東京国際映画祭 特集「イスラエル映画の現在 2018」『靴ひも』10/31 Q&A  (咲)

「イスラエル映画の現在 2018」 ワールド・フォーカス
『靴ひも』 英題:Laces
監督:ヤコブ・ゴールドワッサー
2018年/イスラエル/ヘブライ語/103分

*物語*
母が急死し、発達障害のある35歳の息子ガディがあとに残される。別居していた父親ルーベンが息子を引き取り、一緒に暮らし始める。ガディの世話も大変だが、ルーベン自身、腎不全で人工透析を受ける身で、障害のある息子の行く末が心配だ・・・

障害者手当てを決めるための審査で、靴ひもを結べるかどうかの場面があって、息子はほんとうは結べるのに、父のために手当てを貰おうと結べないフリをします。父の思い、息子の思い、それぞれがとても丁寧に描かれた作品。
障害のある子を遺して逝かなければならない親の気持ちに迫った作品。どこの国でもありえる話ですが、病院のシーツの模様がダビデの星で、さすがイスラエルと興味津々でした。
DSCF6362 kutsuhimo 2.JPG
時間的にQ&Aの取材が出来なかったのですが、ロビーで観客の皆さんからサインを求められていた監督と、少しだけ立ち話することができました。とても温和な方でした。

●10月31日(水)上映後のQ&A
友人の毛利奈知子さんからレポートをいただきました。

Q&A登壇ゲスト:ヤコブ・ゴールドワッサー監督
司会:「アジアの未来」プログラミング・ディレクター 石坂健治氏

司会:はるばるお越しいただきありがとうございます。一言まずご挨拶いただけますでしょうか?


監督: 私はプロデューサーにこの映画は劇場に入る前にティッシュを手渡すというのがいい思うと言ったのですが、そんな皆さんに配布するような予算はないと言われました。ご入用な方は東京国際映画祭のスタッフにお声掛けください。

司会:特にこの息子さん役の俳優はあまりにも自然でびっくりしましたが、どういう役者さんか教えていただけますか?

監督: 息子役の)Nevoのことは15年間知っている俳優さんです。テレビのシリーズで演出する機会があり、3シーズン彼と一緒に仕事をしました。キャストの一人ではあったが、人間として心の大きな人であり、とても知的で好きな人物でした。彼なくしてこの映画を撮ることは出来ませんでした。私の長男が特別なケアを必要とする立場にあります。ですから、自分を守るために、防衛本能的にレンガの壁と自分で呼んでいる、心の壁を作っていました。つまりは自分の心と現実の間に、その心の壁なくしては辛い痛みに直面することがあるので、そういう特別なケアを必要とする息子を持つ立場としてそうしたものを心に持ってきました。

実は現実の話で、父親が腎臓を必要としており、発達障害を持つお子さんの腎臓が必要になって息子さんがドナーになろうとしたという話がありました。しかしながら、プロセスを経る中で結果的には却下されてしまいました。その話は2002年ごろの話でしたが、私自身当時それについてそれほどリサーチしていませんでした。私の友人がこの件を本にしていて君の映画の題材にいいのではないかと示唆してくれました。しかし、私としては自分の痛みに向き合うよりは、他の人の課題を扱った方が自分には都合がいいので、あまりに身近過ぎて自分の映画の題材にする気持ちはないと自分で思ってきました。
 私はそれから10年間この題材の映画を作ることから逃げてきました。ただずっと気になっていました。そんな中、テレビのシリーズの小さい役でNevoが発達の遅れのある役柄を演じました。道行く人がNevoを見つけると声を掛けたり、Facebookのこの役柄のペー字に1万人のいいね!が付いたりといったことがありました。私は実際にインターネットでNevoの演技したパートを観てみました。とてもすばらしい出来でした。そしてとてもしっかりした意見を持った役柄でした。ユーモアもあってとても人間的に演じていました。とても感銘を受けてNevoにメールをしました。「とっても良い演技でした。こんな(上述のような発達障害を持つ息子と父の)企画があり、あたためているんだけれど」軽く書きました。
するとNevoが「とても良いストーリーですね。ぜひやりましょう!」といってくれました。しかし私は「精神的、心理的にこの映画を作る気力が無い」と言ったところ、Nevoが「力になるよ。後押しするよ」と言ってくれたのです。Nevoが賛同してくれたので、これだったら中より上くらいの良い映画が作れるんではないかと思いました。私の作り手としての目標は自分にとって最高の出来の映画を作ると言うことです。この映画によって人々の意識を変える何らかの手立てになるんではないかと思いました。

公式サイト 10月31日Q&Aレポート




この記事へのコメント