東京フィルメックス 『シベル』 北東トルコ 山間部を舞台にした物語  11/21 Q&A (咲)

DSCF7541 sibel s.JPG

『シベル』 Sibel
フランス、ドイツ、ルクセンブルク、トルコ / 2018 / 95分
監督:チャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティ
フィルメックスのサイト: https://filmex.jp/2018/program/competition/fc01


*ストーリー*
トルコ北東部、黒海沿いの山間の村。
少女シベルは、言葉はしゃべれないが、この地域の伝統的な口笛で意思疎通を図っている。障害者と疎んじられているシベルは、村の人たちの脅威である狼を捕らえることで存在を認めてもらおうと、日々森の中を銃を持って駆け巡っている。
村の娘チチェキの結婚式。「口のきけない子が生まれそうだから来ないで」とシベルは拒否される。シベルの父は、村長として出席しなくてはと出かけていく。
「花嫁の岩に行って火をつけて、息子を産まないと」と、花嫁チチェキにけしかける者。その花嫁の岩も、狼がいるので今は危険だ。
ある日、シベルは襲ってきた男を狼を捕らえる為の穴に突き落とす。男は、イスタンブルから来たアリと名乗る。
村長である父のところに警察が来て、不審者がいたら通報するようにという。シベルは、通報せず、アリを安全なところに匿う。
シベルの妹ファトゥマが嫁に行くことになる。まだ学校も卒業していないのにとシベルがつぶやく。「嫉妬してるのね」というファトゥマ。一方、父は厄介払いができて清々すると、学業途中も厭わない。

いつの時代の話かと思うが、スマホも登場するし、ニュースではイスタンブルのタクスィム広場でのデモを報じているので、ほんの数年前の話だ。アリのことをテロリストと村人たちは言うが、おそらく反政府運動をしてマークされている人物。
シベルはアリを匿うことで、どんどん強くなる。村の共同の畑に行くときに、父にスカーフをしろと言われても、頑として被らない。
家父長主義の根強い村で、自分の意思を貫いて生きるシベルの姿が眩しい。

シベルがアリを匿ったことで起こる事態は、ぜひ映画をご覧になって確認を!



●2018年11月21日(水) 午後3時からの上映後のQ&A


共同監督の二人と、主演シベルを演じた女優ダムラ・ソンメズが登壇。
DSCF7501 sibel s.JPG

トルコ・アンカラ出身のチャーラ・ゼンジルジと、フランス・リヨン出身のギヨーム・ジョヴァネッティの二人は、2004年より共同監督として短編映画の製作を始め、2012年に初の長編映画『Noor』をパキスタンで撮影。2013年の長編第2作『人間』は、日本で撮影をしている。

二人とも、綺麗な日本語で日本に戻ってこられて嬉しいと第一声。
映画の中で、鋭い視線が印象的だったシベル役のダムラ・ソンメズさんは、笑顔かとてもチャーミング。監督お二人から教わったのか、日本語で「こんばんは」と挨拶。

★会場とのQ&A

― ナスルスヌーズ? (トルコ語で、お元気ですか?)  トルコのどのあたりの地域で撮影されたのでしょうか?
DSCF7528 sibel s.JPG
ギョーム・ジョヴァネッティ監督:北東部の黒海に面した地域で、ほかの地域と比べ、森が多いところで、生活環境の厳しいところです。山の多い地形的環境から、古来から口笛で会話する習慣がありました。私たちは、この地域の言語に興味を持ち、この映画を作りました。話し出すと長くなりますので、この辺でやめておきます。

― ダムラさんに、台詞のない状態で演じたご苦労をお聞かせください。
また、ダムラさんの目の力が印象的だったのですが、キャスティングの経緯は?
DSCF7466 siber s.JPG
ダムラ・ソンメズ:すべてが初めての体験でした。監督のお二人と、長い時間をかけて話し、口笛で会話することについて練習を重ねました。自分のリズムで口笛に翻訳できるようにしていきました。シベルの身体の動きごとに口笛を吹くタイミングを意識して練習しました。映画が素晴らしいと思うのは、必ずしも言葉で理解しなくてもいいところだと思います。
(しゃべりすぎて、途中で気がつき、通訳の方に気遣うダムラさん)

DSCF7502 sibel s.JPG
チャーラ・ゼンジルジ監督:シベル役は最初から彼女を考えていました。2年半前に会って、トルコ北東部で撮影することと、口笛で会話するということを伝えました。それを聞いた瞬間、彼女の眼がキラキラして、引き受けてくれました。「でも、全く口笛ができません。期待に応えるよう、口笛が吹けるようにします」と言ってくれました。結果は、ご覧の通りです。

― 力強い映画でした。テロリストのこと、女性たちが抑圧されていることなど、現実を反映しているのでしょうか? トルコというと、ユルマズ・ギュネイの映画での抑圧された女性が思い浮かびますが、一方でトルコには洗練された女性もいます。

チャーラ監督:映画作りでは地域性を大事にします。それを普遍性を持って描こうとしています。抑圧されている中から、女性があるべき道に進んでいくという、どこにでも起こりうる話です。社会の女性の扱い方や、サポートのなさは、日本でも似ているところがあるのではないでしょうか。田舎や地方だけでなく、都会でも起こりうることだと思います。
アリのことですが、明確にテロリストとしては描いていません。舞台がトルコでなくても、不審者や移民という存在として捉えていただければと思います。
実は、あの村では村民が皆、銃を持っているのに、銃を持っていないアリがテロリストと名指しされていることにも気づいていただければと思います。

★『シベル』は、11月23日(祝・金)夜21:15から、TOHOシネマズ日比谷12で、もう一度上映されます。
Q&Aには、21日の上映後に登壇した共同監督のチャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティの二人と、主演シベルを演じた女優ダムラ・ソンメズに加え、アリを演じた俳優も登壇予定。

********
DSCF7538 sibel s.JPG

DSCF7543 sibel s.JPG
Q&Aの後、会場の外で監督やタブラさんとお話することができました。
雲海が出てきて、かつて観たトルコ映画『雲が出るまで』(イェシム・ウスタオウル監督、2004年)で観た光景とそっくりだったので、撮影場所について伺ったら、チャーラ監督とタブラさんが、声をそろえて、「まさに同じ地域!」とおっしゃいました。 2000年以上にわたって、ギリシャ系の人たちが暮らしていた地域で、トルコ共和国建国の際に、トルコとギリシャで住民交換が行われたとき、ギリシャ系民族だからと、先祖代々住んでいた地を追われ、ギリシャに移住させられた人たちがいた地域です。ギリシャ系の言葉も、彼らの移住と共に廃れていく運命にあったようです。
チャーラ・ゼンジルジとギヨーム・ジョヴァネッティのお二人は、この地域の言葉に関心を持って映画を作ろうと、1年近くかけて、村の人々一人一人に体験や伝承を聴いて、それをもとに物語を作り上げていったそうです。 その中には、もしかしたらギリシャ系民族の方たちの言い伝えなどもあったのかなと思ったひと時でした。  (景山咲子)

この記事へのコメント