★国際コンペティション 観客賞受賞!
『ザ・ラスト・ス―ツ (仮題)』
2017年/スペイン、アルゼンチン
監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、アンヘラ・モリーナ、ナタリア・ベルベケ、フリア・ベールホルド、オルガ・ボラス
*ストーリー*
ブエノスアイレスで仕立て屋を営んできたアブラム。88歳となり右足は不自由だ。娘たちは彼を老人ホームに入れることを決め、家も売ってしまった。明日は老人ホームに入るという夜、アブラムはそっと抜け出し、故郷ポーランドを目指す。戦争中、ユダヤである自分を匿ってくれた親友に、彼のために仕立てたスーツを届けるという約束を果たしにいくのだ。
知人に切符の手配を頼むが、すぐに飛べるのはスペインのマドリード行き。そこからはフランス、ドイツを経由してポーランドに列車で行けるという。ドイツの地は踏みたくないアブラム。行く先々で手助けしてもらいながら、ついにポーランドに着く・・・
◆パブロ・ソラルス監督Q&A
7月16日(月・祝)11時からの上映が終わり、感動覚めやらぬ観客の前にパブロ・ソラルス監督が登壇し、Q&Aが行われました。
司会(長谷川さん):1日以上かけて、いらっしゃった監督、どうぞ!
監督: ブエノ! 多くの方に初回のラストス―ツをご覧いただきまして、ありがとうございます。この映画は、私の長い間の夢が実現したものです。最初の脚本を書いたのは、2004年です。私の祖父へのオマージュです。地球の反対側から、素晴らしい文化の国にやってきて、私の映画を観ていただけるのは、感動です。
司会:ホロコ―ストを扱った映画は多いですが、ユーモアに包まれ、ロードムービーの形をとって、エンタメの要素もあります。このようなスタイルをとったのは?
監督:私の父方の祖父へのオマージュでもありますが、ロードムービーは愛されているスタイル。私の一作目もそうでした。ホロコ―ストの過去のことでなく、今の世界に生きる人々の話。地球を半周して、友人にス―ツを届けます。当時は私が今生きているのと真逆の時代。今は破壊の時代ではなく、再構築の時代です。軽いタッチでユーモアを交えるスタイルがいいと思いました。
*会場との質疑応答
― 最初の飛行機で会ったミュージシャンの男性が個人的には好きです。もっと出番があればと思いました。手助けする3人の女性のキャラクタ―が、それぞれ魅力的でした。(と、若い女性が涙ぐみながら語りました)
監督:感動していただき、ありがとうございます。ミュージシャンのレオは私も大好きな人物です。3人の女性の設定は、私自身が脚本を書いていながら、あとから観客として映画を観て、なぜあのような設定にしたのかと驚きました。3人の女性に助けられるわけですが、恐らく個人的な思いが3人の女性のキャラクターに反映したのだと思います。
―(男性)年間150本位映画を観ていますが、本作はほんとうに感動しました。もしこの場に配給の方がいましたら、ぜひ公開してほしいです。ホロコーストを扱っているけれど、現代のこととして考えてほしいとおっしゃっていました。でも、過去にユダヤ人にどんなことがあったかを考えてほしいと思います。過去の知識として持つのでなく、感情として受け止めてほしいと思います。ドイツ人だけでなく、人類皆が認識すべきだと思います。
監督:はい! もちろん!
実は日本で配給が決まっていて、この場に配給の方もいらっしゃいます。繊細な目で観て、映画の配給を決めてくださったことに感謝申しあげます。
(★彩プロ配給で、2018年12月22日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。邦題『家(うち)に帰ろう』公式サイト:http://uchi-kaero.ayapro.ne.jp/)
今、お話くださったビジョンに同意します。現在もホロコーストと同様のことが繰り返されています。生き延びた子孫の一人として語り継ぐ必要があると思っています。ほかの人々の文化や国を下に見る傾向も続いています。再び起きる可能性があります。
ここで、どうしても話しておきたいことがあります。
主人公アブラムを演じた役者ミゲル・アンヘル・ソラさんは、私が11歳の時からファンの方です。主人公の設定より、25歳くらい若いのですが、撮影に臨むときには2時間くらいかけてメイクアップをほどこして老けて見えるようにしていました。歩き方なども研究してくださいました。彼の素晴らしい演技で、この作品が出来たことを皆さんにぜひお伝えしたいです。
― (男性)主人公がユダヤ人で、ドイツの地を踏みたくないと言っていたのが、踏むことができるようになります。73年経ちますが、ユダヤ人のドイツ人に対する感情は良い方向にいっているのでしょうか?
監督:一つ言えることは、国全体や、ある文化を一括りに言えないということです。
祖父は今96歳。1969年にドイツに行かなければならなくなったとき、絶対、ドイツの土は踏みたくないと言ったのを、この映画に入れ込みました。祖父は、この1月に映画を観てくれて、劇場から出てきて私を抱きしめてくれました。ドイツの地を踏ませたくないというシーンがよかったと褒めてくれました。そして、もしドイツで上映されることになれば、一緒にドイツに行くとも言ってくれました。
司会:残念ですが、最後の質問になってしまいました。
(大勢から手があがり、監督も嬉しそう。でも、指名せずに、ご自身で語り始めました)
監督:1975年、私が5歳の時に祖父に「ポーランド人なの?」と聞いたら、黙ってしまいました。父から、絶対、ポーランドの名前を出しちゃいけないと言われました。それが、この映画の原点です。
映画は文化の懸け橋の役割もあると思います。
名残りを惜しみながらQ&Aは終了しました。
会場のロビーでフォトセッション。
オフィシャルの撮影が終わったあと、熱心な観客とのふれあいが続きました。
7月17日、都内でパブロ・ソラルス監督にインタビューの時間をいただきました。
ポーランドのことを一切口にしなかったお祖父さまのことや、作品に込めた思いを、たっぷりとお伺いしました。 景山咲子
『家(うち)に帰ろう』 パブロ・ソラルス監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463240293.html
★『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』は、7月19日(木)17時から多目的ホール、7月21日(土)21時からMOVIX川口で上映されます。19日の回には上映後にQ&Aも行われ、パブロ・ソラルス監督が再登壇する予定です。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 デイリーニュース
http://skipcity-dcf.jp/news/dailynews/20180716_dairy14.html
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