東京国際映画祭 トルコ映画『シレンズ・コール』記者会見 (咲)
東京国際映画祭 2018年 コンペティション部門
『シレンズ・コール』 2018年/トルコ
建築ラッシュの大都会イスタンブルを脱け出して、自由に生きる女性シレンのいる南の町に行きたいのに、なかなか空港にたどり着けない男タフシンの物語。
◆記者会見
10月30日(火)『シレンズ・コ―ル』P&I上映後 13:40から記者会見が行われました。
登壇者:ラミン・マタン監督、俳優デニズ・ジェリオウル、女優エズギ・チェリキ、プロデューサー:エミネ・ユルドゥルム
*女優のエズギさんのみトルコ語で発言し、マタン監督が英語に通訳しました。
監督:上映をご覧いただき嬉しいです。質問を楽しみにしています。
デニズ:来日できて嬉しいです。遠く感じられますが、そこまで遠くないと思います。
司会:映画のキャラクターと違って、ソフトな方ですね!
デニズ: yes!
エズギ:映画を楽しんでいただけたら嬉しいです。ここに来られてワクワクしています。
プロデューサー:作品をご覧いただき、ありがとうございます。
司会:東京にいると、都会の生活はもう嫌だと思うのですが、最後のシーンを観て、自分もやっぱり都会を捨てられないと思いました。映画に込めた思いを!
監督:都会から逃れたいというのはイスタンブルでも東京でも皆が思っていると思うのですが、ほんとはどうなのか? 大都市での日々の生活に関する物語を作って検証したいと思ったのが発端でした。
司会:監督は都会派? 田舎派?
監督:たぶん、大都市から離れては住めない。でも、イスタンブルのようなカオティックな場所にいると、家から出たくなくなることもあります。
司会:デニズさん、ダメ親父ぶりが最高でした。
デニズ:サンキュー!
司会:演じる上で、どこが難しかったですか?
デニズ:役者にとってリサーチしなければ演じるのが難しい役もあるけれど、この役は大都市に住んでいる人物で、精神的には遠くなかったです。駄目っぷりだけでなく、共感してもらえるように演じるのが難しかった。
司会:シレンは田舎に憧れながら、都会のシステムを捨てきれない複雑なキャラクターでした。何かを象徴しているように思えました。
エズギ:多くの人が都会から離れたいと思っているけれど実行できないでいます。シレンは実際に行動を起こして都会を離れ、新しいところで暮らすけど、それは自分で作りだしているもので、考え方は変わってなくて、一貫性のある人物です。
<strong>司会:演じたお二人は、都会派? 田舎派?
エズギ:難しい質問! たぶん、心の準備が整ってないので、都会を離れられません。
デニズ:田舎で町に近いところ! 創作を続けるには都会じゃないと難しいけれど、心の平穏を保つために緑もあるところがいいと思いますので。
司会:大都会を駆けすり回る映画。製作側としては、どこが難しかったですか?
プロデューサー:すべて! 資金調達が一番大変でした。2016年、プリプロダクションに入って2週目にクーデターが起こって、その後は世の中クレイジーな状況になりましたので、すべての作業を止めなければなりませんでした。翌年、再開したのですが、予算も限られている中で、素晴らしいクルーに恵まれて撮影することができました。町中を駆け回る生々しさを撮るのが特に難しかったです。嘘っぽくなくリアルに撮るのが大変でした。
司会: 監督、リアルに撮る難しさは?
監督:ほんとうに予算が限られていたので、生々しさを作るより、ゲリラ的に、いきなり行って撮影する形でした。バスで移動するシーンも、道路を閉鎖して撮影するのではなく、いきなり行って小型カメラで撮影しました。
司会:バスの中のシーンも? 乗ってる人たちもエキストラではない?
監督:周りを囲む数人だけエキストラの人を採用しました。一般の人だと、カメラを覗きこんだりしてしまいますので。実は、エキストラも、クルーの中から選びました。
★会場より
― 最初に入った喫茶店のようなお店は?
監督:あれはカフェバーで、若い人たちが飲みに行く隠れ家的な知る人ぞ知る場所で、解き放たれた気持ちなれる所です。
― 都市への人口流入が日本より激しくて、建設ラッシュのようでした。都市計画含めて、わかる範囲で教えてください。
監督:イスタンブルの人口は公式で1700万人位。そこまで新しい住居が必要なわけではないのに、ここ数年、建築バブルで、バブルも崩れつつあって、150万戸が売れ残っています。建築計画もなく、インフラも整備されていません。
― トルコ行進曲が効果的でした。最初から使うつもりだったのでしょうか?
監督:元々考えていたのではなく、最初の10分位を編集していて思いつきました。元々のタイトルが、「Ronde(輪舞)」で、タクシンが町をぐるぐる回る内容に合うと思いました。最後の方では、調子を崩してみたら面白いなと考えました。
― 『シレンズ・コール』は英語のタイトルで、トルコ語のタイトルは「Son Çıkış」で最後の出口という意味だと思います。どういう思いを込めてタイトルをつけたのでしょうか? 都会のイスタンブルに戻るというラストでしたが。
監督:オリジナルのタイトルは実は『シレンズ・コール』です。Sirenがトルコ語だと、パトカーのサイレンがまず思い浮かぶので、トルコ語では別のタイトルにしました。トルコ語ではタイトルを変えました。『最後の出口』の意味するところは、皆さんの解釈にお任せします。
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