画するが…。
【解説】 かつてフセイン政権下で苛烈なアラブ化政策が進められた街を舞台に、反戦の願いを込めて作られたクルド人監督の作品です。サッカーが民族宥和の象徴として描かれますが、モノクロに近い映像が現実を浮き立たせます。
上映:3/16 (土)19:15、3/18(月)11:00
*NHKアジアフィルムフェスティバル で上映された折のコルキ監督インタビューを、シネマジャーナル75号に掲載しています。
また、2008年11月第3週のスタッフ日記に監督の写真を掲載しています。
http://www.cinemajournal.net/diary/2008.html
◆『二番目の妻/Kuma』
監督:ウムト・ダー/2012年・オーストリア/89分
【物語】 トルコから欧州に移り住んで半世紀。クルド人一家の女主ファトマは、故郷の伝統を守りながら、夫や子どもたちとともにウィーンで暮らしていた。そんな彼女の息子のもとへ、東トルコの村からアイシェが嫁いでくる…。
【解説】 ウィーンで育ったクルド人監督による、悲劇的な家族ドラマです。精緻な演出によって、家父長制の歴史の中に生きる女性たちの困難と、欧州の移民社会に共通する、アイデンティティーの板挟みの苦悩が描かれています。
昨年上映したドイツ映画 『私の舌は回らない』にも通じる作品です。
上映:3/17 (日)11:00、3/20(水)13:45★トーク
*2012年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で最優秀作品賞受賞。
2012年7月第4週のスタッフ日記に監督の写真を掲載しています。
http://www.cinemajournal.net/diary/2012.html
その折の監督インタビューを、シネマジャーナル86号に掲載しています。
ただし、めちゃくちゃネタバレしていますので、鑑賞後にどうぞ! よもや、上映される日が来るとは!(咲)
◆『幸せのアレンジ/Arranged』
監督:ダイアン・クレスポ、ステファン・シェイファー/2007年・アメリカ/92分
【物語】 N.Y.のブルックリン。同じ学校の新任教師として出会った、ユダヤ教徒のラヘルとムスリマのナシーラは、ある授業をきっかけに友人関係になる。そして2人には、“お見合い結婚”を控えているという共通点があった…。
【解説】 現代のアメリカ社会で、それぞれの信仰や伝統にしたがいながらも、自分なりの生き方を探す2人の女性の物語です。彼女たちの“壁”を気にしない友情と、幸せや物事の価値観は自分で決めるという姿勢が共感を呼びます。
上映:3/17 (日)19:00、3/19(火)16:30、3/22(金)11:00
*2008年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で最優秀作品賞受賞。
シネマジャーナル74号に紹介記事を掲載しています。
ほんとに可愛らしい作品です。
イスラーム映画祭主宰の藤本さんが、イスラーム映画祭2の時から上映したかった作品。今回3年越しでついに権利再取得し上映に至ったとのことです。(咲)
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