イスラーム映画祭9『私は今も、密かに煙草を吸っている』(アルジェリア)3/16ミニ解説と感想(咲)

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『私は今も、密かに煙草を吸っている』★日本初公開
原題:À mon âge je me cache encore pour fumer
監督:ライハーナ / Rayhana
2016年/フランス=ギリシャ=アルジェリア/90分/アラビア語・仏語

上映前に、イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんよりミニ解説。

1995年のアルジェリアが舞台。
アルジェのハンマームの女性用時間を撮ったもの。アルジェリアではハンマームの場面を撮影することが出来ず、ギリシャのテッサロニキのベイ・ハンマーム(1444年、オスマン帝国ムラト2世建設)で撮影。
ライハーナ監督は、1990年代終わりにフランスに亡命。

なぜ、1995年を舞台にしているのか?
1830年~1962年 アルジェリアはフランスの植民地。完全な同化政策をした為、激しい独立運動が9年にわたって行われた結果、独立。
独立戦争については、『アルジェの戦い』で描かれているので、機会があればぜひ観てください。

石油や天然ガスがあって、独立当初はそこそこ上手くいった。農業政策が上手くいかないことなどから、独裁政権に対して、1988年、民衆が蜂起。
民衆の支持を受けたイスラーム主義を掲げたイスラーム教国戦線が選挙で勝利するも、政府がクーデターを起こし、内戦の時代に突入。その内戦のひどかった1995年を舞台にしたのが本作。 

「アルジェリアの200年を5分で無謀に語りました」と藤本さん。


*物語*
アルジェの海を見晴らす屋上。29歳半のサーミヤ。未婚の彼女に、母親はあまり屋上に出るなというが、屋上から海を眺めるのが好きなサーミヤは、屋上で洗濯物を干すのが好きだ。

買い物用のバケツを下げ、まず、こっそり煙草を買うファーティマ。オレンジを買い、急ぎ足で街を行く彼女は、眼下の通りで爆弾テロが起こるのを見かける。ハンマームに着き、まず一服する。ファーティマはハンマームの従業員。先ほど、屋上から海を眺めていたサーミヤは同僚。サーミヤが、夢に現れた男性への憧れを語る。
次々にハンマームに女性たちがやってくる。 そんな中、妊娠している16歳のマリヤムが兄の暴力から逃れて来る。ファーティマは、ほかの女性にばれないように、マリヤムを2階に匿う。
マリヤムの兄たちがやって来る。押し入ろうとする男たちを、なんとか入れないようにするファーティマたち。やがて、マリヤムが破水する・・・
ハイク(白い布)を纏って、押し入る男たちと対峙する女性たちの姿が圧巻。


ファーティマを演じるのは、ヒアム・アッバス。イスラエルのナザレ生まれのパレスチナ人。『シリアの花嫁』『扉をたたく人』『ガザの美容室』など数多くの作品で活躍している方。

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迫力ある助産師アイーシャを演じていたビューナや、どういう役柄か把握できなかったナディア・カシの二人は、2004年のフランス映画祭で上映された『ビバ!アルジェリア』に出演していて来日され、インタビューした懐かしい方たち。


アルジェリアで俳優と舞台演出の実績を持つライハーナ監督は、1990年代終わりにフランスに亡命後、本作の基となる戯曲を2009年にフランスで上演。内戦当時、女性たちにとって唯一自由になれるハンマームでさえ、自由の場でなくなりそうな状況を描いています。
群集劇で、個々の人物像を把握しきれなかったこともあり、もう一度、観たい思いにかられています。それだけ、力強く、素晴らしい映画でした。

東京では、あと1回、最終日の最後の作品として上映されます。

3/24(日) 20:40~

遅い時間ですが、ぜひ!

チケットは、こちらのサイトの右わきにある「先行予約 イスラーム映画祭」のところからどうぞ!
https://www.euro-ticket.jp/eurospace/schedule/


イスラーム映画祭9『アユニ/私の目、愛しい人』 ★山崎やよいさんトーク「14年目のシリア革命」

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『アユニ/私の目、愛しい人』原題・英題:Ayouni
監督:ヤスミーン・フッダ / Yasmin Fedda
2020年/シリア=イギリス/74分/アラビア語・英語・イタリア語

1970年から親子2代にわたるアサド独裁政権が続くシリア。2011年3月、シリアにも及んだアラブの春。アサド政権は民衆蜂起を弾圧。これまでに10万人以上が強制失踪している。
シリア系パレスチナ人で、ウィキペディアの創設に関わったプログラマーのバーセル・サファデイと、人権派弁護士のヌーラは、2013年、獄中結婚し、シリア革命家夫婦と言われる。
1970年代から中東を拠点に修道院の修復や宗教間の融和をはかる活動を続けてきたイタリア人神父パオロ・ダル・オグリオ。2013年にラッカで強制失踪する。妹マチが、神父の行方を追う・・・

「ダマスカス行き」と書かれた2階建てバスの外側いっぱいに掲げられた強制失踪した人たちの写真。家族がバスに乗り、愛しい人たちの解放を求めて世界各地を回ります。
そんな訴えも空しく、バーセル・サファデイ処刑のニュース。政府は肯定も否定もしない・・・

◆3/16(土) 10:00からの上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命①― 震災後のシリア北西部と革命の現在地》
【ゲスト】山崎やよいさん(アラビア語通訳/「イブラ・ワ・ハイト」発起人/ NPO法人Stand with Syria Japan監事)

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山崎やよいさんは、考古学者として、シリアのアレッポに23年滞在。今回、本作の字幕監修をされ、「パソコンで見ていた小さな画面と違って、大きな画面で見た本作は、初めて見たような気持ち。独裁政権はともかく、シリアは気候・風土のいい国」

以下、山崎やよいさんの言葉より:
2011年のシリアでの民衆蜂起は、宗教や民族の違いを越えた革命。「内戦」と言われると、ちょっと違う。

去年、アサド政権は野戦軍事裁判を廃止したが、軍事裁判は今も残る。
処刑されたことが家族にはなかなかわからない。
今も15万人以上が拘束されているが、面会はほぼ無理。
かなりの賄賂を払って居場所を聞き出しても、さらに賄賂を積んで面会にこぎつけるのも難しい。

パオロ・ダル・オグリオ神父はフレスコ画などの修復で有名なイタリア人神父。
シリア政府は修復にお金を出さない。

ヤスミーン・フッダ監督は、元々パオロ神父を取材していて、その過程でバーセルさんのパートナーであるヌーラさんと知り合う。

バスの外側に掲げられたバーセル・サファデイさんの写真の隣に、知り合いのシリアの女性サマルさんの写真を見つけて、心臓が止まりそうに。サマルさんが失踪していることを忘れていたことにもハッとした。 ISIS(イスラム国)は、アサド政権の利益になることしかして来なかったとサマルさんから聞いたことがある。
2011年、革命が起きた時、アサド政権はイスラミスト(過激なイスラム思想を持つ人)を解放している。何かあった時に、過激派イスラームのせいにする意図。

***************

★『アユニ/私の目、愛しい人』は、あと1回 上映があります。

3月23日(土)17:50~
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命②― 「革命前のシリアは平和だった」言説のまやかし》
【ゲスト】黒井文太郎さん(軍事ジャーナリスト)


第19回大阪アジアン映画祭受賞結果

第19回大阪アジアン映画祭のグランプリ以下各賞の受賞結果を発表

★グランプリ(最優秀作品賞)
『シティ・オブ・ウインド』(City of Wind)
フランス・モンゴル・ドイツ・ポルトガル・オランダ・カタール
監督:ラグワドォラム・プレブオチル(Lkhagvadulam Purev-Ochir)

★来るべき才能賞
 リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)台湾
『サリー』(Salli/莎莉)監督

★ABCテレビ賞
『サリー』(Salli/莎莉)台湾・フランス
 監督: リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)

★薬師真珠賞
 チー・ユン (CHI Yun/池韵)オーストラリア・中国
『未来の魂』(Unborn Soul/渡)主演俳優

★JAPAN CUTS Award
『カオルの葬式』(Performing KAORU’s Funeral)
 日本・スペイン・シンガポール 監督:湯浅典子(YUASA Noriko)

★JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『ブルーイマジン』(Blue Imagine) 日本・フィリピン・シンガポール 監督:松林麗 (MATSUBAYASHI Urara)

★芳泉短編賞
『シャングリラに逗留』(Sojourn to Shangri-la/是日訪古) 中国  監督:リン・イーハン (LIN Yihan/林詣涵)

★芳泉短編賞スペシャル・メンショ2作
『オン・ア・ボート』(On a Boat) 日本 監督:ヘソ(Heso)

『スウィート・ライム』(Sweet Lime)香港・イギリス
 監督:ファティマ・アブドゥルカリム (Fatema ABDOOLCARIM)

★観客賞
『あまろっく』(Amalock)日本 
 監督:中村和宏(NAKAMURA Kazuhiro)

コンペティション部門審査委員のデイヴ・ボイル氏は審査委員を代表して「青春映画というジャンルの枠組みでグランプリを受賞した『シティ・オブ・ウインド』は、私たちが見たことのない世界を照らし出し、スピリチュアリティや世代間の対立といった問題を、巧みさと自信に満ちた手腕で描き出しました。この映画は、主人公の成長を繊細に描きつつ、啓示的な演技を中心に据えています。また、来るべき才能賞を受賞したリエン・ジエンホン監督(『サリー』)は、予想だにしなかった展開とひねりを加えつつも、過去の偉大なキャラクター主導型コメディを彷彿とさせる素晴らしい創作力を発揮しました。思い出の場所や人物を散りばめた卓越した脚本で、心からの感動と大爆笑コメディを両立させるテクニックを披露したリエン監督の次回作を大いに期待します」と講評。

イスラーム映画祭9『私が女になった日』上映によせて ★2000年のマルズィエ・メシュキニ監督インタビュー(シネマジャーナル51号掲載)

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(マルズィエ・メシュキニ監督 撮影:宮崎暁美)


『私が女になった日』
原題:Rouzi Ke Zan Shodam  英題:The Day I Became A Woman
監督:マルズィエ・メシュキニ / Marziyeh Meshkiny
2000年/イラン/74分/ペルシャ語

☆イスラーム映画祭9 東京・・渋谷ユーロライブ上映日
3/17日 20:45 

3/24日 10:00
上映後トーク

【テーマ】《それは本当に“反スカーフ”なのか? ―起ちあがったイラン女性たち》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


2000年12月 第1回東京フィルメックスのコンペティション部門で上映された折にマルジェ・メシュキニ監督のインタビューに同席した懐かしい作品です。シネマジャーナル52号に掲載した記事を、今回のイスラーム映画祭9での上映を機に、ここに掲載します。
当時、私はまだシネマジャーナルの読者でした。宮崎暁美さんより、ペルシャ語通訳がつかないので、同席してほしいとのことでした。通訳の役目はほとんど果たせないと思うけれど、それでもよければとインタビューの場に臨んだところ、ちゃんとショーレ・ゴルパリアンさんが通訳としていらしてました。 (景山咲子)


◆マルジェ・メシュキニ監督インタビュー

2000年12月 
第1回東京フィルメックスの会場にて
取材:宮崎暁美

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(撮影:宮崎暁美)

メシュキニ監督はイランの著名なモフセン・マフマルバフ監督の妻であり、サミラ・マフマルバフ監督の母親の妹で叔母にあたる。サミラさんのお母さん(つまり姉)が亡くなった後、マフマルバフ監督と結婚したそうだ。デビュー作であるこの作品について、監督に話を伺った。

Q:この作品を作ろうとした意図は?

A:第一話の女の子の物語は、今まで子供だったのが今日から女として扱われるという時を描いた。女の子が女として扱われるようになった時、女としての権利が与えられるというけど、同時に今まで持っていた権利を失うことでもある。失うものの方が多いということを描いた。
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第二話では成人した女の人が習慣とか伝統的な考え方によって、いかに制約されているかということを表した。主人公の名前はアフー。ペルシャ語で鹿のこと。鹿のように走りたいという意志、自分のいる所から逃れたいという気持ちも表現した名前にした。
第三話の話は今まで自由を奪われて生きてきて、おばあさんになった女性が突然、モノを買い集めるという行動にでるのだけど、物を手に入れてもそれを使う時間があまり残っていない。
この作品は三世代の女性を描いた作品です。私の作品の中の女性たちはバネのような状態で、押さえ付けられていたバネが外れると飛び出していきたい女性たちを描いている。


Q:イスラム革命前と以後では女性に対する規制や抑圧が強くなったということはありますか?

A:現政権下ではイスラムにのっとった服装をしなくてはならないという規制はありますが、私にとっては服装は重要な問題ではありません。例えば、日本では女性にとって服装の規制はなくても、まだまだ不利な社会ではないでしょうか? イスラム法のもとで女性の権利や自由は守られていますし、革命前より自由が無くなったということは言えないと思います。それよりも、伝統や社会、お母さんやおばあさんがその世代の価値観を押しつけることで、女性自身が女性に不利な社会を作っているということもあります。そういう普遍的な問題として捉えています。

Q:三番目のエピソードで、おばあさんが思い出せなかった買いたかったものはいったい何だったのでしょうか? 私の想像ではおばあさんが買いたかったものというより、欲しかったものは夫だと思うのですが。
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A:たしかに彼女はずっと独身でした。かつて結婚したい男性もいたけれど結婚できず、子供も持てず、若さも失ってしまった。今はお金も入り自由を手にしたけれど、何かを忘れてきた・・・・・。そんな思いでいるわけです。でも、私には買い忘れたものが何かという答えはないんです。

Q:夫のマフマルバフ監督や、姪のサミラさんの助手をしているうちに、ご自身でも映画を撮ってみたくなったのでしょうか?


A:それもありますね。恵まれた環境にあったからこそ映画を作れたと思うのですが、もし夫がダメと言ったら、離婚してでも撮ったかもしれません。

Q:作品に対する規制はどうなのですか?

A:映画を撮っている時には問題なかったのですが、イランでは作った後に検閲があるので、呼び出されて説明をしました。この映画は宗教に反することは無いと、証明しなければならなかった。私は審査の人たちに対して、「私の映画は女性のことを描いたのに、なぜ審査員の中に女性はいないのか」と聞きました。そうしたら「私たちは女性の気持ちにも男性の気持ちにもなって、この映画を見て審査する」と答えたんです。彼らはいくつかの所をカットさせようとしました。例えば、第一話の中で女の子がアメをなめているところ。「これは、セクシー」だと言われたけれど、私はこの作品のすべてが自分の表現したいことで、一つでもカットされるのなら、この作品を作る価値がないと言ったら、折れてOKが出ました。

Q:次の作品はどうですか?

A:今のところは、映画の経験を積んでいるところです。詩を創るためにはたくさんの言葉が必要なように、映画を作るためにはたくさんのエピソードが必要です。今はエピソードを集めている時期です。

(イランでは、通りやデパートの名前にも詩人の名前がつけられ、スピーチや会話の中にも詩の一節が引用されるなど、日常生活に詩が深く関わっているのですが、メシュキニ監督の言葉にも、詩をこよなく愛するイラン人の心をかんじました。 景山咲子)

*****
イランには10人くらいの女性監督がいると上映後のトークの時に監督は言っていたが、いずれも映画を作るまでにかなり困難があるという。イランの女性監督の中堅であるプラン・デラフシャンデPouran Derakhshandehさんが、米国で撮った『国境なき愛』(Eshgh bedoone marz 1998年)という作品がイランで公開されたけれど、抱擁シーンやヘジャブ(イスラム式の服装)を着用しない女性が出てくるシーンがあって、保守派の人たちの反発があったという。それでも、少しずつイランの映画事情は変わってきているようだ。(暁)


*物語*
ペルシャ湾にある自由貿易の島キシュ島を舞台に子供、成人、老年の三世代の女性が主人公の三部構成で、それぞれの世代の女への束縛、生きがたさ、希望などを表している。
第一部は7才ぐらいの女の子が主人公。今まで男の子と一緒に遊んでいたのに「今日からは一緒に遊んではいけません。おまえは女だから」と、お母さんやおばあさんに言い渡される。その境の日を描いた。
朝、それを言われた女の子はそれでも粘って、お昼ご飯に帰ってくるまでは遊んでもいいと約束を取り付ける。また、髪を覆うスカーフをかぶらなくてはいけないと言われた女の子は、それがイヤでたまらなくて、なんとかそれを避けようとするがやはり避けられない。

第二部はキシュ島のサイクリングコースで行われている競技会が舞台で、『サイクリスト』のように自転車でこのコースを走り続けるシーンが続く。主人公の女性アフーが走り続けていると、走っている横に夫や親、村の長老などが走るのをやめるように説得にくる。束縛から逃れるように走り続けていると、「離婚するぞ」とか「村八分にするぞ」と、男たちは次々に彼女に脅しをかけるがアフーは走り続ける。しかし結局、男たちに自転車から降ろされてしまう。やはり呪縛から逃れられないのだ。でも、三話目の時にアフーは他の人の自転車を借りて走り続けたと出てくる。それにしても走り続ける女たちの群れが圧巻である、イランでは女性は自転車に乗ってはいけないそうだが、キシュ島はイランで唯一、女性が自転車に乗れる所だそうだ。
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第三部は老女が免税の島でもあるキシュ島へ買物に来る。風光明媚で観光地でもあるキシュ島はイランにあって開放感を与えるところ。ずっと貧しく、欲しいものも、自分のしたいことも抑えられてきた彼女は遺産を手にしてキシュ島に買物に来たという設定だが、冷蔵庫やベッドなど大きな家財道具を買い、島の子供たちが連なって台車に乗せて港へ向う姿が圧巻。開放感をこの買物の山で表したのかもしれない。
監督はこの三部作を通して女性にエールを送りたかったのだろう。(宮崎暁美)


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東京フィルメックスのサイトより:

私が女になった日/The Day I Became a Woman
イラン/2000年/78分/35mm/カラー
監督:マルジエ・メシキニ
脚本:モフセン・マフマルバフ
主演:ファテメ・チェラグ・アカル、シャブナム・トルイ、アジビ・セディギ
解説:モフセン・マフマルバフの妻メシキニのデビュー作。キシュ島の美しい風景を背景に、少女、成人、老人の3人の女性を3部構成で描く。

◆ティーチイン
  美しい髪を半分ショールから見せた、端正な顔立ちの監督が舞台に現れると盛大な拍手。イランで女性として監督をする困難さはと、質問はまず女性観客から出た。五百人の男性監督に十人の女性監督という現状の中で、毎朝スタッフに自分が監督だと言い聞かせなければいけなかったが、そういう現状を作り出したのは、むしろ女性の自信のなさの歴史が作ったのではと。どこの映画祭でも同じ質問を女性から受けるとやんわりご意見。伝統は守っていかなければいけないかという質問に、自分はこの作 品でイスラム宗教やイラン社会を批判したかったのではなく、女性の自由を奪ってきたのは伝統という名の体制だと思っている。宗教はむしろ人間に自由を与えたと思っている。しかし、私はこの作品で全世界の女性が置かれている状況を普遍的に描写したかったのだと答え、イランで唯一の無関税地であるキシュ島の美しさと、テヘランでは女性に禁止されている自転車がここでは乗れるという状況がこの撮影を可能にしたいきさつを語った。女性、男性によらず、人生の最後に残されるのは夢だという言葉が印象に残った。


◆東京フィルメックス 公式インタビューは、こちらで!

イスラーム映画祭9 『私が女になった日』(イラン)

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『私が女になった日』
原題:Rouzi Ke Zan Shodam  英題:The Day I Became A Woman
監督:マルズィエ・メシュキニ / Marziyeh Meshkiny
2000年/イラン/74分/ペルシャ語
予告篇 https://youtu.be/194rTpQhQF0?si=wjKGO5DPADSNFmzd

『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督、『午後の五時』のサミラ・マフマルバフ監督に続いてマフマルバフ・ファミリーから、マルズィエ・メシュキニ監督作。
チャードルを初めてまとう日を迎えたハッワ。 離婚を望みながら自転車レースに挑むアフー。 かつて華やかな結婚式を夢見ていたフーラ…。
3人の女性を通じて、イランのイスラム社会における女性の置かれた状況が寓話的に描かれます。 女性たちを中心とする政権抗議デモが起きた今こそ観るべき作品を、22年ぶりにリバイバルです。

☆東京・・渋谷ユーロライブ上映日
3/17日 20:45

3/24日 10:00
上映後トーク
【テーマ】《それは本当に“反スカーフ”なのか? ―起ちあがったイラン女性たち》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))


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その映画が「傑作」かどうかを決めるのは
実際にお金を払って観た方だと思っているので、
上映する側は「これこれこういう映画です」と
ススメはしても傑作などと
過度に持て囃すべきではないと思っています。
でも、
これだけは「傑作」と言って差し障りないと思うほど
何度観ても素晴らしいのが、
3/17(日)と24(日)に上映する
イラン映画『私が女になった日』です。
9歳になってヒジャーブを着せられる女の子と、
自転車レースに挑む壮年期の女性と、
誰かの遺産で買い物をする老境に達した女性。
本作はそれぞれが主人公の3つの物語によって、
イラン女性が送る一生を描いています。
舞台はペルシャ湾に浮かぶ美しいキーシュ島。
高度な社会批評と
イラン映画面目躍如の詩的リアリズムが融合した、
今の時代にこそ合う
珠玉の74分をどうぞご堪能ください。
ショーレ・ゴルパリアンさんを通じ、
今回初めてロンドンにある
マフマルバフ・フィルム・ハウスと取引をしました。
(ただ上映料が£払いなので1£=190円…)
モフセン監督のご子息メイサム氏がとても親切で、
リマスターではありませんが
昔の素材をわざわざデータ化して送ってくれました。
『私が女になった日』、ほんと大好きな映画です。
(藤本高之)


★マルジェ・メシュキニ監督インタビュー
2000年 第1回東京フィルメックスで上映された折にマルジェ・メシュキニ監督インタビューに同席した懐かしい作品です。
シネマジャーナル52号に掲載したインタビューを、今回のイスラーム映画祭9での上映を機に、Webに掲載しました。
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(撮影:宮崎暁美)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/502620357.html
お読みいただければ嬉しいです。(咲)