イスラーム映画祭9 (2024年開催) 上映日程&作品が発表されました!
イスラーム映画祭9
東京・渋谷ユーロライブ:2024年3月16日(土)~17日(日)、23日(土)~24日(日)*4日間 1日5回上映
東京のチケット発売:3/13(水)深夜0時から会期中の4日分を一斉に販売
名古屋・ナゴヤキネマ・ノイ 期間未定
神戸・元町映画館:4月27日(土)~5月.3日(金) 1日2回上映
主催:イスラーム映画祭
公式サイト:http://islamicff.com/
X(旧:Twitter):http://twitter.com/islamicff
Facebook:http://www.facebook.com/islamicff
**********
藤本高之さん一人の手弁当で開催されているイスラーム映画祭。
来年は開けないかもしれないとの話もあったのですが、昨今の世界情勢も鑑みて、開催を決断されました。上映作品と、東京での上映やトークの詳細も決まりました。
ぜひ、皆さまご予定ください。
ここに、藤本さんの開催に向けての言葉をお届けします。
☆イスラーム映画祭主宰 藤本高之さんの言葉☆
2015年12月にスタートし、中東や北アフリカに広がる「イスラーム文化圏」の映画を紹介してまいりました本企画。
昨今の円安で次回の開催が危ぶまれておりましたが、継続を望む多くの声に支えられ、規模を縮小することにより第9回を開催することとなりました。
名古屋では、先日発表されました、本年7月に閉館した名古屋シネマテーク跡地に新たに誕生する、「ナゴヤキネマ・ノイ」にて開催する予定です。
今回は、10月7日に発生したパレスチナ・ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの越境攻撃と、その「報復」や「自衛」と呼ぶにはあまりに苛烈なイスラエルのガザ侵攻が続いている現状を鑑みまして、パレスチナ問題の原点である1948年のイスラエルによる民族浄化、“ナクバ”(アラビア語で“大災厄”)を少女の視点から描いた劇場未公開の傑作『ファルハ』を緊急上映いたします。(東京・神戸のみ)
また、緊迫するパレスチナ情勢の影で今なお民衆革命への弾圧が続いている隣国のシリア。
その独裁政権下で長年行われている人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追ったドキュメンタリー映画、『アユニ/私の目、愛しい人』を日本初公開。
他にも、イスラーム映画祭7から続く北アフリカ・マグリブ諸国の女性監督を紹介するシリーズの決定打として、アルジェリア内戦中フランスへ亡命した俳優兼舞台演出家が、公衆浴場「ハマム」を舞台に抑圧下の女性たちを描いた戯曲を、自ら映画化したワンシチュエーション・ドラマ、『私は今も、密かに煙草を吸っている』も初公開いたします。
さらに今回は、フランスの都市郊外(バンリュー)に暮らす移民ルーツの若者たちの実態を、モノクロのシャープな映像で描いて本国公開時(1995年)に一大センセーションを巻き起こし、日本でも1996年に公開され話題となったフランス映画のエポックメイキング、『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバル。(東京・神戸のみ)
歴史大作からヘビーな社会派ドラマ、移民をテーマにした子ども映画やコメディまで、9年続く企画としての連続性と、“今、世界で起きているのに忘れられている事”も意識しつつ、多彩な12作品を揃えました。
気鋭の研究者やジャーナリストを迎えて毎回好評を博している上映後のトークセッションも、東京では過去最多の11回を予定しております。
◆イスラーム映画祭9上映作品◆
【イスラーム映画祭9上映作品①】
『炎のアンダルシア』 ★26年ぶりの劇場リバイバル
原題:Al-Massir 英題:Destiny
監督:ユースフ・シャヒーン / Youssef Chahine
1997年/エジプト=フランス/135分/アラビア語・フランス語
知る人ぞ知る巨匠、故ユースフ・シャヒーン監督(1926-2008)作。中世に実在した大哲学者イブン・ルシュド(ラテン名:アヴェロエス)が主人公の歴史大作。
時は12世紀末、ムワッヒド朝カリフ・マンスール治世下のアンダルス(スペイン南部)。世には権力を背に偏狭なイスラム主義が蔓延し始め、信仰と理性の両立を説くアヴェロエスの哲学書にも焚書の危機が迫ります…。
20世紀末のエジプト社会を反映しつつ現代にも通じる普遍的なテーマを謳った、エンターテインメント要素も満載の壮大な作品。
予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=lusJxBk8ha4
☆東京上映日
3/17(日) 12:00
3/24(日)15:05
上映後トーク
【テーマ】《思想には翼がある ―12世紀アンダルスより21世紀への伝言》
【ゲスト】金子冬実さん(東京外国語大学非常勤講師)
【イスラーム映画祭9上映作品②】
『私は今も、密かに煙草を吸っている』★日本初公開
原題:À mon âge je me cache encore pour fumer
英題:I Still Hide to Smoke
監督:ライハーナ / Rayhana
2016年/フランス=ギリシャ=アルジェリア/90分/アラビア語・仏語
予告篇 https://youtu.be/DWdFgxJHTjQ
全編ほぼ“ハマム”を舞台にした、抑圧下の女性たちを描く人間ドラマです。
アルジェリア軍とイスラム過激主義勢力による内戦が激化していた1995年。
ハマムは女性たちにとって、唯一自由に話せる場所でした…。
監督のライハーナはアルジェリアの俳優兼演出家で、90年代末にフランスへ亡命。
2009年に本作の元となる戯曲をフランス語で上演しています。
ハマムのシーンはギリシャにて、女性のスタッフのみで撮影されました。
☆東京上映日
3/16土 12:35
3/24日 20:40
【イスラーム映画祭9上映作品③】
『アユニ/私の目、愛しい人』
原題・英題:Ayouni
監督:ヤスミーン・フッダ / Yasmin Fedda
2020年/シリア=イギリス/74分/アラビア語・英語・イタリア語
予告篇 https://youtu.be/mS7aS_5YNp8
シリアのアサド政権下で続く人道犯罪、“強制失踪”の被害者家族を追った深淵なるドキュメンタリー映画。
2013年にラッカで強制失踪したイタリア人神父の妹と、2015年にダマスカスで強制失踪したシリア人男性のパートナーが、それぞれに最愛の人の消息を求めて活動する様子を6年にわたり撮影しています。
失踪者の数は10万人以上…。 その数の一人ひとりに掛け替えのない愛と人生がある事を教えてくれる作品です。
☆東京上映日
3/16土 10:00
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命①― 震災後のシリア北西部と革命の現在地》
【ゲスト】山崎やよいさん(アラビア語通訳/「イブラ・ワ・ハイト」発起人/ NPO法人Stand with Syria Japan監事)
3/23土 17:50
上映後トーク
【テーマ】《特集:14年目のシリア革命②― 「革命前のシリアは平和だった」言説のまやかし》
【ゲスト】黒井文太郎さん(軍事ジャーナリスト)
【イスラーム映画祭9上映作品④】
『ファルハ』
原題・英題:Farha
監督:ダリン・J・サラム / Darin J. Sallam
2021年/ヨルダン=スウェーデン=サウジアラビア/92分/アラビア語・ヘブライ語・英語
予告篇https://youtu.be/2UT6Zw4-Yg0
パレスチナにルーツを持つヨルダン出身のダリン・J・サラム監督作。
1948年、イスラエルによるパレスチナの民族浄化、“ナクバ(アラビア語で“大災厄”)”を目撃する少女の物語です。
映画は、ナクバでシリアに逃れ、サラム監督の母親に自身の経験を語ったというパレスチナ女性の物語に基づいており、主人公ファルハの体験は、イスラエル建国の1ヵ月前に起きた
“デイル・ヤーシーン村の虐殺”を彷彿とさせます。
本作はNetflixで配信された際、イスラエル政府の大きな反発を招きました。(つまり、イスラエルによるパレスチナの民族浄化はホロコーストと同じく歴史的な事実だからです)
★SKIPシティ国際Dシネマ映画祭『ファルハ』 1948年のパレスチナ 少女が隙間から覗いた惨劇 (咲)
ダリン・J・サラム監督 Q&Aも掲載しています。
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/489961622.html
☆東京上映日
3/17日 14:45
上映後トーク
【テーマ】《ホロコーストとナクバ―起源の暴力と暴力の起源》
【ゲスト】岡真理さん(京都大学名誉教授、早稲田大学大学院文学研究科教授/アラブ文学者)
【イスラーム映画祭9上映作品⑤】
『戦禍の下で』
原題:Sous les Bombes 英題:Under the Bombs
監督:フィリップ・アラクティンジ / Philippe Aractingi
2007年 フランス=レバノン=イギリス/93分/アラビア語・英語・フランス語
予告篇https://youtu.be/jwtEWdsVgZc
2006年に起きたイスラエルによる第二次レバノン戦争後、1年足らずのうちに撮影された、まるでドキュメンタリーと見紛う戦禍の傷痕をたどるドラマです。
この戦争は現地では7月戦争と呼ばれます。 妹と息子の消息を探すシーア派ムスリム女性と、彼女に雇われたタクシー運転手のレバノン南部をたどるフィクションが、やがて実際の被災地や被災者の声をたどるドキュメンタリーの役割をなしてゆくのです。
瓦礫の山と化した現地の様子は現在のガザとも重なります。
☆東京上映日
3/17日 17:50
上映後トーク
【テーマ】《我々は映像で闘う ―2006年第二次レバノン戦争とレバノン映画人》
【ゲスト】佐野光子さん(アラブ映画研究者)
3/23土 20:30
ヨーロッパの移民映画小特集1
【イスラーム映画祭9上映作品⑥】
『憎しみ』
原題:La Haine 英題:Hate
監督:マチュー・カソヴィッツ / Mathieu Kassovitz
1995年/フランス/98分/フランス語
予告篇https://youtu.be/MjEVNWNhA1o?si=PaaZzGX5cvZseuYl
<郊外(バンリュー)映画>の隆盛はここから始まった!
フランス映画のエポックメイキング、マチュー・カソヴィッツ監督作『憎しみ』を28年ぶりに劇場リバイバルします。
かったるい日々を生きるユダヤ系のヴィンス、アラブ系のサイード、サブサハラ・アフリカ系のユベール。 暴動が起きたカオスな街で、警官が紛失した拳銃を拾った3人の24時間…。
都市郊外(バンリュー)に住む移民ルーツの若者たちの実態を描いた本作は、公開当時本国で賛否両論の一大センセーションを巻き起こしました。
★東京上映日
3/23土 12:00
上映後トーク
【テーマ】《「郊外(バンリュー)」から声をあげる ―フランスの移民事情とラップ・フランセ》
【ゲスト】陣野俊史さん(ライター/『魂の声をあげる 現代史としてのラップ・フランセ』『ジダン研究』著者)
ヨーロッパ移民映画小特集2
【イスラーム映画祭9上映作品⑦】
『ハンズ・アップ!』
原題:Les Mains en L'Air 英題:Hands Up
監督:ロマン・グーピル / Romain Goupil
2010年/フランス/92分/フランス語
予告篇https://youtu.be/Ji7ZlzNXpzI
強制送還されそうな非正規滞在のチェチェン人少女を、同級生たちが体を張って守ろうとする子どもたちのレジスタンス映画です。
映画は、主人公ミラナが2067年の未来から2009年の記憶を回想するという形で語られます。本国で公開された2010年はブルカ禁止法が施行された年でもあり、移民社会に対し強硬的だったサルコジ政権下の雰囲気もうかがえます。
しかし、いつの世も子どもたちの世界に、大人が引いた境界線は関係ないのです。
★東京上映日
3/16土 17:45
3/23土 15:00
上映後トーク
【テーマ】《2023年「暴動」をふり返る― 映画から読み解くフランスの移民事情【復習編】》
【ゲスト】森千香子さん(同志社大学社会学部教授/『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』著者)
ヨーロッパ移民映画小特集3
【イスラーム映画祭9上映作品⑧】
『辛口ソースのハンス一丁』
原題:Einmal Hans mit scharfer Soße 英題:A Spicy Kraut
監督:ブケット・アラクシュ / Buket Alakus
2013年/ドイツ/92分/ドイツ語・トルコ語
予告篇https://youtu.be/SklT3XcHt10
親の祖国と生まれ育った国の価値観に挟まれながら、自身の幸せを探す移民二世の姿を描くコメディ映画です。
妊娠した妹の結婚を、姉が先に結婚すべきという伝統的価値観の親に認めさせるため、主人公ハティジェは偽りの婚約者探しを始めます…。
移民二世に共通するアイデンティティの揺らぎを賑やかかつポジティブに描いて印象は軽快。
『おじいちゃんの里帰り』と同じく、トルコ系の女性監督による作品です。
★東京上映日
3/16土 19:40
上映後トーク
【テーマ】《「ドイツのアリはいないのか?」 ―トルコ系移民二世の恋愛と家族関係》
【ゲスト】渋谷哲也さん(ドイツ映画研究者/日本大学文理学部教授)
3/23土 10:00
【イスラーム映画祭9上映作品⑨】
『私が女になった日』
原題:Rouzi Ke Zan Shodam 英題:The Day I Became A Woman
監督:マルズィエ・メシュキニ / Marziyeh Meshkiny
2000年/イラン/74分/ペルシャ語
予告篇 https://youtu.be/194rTpQhQF0?si=wjKGO5DPADSNFmzd
『子供の情景』のハナ・マフマルバフ監督、『午後の五時』のサミラ・マフマルバフ監督に続いてマフマルバフ・ファミリーから、マルズィエ・メシュキニ監督作。
チャードルを初めてまとう日を迎えたハッワ。 離婚を望みながら自転車レースに挑むアフー。 かつて華やかな結婚式を夢見ていたフーラ…。
3人の女性を通じて、イランのイスラム社会における女性の置かれた状況が寓話的に描かれます。 女性たちを中心とする政権抗議デモが起きた今こそ観るべき作品を、22年ぶりにリバイバルです。
★2000年 第1回東京フィルメックスで上映された折にマルジェ・メシキニ監督にインタビューした懐かしい作品です。インタビューは、シネマジャーナル52号に掲載。(咲)
☆東京上映日
3/17日 20:45
3/24日 10:00
上映後トーク
【テーマ】《それは本当に“反スカーフ”なのか? ―起ちあがったイラン女性たち》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))
【イスラーム映画祭9上映作品⑩】
『メークアップ・アーティスト』
原題・英題:Makeup Artist
監督:ジャファール・ナジャフィ / Jafar Najafi
2021年/イラン/76分/ペルシャ語
予告篇https://youtu.be/tfJB_Uis16M?si=MPwH5HYbommpFXHH
メークアップを勉強する大学に通うため、強固な家父長制的価値観を持つ夫や義母と丁々発止の日々を繰り広げる女性を追った、ドキュメンタリー映画です。
本作のポイントの一つは、主人公のミーナたちが少数民族のバフティヤーリー族である事で、イランにおける女性の置かれた状況がわかるとともに彼の国の多民族国家ぶりもうかがえます。 『私が女になった日』から状況は何も変わらずとも、イランの女性たちが確実に前進している事を実感できる作品です。
★山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 上映時の感想とジャファール・ナジャフィ監督Q&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/483935250.html
☆東京上映日
3/24日 12:35
上映後トーク
【テーマ】《多民族国家イランの魅力と、イランを知るための映画・文学》
【ゲスト】村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))
【イスラーム映画祭9上映作品⑪】
『スターリンへの贈り物』
原題:Podarok Stalinu 英題:The Gift to Stalin
監督:ルスタム・アブドゥラシェフ / Rustem Abdrashev
2008年/カザフスタン=ロシア=ポーランド=イスラエル/95分/ロシア語・カザフ語・ヘブライ語
予告篇 https://youtu.be/dTI52pQ-fkY
1949年。スターリンの強制移住策によって中央アジアに送られたユダヤ人少年を、ムスリムの老人やキリスト教徒女性が匿うという物語です。
ユダヤ人、ムスリム、キリスト教徒。 カザフ人、ロシア人、ポーランド人や朝鮮人。
ソ連の圧政下で宗教や民族を超えて身を寄せ合う人々の姿が叙情味豊かに描かれます。
でも、彼らが暮らす土地の近くには、ある実験場があるのでした…。
イスラーム映画祭では久々となる、中央アジア映画の埋もれた逸品です。
★上映日
3/17日 10:00
3/24日 18:40
【イスラーム映画祭9上映作品⑫】
『ハーミド〜カシミールの少年』
原題・英題:Hamid
監督:エージャーズ・ハーン / Aijaz Khan
2019年/インド/108分/ウルドゥー語・ヒンディー語
予告篇 https://youtu.be/vusgEUBUOE8
その帰属をめぐって1947年の分離独立以降、インドとパキスタンの対立の原因となっているカシミールを舞台にした、無垢なムスリム少年の物語です。
父親が失踪した7歳のハーミドはある日、父を返してもらえるよう神様の数字“786”に電話をかけます。 でも、つながったのは意外な人物でした…。
美しい自然を背景にした物語と少年の純粋さに心打たれる一方で、インド映画がカシミールを描く事、そしてそれを“読み解く”事の難しさも含まれている作品です。
2023年2月18日 東京外国語大学TUFS Cinema上映時の解説はこちらで
http://cineja4bestfilm.seesaa.net/article/494950599.html
★上映日
3/16土 14:40
上映後トーク
【テーマ】《カシミールをめぐるインド映画― 『ロージャー』から『PATHAAN/パターン』まで》
【ゲスト】安宅直子さん(南インド映画研究者)