イスラーム映画祭3 『ラヤルの三千夜』 理不尽な理由で逮捕され、刑務所で出産したパレスチナ女性の物語

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ラヤルの三千夜  原題:3000 Nights
監督:メイ・マスリ

イスラエルの刑務所で子どもを産んだパレスチナ人女性たちの実話をもとに描いた社会派ドラマ。
ヨルダン川西岸の町ナーブルスに住むパレスチナ女性の教師ラヤル。テロ容疑の青年を車に乗せたことから逮捕され、懲役8年(約3000日)を言い渡される。妊娠していたラヤルは、刑務所内で出産。ヌール(光)と名付けられた男の子は、閉塞感漂う刑務所の中で、皆の希望ともなった。しかし、2歳になると母親から引き離す規定があり、ヌールは父親のもとに送られてしまう・・・

◆3月17日(土)11時からの上映後のトーク抜粋

《ぼくの村は壁で囲まれた〜パレスチナの70年〜》
ゲスト:高橋真樹さん(ノンフィクションライター)


この映画は、パレスチナについて知らないと、わからない場面もあるかと思います。
メイ・マスリ監督は、レバノン育ちのパレスチナ女性で、レバノンを拠点に活動しています。これまで『シャティーラキャンプの子どもたち』『夢と恐怖のはざまで』などドキュメンタリー映画を作ってきましたが、『ラヤルの三千夜』は、女性や子どもを視点にした初めての劇映画です。パレスチナの女性が、どう強く闘って生きているか、刑務所の中でもたくましく生きている姿を描いています。
ヨルダンの廃墟になった刑務所で撮影し、出演者も本人や家族が収監経験のある人が多い。
パレスチナ問題は、宗教問題とイメージされるけれど、実はそうではない。土地の問題です。シオニストが少しずつ入ってきていたが、1946年の時点で94%はパレスチナの土地でした。それが1947年の国連分割決議で、43%に減らされ、中東戦争を経て、2012年には、わずか8%になりました。占領が続く中、理不尽な逮捕が行われ、ガザ地区は天井のない監獄、ヨルダン川西岸も壁で囲まれています。その分離壁も、境界線に立てるのではなく、切り込む形で土地を分断しています。ラヤルも解放されたけれど、占領の中での暮らしが待っています。
トランプ大統領が大使館をエルサレムへの移転を決めました。エルサレムが3大宗教の聖地故に宗教問題と取られがちですが、大使館をエルサレムに移すというのは、力による支配を認めることです。パレスチナ人の2割はキリスト教徒なのに、宗教問題化させている面もあります。

*イスラーム映画祭主宰の藤本さんからも、イスラーム映画祭でパレスチナを扱うと宗教問題と思われがちだが、違う。イスラエル建国70周年、パレスチナにとってのナクバ(大災厄)70周年の年で、オープニングにパレスチナを扱った映画を上映して理解を深めて貰いたいと本作を選んだ思いが語られました。

ラヤルの三千夜 作品紹介はこちらで!
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/459767786.html

★2018年6月16日(土)から1週間、 渋谷ユーロスペースにて緊急公開
ユーロスペース公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000274




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