SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018  『横道世之介』沖田修一監督&高良健吾Q&A ~6年経っても誰かの心にあるのが幸せ~(7/21)

15周年を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」として、埼玉出身の4人の監督作品が上映されました。
そのうちの1本『横道世之介』を拝見。主演の高良健吾さんに惹かれて観にいったのですが、これがもう、愛おしい作品でした。
上映後、沖田修一監督と、主演の高良健吾さんが登壇。6年前に公開され、今も愛され続けている『横道世之介』について、大いに語ってくださいました。

『横道世之介』 A Story of Yonosuke
監督:沖田修一
出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛
2012年/日本/160分
配給:ショウゲート
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*ストーリー*
1987年春、横道世之介は大学生となり、長崎から上京してくる。入学式で隣にいた倉持一平や、教室で最初に言葉を交わした阿久津唯と、成り行きでラテンアメリカ研究会に入部し、サンバの練習をする日々。バイト先の高級ホテルでは、謎の年上の美女と知り合い憧れるが、思いをなかなか告げられない。一方、同級生の加藤に誘われて行ったダブルデートで、相手となった筋金入りのお嬢様・与謝野祥子からは気に入られ、積極的にアプローチされる。夏休み、帰郷する世之介を追って、祥子は長崎の漁村にやってくる・・・
映画は、16年後に、それぞれの登場人物が世之介とのエピソードを思い出す場面を差し込みながら進んでいく。そして、さりげなく知らされる写真家となった世之介の16年後の運命・・・

☆大学に入った頃のこと、サークルの仲間たちのこと、付き合った男の子たちのこと・・・ いろいろなことを懐かしく思い出しながら観ていたら、思わぬ世之介の人生の最期。それからは、語られるエピソードの一つ一つが、さらに愛おしく感じました。
160分の間に、横道世之介という人物は、観ている者ひとりひとりの心の中に入り込んでいったのではないでしょうか。
そんな私たちの前に、吉田修一の同名小説を映画化した沖田修一監督と、横道世之介を体現した高良健吾さんを迎えて、Q&Aが繰り広げられました。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 公式サイトのデイリーニュース
http://www.skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180721_dairy25.html

◆上映後のQ&Aに向日葵姿で登壇
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サンバを踊った時の向日葵の花の縁取りをつけて、沖田修一監督と高良健吾さんが登壇。
まだ映画館に残されていたのだそうです。

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沖田監督:埼玉の映画祭に参加できて嬉しいです。川口駅にも映画祭ののぼりがあって、町ぐるみでやってる感じがいいですね。
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高良健吾:初めての映画出演作『ハリヨの夏』(2006年)で参加したのが、SKIPシティの映画祭でした。当時は駆け出しで、お迎えもなくて、電車とバスでここまで来ました。映画祭といえば祭りなので、甚平がいいかなと思って着てきたら、その姿でQ&Aはダメだよと言われました。

●会場とのQ&A
― 人物が皆チャーミング。演出はどのようにされたのですか?

監督:2012年に撮ったもので、当時どんな風に撮ったか全然思い出せません。あまり何も言わなかったと思います。原作は読んだ? (と高良さんに振る監督)

高良:どうだったか・・・ なんで自分はこういう風にやったのか思い出せない。何も考えないでやってたような。景色は思い出すのですが・・・

監督:カメラの向こうに向かってお芝居するんじゃなくて、世之介として生きてる感じでと。

― 初めて観たのは中学生の時。今、19歳で専門学校生です。世之介も青春してていいなと。お二人は20歳の頃、何をしていましたか? また、何を大事にしていましたか?

監督:大学2年生で、映画の仕事をしたくてコースを選んだはずなのに、間違ってカメラマンのコース。でも映画を作りたいなと思ってた。

高良:16歳から俳優を始めて、20歳の時に『蛇にピアス』に吉高(由里子)と一緒に出演。吉高は19歳。ほかにも、『ひゃくはち』『フィッシュストーリー』など仕事は順調だったけど、吉高と「やめたい!」と言ってたこともあります。明日、吉高は30歳。僕は、31歳がもう近いです。早いっすね.変わってますよ。変わりたくて、変わってる。

ーこの作品が大好きで、出会えてよかった。作ってくださってありがとうございます。お二人の、この作品で好きなところは?


高良:この作品が好きでといわれることが多くて、自分の体験の思い出と共に観てくれているのだろうなと。そこが好きなところです。人が出会って、別れて、過去に会ったことで得したような気がするというのがとてもいい。これ以降の仕事も変わっていったので、特別の作品です。今日、30の歳で観れてよかった。

監督:世之介体験をしてしまって、ついついまた同じようなことを求めてしまいます。何年ぶりかに観て、いろんなことを思い出しながら観ました。漁師のおじいちゃんのアップも忘れてた。(笑)

― 世之介はいろんな人の心に残っているんだろうなと。お二人の心に残っている人は?

監督:いっぱいいますね。自分のことも誰かが覚えてくれているのだろうなと。
疎遠になった人のこともいろいろ思い出しました。木村くんって、全然仲良くなかったのに、なぜか思い出していたら、偶然喫茶店で会いました。

高良:たくさんいますね。30になった時にも思い出す人がたくさんいますね。

― 原作の吉田修一さんが、続編の小説の連載を始められましたが、続編の映画化の予定は? ぜひ高良さんと吉高さんの主演でお願いしたいです。

高良:このチームじゃないといやですよね。比べられてしまうから。

監督:まわりからも、たくさん続編の希望を聞いてるので考えます。
(会場から大きな拍手)

― 公開当時も台詞を覚えるほど観ていて、いつも笑ってしまいます。撮影中、これは大笑いしたという場面は?

監督:後半になって、吉高さんが監督に怒られたことがないというので、台詞を3回かんだので、4回目もかんだら怒ろうと。で、怒ったのですが、本人も誰も聞いてなくて・・・

高良:役作りで太ろうと思って一生懸命食べてたら、吉高も合わせて食べたらしくて太っちゃって、水着姿もふっくら!
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― 上京して部屋に行ってみたり、サークルを回ったり、誰しも共感できた映画でした。お二人は?

高良:僕も上京組。いつしか「東京に帰る」という気持ちになりましたね。

監督:あった、あった! 昔の地方組って、そうだったなと。あと、大学に入って一人で部屋にいたこととか、サークルに誘われるときのこととか。

◆最後に
監督:僕自身、数年ぶりに観て、むしろ楽しんで、いろんなことを思い出しました。この作品を好きという声を聴けたので、これからの励みにします。幸せな時間でした。

高良:僕も幸せな一日でした。6年前に撮った映画で、まだ声をかけてもらえて幸せです。インドネシアでも最近上映されました。誰かの心の中にある映画というのが幸せです。今、ここにいるこの時間がとても贅沢に感じます。

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フォトセッションは、会場のファンの皆さんにも開放されました。笑顔を振りまく2人でした。

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別の会場で上映されていたロシア映画『スポットライト』のQ&Aを脱け出して、『横道世之介』の会場に走って、最前列の取材席に案内していただきました。最前列の両脇は、すでに埋まっていたのですが、実は熱心な高良健吾さんのファンの女性たちでした。横道世之介の団扇を持っての参戦。夕方5時からの上映に、午前中から並んでいたファンもいるとか。(わかる、わかる!) 真っ先に質問の手を挙げたのも、私の隣に座っていたファンの方でした。
私は公開当時に観てなくて、今回初めて観たのですが、「皆の心に残る映画」と実感しました。実は、このところ、日本の青春映画で何とはいいませんが、観た時間がもったいなかったと思う作品が続きました。160分という長い『横道世之介』を観た時間は、とても貴重なものとなりました。映画って、やっぱりいいな。(景山咲子)

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